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日本の「深層」2

2018年07月02日 | 社会・経済

「正社員はいらない」“煽る人”竹中平蔵とは何者なのか?

   文春オンライン7/1(日)

   ネット内では「対立を煽る書き方をすれば、読み手が過剰に反応する(=釣られる)」と、先日殺害されたネットウォッチャー・Hagexは著書『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書)に記す。その典型として「男女対立」、「理系文系」、「きのこの山・たけのこの里」、「能力や価値の相対化や序列化と対立煽り」などをあげている。

 「生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」

   「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」(東京新聞6.21)。これは竹中平蔵の言葉である。「経営者目線」の者と「社会のありようを問う」者の対立をうまいことアオり、ここまでくると、ネタで言っているのかと思ってしまう。過去にも「日本の正社員は世界一守られている労働者になった。だから非正規が増えた」(日経新聞2012.7.16)、「正社員をなくせばいい」(テレ朝2015.1.1)といった発言で、世のひとびとを虜にしてきた。

 そんな竹中は自らの肩書でもネットを盛りあげる。上掲の東京新聞のインタビューでは、残業代ゼロ制度の異名をもつ高度プロフェッショナル制度について「個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」などと、「東洋大教授」の肩書で登場して語っている。これがまたいいネタフリになって、SNSには「東洋大教授でなく、パソナグループ会長と表記すべきじゃね?」との幾多の投稿が見られることになる。

.学者大臣からパソナ、オリックスの企業人へ

 稀代の釣り師ともいえる竹中だが、東洋大教授や人材派遣大手のパソナグループ会長のほか、オリックス社外取締役など肩書コレクターとしても有名だ。一介の経済学者であった竹中は小渕政権の諮問機関の委員となったのをきっかけに政治に入り込み、小泉内閣に入閣すると「学者大臣」と呼ばれ、選挙に当選して国会議員にもなり、やがて複数の大企業の取締役などになっていく。

.「ちゃっかり経済財政大臣の椅子に座っていた」

 週刊文春の見出しでこうした変遷をふり返ってみれば、小泉政権で経済財政政策担当大臣→「『変節漢ぶり』検証 竹中平蔵ってそういうことだったのか会議 御用学者と呼ばれる理由」(2001.9.6)、金融担当大臣→「竹中平蔵金融相登場 外資は栄え 日本は滅ぶ」(2002.10.10)、参院選に当選→「竹中平蔵 自爆告白『日銀やゴールドマン社員が選挙協力してくれた』」(2005.5.26)、パソナ取締役→「竹中平蔵『パソナ取締役』就任 南部社長とのただならぬ関係」(2009.8.13)という具合。そのときどきの肩書・立場に応じたネタを提供している。

 これら記事の中に、こんな逸話がある。森政権の末期、竹中が、民主党議員らによる自民党を倒すための政策勉強会に参加させてほしいと頼んできた。しぶしぶそれを認めたところ、「しばらくして、勉強会で研究された、リナックス型社会、七つの改革 、といったアイデアを、いつのまにか竹中さんが別の場所で発表したんです」(永田町関係者・談)。おまけにそうした民主党の勉強会に参加していたのが「小泉政権の誕生と同時に、ちゃっかり経済財政大臣の椅子に座っていたこと」でさらに彼らを驚かす(週刊文春2001.9.6)。

 

規制緩和とともにある人

 

 それでいえば、ときの政権に取り入って規制緩和を進めた竹中は、規制緩和による市場化で儲けるオリックスや、それこそ規制緩和ビジネスの人材派遣業の大手・パソナグループの取締役に“ちゃっかり”就いている。「“規制緩和の旗手”である竹中さんは、雇用問題について『派遣を含めて多様な雇用形態を実現すべき』と主張して」(文春2009.8.13)きたのである。釣り師としてばかりでなく、ちゃっかり者としても一流であった。

