時事解説「ディストピア」

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朝鮮学校の教科書は危険なのか?

2017-06-19 22:12:48 | 北朝鮮
数年前に翻訳された北朝鮮の歴史教科書を読んだことがある。


その際に感じたのが「随分と反米的だな」というもので、
これは戦後に事実上、植民地化された日本の現代史に関する
現行の社会科教科書の余りにも小綺麗な記述とは雲泥の差である。



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「韓日会談」はたがいの対立と、
朝鮮人民、日本、アジア人民の強い反対闘争によって何度も中断したが、
「三角軍事同盟」の実現を追求するアメリカが積極的に介入したため
1965年6月22日に「韓日条約」と「韓日協定」の締結によって終わった。

「韓日協定」は過去に日帝が朝鮮民族に対しておかした罪に対する謝罪と、
それ相応の補償もなしに、南朝鮮当局者と締結した屈辱的で売国的な協定だった。


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上の記述は1965年の日韓基本条約に関しての教科書の記述だが、
これなどはまさにその通りで、この時に経済支援を目当てに
過去の植民地支配を免罪しようとしたために、
日韓は、未だに慰安婦問題の解決すらろくにされない状況のままでいる。


また、この時期、国内外で反対運動が起きたのも事実。
(詳しくは吉岡吉典『日韓基本条約が置き去りにしたもの』を参照)


我が国を代表するジャーナリスト、池上彰大先生などは
「慰安婦問題は日韓基本条約で解決済みなんです!
 それをほじくり返す韓国がおかしいんです!」と日本政府の言い分を
 そっくりそのまま伝えている。


まぁ、それはともかく、上の教科書の記述からも
朝鮮半島の現代史は大国であるアメリカの息がかかっていた
という史観から物語られていることがわかるのではないだろうか。



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朝鮮戦争を契機に「高度成長」に踏みこんだ日本は、
アメリカの東アジア戦略に積極的に加担することで、
自分たちの海外進出の野望を実現しようとした。


朴正煕はアメリカの「援助」が減ったため、
日本資本を引き入れて「経済発展」をなしとげ、貧困にあえぐ人民の反抗と、
共和国の経済成長に力を得ていっそう高まる統一運動を抑え、
軍事「政権」を維持し続けることができた。

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韓国の教科書には、
ここまで露骨に過去の軍事独裁政権を批判した記述がない。


実際、この時期は
朴正煕に反対する人物は得てして獄中にいたわけだし、
在日コリアンの中にも北朝鮮のスパイと認定され、監禁・拷問を受けた人間もいた。


KCIAによる金大中の拉致事件などは、その典型的な例だろう。





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軍事独裁「政権」の樹立

南朝鮮で激化していた民主化運動や祖国統一運動を阻み、
自分たちのアジア政策にいっそう効果的に服務する強力な統治体制を打ち立てるために、
アメリカは南朝鮮軍部の親米反共勢力をあおり、5.16「軍事クーデター」を起こした。

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朴正煕は「布告」を連発して、あらゆる政党、社会団体を解散させ、
「民族日報社」を襲撃して、チョ・ヨンス社長をはじめ
社員を逮捕するなど言論出版機関を強制的に解散させた。

6月10日には金鍾泌らが「中央情報部(KClA)」を設置して、
「軍政」の中枢的暴圧装置を作った。

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朝鮮学校の歴史教科書は、朝鮮半島の歴史教科書であるわけだが、
その内容は、上のように一貫して、アメリカと追従勢力によって
民衆が軍事政権の憂き目にあったという点が強調されている



フィリピン、チリ、ペルーなど
およそアメリカは冷戦時、いわゆる独裁国家を支援してきたし、
それは今でも続いている(その筆頭に挙げるべき国はサウジアラビアだろう)


現代史の記述が疎かになっている日韓の教科書と比較して、
ここまでアメリカの帝国主義政策に直に触れ、
批判的に記述できるのかと感心した覚えがある。


・・・のだが、どうも、これが
無償教育除外支持派によると、「反日」的になるらしい。



日本のことなど脇に置かれているような気がするのだが、
これまで記述した内容は「大変反日的でけしからん」ことになるそうだ。





これは朝鮮学校で実施されたテストの答案「だと言われているもの」だが、
真ん中の韓国併合に関しては4つの選択肢が設けられ、

当時の朝鮮民族が併合に賛成していたか否か、
韓国が植民地にされたか否かが問われている。


当然、ここでの答えは併合に「反対」、韓国は「植民地」にされたになるが、
これが「反日」だと認定されるようだ。



確かに日本のアジアを植民地化せんと奔走した歴史を
思い起こされることは、極右にとってはこの上なく「反日的」だろう。


しかし、それは一般の日本人にとって「反日的」だとは思えない。


アメリカの公民権運動に触れることは、「反米的」なのだろうか。
ナチスのホロコーストに言及する人間はドイツ人に差別感情を抱いているのだろうか?



http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/006/876/28/N000/000/000/syakai5-020-021_20080918052948.jpg

http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/006/876/28/N000/000/000/syakai5-018-019.jpg


