時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮がミサイルを飛ばしてくると騒いでいるけれど・・・

2016-01-31 00:00:06 | 北朝鮮
数日前から北朝鮮がミサイル実験を行うというデマを米韓日が飛ばしているが、
こういう動きは核実験と人工衛星の発射の違いを理解していないからこそ出来るのだと思う。

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日本が迎撃ミサイルを配備

日本が防衛省に迎撃ミサイルを配備しました。                                 

AP通信によりますと、防衛省は、北朝鮮のミサイル発射準備の兆候が現われたことで、
29日金曜、防衛省に迎撃ミサイルを配備しました。

日本の消息筋2名は匿名で、記者団に対し、
「北朝鮮のミサイル施設での活動の活発化は、おそらく来週以降、
 北朝鮮がミサイル実験を行う可能性があることを示している」と述べました。

これらの消息筋はこのミサイル実験に備え、
自衛隊が完全な警戒態勢にあることを明らかにしました。


防衛省はさらに、日本海に展開しているイージス艦に対して、
北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃できるようにするための破壊措置命令を出しています。

日本のイージス艦は、複数の標的を同時に追跡、破壊することができ、
SM-3迎撃ミサイルを搭載しており、核弾頭を破壊するために設計、製造されています。

日本は東京近郊にも、PAC3を配備しており、北朝鮮のミサイル攻撃の可能性に備えています。

北朝鮮の4回目の核実験後、東アジアでの緊張が再度激化しています。
北朝鮮は1月6日、水爆実験に成功したと発表しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61909
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北朝鮮に限ったことではないが、核実験と人工衛星発射は目的が全く異なる。

前者の場合、自国の軍事力および科学力の示威のために行うが、
後者は、より実用的な理由(例えば気象の予測)で行われる。



北朝鮮の場合、核実験は
国外に向けては、
軍事演習や経済制裁に固執し、平和条約締結を望まないアメリカに対する不満の意思であり、
国内に向けては、
核の威力を見せることで、核を基軸とする防衛に切り替え、
 余剰軍費を経済発展のためのものへと転化させる
という意思を示す。

他方で、人工衛星発射は、気象観測のために行われる。

金正恩政権以降、同国の農業は従来の集団形式を改め、より少人数のグループを単位とし、
各々に経営の自由を与え、余剰農産物は各自が好きに売却してもよいとする制度へと代わった。

この部分的な自由主義・至上主義の認可が功を奏し、また科学技術の発展もあいまって、
旱魃などの天災が起きたにも関わらず、北朝鮮の農産物の生産高は年々向上している。

北朝鮮の食糧事情は現在、国際連合食糧農業機関(FAO)の食糧支援とあわせれば、
国民を養っていけるレベルにまで回復しており、逆を言えばこの点を指摘しない人間は
意図的に事実を歪曲しようとしているか、単に無知かのどちらかだと言えよう。

とはいえ、都市・農村部の格差も踏まえれば未だ問題点の一つとなっており、
そのため、より効率的な生産技術・品種改良、加えて精度の高い気象観測が求められている。

この気象観測のために、当然ながら気象衛星の打ち上げが必然になってくる。
2012年12月に北朝鮮が気象衛星「光明星3号」を発射したのは、そのような事情があるためだった。

この発射は国外のオブザーバーを招き行われ、NASAも「発射されたのは人工衛星」と認め、
その後、国連宇宙事務所(UNOOSA)にも公式に人工衛星として登録された。

この間、日本のメディアは先端に核を搭載することも可能であることを理由に、
最後までロケットとは認めず、「事実上のミサイル」とみなして発射を非難した。
(ちなみに日本も2013年に「事実上のミサイル」を飛ばしている)

米韓日の反発は激烈で、これに対する応酬として北朝鮮は2013年2月に核実験を実行した。

つまり、「衛星を核に換えればミサイルになる。ゆえに、これはロケットではない」という
理屈で攻撃してきたことに対しての非難の意思をこめた反撃が2013年の核実験であり、
順序としては人工衛星の発射→核実験となっている。


今回の場合は、水爆実験が先であり、また人工衛星の発射は北朝鮮国にとって、
自国の科学技術の向上を確認する一大イベントであり、事前に大々的に宣伝されるため、
「事実上のミサイル」が発射される可能性は極めて低い。

「ミサイル実験と核実験は常にセットで行われてきた。だから今回もある」と語る論者は、
 これまでの経緯を完全に忘れているか、意図的に脅威を煽っているかのどちらかだと言えよう。

ただし、人工衛星の発射はないと断言できるが、文字通りの弾道ミサイルなら可能性はある。
まだ1年も経っていない2015年5月8日には潜水艦弾道ミサイルの水中発射実験を行い、成功させた。

この時、金正恩は「人工衛星の打ち上げに劣らない驚異的な成果である」、
「潜水艦弾道ミサイルの発射技術が完成したことで、敵対勢力を任意の水域で攻撃できる
 世界的水準の戦略兵器を持つことになり、自在に水中作戦を行えるようになった」と述べた。

このように、人工衛星の打ち上げと通常の弾道ミサイル実験は別物として認識されている。

前回の弾道ミサイル実験は米韓軍事演習の中止の呼びかけに応じず、
演習を続行したことに対する抗議として発射されたものだった。


今回、米韓は戦闘機の配置は行っているが演習までには至っていない。
よって、この線も薄いと言わざるを得ない。


百歩譲って、現在、下されようとしている追加制裁に対する抗議として
発射されるかもしれないが、個人的にこれは疑心暗鬼というものだと思う。
テロが起きるかもしれないという理由で完全武装して街中を歩くようなものだ)

気象観測が必要不可欠である以上、北朝鮮は今後も衛星の発射を止めることはない。
しかし、それは今すぐ発射されるわけではない。
また、通常のミサイルの場合も実験目的であるならば日本の領海に着弾することはない。


日本のメディアの場合、人工衛星も通常のミサイルも全て「弾道ミサイル」と表現するので、
政府が今、何に対して防衛態勢をとっているのかがいまいちハッキリしない。
(「事実上のミサイル」に対する防衛なのか通常のミサイル実験に対する防衛なのか)

実際に攻撃の意図をこめて発射してくると捉えているのか、
それともあくまで実験にすぎない飛来物を勝手に撃ち落すつもりでいるのかもわからない。

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沖縄の嘉手納基地にアメリカの戦闘機26機が配備

アメリカ国防総省が、沖縄県のアメリカ軍嘉手納基地に
26機の戦闘機が派遣されたことを明らかにしました。

ロシアトゥデイによりますと、アメリカ空軍は、F16戦闘機12機と、
最新鋭ステルス戦闘機F22、14機が、今月末まで嘉手納基地に留まると発表しました。

これらの戦闘機の配備は、北朝鮮の核実験を巡る緊張が高まっている中で行われています。
これらの戦闘機の配備は、アメリカの日本を防衛する力をはかるための訓練の一部だと言われています。

沖縄の住民は、アメリカ軍の駐留に反対しています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61894-
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実際に撃ってくるというよりは、それを仮定した上での訓練、
およびその結果による北朝鮮への威嚇が今回の目的であると私は捉えている。


日本の報道は、例えるならば、自衛隊が避難訓練をしている様子を見て、
「火事が起きたぞ!こっちにも火が移るぞ!」と馬鹿騒ぎしているようなものだと感じる。

上の記事を読んでもわかるように、
北朝鮮への威嚇と米軍基地問題は連動している。

米軍基地の国外移設を訴える一方で、北朝鮮の脅威を煽るのは矛盾しているのだが、
こういう態度を取る左翼は恐らく、全体の半数以上いるのではないかと思う。

ロシア外相であるラブロフ氏は、「北朝鮮抜きで5カ国協議を行う」という
韓国のパク・クネの提案に対して、「北朝鮮を孤立させるのは、よい提案ではない」と答えた。

ラブロフ外務大臣はまた、
「この協議の目的とは、北朝鮮がどのような核兵器をもたないということを
 確信することではなく、朝鮮半島の非核化を確信することだ」とも述べた。

こういう強硬姿勢を諌める意見を表明しても良いものだと思うのだが……

浅井基文氏の朝鮮半島論 (北朝鮮の水爆実験に対して)

2016-01-29 00:25:16 | 北朝鮮
朝鮮新報というメディアは総連傘下のメディアだけあって、
日本のメディアが天皇のフィリピン訪問を敬語で報道するように、
金正恩に対しては敬語を使い、やたらと北朝鮮を称えるわけではあるが、
それゆえに日本のメディアとは違った視点で国際ニュースが分析されている。

「天皇皇后両陛下は、26日午後、フィリピンの首都マニラの国際空港に到着し、
 親善訪問のスタートを切られました。

 両陛下は、現地時間の午後2時45分、マニラの国際空港に到着されました。
 両陛下のフィリピン訪問は昭和37年以来54年ぶりで、
 両陛下は、タラップを降りると、出迎えたアキノ大統領や姉のアベリャダさんと、
 にこやかに握手をしてことばを交わされました。
 そして、天皇陛下の首に白いレイがかけられ、皇后さまには黄色の花束が贈られました。

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160126/k10010386411000.html」

上のような記事が堂々と書かれている現状、朝鮮新報が日本のメディアより異常だとは思わない。
(アメリカを主軸とした日本・フィリピン・アメリカ・韓国の軍事同盟の強化が展開される今、
 このような訪問の裏にある政治的動機について一言ぐらいコメントしても良いはずでは?)



