一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

耐震性に優れている?(2)

2008年12月05日 16時13分24秒 | お勧め(建築編)
▲この柱には、ホールダウン金物 が2つ付いています。

通常の2階建てで、1本の柱に2つ付けなけれなならないということは、
ミタス一級建築士事務所では、構造計画を軽視した結果だと考えています。

但し、3階建てや特殊な形状で止むを得ない場合は有り得ます。


みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

本日、2回目の連続もののアップです。

本日初めての方は、耐震性に優れている? その1 からお読み下さい。

実際の例でお話しましょう。


フラット35を申し込まれた方がいらっしゃいました。
理由は固定金利の安心感ですが、この内容との比較で考えてみます。

フラット35では、耐震面での申請をするには
性能表示制度の耐震等級2以上となっています。

この前のブログで説明したように、この等級2以上というのは、
建築基準法の1.25倍ですが、

実際は建築基準法の耐力壁をクリヤーしていればほとんど同程度の
数値になります。

性能表示の場合は、その他にも水平面の床倍率などいくつか
チェック項目がありますが、

私がこの方の設計をした住宅は、

建築基準法での計算で壁量安全率が1.9倍~2.9倍あります。
1階と2階、それぞれ4方向で確認をしますので、それぞれ数値は
違います。この中で一番小さい値、1.9倍をとります。

この建物を住宅性能表示制度の耐震等級の計算方法で計算すると
2倍を軽く超えます。ちなみに耐震等級3は、1.5倍です。

耐震等級は最高3までしかありませんが、
敢えて等級をつくると、これは耐震等級5相当になるでしょう。



2階がリビングの方のプランですが、この場合での私の設計は
だいたいこの程度の強さになります。

1階がリビングの方の場合は、もう少し小さな値になりますが、
等級3がどうのこうのというレベルは、当然クリアーしています。

構造的には、2階リビングの方が強いとお勧めしている根拠の
ひとつです。

また、全体の強さだけでなく、壁のバランスの問題があります。
これは、偏心率という数値を計算してあれば、それを確認します。

木造2階建てでは、その数値が0.3以下であればOKとされていますが、
ミタス一級建築士事務所では、0.15以下としています。



この方の場合は、0.06、0.14、0.08、0.12と全く問題のない優良バランスです。

さらに、このように壁量を多くしますと、逆に柱に大きな引抜力が掛かってしまう
ことがよくあります。

これもチェックしてバランスを取ります。木造2階建てで同じ柱に
ホールダウン金物が2箇所必要とならないようにするのです。

このブログの最初に載せた写真のような例を避けるのです。


これらのチェックは、スタッフが自分で考えて入力した後、私がチェックし
スタッフに指示をして、すべてのバランスを数値と図面を観ながら
修正していきます。

価格は高いですが、このためのソフトを購入してチェックしていますので、
簡単にすべての計算ができます。

操作はスタッフがしますが、どこをどうするかは、すべて私が指示をしています。

画面と数値を観ながら、どこをどうすればさらに良くなるか、構造の計算を
知っているというレベルではなく、その意味を良く理解していなければ
指示はできません。


プランの段階で、これらの耐震を考慮しながら作成していますので、
このような数値に無理なくもっていけるのです。
当然、構造ブロックや直下率も考えながらプランします。

建売や注文住宅さえも、こういうことを考えないで作ったプランですと
いくら後から調整しても苦労するだけでなく、

ここまでの数値やバランスを求めるのは無理でしょう。


性能表示制度で確認する床倍率も、28ミリの構造用合板を剛床として
一律採用していますし、吹き抜けなどにも化粧火打ちを入れて、
見映えより構造面を重視しています。

リビングなどの大きな吹き抜けの梁についても、ジョイント部分を
考慮し、台風時に風圧で梁が横にたわまないかどうか、通常必要のない
その部分の構造計算を行ってチェックしています。

また、その梁のサイズも、安全を考えながら大きものになっています。

というように、少なくとも耐震面や構造面などではフラット35や住宅性能表示
の最高レベルよりよりはるかに高いレベルで、もともと当たり前のように
設計して監理をしてます。

わざわざ低いレベルの規定に合わせてお伺いを立てる書類を作成することに
私の貴重な時間を使いたくない、

余計な設計上の足かせをわざわざ、はめたくないという気持ちがあるので、
積極的にやっていないのです。

もちろん、余分に費用を支払うからそれでもお願いしたいという
場合は、行っています。



本日は、ややこしくて長い文章になってしまいました!
理解できましたでしょうか…?

わかりませんよね…。(^^)ゞ


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耐震性に優れている?

