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ひきこもる女性たち 一歩外へ「勇気がない」

2018年07月07日 | 社会・経済

  道新 07/05

 

 成人になっても長年外に出られず、家にひきこもっている女性たちがいる。多くが「どう生きていいか分からない」「一歩外に出る勇気がない」と悩み、人生に希望を見いだせない人たちだが、「家事手伝い」などと見なされ、社会問題として十分に認識されていないのが現状だ。彼女たちがひきこもった背景には何があるのか。社会で生きていくためにどのような支援が必要なのか。「ひきこもる女性たち」の実態や支援する人たちの姿を追って考えた。

 

■精神的な不調、病気 / コミュニケーションの不安

 

 札幌市内に住むりょうこさん(46)=仮名=は20年間、ほとんど家を出ない生活を続けている。ひきこもりのきっかけは高校卒業後に就職した職場でのいじめだった。りょうこさんが書類作成でミスをすると、上司はりょうこさんにだけ、初めから書き直すよう命じた。同僚から「あなたは会社のお金を横領しそう」と言われたり、通常幹部社員がやる仕事を押し付けられたりしたこともある。「辞めさせたいんだな」と何度も感じた。

 体調を崩し、8年で退社し、それから外に出られなくなった。今も精神科に通い続ける。「何度も死のうと思った。働かなければならないと思うが、外は刺激が強すぎて疲れる。人と会うのも怖い」と語る。

 

 十勝管内在住の千夏さん(23)=同=は小学校3年生で不登校になった。体調を崩してしばらく学校を休んだ後、再び登校すると友達がよそよそしく、勉強も付いていけなくなった。中学校からフリースクールに通い、通信制の高校を卒業し、道央の大学に入ったが、授業の課題や通学が負担になり、中退した。今は地元に戻り、自宅で趣味の絵を描きながら病院でリハビリも続けている。

  「なぜ自分は人と同じようなことができないのか」と自分を責めては落ち込むことを繰り返す。「自分は生きていていいのだろうか」と何度思った分からない。「崩れていく階段を上っている感じ。それでも、何とか一歩踏み出したい。胸を張れる自分になりたいんです」。声を振り絞って語った。

 

 ひきこもりの経験がある女性らでつくる一般社団法人「ひきこもりUX会議」(東京)が2017年にひきこもりの当事者、経験者369人を対象に行った実態調査によると、回答者の平均年齢は37・7歳。ひきこもりの時期は「10年以上」が全体の37%。「生きづらさを感じる」と答えた人は68%に上った。

 また、ひきこもった原因(複数回答)で最も多かったのは「精神的な不調や病気」(70・5%)で、「コミュニケーションの不安」(58・8%)が続いた。

 自身もひきこもりの経験があるUX会議代表の林恭子さん(51)は「ひきこもりの人たちはいじめやパワハラ、不登校などで傷付き、自己肯定感も低い。加えて女性のひきこもりは家事手伝いや主婦という肩書にくくられ、可視化されにくい」と語る。

 林さんたちは昨年から、ひきこもりや生きづらさを抱えた女性たちが各地で集う全国キャラバンを始めた。昨年は札幌など12カ所で開催し、552人が参加した。毎回林さんらが自身の体験談を語った後、当事者たちによる交流会も開かれる。約1時間半の交流会が終わっても、話は尽きず、当事者たちだけで話し込むことも多々あるという。

 林さんは「ひきこもり支援というと就労ありきだが、多くの人は『自分がこれから歩む道が見えず、自分が生きていていいのだろうか』と悩んでいる。まずは一歩を踏み出すきっかけが必要」と語る。

 

 林さんたちの活動をきっかけに、ひきこもり経験者や当事者たちが互いを支え合う場も生まれつつある。6月5日に札幌市内で開かれたUX会議の女子会。終了後、参加者の一人が帰ろうとしていたほかの参加者たちに声をかけた。「札幌で女子会つくりませんか」

 声をかけたのは札幌市内の会社員あやさん(32)=同=だ。中学2年から不登校になり、高校も休みを繰り返しながら、何とか卒業した。「あの時のつらかった経験があるから、今をよりよく生きたいと思える。一人じゃないよ、仲間がいるよと伝えたい」。そんな思いで発した一言だった。

 少し間を置いて声が飛び交った。「やりましょう」「ぜひ誘ってください」。参加者たちがあやさんを囲み、連絡先を交換し合った。小さな輪が少しずつ膨らんでいった。(片山由紀)

 

■長年放置される傾向強く グループセラピー 数十人規模の女子会 効果的

■精神科医・斎藤環さんに聞く

 

 「ひきこもり女性」特有の課題や支援策について、精神科医で筑波大教授の斎藤環さん(56)に聞いた。

 

 ――ひきこもりで苦しむ人は全国各地に大勢います。

 「2016年の内閣府の調査ではひきこもりは54万人いるとされていますが、実際は100万人以上いると見ています。ひきこもりが長期化し、(当事者が)高齢化するケースも多い。先日、ある地方都市の保健師さんと話したら、一つの通りにひきこもっている家が3軒あると言うのです。(家の中は外からは)見えないから分からない部分が大きい。不登校からそのままひきこもりになった人も多く、今後ますます増える傾向にあるのではないでしょうか」