さて、元外務省の役人で、東大、日大、明治学院大等で教鞭をふるった浅井基文氏が
先の北朝鮮の水爆実験とそれに関連する米韓日の動きについて朝鮮新報に持論を寄稿した。

朝鮮新報はハッカー対策のために登録制となっており、無登録者には読むことが出来ない。
これは、少々残念なことなので、以下に同氏の論説を紹介したいと思う。

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朝鮮の水爆実験と半島情勢/浅井基文

米国の頑なな朝鮮政策に風穴を


○国際社会へのメッセージ

誰もが驚いた朝鮮の1月6日の水爆実験だったが、朝鮮が実験に踏み切ったのは、
米国が朝鮮の新提案を無視した結果
というのが、「8月事態」後の経緯を追った私の結論だ。

8月事態とは、昨年8月4日に起こった地雷爆発による
韓国兵士の負傷事件をきっかけに一触即発の対決が起こり、
北南の最高位接触によって辛うじて危機を乗り越えた一連の事態に対する朝鮮の呼称だ。

朝鮮が8月事態の教訓を如何に重視しているかは、李洙墉外相の10月1日の国連総会演説に明らかだ。

同外相は、
「8月の事態は国連と非正常な関係にある朝鮮半島に現存する平和が
 どれほど脆弱であるかを明らかにした」と指摘し、
「停戦協定を平和協定に替えることは、一刻の猶予も許さない切実な問題となった」として、
米国が停戦協定を平和協定に替えることに同意するならば、
 わが国政府は朝鮮半島で戦争と衝突を防止するための建設的な対話を行う用意ができている

と提案した。その後朝鮮は、11月末まで米国に提案をくり返した。

しかし、米国は朝鮮の提案を完全に無視した(8月事態の教訓を得たはずの韓国は米国の意のままだ)。
これに対し、昨年12月24日付朝鮮中央通信は、2015年の朝鮮半島情勢詳報を発表し、
最後に「米国が対朝鮮敵視政策を撤回せず、あくまでも『北朝鮮崩壊』という妄想の道を選択するなら、
それに対するわれわれの応えは米国の想像を絶するものになる
」と警告した。

その「応え」が1月6日の水爆実験だった。

米国が朝鮮の提案に応じていれば、朝鮮が実験を行うことはなかった。
これが、朝鮮の米国及び国際社会に対する最大のメッセージだ。


つまり、朝鮮の核開発にストップがかかるかどうかはひとえに米国の対朝鮮政策如何ということだ。

対米直接交渉に的を絞る朝鮮は、
「われわれは過去…6者会談で非核化の論議を先に行ってみた…が…失敗を免れなかった」
(昨年10月18日付朝鮮外務省声明)として、6者会談を見限る姿勢も示している。

○外交的解決求める

中露両国政府は、朝鮮の水爆実験を安保理決議違反と批判している。
しかし、強硬対応を主張する米韓日に対しては、
関係諸国の自制を強調し、6者会談による外交的解決を呼びかける共同歩調だ


中露が慎重姿勢を堅持しているのは、8月事態の一触即発の危険性を深刻に認識したからと思われる。
朝鮮に対する先制攻撃を織り込んだ「米韓共同局地挑発作戦計画」の発表(13年)、
朝鮮半島有事に一つの照準を合わせた安倍政権による安保法制制定(15年)にも、
中露は警戒を強めているに違いない。

ただし、中国メディアで8月事態を正面から取り上げたものはなく、
また、中露両政府は6者協議再開を強く主張している。

○核問題解決に有害無益な日本

広島・長崎を体験した日本人の反核感情は根強い。

しかし、日米安保体制を肯定する多くの日本人は、
朝鮮の「核の脅威」に対して米国の「核の傘」を当然視もする。

その結果、朝鮮の核開発に対する拒否感は留まるところがない。

しかも日本人は安全保障問題については大勢迎合の傾向が強い。
したがって日本は、朝鮮の核問題に建設的役割を担う主体的能力はゼロだ。

米日韓は朝鮮の非核化だけを問題にする。しかし、6者協議の主題は朝鮮半島の非核化だ。
つまり、朝鮮の非核化と米国の韓国に対する「核の傘」提供の撤回がセットだ。


これを実現するためには、米日韓と朝鮮との間の相互不信除去が不可欠だ。
朝鮮の10月以来の対米提案は、「平和協定締結→相互信頼確立→半島非核化」を目指す。
これに対して6者協議は、「約束対約束、行動対行動」の原則に従い、
「非核化に向けた約束相互履行→相互信頼蓄積→朝鮮半島の平和と安定構築」を考える
(15年のイラン核問題に関する国際合意の事例)。

ただし、両者のアプローチが両立しないわけではない。
要は、頑なな米国の対朝鮮政策に風穴を開けることであり、
半島情勢打開のカギはここにある(16年は米大統領選挙なので、事態が動くのは17年以後だろう)。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/20160128suk-2/
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北朝鮮を異常視し、右翼と大差ない反応を示す凡百の知識人のそれとはレベルそのものが違う評論。

浅井氏は多くの著作を書いており、どれも一読に値するが、誰でも読める&中身があるという点では、
2014年に大月書店から出版された『すっきりわかる!集団的自衛権Q&A』を推す。

集団的自衛権を国際政治に関連付けて語ろうとする本は多いようで少ない気がする。
私が再三主張している「中国・北朝鮮の脅威の不在」を主張している本は本書ぐらいである。

書名は軟派な響きを有しているが、中身はなかなか骨太で、加えて、
節ごとにポイントがまとめられているので、まとめ欄だけ読めば1~2日で読了が可能だ。

米仏、イランへの新たな制裁を検討中

2016-01-29 00:20:28 | 国際政治
イランと北朝鮮。この二カ国はいずれもブッシュ政権時代に
合衆国から「悪の枢軸国」と名指しで非難を受け、経済制裁の憂き目にあう。
イランは核兵器を持っているかもしれないという理由だけで随分と辛酸を舐めさせられたが、
外国との協調を重んじる現政権になって協議が進み、ついに制裁が解かれた。

制裁解除が順調に進んだ背景として、イランのエネルギー資源が重要な役割を果たしている。

イラン、欧州へのガス供給開始へ
イラン 欧州向け原油を値引き

イランはサウジアラビアやロシア、アメリカと比べれば
それほど多く石油を生産してはいないが、潜在する石油量はかなりのものだと思われる。

「あるのかないのかよくわからない核兵器のために石油ビジネスが停滞するくらいなら」
 という思惑が制裁国にあったのではないだろうか?(現在、欧州はロシアとの関係が悪化している)


お互い、利用し利用される形で決まった妥結だが、
これまでイランが受けた経済的被害を思えば、制裁国は英断を下したものと評価したい。
(実はこの制裁国の中には日本も含まれる)


ところが、ここ最近、再びイランに
新たな形で制裁を加えようとする動きが出ている。


米国 イランのミサイルプログラムに対して追加制裁

仏 ミサイル実験を受け、新たな対イラン制裁を提案

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フランス政府は、イランが最近実施したミサイル実験を受け、
EU指導部に対し、新たな対イラン制裁の発動について検討するよう提案した。
AP通信が28日、EUの匿名代表者2人の話として報じた。

EU代表者らによると、現在EUはフランスの提案を検討しているという。
なおEUの大多数の加盟国は、フランスの提案について、
対イラン制裁解除後のイランとの政治・経済関係構築にとって非生産的だと考えているという。

EU代表者らによると、
フランスは、対イラン制裁解除後まもなく開かれたEU外相理事会の会合で提案した。

なお同時にAP通信によると、匿名を希望する欧州の別の外交官は、会合で
この問題は話し合われなかったと指摘したという。一方で同外交官は、「フランスが
イランに対する新たな制裁の検討を提案しなかったか?」との問いに答えることは拒否したという。

またフランス政府も、AP通信へのコメントを拒否したという。
先にイランのロウハニ大統領は、イタリア訪問を終え、フランスへ向かった。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20160128/1508409.html#ixzz3yY3Uf1gm
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『現代思想』2016年1月臨時増刊号(中東問題に関心のある方は読むのを薦める)や
『経済』2016年2月号によると、シリアにむけての軍事干渉(武装組織への支援や空爆)は
 アメリカよりもフランスやイギリス、サウジアラビアのほうが積極的だったそうだ。

とはいえ、やはりアメリカの威嚇というものは凄まじいもので、次のような事件が起きている。

イラン当局 オマーン湾で米国空母を追い払う

 イランは、同国の海上軍事演習が行われているオマーン湾から、
 米国の空母を退去させるよう求めた。通信社タスニムが報じた。

 米国の空母は、演習が行われている領域までかなり接近したが、
 イランが警告をした後、すぐに同領域から去ったという。


 なおイラン海軍の司令部は、そのまま演習を続けたという。

 続きを読む http://jp.sputniknews.com/us/20160128/1503396.html#ixzz3yY5rJI71


日本に置き換えてみれば、沖縄なりどこなりで自衛隊が演習をしていると、
どこからともなく中国やロシアの軍艦が現れ近づいてきたような事件である。

どれだけ不気味な威嚇を行っているかは想像に難くないが、
これが北朝鮮の非核化にも悪影響を与えるという指摘がされている。

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ロシア科学アカデミー東洋学研究所コリア課のアレクサンドル・ヴォロンツォフ課長は、
ラジオ「スプートニク」のインタビューで、
北朝鮮指導部はイランの「核合意」を経験として捉えていると述べ、次のように語った


北朝鮮はイランの状況を注視している。
 
 制裁を解除した後でまたそれを元に戻すという、
 これほど矛盾した行為は、米国政府の約束を信じる根拠はないという
 北朝鮮指導部の確信を強めるだけであることに疑いはない。


これらの条件において、北朝鮮は平等な協議形式しか設けない可能性がある。
もし米国とその同盟国がそれに反対し、北朝鮮に力と抑えつけの制裁という立場で
対応していくだけならば、もちろん北朝鮮が、『米国は自分たちが必要だと考える政策を行えばよい。
我々は、核プログラム開発という手段も含め、自分たちの防衛力を全面的に強化する道を進み続ける』
という立場に確信を持ち続けることは大いにあり得る」。

~中略~

さらに「スプートニク」は、米国とその同盟国に、
北朝鮮の核問題解決に向けた制裁アプローチが無益であることを説得するためには、
どのような論拠が有効か?と質問した。ヴォロンツォフ課長は、次のような見方を表した‐

