時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

スターリン主義再考

2015-05-31 23:33:47 | 浅学なる道(コラム)
スターリン主義というと、たいてい読者は、
独裁・暴政・弾圧・飢餓等々のイメージを思い起こすだろう。

私自身は、良くも悪くもソ連が無くなった後の時代に幼少期を過ごしているので、
ソ連に対するマイナスイメージというのは、あまりないまま生きることが出来た。


加えて、ロシア人の女性(当時20代だったと思う)にロシア語を少しだけ習った
こともあり、ロシアに対しての印象は、かなり良いものだと思う。


ある程度、難しい本を読むようになってから、
右も左もソ連批判、ソ連地獄論に執心していることに違和感を覚えたのも、
この時の影響、つまりロシアがそこまで非道い国だとは到底思わなかったことがある。

実際、連中が総括(笑)に夢中になっていたちょうどその時に旧東側、第3諸国への欧米の
軍事・経済干渉が実行されていたわけで、漠然と感じた違和感も強ちウソではなかったのである。
(この軍事・経済干渉は、現在、リビア・アフガン、イエメン、ウクライナ等多岐に渡っている)


さて、今回、取り上げるスターリン主義だが、
私は、この「スターリン主義」という言葉は随分とおかしな言葉だと考えている。


理由は単純明快で、当のスターリンは、いわゆる独裁に反対していたからだ。

スターリンの講演録である『レーニン主義の諸問題によせて』という本を読むと、
彼がソ連の一党独裁や一人のリーダーによる独裁に断固反対していることがわかる。


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党の独裁という慣用句が、われわれの実践活動のなかで多くの危険と政治的な
マイナスとをひきおこしうるものであるということについては、私はもはやのべない。

保留条件なしでこの慣用句をもちいいることは、つぎのことをほのめかすようなものである。

(a)非党員大衆にむかっては、反対をするな、自分の意見を言うな。
  なぜなら、党はなんでもできるのだから、また、わが国には党の独裁があるのだから。

(b)党の幹部にむかっては、もっと思い切って行動せよ、もっとしっかり締め付けよ。
  非党員大衆の声に耳をかたむけないでもよいのだ。わが国には党の独裁があるのだから。

(c)党の上層部にむかっては、多少は自己満足のおごりにふけってもかまわない、
  すこしぐらいはうぬぼれてもかまわない。なぜなら、わが国には、党の独裁が、
   「つまり」首領の独裁があるのだから。

大衆の政治的積極性が高揚しているこのとき、
つまり、党が注意深く大衆の声に耳をかたむけようとする心がまえが
われわれにとって特別にたいせつなことであり、

大衆の要求にたいして敏感であることがわが党の基本的な戒律であり、

政治上の特別な慎重さと特別な柔軟性とが党に要求されており、

そして、うぬぼれという危険が、
大衆をただしく指導するという仕事のなかで、
党の直面しているもっとも重大な危険の一つになっている
というような現在こそ、

これらの危険について注意することは時宜に適している。


(1926年1月25日
スターリン著、田中順二訳『レーニン主義の諸問題に寄せて』)

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以上の発言を読む限り、スターリン主義=個人崇拝、独裁と定義するのはおかしい。
スターリン自身は、その逆のこと(首領崇拝、党の権力濫用の戒め)を主張したのだから。

なるほど、マルクス主義はマルクスが唱えていたこと、あるいは
それを継承・発展させた思想なのだから、これは特に問題はあるまい。

だが、スターリンの意見とはおよそ繋がりのない、正反対の思想を
スターリン主義と呼び、あたかもスターリンが推進したかのように定義するのは変だ。


本来なら、スターリン主義=一党独裁の警戒、批判、自粛と定義すべきなのである。


そして、これは何もスターリンの弁護ではなく、むしろその逆で、
なぜ個人崇拝や党権力の濫用を非難したにも関わらず、結果的に
そのような体制へと移行してしまったのかという重大な問題点が浮き彫りになってくる。



ヒトラーはユダヤ人への差別を露にしており、
大衆がその差別思想に共鳴したことでナチズムは機能した。

翻って、ソ連では一党独裁への批判が他ならぬスターリンがしたにも関わらず、
結果的にはスターリン自身のカリスマは絶大なものへとなっていった。


この違いは大きい。ユダヤ人を殺せと言ってその通りに実行したナチズムと
いわゆる独裁に警鐘を鳴らしたにもかかわらず、その道を歩んだスターリニズム。

後者のほうがより深刻な問題ではないか。

つまり、スターリン主義の再考は
ソ連時代の問題点、欠点を、より深く考察するために避けて通れないと私は思うのである。



また、このスターリン主義と言う言葉を好んで使った新左翼自身が
内ゲバ等の暴力沙汰を起こしたり、議会主義を否定したり、
ブームが過ぎ去った後、我先にと右翼・中道に転向したりしたわけで、
スターリン主義と言う言葉自体が提唱者のイデオロギーの正当化に利用された側面がある。


事実、ハンガリー騒乱においてソ連軍を派遣し民衆を弾圧した1950年代半ば、
その最高責任者であるフルシチョフがスターリン主義を語ったことこそが、
党内のスターリン派へのけん制として、批判を行ったのではないかという疑惑を生ませる。


