高円(たかまと)の 野辺(のべ)の秋萩 いたづらに
咲きか散るらむ 見る人無しに
=巻2-231 笠金村=
高円山の野のほとりの秋萩は、空しく咲いて散っているらしい。もう見る人もいないのに、という意味。
「梓弓(あづさゆみ) 手に取り持ちて・・」と葬列のたいまつの送り火を切々と歌う野辺送りの長歌(巻2-232)につづく反歌で、万葉集を代表する晩歌のひとつである。
霊亀(れいき)元年(715)に志貴皇子が亡くなったのを悲しんで詠んだ歌の一つ。
ハギ(萩)は、マメ科ハギ属の総称。落葉低木。秋の七草のひとつで、花期は7月から10月。分布は種類にもよるが、日本のほぼ全域。古くから日本人に親しまれ、万葉集の中によまれた植物の中で萩は141首あり、花としては最も多い植物である。万葉集に詠まれている萩は「ヤマハギ(山萩)」のことだそうだ。
万葉で2.3位のうめ・さくらに比べて、地味なはぎが万葉人に愛されたのは現代の我々からみると不思議に思われる。
当時は山野にヤマハギが多く見られ、地味ではかない花々が万葉人の心をとらえたのであろうか。
こちらの万葉歌碑は、奈良県橿原市にある万葉の森に置かれているもの(2011/11/14写す)。
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