「中国とロシアは現在、
 まず当事者たちに協議を呼び掛けるなど、よりバランスの取れた文書にしようとしている。
 ロシアと中国は、北朝鮮の今回の核実験について、制裁は機能しておらず、
 北朝鮮の核プログラムの発展を止めることはできないことを証明しただけだと考えている。

 これで交渉に代わるものはないということが明らかとなった。
 一方で、まだ我々には、このような建設的な提案が、米日韓の賛同を得ると期待できる根拠はない。
 この3カ国は、最も強力な制裁の策定、軍事協力の強化、
 そして北朝鮮に対する軍事・政治的圧力の強化に夢中になっている
」。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20160128/1506800.html#ixzz3yY8UfAf3
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リビアもまた、欧米との対話により自国の非核化に努めたが、
その結果が空爆による国の消滅と内乱の勃発だった。


「核に関する制裁」を解除して「ミサイルに関する制裁」を開始する一連の動きは、
 北朝鮮の耳にも届いているはずだ。大国の不遜な態度は確実にアジアを不安定化させる。


あわせて考えたいのが、現在、中国にとって脅威なのは北朝鮮の核ではなく、
南シナ海や東シナ海における米韓日比の軍事的プレゼンスの拡大である
ということだ。

そして、韓国・日本・フィリピンいずれも現地の住民は米軍基地を望んでいないということだ。
現在、米軍基地の撤退を求める運動は別個に行われていて、いまいち団結に欠ける。

仮に「アジアからのアメリカ軍の排除」というものを第一目標とすれば、これら運動と
北朝鮮の非核化および米朝間の平和条約の締結を目指す動きを一本化することができるだろう。

ところが、現在、日米韓による中国や北朝鮮に対する封じ込めというものは
右翼だけでなく左翼も共有しているものであり、それゆえに強力な抵抗勢力が生まれていない。


(ウソだと思うなら、中国脅威論、北朝鮮脅威論に毅然と非難・抵抗する動きが
 どれだけ左翼の間にあるのか考えてみれば良い。少なくとも論壇ではそういう動きはない)

こういう弱さを克服するためには、
私は、やはり多くの左翼が認識している歴史観(世界観)の克服が必要だと思う。


①東西ドイツ統一や東欧諸国やソ連の社会主義の放棄を手放しに礼賛するような歴史観、
 あたかも「正義は勝つ。悪は負ける」と言わんばかりの歴史観から脱却すること、

②社会主義国家の消滅は西側国家とのパワー・ポリティクスに敗北しただけにすぎず、
 現地では民主化ではなく軍事・経済的属国化が起きたということ
(ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』などが参考になるはず)

③これら2点が強く意識されない現在、欧米諸国の中東・アジア・アフリカへの
 軍事・経済的干渉は基本的に無批判のまま実行されており、それゆえに
 ウクライナ政権の自国民への空爆やサウジアラビア軍のイエメン市民の虐殺が
 まるで問題視されず、逆に中国やイラン、北朝鮮などの「人権問題」の解決への努力が
 国内の保革団結(主流左翼の右傾化)の下、着々と行われる時代に突入している

という認識を持つべきだろう。

中国経済は本当に悪化しているのか?(格差問題を基軸に)

2016-01-26 23:59:06 | 中国(反共批判)
中国崩壊論・中国経済崩壊論は歴史を辿れば、1989年から存在する。

黄文雄『大予言 中国崩壊のシナリオを皮切りに』(1989年)
小室 直樹『中国共産党帝国の崩壊―呪われた五千年の末路』(1989年)
滝谷二郎『中国は崩壊する』(1990年)
征木 翔『トウ小平後、中国ビジネス大崩壊がやってくる』(1995年)
宮崎正弘『人民元大崩壊―中国発「世界連鎖恐慌」の衝撃』(1998年)
野口 能孝『中国金融崩壊―見せかけだけの経済成長と隠されている銀行破綻』(2003年)
宮崎 正弘『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』(2007年)
三橋 貴明『本当にヤバイ!中国経済』(2008年)

特徴的なのは右翼、それも極右の論者が多いことだが、
別に左翼が正確な知識を持っているかと言うとそのようなことはない。

例えば左翼系週刊誌として有名な週刊金曜日が評価していた近藤大介氏だが、
彼が2013年に書いた『日中再逆転』の紹介文は、こうなっている。

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テロの続発、シャドー・バンキングの破綻、
そして賄賂をなくすとGDPの3割が消失するというほどの汚職拡大……
中国バブルの崩壊は、2014年に必ず起こる!

日本人として、中国の指導者・経営者たちと
最も太いパイプを持つ著者の、25年にわたる取材の集大成!!

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ちなみにこの本の第5章のタイトルは「世界が絶賛する日本経済」
第6章は「中国が日本に勝てない4つの理由」である。


「笑え」と読者に訴えているのだろうか?

こういう人物の講演を左派系のアジア記者クラブが主催するのが現在の日本。


いかに右翼も左翼も中国を舐め切っているかがわかるだろう。


そういうわけなので、私は中国経済の情報は現地のメディアを中心に収集している。
専門家()に言わせれば中国の統計は信用が置けないらしいのだが、
連中こそ20年以上、中国経済について読みを外し続けていて、とてもじゃないが信用出来ない。


(一応、フォローすると中国経済の専門家全員が経済崩壊論を唱えているわけではない。
 むしろ、中国経済の成長力を初期段階から見抜いていた研究者も少なくない。

 単純に、そういう人物の主張をメディアが取り上げないだけにすぎない。
 (これには左翼系の月刊誌や週刊誌、専門雑誌、単行本なども含まれる)


 不思議なことに、論壇にでしゃばってくる左翼や右翼に限って、
 やたらと中国の言論の自由を問題視したがるが、連中こそ少数意見を端から取り上げない)

さて、最近、よく聞くのが中国の上海市場の動きを根拠に中国経済悪化を唱える意見だ。
例えば、立命館大学教授の松尾匡氏は、自分のホームページでこう評価している。

「中国経済がやばすぎで、日本経済に必ず悪影響が出るので、
 護憲派野党はぜひ、みんなが目の玉の飛び出るような大盤振る舞いを掲げて、
 安倍さんに打ち勝って下さい。」

直接、中国株について触れてはいないが、16年1月13日時点で「やばすぎ」と書くほどの
事件といえば、上海株式市場の事件ぐらいしかない。十中八九、間違いなかろう。


では、中国経済は本当に「やばい」のだろうか?結論から言えば、そうとは言い切れない。


というのも、社会の所得の格差を測る指標「ジニ係数」が2015年は0.462となり、
09年以来7年連続で低下し、また03年以降の最低を更新しているからである。



2015年、個人所得の前年比の成長率は名目で8.9%、実質で7.4%だった。
GDP成長率の低下は、個人所得の減少を意味するわけではないのである。


2015年の中国は雇用が全体として安定している。年度末の就業者数は7億7451万人で、
出稼ぎ労働者数は2億7747万人で1.3%増加、その平均月収は3072元で7.2%増加している


このように、全体的に雇用者が増え、一人当たりの給料も上がり、格差が解消されつつある。
ちなみに去年は政府の貧困政策が成功し、農村において7千万人以上が貧困から抜け出した。


7000万といっても、総人口が13億人なのだから大した数ではないが、
経済成長と引き換えに貧富の差が開いていた以前と比べて状態は改善されつつある。

これは中国共産党が実施した大企業CEOの給与制限や
年金制度の一本化、最低賃金の引き上げなどが効果を挙げたものだと思われる。

中国研究者は、このように格差縮小を評価しながら、なお「依然格差は激しい」と主張する。

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だが今なお社会の所得格差は小さくなく、
15年のジニ係数も世界的に認められた警戒ラインの0.4を上回った。

また一連のデータから、今でもほとんどの個人が「所得不足」であることがうかがえる。
西南財経大学の研究報告によれば、15年の世帯平均資産では不動産の占める割合が69.2%と高く、
中国の世帯資産は流動性が極端に低いことがわかる。

国家衛生・計画出産委員会が発表した「中国家庭発展報告2015」によると、
全世帯を所得によって上から下まで並べた時の上位20%の世帯の収入が
下位20%の世帯の収入の19倍になるという。


北京師範大学中国所得分配研究院の李実・執行院長は、
「体制内の要因が世帯所得の不平等さを招く重要な原因だ。
 中国の戸籍制度により出稼ぎ労働者と都市部の労働者は
 所得や社会保障の面で長らく『2種類の制度が併存する状態』に置かれ、
 中国の資本取引や土地取引には本当の意味での市場が形成されず、
 政府が市場に関与する分野もあり、資源産業および一連の自然独占が生じる
 産業と競争相手との間には巨大な所得格差が容易に発生した」と説明する。

http://j.people.com.cn/n3/2016/0120/c94476-9006830.html
------------------------------------------------------------

なお、労働政策研究・研修機構はもう少し厳しく評価している。

格差が縮小したといっても、依然、中国のジニ係数は日本よりも高い。

それゆえ、必ずしも手放しに賞賛すべきではないが、
重要なのは中国政府が格差解消に本腰を入れて取り組んでいることであり、
それは「格差上等、非正規拡大、実質賃金低下」の日本経済とは天と地ほどの差がある。

アベノミクス支持者など、非正規雇用者がどれだけ増えようと気にもしていなく、
それどころか「失業よりはマシだ」と主張している有様だ中国のそれと対極的な姿勢である


連中が「やばい」と言っている間に中国は着実に格差問題の解消に向けて
手を打っているわけで、いつのまにか日本のほうが「やばい」状況になるのではないだろうか?

少なくとも、今のように一部左翼が右翼の経済政策に同調して、彼らの走狗となって
左翼のアベノミクス批判を率先して攻撃している状況を見ると、不安になるのである。

宜野湾市長選、本当に大敗したのか?

2016-01-26 00:54:45 | 軍拡
沖縄の宜野湾市長選は、県内移設派の現職市長がそのまま続投になる形で終わった。
これを新聞社は「大敗した」とか「大差をつけて」という風に表現するのだが、それはどうだろう?


