一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

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筋交いの入れ方間違い

2008年04月21日 13時26分31秒 | 住宅検査・トラブル相談
みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

本日の朝に、第三者検査を依頼されている建売住宅の確認に行きました。

工事中ですが、構造体の検査のときに、筋交いの入れ方が
2階で1本おかしいところがありました。

設計図書を見せてもらうと、設計通りで間違いはありませんでした。

建築基準法でも、公庫基準でも、性能表示制度と照らし合わせても、
明文化されていないので問題にはならないのですが、
構造を良く知っている者にとっては、有り得ない入れ方でした。

第三者検査で、設計についてクレームを付けるには、
明文化された客観的な根拠が必要ですが、それはありません。


「構造を考えれば常識です」という指摘の方法では、相手を怒らせ、
明文化された根拠を示せ!と対立してしまうこともあります。


現場監督は好意的なので、「この入れ方はどう考えても、何かの間違いだと思うの
で、設計担当者に聞いてみてください。今なら、簡単に入れ替えができますから。」

とお願いをしました。

後日の返答は、「指摘された入れ方の方が良かったかもしれませんが、
どちらでも問題ありません。」との回答でした。


「木造の筋交いの入れ方を、大学の建築でも教えないし、何かテキストに書いてい
るわけでもない。」と嘆いた専門家がいましたが、現在の大工さんは指示をされた
通りしないと叱られますし、現場監督も同じです。

建売で設計変更は一切無いという条件と、私は着工後に検査依頼を受け、
構造体の図面も検査当日に見せてもらったので、事前に指摘できませんでした。

一度工事を行ってしまったのを、手直しさせるには客観的な根拠が必要です。


そこで、止むを得ず、再度現場監督にお願いをしてみました。

「設計担当者の考えは、どちらでも構わないということですが、構造を知っていれ
ば、この入れ方は選択しません。おかしいですよ。申し訳ないですが、設計担当者
ではなく、貴社として本当にこれで良いと思っているのか、再検討してくれませんか?
貴社としての結論が、そういうことならば、責任を取られるのは貴社です。
第三者検査の立場で、手直しの強制はしませんが、写真と報告書は作成しますよ。」


と伝えました。手直しするための期間は、まだありましたので、ここまで言えば、
この監督なら何とかしてくれるかも?という期待はありました。

幸い現場監督や大工さんとのコミュニケーションはスムーズに行ってました。

そして「手直ししますから完了の確認をして下さい。」と連絡があったので、
本日の朝、見に行ったのです。



私が設計監理していれば、設計をしたのも私ですし、
当然その場で職人に直接指摘して手直しさせますが、第三者検査の立場では、
そういう権限はありません。

でも、図面には明確に記入しますので、
こんな間違いは、設計段階から有り得ませんが。

現場監督に伝え、承諾をもらって手直ししてもらうことになります。

工事品質だけの問題であれば、現場監督とのやり取りになりますが、
設計絡みでは、現場監督も勝手には変更できませんから、
こういう面倒なやりとりになります。


この筋交いの正しい入れ方を知らない建築士は珍しくありません。
年配の大工さんでも図面があれば図面通りに入れます。

以前、やはり第三者検査に入ったハウスメーカーの現場で、

筋交いの入れ方が、2階全部で間違っている現場がありました。

指摘しても、年配の大工さんや現場監督、設計担当とその上司まで現場に来てもら
って話をしましたが、誰もなぜ間違っているのかわからなかったのには、
驚きました。

しかも、性能表示制度を利用していて、構造体の検査も合格しているのです。

私はさらに驚いて、その検査機関の名前と担当者の名前を確認させてもらいました。
名刺のコピーまでくれたので、確かだったのです。

性能表示制度で合格しているのであれば、その申請図面見せて欲しいとリクエストしたところ、

筋交いの図面も出てきました。

この設計図書には、筋交いは現場とは異なり正しい向きで記入されていました。

それで、やっとやり直してもらうよう強く要求できたのですが、

図面を見るまでもなく、現場を見た瞬間に間違いとわかる入れ方をして、
年配の大工さんも、たくさんいる担当者も、性能表示の検査員も誰も気付かずOK
してしまうことに、私は驚きを隠せませんでした。

1箇所ではなく、2階のすべてです。見た瞬間にわかる間違いでした。


ということで、今後は、第三者検査の依頼を受けるときは、スタート時に筋交いに
ついても書面を事前に提出してもらい、チェックすることにしたいと思います。


現時点の建築確認申請では、筋交い計算書や向きに関しての書面は必要とされてい
ませんので、新築木造2階建てに関しては、それらの図面やチェックが無くても、
堂々と完成して引き渡されています。

間違いが無くなると良いのですが、現場で気付く人が少ない現状ではと
完全に良くなるかどうかはわかりません。



住宅 設計監理 ミタス一級建築士事務所

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