亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金市場に優しいイエレン・パウエル体制の誕生 

2020年12月01日 21時04分07秒 | 金市場
11月が終わった。30日のNY金の終値(清算値)は1780.90ドル。この日も米バイオ医薬品大手モデルナが、開発中の新型コロナワクチンの緊急使用を米食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)に申請すると発表。先行きの経済正常化への期待が持続する環境の中で、リスクオフ環境で買われる金には、売りが先行する流れが続いた。アジア時間からロンドン、NYと終日マイナス圏で推移。この間に何度も1760ドル台まで落ちては買われ、1780ドル台に復帰ということを繰り返した。そして終盤も売りが先行する流れで終了となった。安値は1767.20ドル。終値ともども7月初旬以来5カ月ぶりの安値となった。7月初めというと2000ドルに向けて急騰を開始する直前の水準となる。つまり、いわゆる“行って来い”状態というわけだ。まさに仕切り直しの印象。

結局、11月のNY金は月間では5.3%下落となった。一方、この日はさすがに売りが優勢となり、主要指数ともに反落で取引を終えた米国株式市場。ダウ30種の11月の上昇率は11.8%と月間では1987年1月以来、約34年ぶりの上昇率を記録。S&P500種も11月としては過去最高の上昇率という。ワクチン効果の株式市場に対し、ワクチンの副作用にやられた金市場。もっとも金については、11月末が決算期というファンドも多く、売りが出やすかった季節要因がある。昨日取り上げた金ETFだが、最大銘柄SPDR(スパイダー)ゴールド・シェアは、この2営業日は残の減少は見られなかった。サックスギビング前までかなと、目算を立てていたがその通りになった、しかしその後の薄商いの中でストンと200日移動平均線をザラ場で30ドル超下回ることになった。

先日から200日移動平均線は、信頼度の高い下値サポートと書いてきた。そこで、昨日はここに参考意見として「足元の価格は買いだと思う」とした。現在、NY時間の早朝で、通常取引開始まで2時間ほどあるが、ここまでのところ手の平を返したようにNY金は時間外で1800ドル超への戻しに入っている。目先は売りたい向きは売ったということで、いわゆるweak longのふるい落としのイメージだが、それはここからの展開を見てこの見方の正否が判明する。

報じられているように、年明けにスタートするバイデン新政権の財務長官にイエレン前FRB議長が指名された。上院にて承認されて正式に就任となる。11月3日のここに、米選挙投票日前の10月28日に時事通信社から配信された「アナリストの目」で「バイデン政権誕生に伴う一つのシナリオ」と題した原稿を全文掲載した。そこで指摘した当方の思っていたブレイナードFRB理事が、イエレン前議長に代わった。民主党内で左派の「ジャスティス・デモクラッツ」と「サンライズ・デモクラッツ」というグループが、エリザベス・ウォーレン上院議員を財務長官に、バーニー・サンダース上院議員を労働長官に据えるよう意見書を提出していたとされる。年明け1月5日のジョージア州の上院決選投票での民主党の2議席確保が難しい中で、左派のエリザベス・ウォーレンでは上院共和党の反対が予想されること、またバイデン政権としての政策遂行には不向きと思われる。イエレン議長、ブレイナード理事どちらでも金市場には親和性の非常に高い人事といえる。また「アナリストの目」に書いたように、これで政権とFRBの意思疎通が非常にしやすくなる。ドルを下げるために俺の言うことを聞いて、利下げしろ!!とFRB議長にプレッシャーをかけまくっていた現職大統領とは違う世界が生まれることになる。

こうした布陣が発表された上で注目度が上がったのが、本日のパウエルFRB議長の議会証言の発言内容となる。どの程度踏み込んだ内容になるか興味深い。環境は刻々と変化している。
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