時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

パリ同時多発テロ事件の背景

2015-11-14 22:54:08 | 中東
いつか起きるなと危惧していた事件がついに発生してしまった。


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パリはすべての学校、大学、図書館、娯楽施設で作業が閉鎖された。
パリ市役所は市民らに対し、必要最低限、表には出ないよう呼びかけている。
観光エクスカーションは取りやめられ、地下鉄も数駅が閉鎖された。
これらはすべて11月13日金曜日夜に起きたテロ事件に関連し、市が安全対策として講じた措置。


テロによる犠牲者の数は仏マスコミの報道ではすでに150人を超えている。
パリのモレンス市長は死亡者の数が120人に達したことを明らかにした上で、
この数値は今後も増える恐れがあると語った。負傷者の数も200人を超えている。

死者が最も多かったのはバタクラン劇場でおよそ100人が死亡。
劇場内ではテロリストが人質を取って立てこもったため、
仏特務隊が突入をかけ、これによりテロリスト4人が殲滅された。

さらに3人がサッカーの独仏戦が行われていた「スタデ・デ・フランス」
スタジアム付近で死亡したが、このうち2人は自爆テロ犯だった。
特務隊員のなかにも犠牲がでており、バタクラン劇場での突入作戦の際に4人の警官が殉職している。

バタクラン劇場にいたテロリスト4人のうち3人が自爆犯だったことが判明した。
テロリストらは特務警察による突入作戦の開始を悟るとベルトに固定していた爆破物を作動させた。


オランド仏大統領は声明のなかでテロリストに対する作戦を安全に行うことを約束していた。

仏検察の声明によれば、テロはパリの6か所で同時に行われた。
現在、「テロ目的による殺人」および「犯罪的襲撃の組織を目的とした
犯罪グループの創設」事件として捜査が開始された。少なくとも7人のテロ犯が
事件に関与している疑いがあり、その捜索が行われている。

そのうちの数名はまだパリ市内に潜伏している危険性がある。


テロの犯行声明は「IS(イスラム国)」が出している。
伊TVの「スカイ24」の報道では、TV局が入手したISの声明には
「これはシリアに対する復讐だ。これは仏にとっての9・11だ」と書かれている。

オランド大統領によって仏全土に非常事態がしかれた。
秩序維持のため、パリには軍隊が発動され、1500人近くの兵士が警備にあたっている。
仏の国境は完全に封鎖。仏では同日13日のテロの発生よりも前に
1か月を期限とするビザなし通行が一時的に禁止されていた。

これは11月末にパリで開幕の国連の世界気候サミットに関連したテロ対策だった。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/incidents/20151114/1164156.html#ixzz3rT814sSK
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なぜ「いつか起きると思っていた」と書いたかと言うと、
フランスはアルジェリアやシリア(実は元フランス領)を初めとして歴史的に
アフリカや中東を植民地支配してきたのだが、その反省をするどころか、
近年では2011年にリビアをアルカイダと一緒になって空爆を仕掛け文字通り消滅させたり、
シリアに限って言えば、継続的に国内の反政府組織を軍事支援し、
今年の9月にはIS掃討を大義にアサド政権の許可を得ずに空爆していたからだ。

これだけ露骨な軍事干渉をしていれば恨まれるのは必然だろう。
事実、フランスの軍事介入がテロの動機だったと語る証言者もいる。

今のところ下手人だと自称しているISは今回の事件を「フランスにとっての9.11」だと語っているが、
フランス植民地支配の歴史を思えば、もっと事件の根は深いものであり、
仮にIS以外の人間の犯行だったとしても、それは特に驚くべきものではない。

この点に関して、イランラジオのミールターヘル解説員の記事が参考になると思う。


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ISISが今回のテロ攻撃の犯行を認めたことから、
なぜこのグループはフランスで再びテロ攻撃を行ったのかという疑問がわいてきます。

その答えは、ISISはフランスの対ISIS連合への参加、
とくにこのグループの拠点への空爆に報復し、このテロを行ったということです。

こうした中、フランスは現在中東、とくにシリアで
以前自分たちが行った行動の始末をしているということができるでしょう。

実際、イギリスやフランスといった国は、EUの重要な2つの加盟国として、
アメリカやそのアラブの同盟国とともに、ISISやその他のシリアのタクフィール主義の
グループの創設や強化に重要な役割を果たし、
現在、この行動の結果はヨーロッパに現れ、
テロリストのヨーロッパへの帰国により、ヨーロッパにテロが拡大しました。


ヨーロッパ、特にフランスは、シリアでのテログループの創設と
拡大における彼らの支援の結果がいつか自分たちに返ってくるとは思いもしませんでした。

現在、ISISの創設と強化の要因となったフランスといった国は、
いわゆる国際的な連帯の枠内で、ISISに対抗しようとしています。

ヨーロッパの政府は現在、ISISに対する消極的な対応の継続は
ヨーロッパの領土深くにその攻撃の裾野を拡大する原因になりうるという結論に達しています。

フランスと連帯を組むアメリカは現在、ISISに対する効果的な対策を妨げています。
これに関して、ロシアのプーチン大統領は、アメリカは
シリアのテログループの拠点に関する情報を一切ロシアに渡していないと強調しました。


実際、現在、西側は自らが中東でまいた
テロの種から生まれたものを、ヨーロッパで刈り取っているのです。


EUはフランスでの今回のテロ攻撃に対して、再度高レベルで会議を開き、
この破壊的な現象に対する新たな措置を講じることが予想されます。

しかしながら経験が示しているように、テロ攻撃のイニシアチブをとっているのは
テログループであり、彼らが攻撃を行う時間と方法を計画していることから、
この問題は、数多くの治安対策にもかかわらず、フランスをはじめとする
これらの国の治安機関や警察を消極的な対応に向かわせているのです。

http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/59767-%E3%8
3%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%9C%80
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シリアのアサド大統領は今回のテロについて、強い憤りを示し、
「この残忍なテロによってフランス国民が受けた苦しみは
 我が国の民が5年間、じっと耐えてきたものだ」と述べた。


シリアの公式メディアは次のような文を載せている。


The source added that
  the Syrian people who have been suffering for five years
           from the crimes of the foreign-backed Takfiri terrorism,
  understand, more than any other,

  the ugliness of what has happened in Paris and
  the risks
posed by terrorism to the world security and peace.

当局は次のコメントを付け足した。
「シリアの人民は5年間、外国から支援を受けてきたタクフィール主義のテロによる
 犯罪に苦しんできた。我らは他の誰よりもパリで起きたことの酷さを、
 そして世界の安全と平和を脅かすテロの危険を理解している」
(http://sana.sy/en/?p=61248)

シリア当局はパリ事件の残酷さを同じテロの被害者として共感し、非難しているが、
この付け足された言葉の重みは凡百の平和主義者のそれを遥かに凌駕する。


今回のそれは完全な無差別テロであり、シリア当局の姿勢を見習い、激しく非難しながら、
かつ、事件の背景であるフランス植民地主義の歴史と現在の中東政策の検討を行うべきなのだろう。


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