読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

かつて作った個人雑誌を久しぶりに見て「原点に戻ってみよう」と思った話

2020-09-02 21:22:00 | よもやまのお噂
探しものがあったのでクローゼットを引っ掻き回していると、懐かしさとともに、ちょっと恥ずかしい感じもする物件が出てきました。
いまから十数年前に作っていた個人雑誌、であります。ああそういえば、こういうモノ好きなことやってたなあ・・・という感慨とともに、読み返してみました。


これらの個人雑誌は、本と出版のことをメインにしつつ、広い意味での文化とその周辺についてあれこれ語ろうという目的で作っていたものでした。
自分が読んだ本の中からオススメしたいものを紹介したり、ひとつのテーマに沿っていろいろな本を取り上げる特集を組んだりしたほか、地元宮崎で毎年開催されている「宮崎映画祭」のレポートを書いたりもしました。また、地元サッカーチームの栄枯盛衰を綴った連載や、ハワイに1年間ステイした経験談を語った連載も載せました。できあがると、それを友人知人に配ったりしていたものです。
書く道具こそパソコンでしたが、それをプリントアウトしたやつをもとにして誌面を構成し、「版下」ができあがるとそれをコピーして、コピーしたものをページ順に積み重ねてホチキスで綴じ、表紙と裏表紙をくっつけて完成させる・・・という、まことに原始的かつ稚拙な作り方でありました。そりゃもう「ZINE」などと呼ぶのも憚られるようなシロモノで(笑)。コンスタントに作って出すつもりでしたが、稚拙ながらも手間だけはやたらかかったこともあり、1年に1冊ずつ、全部で4号出しただけで終わってしまいました。
ですが、親しい友人や知人から寄稿してもらったりもして、それらを(稚拙なカタチとはいえ)雑誌という形でまとめるという作業は実に楽しいものでした。当時のことを思い返しても、一冊作り上げるごとに大きな充実感を覚えていたものです(当時、寄稿してくださった方々には、この場をお借りしてあらためて感謝の意を表したいと思います)。

かなり久しぶりにこれらの個人雑誌を読み返して思ったのは・・・自分で言うのもなんなのですが、
「この頃のオレ、いまのオレよりずっと面白い文章書いてたじゃん」
ということでありました。
個人雑誌を作っていた当時のわたしは、思いのほか自由に、のびのびと文章を書いているように見えました。不特定多数に対してではなく、ごくごく限られた方々に向けて出していたという気易さもあってか、けっこう辛口の物言いや皮肉を飛ばしていたりします(とはいえ、現在の視点でそういう部分を見ると、オノレの独断と偏見ぶりに冷や汗が出る思いもするのですが)。
それ以上に、取り上げる題材によって語り口や書き方に変化をつけたりしているところに、乏しいながらも自分なりに面白く読んでもらうための工夫というものをしていたなあ、という感じがします。ひとつの題材についてじっくりと熱をこめて語る、力の入った長めの文章もあれば、気楽に読んでもらうための短めのコラム記事があったり。
中には、自分とは別の架空の人物を想定し、その人物の語り口を借りて本の紹介をする、などという「奇策」を弄したりもしています(というわけで、以下の2枚の画像にある人物はいずれも実在せず、書いたのはわたし自身であります)。



まあ、こういう「奇策」が功を奏していたかどうかとなると微妙ではございますが・・・少なくとも自分なりの「遊びごころ」というものだけは感じられるように思いました。
「遊びごころ」といえば、これら個人雑誌には身近な人をネタにした冗談記事もあれば、お遊びで入れた「広告」が随所にあったりもいたします。それら「広告」の多くは架空の出版物のもので、例えばこんな感じ(一部画像を加工)。


ちなみに、上に掲げたオピニオン誌「精論」(もし似たような雑誌があったとしても、それは単なる偶然にすぎませぬ・・・笑)の広告は、個人的にはわりとお気に入りだったりもするのですが・・・こうしてあらためて見ると、時代の流れというものをいろいろと感じざるを得ませんな(苦笑)。

ひるがえって、いまのわたしが書くもの(とりわけ、当ブログにおける文章)を見ると、どうものびのびとした遊びごころが欠けていて、自分でも一本調子だなあと思うような書き方のものが多くなっている感じがいたします。
限られた人たちしか見ない個人雑誌とは違い、不特定多数の人たちから見られる可能性がある、このようなブログという場においては、良くも悪くも書き方に気を遣わざるを得ないということが、ひとつの理由でしょう。ですが、それ以上に「ちゃんとした文章を書かなくっちゃ」と思うあまりに、書くときに必要以上に力が入りすぎて文章が長めなものとなったり、語り口も一本調子なものになってしまっているように思えるのです。
もちろん、不特定多数に向けて発信する以上、行き過ぎが生じないように書き方に気を遣うのは当然のことでしょう。また、力の入った長めのレビューを熱をこめて書くことも大事だとは思います。ですが、あまり肩に力を入れて書こうとすることで書くことを楽しめなくなってしまい、ヘタをすると書くことが億劫に感じられてしまうようになるというのも、また事実なのであります。当ブログの更新ペースが、開設当初に比べるとかなり減ってしまっている原因は、そういうところにもあるように思えるのです。

2013年の1月に当ブログを開設したときの最初の記事で、わたしは当ブログの基本コンセプトを「読んでくださる皆さまに、いろんなことをシェアできるようなブログ」とした上で、こんなことを申し上げています。

時には重い話題を取り上げることがあっても、全体としては気軽に楽しく読んでいただけるような、雑誌のようなブログにしていきたい」

これを記したとき、わたしの念頭にあったのが、ほかならぬかつての個人雑誌のことでした。そう、当ブログ自体が、かつてやっていた個人雑誌の延長線上にあった、というわけなのです。
されば、書物や出版に関する記事をメインに据えるという方向性は堅持しつつも、もっと自分の多様な関心事を盛り込んでいくようにしてもいいではないか。力の入った長めのレビューを時々は書きながらも、気楽に書けてサッと読んでいただけるような短めの記事もちょこちょこと書きようにしてもいいではないか。そして、不特定多数に向けての発信ということをわきまえつつ、ときには毒やお遊びを盛りこむことがあってもいいのではないか・・・。
というわけで、かつて個人雑誌をつくっていた頃の原点に戻って、あまり肩に力を入れすぎずに、書くことを楽しみながらのびのびとブログをやっていくことにしたいと思います。・・・てなことを申し上げているこの文章じたい、やはりどこか力が入り気味なのは否めないのですが(苦笑)。

でも、気が向いたらまたいつか、手作りの個人雑誌のほうもつくってみたいなあ・・・。

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