票数を比較すると(100の位で四捨五入)、今回の選挙では
2万8000票と2万2000票、つまり6000票の差となるが、沖縄県知事選では
26万票と36万1000票、すなわち10万1000票の差をつけて翁長市が勝利した。 

票差だけを言えば、知事選のほうが圧勝だったと言える。
もちろん、これは単純な数字の比較なので全投票数の何割が現職派だったのかなど、
多角的に分析する必要があるが、そういうことすらせずに「大敗」と書かれると釈然としない。

沖縄の占拠は、ここ数年、県外移設派の人間が軒並み当選し、
自民派の人間はことごとく落選している。その中の現職続投なので新聞社もホッとしたのだろうか。

沖縄問題にかけては琉球新報社などの県内のメディアと
県外のメディアとの間には大きな隔たりがあると指摘されている。

県内移設をそれとなく支持する全国紙にとって今回の勝利は喜ばしいのか、
早速、「今後の翁長氏は苦戦を強いられる」とか「オール沖縄はまやかし」といった主張を
それとなく行っていて、ずいぶん大げさな言葉で攻撃するものだなと呆れている。

忘れてもらいたくないのが、宜野湾市の市内に普天間基地があるということだ。
宜野湾市からすれば、自分たちの町から消えてくれるならどこでもいいわけで、
今回、市長に投票した人物も、決して自分たちの町にそのまま基地があっても良いと
考えていたわけではない。むしろ、一刻も早く移転してほしいからこそ妥協したとも言える。

こういう点を忘れて、あたかも沖縄県には基地を抱えてもよいと思っている人間が
大勢いるのだとでも言いたげに今回の結果を評価するのは合法詐欺以外の何者でもないだろう。

とはいえ、2年前の名護市長選では県外移設派の稲嶺氏が当選したが、その差は4000票だった。
衆院選でも案外、県外移設派と県内移設派の票数はそれほど差がなかったと記憶している。

とすると、オール沖縄といっても、実際にはギリギリのラインで勝利していたと言えなくもない。
慢心していたとは言わないが、県外派の今後のいっそうの努力と反省が求められるだろう。

その上で、これから、あえて彼らの考えについて1つだけ批判を行いたいと思う。

県外移設派の中には、国外移設を目指す人間と国内移設を目指す人間の二種類が存在するが、
そのうち、最近、大勢となっているのが後者であり、彼らは本土への移設を主張している。

大変申し訳ないのだが、本土移設派の連中は国際政治のことが全然わかっていないと思う。



日本の仮想敵国である北朝鮮と中国は、在日・在韓米軍基地にグルリと囲まれている。
つまり、東京なり北海道なりに移設したところで、両国が日米韓から受ける脅威に変わりはない。

北朝鮮は公式に、仮に米朝で戦争が起きた場合に、日韓にある米軍基地を攻撃すると言っている。
とすると、仮に本土移設が可能となったとしても、
その場合、ミサイルが来る場所が沖縄から沖縄以外のどこかになるだけで、
本質的な部分を思えば、県内移設だろうと本土移設だろうと大した違いはない。

要するに、沖縄基地問題とは、安保条約および在日米軍の是非、周辺諸国との関係改善、
さらにはアジア一帯からの米軍撤退や不戦地域の創設など、もっと大きな視点から問う必要がある。


一言で言えば、
アジアにおけるアメリカの脅威をどうするか
という問題である。


このことを考えている人間というのは案外、少ないのではないだろうか?

アジアからアメリカ軍を追い出す一環として沖縄基地問題を考えているのであれば、
当然ながら、在韓米軍基地の問題にも関心が高いはずであるし、
米韓政府による北朝鮮に対する武力威嚇に対して毅然とNoの意識を示すはずである。

ところが、実際には右翼と一緒になって北朝鮮のほうが悪いと非難している。

これは、私に言わせれば、かなり矛盾した行為だ。

前々から言っているが、日本政府は中国や北朝鮮の脅威を口実に
米軍基地を確保しようとしている
し、米韓両軍は核弾頭が搭載可能の
戦闘機や原子力潜水艦を多数従えて、北朝鮮を先制攻撃する訓練を毎年、行っている

北朝鮮は、この行為をやめさえすれば、核開発を中断すると宣言してもいるし、常にアメリカとの
平和条約の締結を提言してもいる
これらを一切無視して、米韓は制裁や威嚇を行っている。

客観的に見れば、相手を攻撃したがっているのは米韓である。

彼らが自分たちの軍拡や威嚇行為を正当化する際に利用しているのが
「中国の脅威」「北朝鮮の脅威」なのだから、当然、左翼は
「中国や北朝鮮はアメリカが言うほど危険な国ではない」ことを説明しなければならない。

ところが、日本国内では北朝鮮や中国の政府は悪で、現地の民衆のためにも
この国を「民主化」しなければならないという意見を右翼も左翼も共有している。


一方では「北朝鮮は危険だ!中国は危険だ!」と語る左翼が
他方では「米軍基地反対!9条遵守!」と叫んでいる様子を見て右翼が
「なぜ自国を守る行為を邪魔するのか」と憤るのは当たり前ではないだろうか?

「対話による解決を」と語る左翼もいるが、ほとんどの右翼は
「それでは甘い」と考えているわけで、代案になりそうもない。反対意見としては弱すぎる。

こういう矛盾を抱えながら運動しているわけだから、
究極の部分で基地容認派や改憲派の意見を否定しきれていない弱さを持っている。

ズルズルと日本が軍拡に向かっているのは、多くの要因があるはずだが、
少なくともその1つとして、左翼の意見に納得できない中立派の市民がいることが挙げられよう。

彼らを説得するには、やはり「北朝鮮や中国は危険ではない」「だから基地は必要ない」
「不戦条約の締結と経済支援で双方の安全は保障できる」と説明しなければならない。

その作業を経ずして、
護憲派や基地反対派の言動に強力な説得力を持たせるのは難しいのではないだろうか?と思う。

小感想・エマニュエル=トッド『シャルリとは誰か?』(文春新書、2016年)

2016-01-22 23:41:23 | 読書
色々な意味で衝撃的な本だった。

欧米社会を理解するには、同社会で
歴史的に継続してきたイスラム差別から避けて通ることは出来ない。

特に近年はNATO加盟国による中東・アフリカ・中央アジア諸国への軍事干渉、
イスラム過激派への支援と衝突が同国におけるムスリムへの差別とリンクするようになった。

シリアやリビアにおけるイスラム過激派への支援やフランス軍による空爆が内乱を激化させ、
移民を流出させる一方で、EU地域内の排外主義的な気運が過激派を産み、中東へと向かわせている。

フランスの新聞ル・フィガロは、ダーイシュ(IS、イスラム国)のテロリストの
少なくとも3分の1がヨーロッパの出身者だと報じている。別のメディアでは、
ダーイシュに加盟するヨーロッパ人は3000人、多くて数万人と見積もっている。

シャルリエブド襲撃事件にせよ、先日のパリ同時多発テロにせよ、
その背景にはフランス社会のイスラモフォビア(イスラム嫌悪症)と
旧フランス領植民地シリアに対する軍事干渉が存在することは言うまでもない。

このことについて私は過去、再三、繰り返して主張してきた。
改めて以下に記事をリンクしよう。

フランス・テロ事件の背景(マスコミが伝えないヨーロッパのムスリム差別について)
フランステロ事件について2(各紙の社説を比較する)

シャルリーを自称した人々はどこへ行ったのか?(フランス・テロ事件のその後)


イランでの反仏・反シャルリー運動について
世界中で焼かれるフランス国旗とシャルリエブド
オランド、各地のシャルリー抗議デモを非難する
ローマ法王、反シャルリーデモに理解を示す

イラン最高指導者からの欧米のイスラム差別に対する抗議メッセージその1
日本の上映の自由について

シャルリーエブド事件再考
酒井教授批判その1(シャルリエブドとは何か)

シャルリエブド紙のルソフォビア(ロシア嫌悪)
米のイスラモフォビア・憎悪犯罪を是認する欧米メディア

パリ同時多発テロ事件の背景
パリ同時多発テロ事件の背景2
パリ同時多発テロ事件の背景3(サウジの影)


よくこんなに書いたなと我ながらあきれる。

欧米のイスラモフォビアに関する資料は、その気になれば、いくらでも入手できる。
(例えばこことかこことか。私の記事を読んでも良いよ)

決してトッドの専売特許ではない。私が思うにイスラモフォビアについて本格的に論じたものは、
エドワード・サイードの『オリエンタリズム』および『イスラム報道』
である。

特に『イスラム報道』はメディアや知識人によるイスラムへの偏見が
いかに展開されていったのかについて詳しく論じており、必読の書とも言える。


クドクドと前置きが長かったが、要するに私は
欧米社会のイスラム差別は決して無視されてきたトピックではなかったはずなのに、
よりによって日本でシャルリエブド事件とイスラモフォビアを関連付けて論じた初の本が
あのトッドの著作だったことに驚きを隠せない
のである。

よりによってトッドかという気分だ。

評論集の形なら『現代思想 2015年3月臨時増刊号』ですでに出版されているが、
岩波書店や藤原書店などの左派系出版社は何をやっていたんだという話だ。

まぁ、藤原書店や大月書店、新評論などの中小出版社は予算の都合上、
出版できないのは仕方ないような気がするが、岩波書店と平凡社は本当に意味不明。

「本来ならお前の所で売らなきゃいけないような内容の本が
 文芸春秋で売られるのかよ」という憤り。伝わってくるだろうか?


