それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

NHK・Eテレ「きょうの料理」:マロン、20分の死闘

2015-07-21 10:03:05 | テレビとラジオ
昨日の「きょうの料理」では、料理研究家マロン氏が20分間で3品の献立を作る、という企画をやっていた。

それが近年稀に見る激しく面白い料理番組だったのである。



マロン氏と言えば、マイルドなオネエキャラの料理研究家で知られている。

話しが上手なだけでなく、全体におしゃれで、スタイリッシュな雰囲気の料理をプロデュースしている。

辻調理師専門学校を卒業後、フードスタイリストとしてのデビューは83年だそうで、もうベテランの料理研究家のひとりである。



そのベテラン料理研究家マロンの本気が垣間見えたのが昨日の「きょうの料理」。

料理を単に20分以内で作るのではない。

材料を切り、調味料を量るのもすべて20分以内なのである。

これは案外難しい。

いやもちろん、簡単な料理を20分以内で作るならば、なんてことはないのである。

けれども、しっかりとした料理3品を20分で作るのは神業と言って良い。

昨日作っていたのは、「農園グリーンパスタ」、「クレソンハニービーフ」、そして「にんじんドレスの満腹スパサラダ」。

いずれも野菜を数種使っていて、味も美味しそう。クレソンハニービーフに至っては付け合せのじゃがいもまで付いている。

普通に作れば、一時間はゆうにかかりそうなメニューである。



マロンは収録前のリハーサルで、実は20分の制限時間をオーバーしていた。

つまり、そもそも無理に近いプログラムをこなそうとしていたのだ。

だが、マロンは自らのプライドにかけて、このメニューを20分で作りきる決意をしていた。



時間がなく、出来る限り効率的に動くために、アシスタントのアナウンサーは遠くから声をかけるのみ(いわゆる、天の声)。

マロンの集中力は半端ない。

料理が始まると、マロンはいつもの流暢な話し方で料理を説明しながら作っていく。

スタートから本気モードだ。なぜなら、リハーサルで時間をオーバーしているのだ。

あっという間に5分が経過する。

刻むべき野菜は無限にある。フードプロセッサーを使うものの、それでも大変だ。

ゆでるパスタは二種類。

肉も焼く。

パスタのソースもフライパンで作らなければならない。

ガス台はふたつだから、時間差でうまく処理していく。

ジャガイモも電子レンジにかける。



時間がどんどん減っていく。

焦るマロン。

マロンの手つきはどんどん素早くなっていく。

質問するアナウンサーの声をしばしば無視するマロン。

飛び散る野菜、鳴り響くタイマー。

マロンの所作はいよいよダイナミックになっていく。まるでジェイミー・オリバーのごとくだ(マロンにとっては心外かもしれない)。

5分が減り、さらに5分が減る。

アツアツのじゃがいもの皮を剥くマロン。

最初は熱いと言って布巾を使っていたマロンだったが、遂には素手で皮を剥くマロン。

アナウンサーに「褒めて!」と愚痴るマロン。

明らかにペースがまずいらしく、マロンはいよいよ素早くなる。

そして、遂にはこうつぶやいたのだ。

「マロン、落ち着け・・・」

まるでマンガのようなセリフ。それは本来心の声。これがマロンの本気。

マロンにこの言葉を呟かせるNHK・Eテレ。なんて恐ろしいテレビ局!



アナウンサーが言う。

「そんなに時間を気にしなくて大丈夫ですから!」

明らかにカチンときたマロン。

時間を気にさせているのは誰だ!貴様たちNHK・Eテレだろ!マロンが料理研究家プライドをかけてやっているんだぞ、黙れ!

そんなふうに言いたげなマロン。

だけど、マロン。一体、この料理は誰のための料理?

あなたの腕前でしか20分で作れない料理って、私視聴者には一体どういう意味があるの?

でも、関係ない。そんなの関係ない。

これは格闘技。

時間内に料理をつくる格闘技。

この番組はスポーツなのだ!料理というスポーツを楽しむ番組なのだ!



遂にサラダができた、ステーキもできた。

しかし、無情にもそこまで!

20分が過ぎた!

その一分後、パスタが出来たが、もう時間は終了している!

マロン、苦悶の表情。しかし、最後は笑顔でフィニッシュ!!



試食も何もなく、料理が出来たところで番組終了。

これはスポーツ番組、試食などというヌルいパフォーマンスはいらないのだ!!

ありがとう、Eテレ!ありがとう、マロン!