上に列挙された画像は、同じく朝鮮学校の社会科教科書を翻訳したものであるが、
これを見ても、どのへんが反日的なのか、北朝鮮礼賛なのかピンと来ない。


少なくとも「日本人死ね!」とは書かれていないし
「北朝鮮は天国のような国だ!」とも書かれていない。


北朝鮮は各国と外交関係を結んでいるのは事実であるし、
強盛大国を目指して政府が奔走しているのも事実である。


単にほとんどの日本人が知らないだけの話なのだが、
「北朝鮮は鎖国政策を取っているに違いない」と信じてる人間からすれば、
ここに書かれている内容は「嘘」になるらしい。訳が分からない。



朝鮮学校の教科書が日本のそれと毛色が違うのは確かだし、
それはアメリカに対して真っ向から非難することが出来ない日本の弱みに
反映されたものでもあるが、少なくとも日本人に差別感情を植え付けようとするものではない。


主なターゲットはアメリカであり、次点で韓国の軍事政権時の為政者である。






漫画「ドラえもん」で例えるなら、
出木杉くんがジャイアンの横暴を非難したところ、
なぜか、スネ夫が「俺を差別するなぁああ!」とキレたようなもので、

まるっきり意味不明というか、何を考えているのかさっぱりわからない。


そもそも、日常的に暴力の被害にあっているのは
スネ夫も同じではないかと思うのだが、このスネ夫、
「ジャイアンは俺を守ってくれる(キリッ)」と黄昏ているわけで、
現実が見えていない。


アメリカに対する攻撃的姿勢を「日本に対する差別感情を扇動するもの」とみなし、
大騒ぎするのはクレイジーとしか言いようがないのだが、
ミサイル騒動しかり、核実験しかり、北朝鮮に関する日本の反応は、
おおよそ、上のようなものである。一言で言えば、意味が分からない。


北朝鮮の主張を拾ってみる限りでは、
彼らは「日本がアメリカを支持すればするほど、
同盟国、敵国とみなさざるを得なくなる」と考えているのだが、
どうも、その辺がよくわかっていないらしい。



日本における朝鮮学校の批判は、
得てして総連に個人的な感情を抱いている活動家に
コメントをさせ、いかに朝鮮学校が腐っているかと喧伝する類のものが多いが、
これなどはネオナチに現代ドイツ史についてレクチャーさせるようなもので、
意見としては尊重するが、学術的には価値がほとんどない。


のだが、なぜか、これらプロパガンダと真っ当な社会学者の意見とを
両論併記して、さも前者に傾聴の価値ありとする印象を与えてしまっていて、
そこは、非常に悪質かつ問題のあるものだなと思わざるを得ない。


共謀罪成立を喜ぶ愛国者って一体・・・

2017-06-17 18:47:43 | 日本政治
共謀罪強行成立記念!
安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る「共謀罪トンデモ答弁・暴言録」
(http://lite-ra.com/2017/06/post-3245.html)


共謀罪の何がいけないかについては
リテラを初め、他サイトが言及しているので、
ここでは別の大変重要かつ見落とされている点について触れる。


警視庁公安、右翼団体「草莽崛起の会」
構成員20人の運転免許証を取り消す
(https://matome.naver.jp/odai/2148854745323188101)


賛成派・反対派ともに
政府の意向に反対する人物や団体が不当に逮捕される恐れがある
という認識の下で動いているように感じるのだが、


右翼団体も被害にあう可能性がある

という点についての認識が甘い気がする。


現在の公安は右翼団体も監視の対象にしており、
森友学園や在特会の事件を見ても知れるように、
与党は利用できる間は彼らを持ち上げるが、
自分の身に危険が及ぶと知るや否や、簡単に切り捨てる。


特に橋下徹の在特会批判は
虎が狼に対して「獣を食って殺すとは不届き千万!」と一括したような話で、
「俺は差別主義者ではありませんよ」とアピールするために桜井誠を
スケープゴートにしたような事件だった(不思議とネット右翼はスルーしているが)


つまり、将来的に政府が右翼を捨て駒にして
政権の維持に努めようとすることは十分考えられるし、
現に、森友学園・加計学園問題では、そのように動いている。


私は右翼の街宣活動やビラ配り、デモ行進については
否定的に考えてはいるが、だからといって、彼らを不当に逮捕することが
合法となるものに賛成する気にもならない。


ところが、当の愛国ごっこに興じる人々が
やれめでたやとはしゃいでいるのは、何と言うか、
の器具が揃ったことを喜ぶ豚や牛を見ているようで何とも言えない気持ちになる。



共謀罪の問題は、誰が危険か否かの境界を公権力が恣意的に線引きする点にある。


支持をするのは
「自分は大丈夫」という根拠のない自信を持っているからなのか
「チョーセン人が捕まる様をこの目で見たい」という願望を持っているからなのかは知らない。

だが、つまるところ、それは「他人はどうなってもかまわない」という性根が
前提として存在するわけで、どこまで行っても、それは「視野が狭い」のだろうなと感じられる。