日本の左派系論壇は総じてシャルリエブド事件を言論の自由に挑戦するテロだとみなしてきた。
そのため、むしろシャルリエブドこそが差別の実行者であり、ヘイト・アートを継続して掲載してきた
同社の編集方針を追求せず、逆に英雄であるかのように称えるのはおかしいという発想が浮かばなかった。

単純に「テロとの戦い」、「言論の自由との戦い」という文脈で語り、
この問題の裏側に潜むフランス社会の移民・ムスリムなどのマイノリティへの差別問題に踏み込まなかった。

結果的にそれはフランス社会を無批判に称揚するという如何ともしがたい
ヨーロッパ幻想を生み出したとすら思える。それほどこの事件に対する左翼の態度は妙だった。

本来なら、ヨーロッパにおける民主主義の病理は
左翼にこそ指摘されるべきであり、左翼にこそ指摘して欲しかった。

それがトッドか、文春かという悔しさ。


例えるならば、ヘイト・スピーチに反対する本が岩波や新日本出版社ではなく、
真っ先に文芸春秋や新潮社、WACなどの日常的に差別を助長する出版社から出てしまったようなものなのだ。



ヘイト・スピーチは良くないという発想が平和や平等を掲げる左翼からではなく
日ごろから差別やデマに興じる右翼が所有し、発信してきたようなものなのだ。


この本の出版ほど日本の主流左翼の情けなさを痛感したことはない。


本書は、シャルリエブド事件、特にその後のフランス社会の同事件の反応を批判的に扱ったもので、
類書と比べると統計や地図を駆使して科学的に説明している点が特徴的である。

但し、先述したようにシャルリエブド事件後の「私はシャルリー」運動が欺瞞的だという考えは
多くの人間が抱いていたもので、トッドが言うように彼一人が孤立していたわけではない。

本書の担当編集者は、同書を「仏国内のメディアをすべて敵に回わす危険を顧みずに書かれた」と
評価しているが、それは誇張である。詳しくは前述の現代思想の特別号を読めばわかると思う。


フランスの移民差別は歴史的に継続して行われてきたもので、
それを知るにはフランソワーズ=ギャスパール『外国人労働者のフランス』を推薦する。

また、移民に対する差別は根本の部分ではフランスの民主主義システム(国会・メディアなど)が
機能不全に陥り、本来の役目を果たせていないことに起因するが、これを知るには、哲学書だが
アラン=バディウ『サルコジとは誰か?』が有益な情報を与えてくれるだろう。


本書を一言で表現すれば、不味くはないが美味くもないラーメンといったところ。
激戦区に立地していないために「ここの飯は美味い」ともてはやされそうなラーメン屋といったところ。

何せエマニュエル・トッドという人物は本人は中道左派を自称しているが、
その主張内容を拾えば、中国をけん制するために日本に核武装を薦めたり、
過去の歴史に対する反省行為を修正(つまり安倍的な姿勢に)しろと主張したり、
リビアに対するNATOの空爆を「認めざるを得ない」と黙認してしまったり随分と右的なのである。

本書も企画に読売と日経が関わっているようで、出版元が文春と
見事に保守系新聞社、出版社からプロデュースされたものである。


まぁ、改憲や非核に固執する割には北朝鮮に対しては与党とつるんで攻撃的になる左翼は
腐るほど日本にもいるわけだから、そういう輩の一人と見ることも可能だが、
正直言って、「あんたがイスラモフォビアを語るか」と突っ込みを入れたくなってくる。

日本で言えば、散々北朝鮮をバッシングして同国に対するイメージを貶めておきながら、
いざ国内で朝鮮学校が無償化対象から除外されると途端に反差別の旗を振り始め
あたかも自分に責任がないかのように演出した有田芳生参院議員のような・・・
(有田議員は救う会の講演会にも参加していた)

嘘出鱈目を語っているわけではないが、あんたの口からは聞きたくないというような……
逆を言えば、その点が気にならなければ良書だと思う(まぁ手放しには誉めたくないが)


売られたばかりだが、恐らくランキングでも上位に食い込むのではないだろうか?
着眼点の勝利と言おうか、文春はやっぱり商売がうまいなと感心する。

ところで、同じ文春新書から、また朝日新聞が著した本が売られていた。(『ルポ 老人地獄』)

朝日にはプライドというものがないのだろうか?まぁ、ないのだろうけれど。
去年の吉田証言に対する騒動はやはり朝日が「俺たちはもう左じゃない」と宣言するための
降参セレモニーだったのではないだろうか?そう思うほど朝日と文春の最近の協力は気持ち悪い。


同書は新聞連載の内容をまとめたものらしいが、逆を言えば、
今の朝日の記事のレベルは文春から出版しても違和感がないほど右だということだろう。
右翼にとって痛くもかゆくもない、むしろ共有できる主張と姿勢。そういう気がする。

北朝鮮が水爆を持つに至った経緯

2016-01-22 21:09:46 | 北朝鮮
朝鮮新報に新たな論説が掲載された。投稿者は李東埼(リ・トンギ)。
同時代社の紹介文によると朝鮮商工新聞記者、朝鮮時報編集長、統一評論新社副社長、
祖国平和統一協会事務局長を経て、現在同協会副会長を務めているらしい。

『統一評論』は『朝鮮新報』がもう少し堅くなったような雑誌で、
 日本の北朝鮮研究者なら参考程度に誰もが読んでいる…はず(嫌味)。

総連傘下のメディアということもあり、「頼もしい自衛の軍事力」とか
「巨大な民族史的壮挙」とか妙に威勢のよい論調で書かれており、抵抗を覚える人が多いだろうが、
既存の新聞社、出版社のそれと違い、新しい情報が多く載せられており、参考になるとは思う。


特にアメリカの軍事政策の関係者たちが
北朝鮮の核保有がアメリカの先制攻撃を抑止する効果があると告白している
箇所は、
核保有を絶対悪とみなす認識を前提に、その有効性を否定する他者の主張とは一線を画する。


北朝鮮に関する論説の多くは
①真面目に調べていなく ②アメリカに都合の悪い(北朝鮮に有利な)情報を伏せるため
③憶測や決め付けが多用され ④結果、北朝鮮の行動を理解不能な愚挙と評価している。


「愚挙」といえば聞こえが良いが、要するに「よくわかりません」ということである。
 こういう失態を全国紙が率先してやっているのだから、なんとも凄まじい。

個人的に失笑したのが金正恩の誕生日が近かったから実験を行ったという説で、
提唱者が如何に北朝鮮を野蛮な国家とみなし侮っているかがよくわかる。

嫌うのは結構だが侮るのは問題だ。

2013年に事実上のミサイル(笑)が春と冬に発射された際、日本政府は、
日本の領海・領空を通過しなかった1度目の発射には自衛隊を出動させ防衛体制に入らせたが、
沖縄上空を通過した2度目の実験の時には出動どころか発射されたことにすら気づかなかった。

つまり、春の実験の時には、日本の領域を通過しないことが予めわかっていたのに、
沖縄に軍を集結させ、「いつでもこーい!」と意味不明な行動を見せた一方で、
領空を通過する恐れがあった二度目の時にはポケーっと見逃していたのである。

現場で動く自衛隊よりもそれを動かす政府のほうに問題があることがよくわかるエピソードだ。
日本に今足りないのは戦闘機やミサイルではなく、情報(とそれを分析できる人間)だろう。
本気で国防を考えるのであれば、もう少しマシな情報収集を行うべきだ。

その場合、相手側の意向を知ることが真っ先に求められるのは想像に難くない。
孫子いわく「彼を知り己を知れば百戦危うからず」である。

相手を侮らず、彼らが何に対して危機感を抱いているのか、
彼らがどの国を仮想敵国とみなしているのか、彼らはどのように現状を認識しているのか。

こういう推察が求められるはず(と思いたい)

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なぜ朝鮮は水爆を持つに至ったのか/李東埼

米国の核脅迫と痛切な民族的体験

新年早々、朝鮮の水爆実験成功で日本のマスコミは大騒動だ。
彼らは米国が長年にわたる核脅迫を意図的に隠ぺい、免罪し、
日本国民の素朴な反核感情を悪用して我が国を一方的に非難している。


凶悪かつ膨大な米核戦力


去る10日、朝鮮半島上空に不気味な姿を現したB52戦略爆撃機。
マスコミは「核爆弾を積める」とぼかしているが、実は水爆を4発も積める凶悪な武器だ
その破壊力は合計で広島型の1000倍以上である。これ1台で朝鮮民族を全滅させることができる。
B2戦略爆撃機というのもある。広島型原爆の80倍もある核爆弾を16発積める。
合計で広島型原爆の1280倍の破壊力だ。


空母ドナルド・レーガン号に搭載できる戦闘爆撃機85台の持つ
核爆弾の破壊力合計は広島型原爆の1800倍に近い。


原潜またはイージス艦1隻に
最大154発の巡航ミサイル・トマホークを積めるが、
その破壊力合計は、実に広島型原爆の4000倍だ。

これらの核戦力が毎年の米・南合同軍事演習に投入されている。


数十年間も米国の核脅迫にさらされながら、「北朝鮮の住民が集団発狂しないのが不思議だ」と、
オーストラリアの国際政治学者ガバン・マコーマックがかつて述べたことがあるほどだ。

頼もしい自衛の軍事力

米国は朝鮮戦争で数次にわたって核兵器の使用を企んだが果たせなかった。
ソ連が崩壊して後、クリントン政権は第1次核危機を、ブッシュ政権は第2次核危機をつくりだした。

だが、彼らの戦争放火策動も成功しなかった。
朝鮮の強大な自衛力を見せつけられて諦めざるをえなかったからである。
このように朝鮮半島の平和と周辺地域の安全は朝鮮の軍事力によって守られている。
このことを、米帝国主義自身の口から告白させてみよう。

冷戦後の東アジア戦略報告執筆者として有名な
元国防総省高官ジョセフ・ナイは言った。

「北朝鮮が示しているのは、抑止力が働いているということだ」
ただ問題なのは抑止されているのは我々だということである
(ワシントンポスト2003年1月6日)


カーター大統領の安保外交補佐官で
核先制打撃論の「権威」といわれるズビグニュー・ブレジンスキーは語った。

もし脅威が本物ならば先制打撃ドクトリンは発動されない」(同前)。
ブレジンスキーは、朝鮮が核を持てばもはや核先制攻撃は不可能と言っているのである。

報復核攻撃を覚悟せねばならないからだ。現国防長官アシュトン・カーターは、
約20年前に国防次官補代理だった頃、次のような発言をしている。

絶対に回避しなくてはならないのは、核武装した北朝鮮と戦火を交えることである
(ワシントンポスト1995年4月10日)

