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里の家ファーム

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たねの話8

2012年01月27日 | 野菜・花・植物

 

ミトコンドリアというのは、動植物の細胞内に共生している、元来は別の生物で、動植物にとって大切なエネルギー源であり、酸素の供給源です。動植物の先祖である真核細胞は、ミトコンドリアを共生させることによって運動能力を持ったり、新たな進化の道筋を辿ることができましたが、反面、酸素と同様に発生する活性酸素は、細胞や遺伝子を傷つけ、個体が老化したり、ガン細胞に変異したり、遺伝病を子孫に伝える主要原因になりました。

元来別の生物であるミトコンドリアは、細胞の核の中にある遺伝子とは別の遺伝子を独自に持っています。核の中の遺伝子は核膜で守られているため傷つきにくいのですが、ミトコンドリア内の遺伝子は、自分が発生する活性酸素によって傷つきやすいようです。また、動物の精子や植物の花粉は、子宮や胚の中に侵入する時に大変な運動量を必要とするため、卵子と結合した時はミトコンドリアを失ってしまいます。こうして傷つきやすいミトコンドリア内の遺伝子は、母親だけを通じて遺伝されます。(もしかして、男性のミトコンドリア遺伝子は、あまりに傷つき壊れやすいため、卵子や胚によって拒絶されているのかもしれません) 

以上の解釈は、学会の定説とはとても言いがたい、素人なりの理解による私説です。そして、これまでのF1作りが、父親と母親の"良い"形質を利用し、雑種強勢でその相乗効果を期待したものであったのに対し、母親株に必要とされる要素は、雄性不稔因子だけになりました。簡単に言いきってしまえば、雄性不稔を利用したF1作りとは、(あえて差別用語を使えば)「片輪を使ってF1を効率的に生産するため」の採種技術なのです。

雄性不稔株を使えば、これまでのような面倒な除雄作業は要りません。自家不和合性を維持するために、人手を雇って蕾受粉をくり返す必要もありません。(もっとも、最近はいちいち蕾受粉などせずに、CO(一酸化炭素)をハウスに充填すると、花が中毒症状を起こして、苦し紛れに子孫を残そうと受精するのを利用しているんだそうですが、この場合は設備などに大変お金がかかります)

 

アメリカでトウモロコシから始まった細胞質(ミトコンドリア)雄性不稔利用のF1作りは、その後、F1(ハイブリッド/一代雑種)野菜ブームとなった日本で、次から次へと様々な野菜の育種に利用されるようになりました。雄性不稔技術を使い、タマネギやニンジンで、日本初のF1野菜が生まれたのは、すでに40年以上前のことです。そして、その流れは止まることなく、それまで別の技術でF1を作ってきた、ダイコン、キャベツなどのアブラナ科や、ピーマン、トマトなどのナス科野菜にまで、雄性不稔利用が実用化されるようになりました。今や、日本の大手種苗メーカーにとって、市場を支配するほど大量に売れる野菜のタネを生産する方法論として、何ものにも代えがたい利用価値のあるF1生産技術となっているのです。