あをによし 奈良の都に たなびける
天の白雲 見れど飽かぬかも
=巻15-3602 遣新羅使(けんしらぎし)の一人=
奈良の都にたなびく白い雲は、ずっと見ていても見飽きないものですよ。都に私の愛する人がいればなおさらのことです。という意味。
遣新羅使の一行のひとりが詠んだ歌だが、作者不明。
天平8(736)年4月、聖武天皇により新羅派遣の命が下り、大使に阿倍継麿、副使に大伴三中が任命された。その一行は6月に難波の津を出発、瀬戸内海を西に進んだ。だが、台風に遭い、延々と日程を重ね秋が深まってもなお対馬に停泊、やっとたどり着いた新羅では接見が許されず、派遣は不首尾に終わったようだ。大使は対馬で病没した。歌の大半は行きに詠まれたようで、愛する者のいる都はいつも望郷の対象だった。
当時、難波津から瀬戸内海へ向い、西へ西へと幾日もつづく危険な船旅だった。船旅で眺める雲に寄せて愛する人を偲ぶ、いつまで見ていても飽きないのだ。
万葉歌碑<クリックで拡大>
(揮毫者・杉岡華邨)
この万葉歌碑は、奈良市二条大路南・奈良市役所前庭に建っている。
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