亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

質への逃避で金は3週続伸

2021年05月24日 11時39分41秒 | 金市場
前週末5月21日のNY市場の金価格は7営業日ぶりの反落となった。NYコメックスの通常取引は前日比5.30ドル安の1876.70ドルで終了となった。

HISマークイットがこの日発表した5月の購買担当者景気指数(PMI)速報値は欧米ともに前月から上昇。まず、英国は過去最高、ユーロ圏は3年3カ月ぶりの高水準となった。ただし、市場では同じく過去最高値を更新した米国の方がユーロ圏経済よりも早いペースで拡大するとの見通しから、週初から主要通貨に対し弱含みに推移していたドルがこの日は買われ、ドル指数(DXY)が反発。金市場では売りが優勢となった。

もっとも、5月に入って以降NY金は前日20日までで値幅で114.20ドル、率にして6.5%の上昇となっていただけに、利益確定や相場の過熱に対する警戒感から売りが出やすい。さらにテクニカル分析上強い抵抗ラインと目される1900ドルに接近していることも、売りを誘う要因となる。前日まで小幅な上昇を含め6営業日続伸の後だけに、反落は一般的な流れといえる。それでも週間ベースでは3週連続の上昇となる。ビットコインに代表される暗号資産市場が大荒れ状態となり、その余波から株式市場も不安定化の様相を示していることで金に対する市場の関心は戻りつつある。21日も通常取引終了後の時間外でさらに買戻しが入った結果、最終的には1881.80ドルと前日比0.10ドル安の水準で週末の取引を終了していた。

IHSマークイットが発表した米国の5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は、61.5と、同統計が製造業全体をカバーするために改定された2009年10月以降で最高となった。好調なワクチン普及で行動規制の緩和が進み国内需要が押し上げられている。一方で、原材料と(企業が求める)労働力が不足し商品供給が滞り、価格上昇につながっている。サービス業PMIも70.1と、現行統計が始まった09年10月以降で最高だった。サービス業は米経済の3分の2以上を占める。製造業とサービス業がともに好調だったことで、双方を合わせた5月の米総合PMIは68.1と、4月の確報値の63.5から上昇した。

なお21日も暗号資産の下落が続いた。前日に米財務省が1万ドル(約109万円)以上の暗号資産(仮想通貨)の送金を内国歳入庁(IRS)に報告することを義務付ける方針を発表.。さらに21日は中国政府(金融安定発展委員会)が金融リスク防止・管理に向け、ビットコインのマイニングや取引を取り締まる方針を表明したことから、売りが膨らんだとされる。多くの暗号資産の取引は(ネット上で完結するため)日曜日も実施されているが、NYの時間帯の23日正午過ぎ(日本時間24日午前1時過ぎ)にビットコインは一時3万1100ドル台と前日より18%ほど下落した。日本時間の午前10時には3万5000ドル台まで値を戻すなど、値動きの荒い状態が続いている。上昇時に機関投資家の参入がはやされたが、個人投資家の目先資金を大量に集めたと思われ、先週来その投げ売りが続いているとみられる。

暗号資産(仮想通貨)の動向が市場心理に影響しやすくなっており、逆に金への関心を高めている。この中で貴金属の中でも上昇が目立つのは金となっており、21日はプラチナ、パラジウムの下げが目立った。プラチナは前日比35.60ドル安の1169.40ドルと3%の下落。パラジウムは95.20ドル安の2775.00ドルと4.1%の下落で終了。インフレ懸念に振れていたマインドが、安全資産志向に傾き金価格をサポートしている。同時に米国債に買いが回り、長期金利の安定にもつながっている。
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