平和を確保し経済に注力

前出のガバン・マコーマックは「アメリカに通じる唯一の言葉は軍事力だ」と言った。
事実、これまで核保有国が侵略された例はない。
逆に、米国の脅迫に屈したイラクやリビアは悲惨な目にあっている。

脅迫も甘言も通じない朝鮮に対して米国は「戦略的忍耐」政策をとっている。
米国はむだな時間稼ぎをやめて敵視政策を放棄し、平和協定の締結に応じるべきであろう。

朝鮮は核武装で平和的環境が確保できたので、民生向上に力を注げるようになった
これが経済建設・核武力建設並進路線である。

軍需産業で達成した先端技術を民需産業に投入して、急速に人民生活は向上しはじめた。
時間は朝鮮に味方する。

巨大な民族史的壮挙

クリントン政権末期に対朝鮮「政策調整官」
に任ぜられた元国防長官ウィリアム・ペリーはかつてこう述べた。
「北朝鮮はミサイルや核の開発は国家の主権の問題だというが、その主張は正しい」
(朝日新聞1999年11月5日)。

自らも認めざるをえなかった国際的公理を平然と踏みにじる米国と額をつきあわせ、
大国どうしが国連で取引しているのが国際政治の現実である。

19世紀末、我が国は軍事力が弱く封建支配層が無能だったために亡国之悲運をなめた。

今や朝鮮は水爆まで持つ核保有国の前列に立った。
周辺列強が朝鮮半島を遡上にのせて獅子の分け前を談合できる時代は永遠に過ぎ去った。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/20160121suk/
(朝鮮新報)
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「彼らの戦争放火策動も成功しなかった。朝鮮の強大な自衛力を見せつけられて
 諦めざるをえなかったからである」という発言に対しては「嫌、それはない」と言いたいが、
 自衛力=核だとすると「なるほど、確かに」と思わなくもない。


ベトナム戦争にせよ、湾岸戦争にせよ、イラク戦争にせよ、リビア空爆にせよ、
侵略国が核保有国であった場合では、侵略を受けた側が核に怯えて降参するということはない。
この点において、核保有は抑止力は持たないと言える。

だが、フランスしかり、イギリスしかり、中国しかり、ロシアしかり、
核保有国が本格的な侵攻を受けたという事件は現代史において存在しない。

湾岸戦争時、イラクがイスラエルにスカッドミサイルを撃ったことがあったが、
それはイラクが先に連合国から爆撃を受けた(砂漠の嵐作戦)反応として起きた事件である。

先制攻撃を食い止めるという意味においては
核の威力は確かに通用する。


①核保有国が攻撃を受けたことは特例を除き存在しない
②敵国であるアメリカの軍事政策を担当する人物たちが核の抑止力を認めている
③核開発による技術向上や軍費のスリム化が北朝鮮の経済発展に寄与した


これら利点があるために、手放すことが不可能な状態に陥っているのだと思われる。
特に核武装による軍事費の節約と侵略を受けた苦い記憶がある点は見逃せない。

大日本帝国による植民地化もそうだが、朝鮮戦争時の米韓を中心とする国連軍による
焦土作戦および村々の破壊、住民の虐殺もまた北朝鮮のトラウマである。
北朝鮮指導部にとって「先制攻撃をさせない」というのは呪縛に近い使命となっている。

よって、北朝鮮の非核化には
①アメリカの脅威を排すること ②北朝鮮の経済発展に協力・支援すること
が不可欠
だろう。前にも書いたことであるが。


私はロシアや中国、アメリカの核保有については批判的だが、
それは核保有が必要ないほど彼らが軍事力を有しており、アメリカが顕著だが、
核兵器が自国の防衛ではなく他国の侵攻のために利用される恐れがあるからである。

単純に持つ・持たないに固執して眼前の武力威嚇に気づけない善悪二元論から脱却して、
相手国の安全を保障する真の安全保障体制へと移行し、地域的な非核化を目指す。


これこそが今後の朝鮮半島において求められることだと私は思う。

サウジアラビアのイエメン空爆による死者数が8000人を超す

2016-01-22 00:00:55 | 中東
ウクライナ政府の同国民に対して行った爆撃・殺害も「国際社会」
(正確には西側が覇権を握る国際政治の場)では殆ど取り上げられることがなかったが、
サウジのイエメン侵攻も同じく、10ヶ月以上に渡り、殆ど無視に近い形で扱われている。

国際人権団体アムネスティは同国の死刑や弾圧には抗議しているが、
同国のイエメンにおける民間人殺害に対しては何らアクションを行おうとしない。


アムネスティのホームページを見ると、サウジアラビアに対する
緊急行動(深刻な人権侵害にさらされている「特定の個人」を救うための、緊急アクション。
メールや手紙、Faxなどを使用して、政府関係者などに人権侵害を止めるよう要請を行う)には、
イエメンの空爆に対して抗議するものが一つもない

ウクライナ軍の空爆に対しても、非難どころか支持していたわけで、
この辺りに、イギリスやアメリカに本部がある「人権団体」の限界を感じてしまう。
(それは日本の平和団体にも言えることだが……)


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サウジアラビア主導の連合軍のイエメン攻撃による死者数が、8000人以上に達しました。

アルアーラムチャンネルによりますと、
サウジ連合のイエメンに対する犯罪を監視する民間団体の調整役は、
20日水曜、この連合軍が昨年3月26日からイエメン攻撃を開始してから10ヶ月の間に、
この攻撃で8251人が死亡し、1万6015人が負傷したと発表しました。

この調整役はまた、死亡者のうち、2236人は子供で、1752人は女性だとしました。

さらに、サウジアラビアはまた、この攻撃の開始から、
242の病院や医療施設、数百の橋、140の発電所を破壊したと強調しました。

この調整役は、イエメン国内では230万人が難民となっていると述べました。
この民間団体は、侵略者の犯罪に対し、国連が沈黙していることを批判しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61685-
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2011年の中東における一連の騒乱を「アラブの春」と称して讃えていた知識人たちは、
サウジアラビアに対しては、どういう態度を取っているのだろう?

岩波新書の『サウジアラビア』や『イスラーム主義とはなにか』などを読むと、
サウジアラビアは保守派に牛耳られる一方で、進歩派の動きも活発な国である印象を受けるが、
実際は次のような有様である。随分と楽観的な評価を下しているのではないだろうか?


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サウジアラビア東部で、市民が
同国のサウード政権の弾圧政策の継続に抗議し、デモ集会を行いました。

ファールス通信によりますと、サウジアラビア東部のアワーミヤで
人々が20日水曜夜、「剣に対する血の勝利」をスローガンにデモ集会を行い、
サウード政権の犯罪政策の継続に抗議しました。

サウジアラビアのシーア派の指導者ナムル師(ニムル師)の処刑に対する
東部の人々の抗議が高まったことを受け、サウード政権はこの地域で厳戒態勢を敷いています。

サウード政権は今月2日、同国のシーア派の指導者ナムル師を処刑しましたが、
この措置は、世界各地特に、イスラム世界に抗議の波を引き起こしています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61674-
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サウジアラビアの懲罰制度
-「ダーイシュ(IS)」との違いはあるのか?


サウジアラビアでシーア派宗教指導者ニムル師が処刑された。

これは多くの国で大規模な抗議を引き起こし、
再びサウジアラビアの残酷な懲罰制度に国際社会の注目を集めた。

ロシアのサイト「レンタ・ルー」には、
サウジアラビアの最も恐ろしい処罰に関する簡潔な説明が掲載された。

サウジアラビアでは婚外性交渉、あるいは婚外性交渉のほのめかし、
無神論、イスラム教から他宗教への改宗、同性愛、魔術、賭博などは犯罪とされており、
1000回の鞭打ち、禁錮10年、または斬首刑となる可能性がある。

なおサウジアラビアの司法制度は西側のものとは著しく異なっているが、
「ダーイシュ(IS、イスラム国)」とは驚くほど似ている。

証人が、有罪あるいは無罪を主張する場合は、しばしばただ宣誓するだけで証拠がなくてもよく、
弁護士は不必要な贅沢と考えられることも多く、未成年者や精神障害者にも死刑が執行され、
判決が言い渡される際に、サウジアラビア国民と外国人の間に一切差はない。

鞭打ちは、サウジアラビアでは最も一般的な刑罰だ。
厳格な規定は一切なく、シャリーア裁判所の裁判官が、鞭打ちの回数を決める。
過去最高の鞭打ちは、エジプト人のムハマンド・アリ・サイード被告に言い渡された4000回。

またサウジアラビアでは公開処刑として、斬首も執行されている。
公開処刑には大勢の人が集まる。通常、死刑執行後、遺体は教育目的のために、
はりつけにして公開される。これも「ダーイシュ(IS)」の行動を髣髴させる。

これら全てのサウジアラビアの特異性は、西側で当然の抗議を呼んでいる。

欧州や他の文明国の市民たちは、「道徳的配慮を強調する米国と英国は、
死刑執行数が多いことを理由にイランを『悪の枢軸』とみなしているのに、
なぜシャリーア裁判所がより厳しい判決を言い渡しているサウジアラビアのことは
見ないふりをしているのか?」という質問をよく投げかけている。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/life/20160120/1462777.html#ixzz3xtVqIXp5
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本当に「文明国の市民」は非難を行っているのだろうか?
私の知る限り、日本でイランを非難する本はあるが、サウジを非難する本はない。
 (イランやシリア、北朝鮮などの亡命者が自国の体制を批判する本は
  向こうでもベストセラーになり、時々日本でも翻訳されているが)