  ――ひきこもりの人の約4割は女性です。女性特有の課題はありますか。

 「日本には男尊女卑の考えが根強く残っています。新卒で就職しない場合も、女性は家事手伝いのような扱いになり、だれも不思議に思わないが、男性だと世間からも批判されやすい。女性のひきこもりは問題にならず、長年放置され、気付いたらアラフォーになっていたというケースも珍しくありません」

 ――ひきこもりUX会議の調査では、「男性に苦手意識がある」と答えている女性は全体の64%を占めます。最近は各地でひきこもりの当事者会が誕生していますが、UX会議の女子会のように女性だけで集まる場も必要なのでしょうか。

 「ひきこもり期の回復段階にグループセラピーは重要なのですが、女性の中には男性への恐怖心が強い人もいます。かつて男性からセクハラやパワハラなど何らかの嫌がらせを受けた経験があって、『男性は生理的に怖い』という意識が埋め込まれているのです。

 そういう人たちは男性がいる当事者会には参加しにくい。でも男性のいない安全な空間で話し合えるなら、行ってみようかという気持ちになれる。UX会議の女子会は数十人規模です。女性は小さい規模だとグループ化してしまうが、数十人の規模だとむしろ分裂しにくいんですね。これは女子会を成功させる重要なポイントだと思います」

  ――子どもの未来を案じて悩む親も多くいます。

 「ひきこもりの子どもと親にとって一番大切なのは『対話』です。そういうと、親御さんは『対話なんて散々しましたよ』っていう。でもよく聞いてみると、対話じゃなくて説得や叱咤(しった)激励なんです。これでは本人に不信感を抱かせ、状況を悪化させてしまうだけです。対等な関係で互いに意見を交換し、相手の思いを受け入れることが大切です。ゴールを求めず、まずじっくり話を聞くことを繰り返してください。本人のいうことを全部受け入れろということではない。とりあえず、親と本人の(考え方などの)違いを理解できればいい。『暴力は振るわない』『渡すお金は制限を設ける』といった親子間のルールを作った上で、できるだけ対話を重ねてほしい」

  ――ひきこもりから抜け出すには、このほかどのような支援が必要でしょうか。

 「就労支援も必要ですが、長いブランクがある人がいきなり就職するのはハードルが高い。トレーニングを積み重ねながら就職にたどり着けるような支援も必要でしょう。就労移行支援制度など既存の支援をうまく使ってほしいと思います。また、就労をゴールとせず、多様な働き方、生き方を許容し、支援するサービスも必要だと思います。当事者会もそうです。都市部では当事者による女子会が誕生していますが、地方にはあまりない。地方でも、当事者たちが安心して集える空間づくりへの支援が重要だと思います」

 

■ひきこもり 広がる支援の輪

  ひきこもりの人や親への支援の輪は全国で広がっている

 帯広市の禅林寺別院(緑ケ丘8)では、不定期でひきこもりの女性当事者を対象にした「女子会」を開いている(問い合わせ先は副住職の高松芳明さん(電)090・8635・9481)。

 また、男女を問わずひきこもり問題全般に対応しようと、全国のひきこもり当事者、経験者たちによる全国ネットワーク「特定非営利活動法人Node(ノード)」が4月に発足した。ひきこもりに関する総合情報ポータルサイト「ひきペディア」(https://hikipedia.jp/)を開設。各地にある当事者や親による団体、ひきこもりを支援する医療・公的機関などを紹介するほか、投稿欄を設けている。

 道内では、札幌市ひきこもり地域支援センターとNPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークが、6月から当事者と親がそれぞれ定期的に集う会を始めた。札幌市の委託事業で月に1度、市内施設で自由に語り合う。

 

 次の当事者の会は8月6日、親の会は7月23日。いずれも午後1~4時で会場はかでる2・7(札幌市中央区北2西7)。参加無料。問い合わせは事務局(電)090・3890・7048へ。


 活発な梅雨前線による西日本を中心とした豪雨の被害は7日も拡大し、各地で新たな犠牲者が見つかった。5日以降の共同通信のまとめでは、広島県で20人、愛媛県で9人、滋賀、大阪、兵庫、岡山、山口各府県でそれぞれ1人が死亡し、死者は計34人となった。心肺停止状態で見つかる人も相次ぎ、安否不明者は50人以上。(共同通信)

 多くの犠牲者を出した豪雨。被災された方には心よりお見舞い申し上げます。これ以上の被害が出ないことを祈ります。

 今朝の最低気温も7度くらい。寒い日が続いています。今朝見た予報では今夜からまた雨の予報だったのでハウスもしっかり閉めて帰ってきました。ところが今見ると傘マークはなく、朝の2時間ばかり日が出るようです。
ようやく咲き始めました。

これはホタルかな?
今度夜に来てみよう。