 『サラリーマン政商 宮内義彦の光と影』(講談社2007)、『日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈』(文藝春秋2015)、これらは森功の著書名である。オリックスとパソナ、竹中が取締役に就いている会社の経営者が「政商」と呼ばれるゆえんは、政府による規制緩和の恩恵を受けていることにある。

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小佐野賢治、小泉改革、人材派遣業をつなぐもの

 

 政商といえば、もっとも有名なのが小佐野賢治であろう。小佐野は田中角栄の「刎頚の友」であった。そして田中の口利きで事業の利益を得ていく。土建国家、族議員、政・財・官の癒着、こうした政治風土のなかで、政治を介して特別の儲けを得る。これを支える体質を「古い自民党」と呼び、それを「ぶっ壊す」と叫んだのが小泉純一郎である。

  小泉の有名なスローガンに「痛みをともなう構造改革」というのもある。不良債権などで経済が立ち行かなくなった90年代半ばに威勢を増したのが「構造改革」論で、それを突き進めたのだ。では、改革するとなにがどうなるのかといえば、規制緩和により、新たな市場が生まれたり、拡大したりするのである。

  そうした市場のひとつが人材派遣業だ。小泉は「改革なくして成長なし」とも言ったが、まさに人材派遣業は「改革」によって成長をとげる。限られた業種にしか派遣できなかったのが、原則自由化され、製造業などへと拡大していく。そうした「法改正とともにそのときどきの政府の政策が、パソナの南部をここまで押しあげてきたのは、間違いない」(森功『日本を壊す政商』)。人材派遣業は「規制緩和ビジネス」なのだ。そして、これの推進役になったのが、オリックスの宮内が議長を務める政府の規制改革会議であった。

構造改革の痛みから、10年近くが経った今

   「新しい自民党」の時代、ときに政商は政府の中にいる。彼らは自分で提言してできた市場で儲けを得る。こうしてみると、竹中の肩書には政商が加わるかのようだ。

  かつて竹中も属していた「経済戦略会議」の委員であった中谷巌は後年、構造改革が非正規雇用の増大を招いたと、自己批判する(「竹中平蔵君、僕は間違えた」文藝春秋2009.3)。この会議の答申が謳う労働市場の流動化が、その後に派遣業を拡大させたのだ。そして「あるべき社会とは何かという問いに答えることなく、すべてを市場まかせにしてきた『改革』のツケが、経済のみならず、社会の荒廃をも招いてしまった。それがこの十年の日本の姿であった」と中谷は懺悔するのであった.

  それから更に10年近くが経とうとしている今日、正規雇用が破壊されつつある。あらたな分断を生もうとアオる竹中とともに、この荒廃はなおも拡大していく。

 


 

 

   労働条件をどんどん切り下げ、分断と煽りによってますます深刻な状況にある。40代50代の世代までが不安定雇用となり、将来の見えない社会でその日暮らしを強いられている。「8050」問題など、働き盛りの、家庭における「大黒柱」になるべき世代が「非正規」であったり、「介護退職」せざるを得ない状況で、ますます「孤立」を深めている。

   煽りによって自分の置かれた窮屈な社会を発散させるのだろう。彼らに経済的余裕などない。まさに現代の「奴隷」状態である。人のことなどにかまっている暇はない。自分のことで精いっぱいなのだ。

 現実社会では「いじられ」、「最低賃金」でこき使われ、人間としてではなく「資材」として扱われる。まさに現代における「奴隷」である。うっぷんを晴らす場所は「匿名性」のネットの世界だ。

日本の一番大きな労働組合ももう数年で消え失せるだろう。

 アベノミクスの最大の功績は、労働者の生活を不安定化し、あれこれ考える余裕も与えない。そして彼らを利用したヘイトによって分断を日常化させて来た。「連帯」する者には「あんな人たち」として切り捨てる。これが「アベノミクス」の本当の狙いだったのかもしれない。そもそも「経済的発展」で、労働者の生活が向上することに目標はない。大企業の使いきれない膨大な内部留保が今もなお、増え続けているのだ。