サウジアラビアの処刑方法がダーイシュと酷似しているのは当たり前で、
同国の国教であり、宗教的権威であるワッハーブ派が国外に設立した宗教学校から
アルカイダやダーイシュなどのテロ組織に入団する人間が輩出され、ダーイシュに限って言えば、
占領区域において、学校機関にサウジの教科書を使用するよう強要しているのである。


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世界各地、とくにアラブ諸国からISISに加わる人々の動機の一つは、宗教的なものです。

ワッハーブ派の影響を受け、ワッハーブ派の学校で教育を受けてきた人々は、
タクフィール主義のテロ組織に加わる多くの潜在的な可能性を有しています。

これらの学校は、公正を追求し、人間を形成するイスラムの崇高な教えとは
何の関係もない事柄を子供たちに教えています。

こうした学校で教えられる事柄は、
イスラムの他の宗派の信者たちに対する憎しみや嫌悪を抱かせるものです。

ワッハーブ派は、サウジアラビアのオイルマネーを投じ、
イスラム諸国やイスラム教徒を少数派とする西側の社会で大規模なプロパガンダを展開し、
イスラム教徒を仲間に引き入れようとしています。

彼らは学校や様々な形の宗教施設を設立し、
イスラム教徒の若者たちをワッハーブ派の思想に引き込もうとしています。

一般に、社会の貧しい階層に属する若者たちがそれに引き込まれ、ISISに加わっています。

http://japanese.irib.ir/component/k2/item/53370-%E3%8
2%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%95%99%E3%81%8
8%E3%81%A8isis%E3%81%AE%E8%A1%8C%E5%8B%95%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84

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歴史的文脈からワッハーブ派は過激派ではないと語る研究者もいるが、
現実にはワッハーブ派の教えを受けて急進化する人間が多くいるのだから、
これをイスラム原理主義の一種として認めることに何ら問題はあるまい。


加えて、サウジはシリアからダーイシュの戦闘員を迎え入れイエメンに侵攻している。
(http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151028/1087672.html)


客観的に観て、サウジとダーイシュは蜜月の関係であるように思う。

両者とも支配圏の内外の人間に対して連日のように攻撃を行っており、
イランや中国、キューバ、北朝鮮等の非欧米国が人権侵害国家だとしても、サウジには遠く及ぶまい。

にも関わらず、上記の国の内政にはやたらと干渉したがる国や知識人の多くが
サウジのイエメン侵攻について特に何もしないのは奇妙なことである。

サウジアラビア・アメリカのイエメン住宅地・学校・難民キャンプへの空爆

2016-01-21 00:38:16 | 中東
イエメンにおけるサウジアラビア軍の空爆が連日行われている。
明らかに民間人がいるであろう住宅地や病院、学校などが攻撃されており、、
今月8日には、国際条約で使用が禁じられているクラスター爆弾が住宅地に投下された。


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サウジアラビアのイエメン攻撃で、新たに数十名が死傷

イエメン各地に対するサウジアラビアの空爆で、新たに数十名のイエメン人が死傷しました。

イエメン国営サバー通信によりますと、イエメン攻撃の開始から通算して
300日目を迎えた20日水曜、サウジアラビア軍はイエメン北部サアダ州に対し
2つの別個の攻撃を実施し、これによりイエメン人14名が死亡、ほか5名が負傷しています。

さらに、イエメン南部タイズ州にある学校への爆撃で、
在校生9名と女性教師1名が死亡、ほか8名が負傷しました。


サウジアラビアは、地域の一部のアラブ諸国と連合軍を結成し、
アメリカに同調して昨年の3月末からイエメンに対する大規模な攻撃を開始しました。

この攻撃の目的は、解任されたイエメンのハーディ元大統領を復権させ、現在
イエメンの各都市の治安維持を担っているイエメンの革命家たちの台頭を阻止することにあります。

この攻撃の影響で、これまでに女性や子供を含む数千人のイエメン人が死傷したとともに、
数万人が住む家を失い、また同国のインフラやサービス・医療施設の80%が破壊されています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61669-
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このような空爆が十日も経たず、繰り返されている。
19日火曜(つまり、上の空爆が実行された前日)にも、
サウジアラビアの戦闘機はマーリブ(イエメンの地名)の商店や学校、
サヌア南部の難民キャンプなどを標的に各地を15回に渡って攻撃した。

サウジの空爆はテロリスト(フーシ派)の駆逐を口実にしていたが、
どう考えても難民キャンプを爆撃することが「テロとの戦い」とは思えない。

前の記事で私は「核よりも空爆のほうが問題だ」と書いたが、
それは毎日のようにサウジアラビアが他国の土地で爆撃を行っているからである。

冷静に考えれば、これは異常事態であり、迅速な対応が求められるはずなのだが、
米英仏を筆頭におく西側世界は特にサウジに制裁を与えようとはしない(国連もしかり)。
それどころか、これら空爆はアメリカの支援によるものなのだ。


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アメリカの外交専門誌、
「米はイエメン侵略軍の戦闘機に燃料を供給」


アメリカの外交専門誌フォーリンポリシーが、
サウジアラビアのイエメン侵略に、アメリカが加担していることを明らかにしました。

イエメンのサバー通信が20日水曜、フォーリンポリシーの報道として伝えたところによりますと、
アメリカの燃料輸送機は昨年の4月5日から現在までに、2443回にわたって、
イエメン各地を爆撃するサウジアラビアの戦闘機に燃料を提供しているということです。

また、「アメリカの燃料輸送機は、
1700万ポンド以上の燃料を、サウジの戦闘機に提供した」としています。

さらに、「イエメン攻撃に参加している戦闘機の多くはアメリカ製で、
この攻撃に使われている弾薬などもその多くがアメリカ製である」としました。

フォーリンポリシーはまた、「サウジアラビアは最近、
アメリカとの間で軍備の購入に関する12億9000万ドル相当の契約を締結した」と報じています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61662-
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アメリカ、サウジアラビアの核兵器購入に向けた努力について警告

アメリカはサウジの言いなりになっているわけではない。
サウジの核保有に関しては北朝鮮やイランと同様、強硬な姿勢で臨んでいる。

サウジのイエメン空爆は去年から始まったが、
それ以前にはアメリカの無人戦闘機がこの国の空を飛び、誤爆を繰り返していた。

2013年の12月、結婚式場から帰ろうとする車列をアルカイダのそれと間違え誤爆し、
14人の人間が死亡している。アフガニスタン北東部では、2012年1月から2013年2月の間に、
200人以上が空爆によって殺害されたが、そのうち標的はわずか35人だった。


北朝鮮やイラン、中国などの悪徳国家と米英仏との決定的な違いは、
前者は現在、他国に軍事介入していないが、
後者は介入し、無関係の人間の命を多数奪っていることである。


フランスのオランド政権は、
シリアの武装組織に与える武器をサウジアラビアに購入させていた。


一応、フランスは世界的にも有名な人権国家であるはずだが、
実際は死の商人の真似事を行っていて、他国の人間が何人死のうが気にも留めない。

サウジアラビアは国連の人権理事会に加入しているが、
これを支持した国がどこなのかはあえて書く必要はあるまい。


(この件については50の人権団体が非難の言葉を送っている


米英仏を中心として展開される国際政治の場では、
その国が実際に何を行っているかということよりも、
西側国家にとって利益になるか害になるかということを基準にして、
人権を侵害している国家とそうでない国家が恣意的に決められている。



こういう欺瞞的な行為に留意しつつ、国際政治の情勢を追うことが今後求められるだろう。

平和のためには核よりも空爆の阻止が必要

2016-01-18 23:59:33 | 国際政治
スプートニク紙の魅力の1つに、アンドレイ・イワノフ氏の評論が読めることが挙げられる。

モスクワ国際関係大学国際問題研究所の上級学術専門家であるイワノフ氏の見解は、
日本の知識人のそれとは一線を画しており、国際政治を別視覚から見直す際に大いに参考になる。

例えば、核保有に関する次の論説などは、日本では決してお目にかかれないものだ。

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日本は正しくない 
世界を脅かすのは原爆にあらず、世界制覇を狙うマニヤックだ



国連総会は核兵器廃絶を呼びかける日本発案の決議を採択した。
だが世界が実際に核兵器を廃棄した場合、より安全になるのだろうか?

モスクワ国際関係大学、国際調査研究所の上級研究員、アンドレイ・イヴァノフ氏は、
この件に関して次のような考察を表している。

「今年、日本の出した決議は、あらゆる形の核兵器が引き起こす
 大きな人道的なカタストロフィに関連し、深い憂慮を表しており、
 あらゆる核保有国に核兵器のない世界を創設する方向性で作業を行なうよう呼びかけている。

 日本がこうした決議を発案する理由は理解できる。日本は核兵器がもたらすこの最悪の
「非人道的カタストロフィー」を1945年8月の時点ですでに身をもって経験したからだ。
 当時、米国の投下した2発の原爆で広島、長崎でおよそ10万人の一般市民が犠牲になった。

 この新兵器の恐ろしさについて米国はその投下実験を
 ニューメキシコ州で行なった段階ですでに熟知していた。

 だが、知っていたからといって日本に対して原爆を使用することにも、
 その大量生産を行なうことにも何の妨げにもならなかった。


その後、核兵器はソ連に出現し、それに続いてさらに数カ国が核保有国となった。
しかもこの兵器はたゆまない改良 を重ねた。だから今ある核兵器、数十、数百にも及ぶ核弾頭は
当時、日本の2つの都市を住民もろとも焼き尽くしたあの原爆よりも何千倍も強力なものとなっている。

露米の保有する核兵器を使用するだけでも、互いを、そして全世界を数回にわたって破壊する
ことができる。まさにこれがゆえに露米の核大国は互いに戦争を抑止してきたのだろうと思われる。

この脅威が核戦争が起きないための唯一の確かな保証ではないことはわかる。
このほかに純粋にこれは理論上の危険性だが、核兵器がテロリストの手にわたることもありうる。
このことからも、今年の核兵器廃絶決議は出されているのだが、
核大国はこの呼びかけを無視しており、これは日本の決議への投票でもはっきり示されている。

