里の家ファーム

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たねの話7

2012年01月26日 | 野菜・花・植物

雄性不稔や男性原因の不妊がなぜ起るのかというと、植物でも動物でも、細胞内のミトコンドリアという器官にある遺伝子が、傷つき、変異するのが原因のようです。(このため細胞の核の中にある通常の遺伝子による不妊症と区別して、わざわざ「細胞""雄性不稔」と言います)最近の新聞報道で、「男性不妊の原因がミトコンドリアの変異によるものと解明された」と筑波大学が発表しましたが、当然、植物の雄性不稔の原因も、ミトコンドリア内の遺伝子の変異が原因でしょう。

  複数の親をかけ合わせて作るF1作りには、花の構造の違いにより、複数の手法がありますが、根本はひとつ。どうしたら同系統の品種の花粉では受粉せず、異なる系統の花粉によって受粉させることができるかという技術です。つまり、同系統の雄しべを雌しべから取り除く「除雄」という操作か、さもなくば、雄しべの花粉の力を無力にする、自家不和合性や雄性不稔といった、生命が本来持っている生殖能力を失わせる技術です。

 開花前の蕾を開き、雄しべを取り除く人工交配技術は、最も原始的な方法で、戦前(1924)の日本で、ナスによって初めて成功したのが、世界初のF1野菜でした。日本では続けて西瓜、胡瓜、トマトなどで人工交配技術を確立し、同じ頃アメリカでは、トウモロコシの雄花を開花前に刈り取り、近くに必要な雄花の品種を植えておくという、風媒花の特性を生かした人工交配が行われていました。

 やがて日本ではアブラナ科野菜が持つ自家不和合性という性質を利用した交配技術が確立し、アメリカでは、細胞質雄性不稔というミトコンドリア内の遺伝子の欠陥を利用した交配技術が生まれました。

 雄性不稔という生殖能力に欠陥がある個体を使ったF1作りは、その後人参、玉葱などに拡大し、今では日本のお家芸だった自家不和合性利用に代わって、アブラナ科の大根などにまで拡大し、F1野菜採種技術の基本となりつつあります。経済効率が最も高いというのがその理由ですが、反面、無精子症などに相当する親や、その性質を維持するのに必要な系統を見つけるのに偶然に頼るほか無いのを嫌い、最近は遺伝子組み換えで他の植物の雄性不稔因子を組み込もうとする動きもあります。