2008年12月05日 15時39分52秒 | お勧め(建築編)
▲屋根の垂木と呼ばれる部分、通常の1.4倍~2倍程度の部材を標準にしています。
理由は、屋根面の強度、水平面の強さ、断熱材の厚さを考えてのことです。
地震だけでなく、温暖化による大型台風の増加考慮に入れています。


みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

さて、先日の続きです。構造面の心配相談…


最初に誤解の無いように申しあげておきますと、

住宅性能表示制度やフラット35は、良いシステムだと思いますし、
日本の住宅産業のレベルアップには役立つシステムだと思っています。

でも、なぜ私が積極的に、これらをあまり使わないかを説明しましょう。

私は住宅性能表示制度が最初にスタートするとき、
その設計や工事をチェックする立場の評価員の資格を取得しています。
制度の内容や中味を連続4日間の講習と試験で詳しく理解しました。

そのときの私の感想は、

・低レベルの建物を無くすためには確かに良いし、第三者の保証が付くのも良い。

・中味は、あるレベル以上であれば必要のないものばかりだ

・意味の無い書類作成などに私の時間を費やしたくない。

・頼まれたら50万円もらっても、本来はやりたくない。
(コンピューターのソフトを購入すれば、簡単にできるようですが)

・これに費用を余分に掛けるくらいなら、その費用をアップグレードに廻した方が良い。

・制度の内容を良く見せるために、中味が無いのに無理やり項目を増やし等級を付けたものがある。

というような感想と、大きな声ではいいませんが、
これはハウスメーカーの工務店潰しの陰謀では?(笑)

というようなことです。

ちょっと過激な発言ですね…(^^)ゞ
これは、冗談ですから、本気にしないで下さいね。


おかしいと思える分かり易い例では、

住宅性能表示制度の耐震等級2は、建築基準法の1.25倍の強さという定義になっています。
ですが、性能表示制度の計算方法は建築基準法の計算にさらに加算して数値を出します。

この計算方法では、プランによって変わりますが、
耐震壁の壁量は0.1~0.3くらい加算されます。
これは、どういうことかといいますと、

建築基準法でギリギリの数値であっても、住宅性能表示制度で計算すると
1.25倍と定義している耐震等級2になってしまうことも珍しくないということです。

もしくは、建築基準法を満たしていない物件でも計算上は耐震等級2に
なってしまうこともあり得ます。

こんな矛盾した内容で、低いレベルを満たすために私は設計や監理をしていませんから、
そのために私の時間を費やし、予算の無い中、施主の予算を割いてやりたいとは思わないのです。

しかも、設計上、足かせになって邪魔になってしまうこともあるのです。

住宅の設計は、総合的に考えて選択をしていくものです。
個別に選択していくものではありません。

個別に一律の規制があると、その制約のために良い設計にできない場合があります。
低いレベルを規制するにいは良くても、全体で考えてより良くするために
邪魔になることがあります。

例えば、基礎の立ち上がりの高さは地盤から40センチ以上必要という規制があります。
これはこれで、防湿面や基礎の強度面を考えてのことですから、意味はわかります。

しかし、防湿面で問題の無いベタ基礎にして、立ち上が部分の強度を規定よりはるかに強くしても
この規制ははずれません。その規制をする理由を充分クリアーしていても
一律の判断ができないと、判定する側が面倒になるからです。

ところが、敷地が小さく斜線が厳しい条件の場合も多いですから、
室内の天井をあと10センチ余分に確保できれば、ロフトや2階などの
使い方が飛躍的によくなる、

という場合には、この一律の規制が邪魔になります。
強度、湿気、メンテナンスなどの面をすべて規定以上に性能ではクリアーしていても
ダメなのです。


歯医者さんの治療で、保険治療の範囲で行うとあまり良い治療方法を選択できない
ということは聞きますね。でも、保険が使えない場合は値段が高くなりますから、
どちらが良いかはその人次第です。

ですが、費用と手間を掛けて、わざわざ良い選択肢も含めて使えないように
自ら規制してしまう可能性があるのが、フラット35や
住宅性能表示制度の等級指定だというのが私の考え方にあります。

もちろん、設計や監理がそれ以上のレベルを保っているという自負があるからで、
わけのわからないところに設計や工事をお願いするなら、

一般的には、これを利用したほうが第三者が入るので安心ですよと、
矛盾したことを言うのは、最初の文章をお読みになりご理解下さい。

現在は、第三者の保証は住宅性能表示制度を利用しなくても、
もっと安く付けられますから、これだけは付けるようお勧めしています。


先日の方での実例で、もう少し説明しましょう。

長くなったので、本日2回目のブログへ続く!




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