だからといってこれが、例えばロシアが先駆けて米国に
核攻撃を行なおうとしていることを示しているのだろうか? 
否。ロシアにはそうした意図はないことはロシア指導部が示している。
そしておそらくはこれを信じてもいいだろう。なぜならロシアは、自国の存在ないしは
その一体性を危うくする攻撃を受けた場合にのみ核兵器を使用することを明確に示しているからだ。

米国がロシアに核攻撃を行なおうと欲しているかどうか、それはわからない。
まぁ、気でも狂わない限り、欲するはずはないだろう。

だが米国は今、欧州に核兵器を配備しようとしている。

ロシアは欧州を威嚇していないにもかかわらず。
米国はNATO拡大を熱心に進め、その後でロシアを非難して、
『ロシアがNATO陣営の境界線に接近する危険を冒したからだ』
というのだ。


米国はロシアとの境界線にますます新型の兵器を配備している。
それ以外にも米国は、ロシアの大陸弾道ミサイル発射装置、軍事施設、
産業の中心地に対する、巡航ミサイルによる電光非核集中攻撃コンセプトを採択した。


それからさらに米国はロシアと国境を接する諸国で、
民主主義を推し進めるという旗印のもとにその秩序かく乱を行ない、ロシアが米国の標準に即し、
米国の助言や直接的な指令を遂行しようとしないとして、これに対する制裁を発動している。

米国は、ロシア領内をも含めて、そこにイスラム帝国復興を標榜する
ダーイシュ(IS,イスラム国)などのテロ組織を自国の連合国のうち数カ国が、
例えばトルコやカタールなどが支持することには少なくとも目をつぶっている。

そうしておきながら米国は、ロシアが勝手にテロリストと戦おうとしているといってはこれを非難し、
ロシアが共に力をあわせて戦おうという呼びかけても、これを退けている。

オバマ大統領は、米国こそが地球で唯一のリーダーであり続けねばならないと主張し続けており、
米国の首位に疑念を持つもの全ては人類の敵と見なしている。

そうでありながら、おわかりだろうが、米国も原爆を手放す気はないのだ。
日本よ、世界に対し、核兵器廃絶を訴えるかわりに連合国、米国に向かって
世界の排他的リーダーシップを要求することをやめるよう呼びかけたほうが、
より現実的ではないだろうか? 世界覇権を夢見たナポレオンもヒットラーもその末期は悲惨だった。
残念なことだがこうした夢が人類にもたらした代価はあまりに大きかった。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151208/1288606.html#ixzz3xbl4bdtR
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上の評論は、現実の国際政治の情勢を考慮せず、単に核弾頭を
保有しているかどうかで善悪を判断しようとする平和主義者には書けないものだろう。

冷静に考えれば、平和というものは核をなくすかどうかではなく、
侵略的な行動を見せている国家に対してブレーキをかけられるかどうかにかかっている


現実を見れば、米英仏、サウジ、トルコ、イスラエル等々の西側によるテロ支援、空爆が
核保有を巡る議論ほど白熱したことはない。核を持っているかもしれないという理由で
経済制裁をイランが受ける一方で、サウジはイエメンを空爆しても制裁などされたことがない。

これではアベコベである。
大事なのは、武器を持つかどうかではなく、武器をどう使うかどうかであるはずだ。
ただ持っているだけで制裁を受ける北朝鮮と他国を爆撃しても制裁を受けないサウジアラビア。

核を持っているかどうかが他国を侵攻しているかどうかよりも重大な問題にされている。
それは、誰にとって有利になるものだろうか?

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サウジアラビアの戦闘機が、
イエメンの首都サヌアを攻撃し、これにより数十名が死傷しました。

イルナー通信によりますと、サウジアラビア軍の戦闘機は18日月曜、
サヌアの住宅を空爆し、これにより多くの死傷者が出ました。

また、いまだに多くの人々が瓦礫の下敷きとなっており、
これまで、最終的な死亡者の数は発表されていません。

また、サウジ軍の戦闘機は18日、サヌアの警察関連施設を空爆し、
これにより少なくとも20名が死傷しました。


さらに、イエメン中部マーリブ州の歴史的な都市シルワの各地を攻撃しました。

こうした中、イエメン軍と義勇軍も、18日朝、サウジアラビアの犯罪に報復するために、
2発のミサイルをイエメン中部のダンマール州からサウジアラビアの拠点に対して発射しました。

また、サウジアラビア国境付近では、イエメン軍と義勇軍により、サウジの侵略者多数が死傷しました。

こうした中、イエメン軍のミサイル部隊は、
サウジアラビアのナジラン州やアシール州のサウジの拠点を攻撃しました。
一方、イエメン南部アデンでは、自動車による爆弾テロにより、10名が死亡しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61602-
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このような記事は向こうのメディアでは頻繁に書かれている。
イランや北朝鮮に対する態度とサウジに対する態度は随分と違う。

前者は誰一人殺していないにも関わらず地域の安全を脅かすということで制裁を受け、
後者は住宅地やインフラ施設を爆撃しているのに核を持っていないから非難されない。

もちろん、全く非難されていないわけではないが、
イランや北朝鮮にたいするそれと比べれば、相対的に見て、ほぼ無視に近い反応だ。

そもそも、北朝鮮に対する態度だって随分と不公平なものである。
例えば、次のことを私たちのどれだけが知っているだろうか?


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朝鮮の水爆実験の4日後、
米軍のB52戦略爆撃機がソウルの南に位置する鳥山周辺を低空飛行した。
南の連合ニュースは「核兵器を搭載していた」と伝えた。

B52には30Mtの核兵器が搭載可能だ。
 広島級原爆の一千倍の破壊力に値する。


各国メディアは「4回目の核実験を強行した北朝鮮をけん制する狙い」があると
被害者と加害者の立場を逆転させて伝えた

B52は水爆実験の前から、南との合同軍事演習に投入され、
朝鮮を核攻撃するための模擬飛行を行っていた。


米国が核で恫喝したからこそ、朝鮮は核抑止力強化の道を選んだ。


∇B52の飛来がニュースになったのは、米国政府が情報を提供したからだ。
 以前は、戦略兵器の動員が秘密裏に行われた。ところがオバマ政権は、
 軍事的示威活動をわざと公にする傾向がある。今回の場合は、アリバイ作りだ。
 水爆実験に対して米国が「適切な行動」をとっていると
 内外にアピールするためのデモンストレーションであろう。

∇オバマ政権の対朝鮮政策は手詰まり状態にある。
 大統領自身、朝鮮の「体制崩壊」を追求すると公言しながら、
 米国が「軍事的オプションを選択できない」ことを認めている。

 先日行われた任期最後の年頭演説で大統領が朝鮮問題に一言も触れなかったのは、
 自らの無為無策を認めたようなものだ。大胆に政策転換を図り、朝鮮との対話に臨むことが
 唯一の活路だが、B52を飛ばして世論を欺く無能な大統領には、問題解決の意志も能力もないようだ

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/skst-76/
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北朝鮮の姿勢を「脅迫外交」と呼ぶ人間には、
この国がアメリカ合衆国からどういう威嚇を受けているのかについて知らないのだろうか?

結論から言うと、そんなことはない。
例えば、朝日新聞の論説委員を努め軍事評論家(笑)として活躍する田岡俊次氏は
米韓の合同軍事演習を見学したことがあるそうだが、特に問題はないと評価していた。

アメリカが一切、北朝鮮との協議に応じようとせず制裁に執着していることは周知の事実だが、
逆に北朝鮮が核で脅迫してアメリカに言うことを聞かせようとしているとみなすのが
日本の知識人のスタンダードな見解である。一切の悪は敵にあり、自分にはないというものだ。


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何しろ北朝鮮が米国からほしがっているのは、米国がユーゴスラビアにおけると同様
軍事的手段で北朝鮮態勢を変更しようとすることはない、という保証だけなのだ。

金正恩第一書記はそうした保証を得ることで、
既に着手がなされた中国式の経済改革を進める大きなチャンスを手に入れ、
それで北朝鮮は絶対的に正常で持続力ある国家になることが出来るというのに。

しかし、こうした展望は、どうやら、米国のお気に召すことはないようだ。
今やすっかり資本主義国の中国が気に入らないのと同様に。
何しろ中国は、経済成長により、ますます強力な米国にとってのライバルとなっているからだ。
こうしたライバルを軍事的手段で解体することは米国にはできない。
もう遅すぎる。北朝鮮については遅れたくない、と考えているかも知れない。

米国政府内では、どうやら、米朝二者協力の発展を通じて北朝鮮を戒めるという可能性は、
全く検討されていないように見える。米国は、彼らの見るところではもっと簡単な、
力による北朝鮮問題の解決を選好する用意があるらしい。

ではもし北朝鮮が本当に既に充分実用可能な核兵器をもっているとしたら?
もし先日の潜水艦発射式弾道弾実験もやはりブラフやビデオモンタージュでなかったとしたら。
そのとき北朝鮮鎮圧作戦は、多数の犠牲と大規模破壊に転じるかも知れない。
それも北朝鮮だけでなく、韓国、日本にも犠牲を出すような。
日本にも米軍基地はあり、北朝鮮はそれらへ弾道弾を撃ち込む可能性もあるのだ。

ゆえに、常にコルト拳銃をつかむ
カウボーイ式の習慣を捨て、話し合いを試みたほうがよくはないか。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/asia/20160111/1421721.html#ixzz3xbwALM13
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重要なのは、人間は核兵器などなくても人を殺せるということだ。
ウクライナ南東部において行われた中央政府の空爆、イエメンの空爆、アフガンの空爆。

確実に民間人が犠牲になっているのに、ただ国際政治で覇権を握っているというだけで
何ら制裁を受けることがない現状に対して、もう少し憤っても良いのではないだろうか?

核を持っているか否かのみが問題とされ、核を持とうとする国の実情を考慮しない。
それは誰にとって都合のよい考えなのだろうか?深く検討する余地がありそうだ。