この辺の追求は本来、ソ連研究者がしなければらならないことなのだが、
どうもしているのかしていないのかよくわからない(恐らくしているとは思う)


日本のロシア研究者は都合よく、自分たちの意見にあった学者の本しか
翻訳しないため、本国の研究動向が把握しづらい。そして、日本人研究者は
冒頭に述べたようにソ連地獄論に奔走し、そのように単純なイメージで
片付けられる問題ではないことに気づかない。これは非常に問題があるのではないだろうか。

イルカ食は日本の文化ではない

2015-05-30 23:51:56 | ザ・コーブ
あえて挑戦的なタイトルにしたが、実際問題、
イルカを食べるのが日本の文化かと言うと、それはカッコつきじゃないかと思う。


根拠1 日本全体を見れば、イルカを捕らない(食わない)地域のほうが多い。

東北以北では、熊の手を食材にする地域が一部存在する。
だからといって、熊の手を食うのが日本の食文化と言われたらYesと答えるだろうか?

・・・という話。
「熊の手を食うために熊を殺すな」と言われて激昂する日本人がどれほどいるのかという話。


根拠2 外国にもイルカを食べる地域はある。

例えば、デンマークがそれである。
魚を食べるのが日本の文化と言われて「そうだ!」と答えるか?

・・・という話。


根拠3 文化を主張してもイルカ(クジラ)漁擁護にはならない。


根拠というよりは、文化を連呼しても言い訳にすらなりませんよという話。

リテラでもイルカ漁の記事があったが、リテラを含め日本の大抵のメディアは、
世界の反捕鯨団体は商業捕鯨に反対しているのであるという理解がない。

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しかし、いずれにしてもキャロラインさんには、
どうして日本人に対してだけ批判の目を向けるのですか、と言いたいのです。


鯨やイルカを獲るのは何も日本だけではなく、
今言ったデンマークやノルウェーやそれにアラスカのイヌイットたちも行っているではないですか?


米国政府が追い込み漁に反対するというのであれば、
何故自国民であるイヌイットたちの漁にも反対しないのか? どうしてなの、キャロラインさん!


日本人は文明人だけども、イヌイットたちは遅れた人々とでも考えているからなのでしょうか?

やっぱりどう考えても日本人に対する偏見があると言わざるを得ません。
それが本当のところでしょう。

http://blogos.com/article/78399/
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イヌイットがやっているのは生存捕鯨というもので、
ビジネスではなく、自分たちが食べるものとして捕る捕鯨である。

このタイプに関しては、国際捕鯨委員会も禁止していない。


つまり、真っ当な反捕鯨団体は伝統的な食文化を否定していない。


クジラ・イルカ(小型のハクジラの総称)を商業利用することに反対しているのである。

そう言われて今回の事件を振り返ってみても、
海外はイルカを水族館に売り飛ばすことに注意している。



実際、『ザ・コーヴ』でもイルカビジネスの闇として太地のそれを紹介している。

食品偽装や水銀の含有量の高さの指摘など、もしこれがイルカではなく豚や牛なら
通常の食品問題として提示されているものであることが容易に理解できるだろう。



よく聞く「牛や豚は良くてイルカは何で駄目なんだよー」という言い分も、
「牛や豚は養殖可能だが、イルカは不可能で希少な天然資源だから」と返されて終わる。


近年、ウナギを巡って漁獲量を減らすように働きかけがされているが、
別にウナギが可愛そうだから減らせと言っているわけではない。
養殖の技術が完全でないのに、取りすぎるから減らせと言っているのだ。


イルカもそれと同じで、「養殖できないから」「捕りすぎだから」が背景としてある。
(実際、かつて捕れていた場所で乱獲が原因で漁が不可能になったところがある)



このようにイルカ漁の問題とは経済的、産業的な問題として
大抵の海外の反対団体は扱っている。同情論で反対しているのは案外少ない。
(もちろん、個人的にイルカに愛情を寄せている人間は多いが)


この辺を全部すっ飛ばして「日本文化に対する毛唐の攻撃だ」と語る輩が多いが、
それは捕鯨擁護の理屈としては、全然成り立たないわけで、
「無償で給与しています。商売が目的ではありません」とか
「食品偽装はしていません。水銀の含有量もそんなにありません」と言わなければ
向こうにとっては、「お前は何を言っているんだ?」状態なんじゃないかと思う。


・追記(2015年5月31日00時39分)

もちろん、大きな区分としてはイルカを日本の伝統的な食材だと言っても
間違いではないと思う。ただ、上に述べた商業捕鯨や食品偽装の問題について
何も知らない輩が多いように感じたので、あえてこのようなタイトルにした。

イルカ追い込み漁について一言

2015-05-26 00:19:29 | ザ・コーブ
イルカ追い込み漁で捕獲されたイルカを水族館に売却してはならないようになった。

速報されたわりには、大事になっていないなと思っていたら、
2、3日が経過して、保守系メディアを中心に騒ぎが起きている。

間違いなく今後、池上彰がいつもの頓珍漢な解説をして大衆の思考力を奪うだろうが、
一言言えば、イルカ追い込み漁はイルカの捕獲がメインである事業で、
今回の措置はかなり苦しいものだったと思われる。


なにせ、イルカを生け捕りするだけで、1500ドルの大金が得られるのである。


現在、若くて傷を負っていないイルカは生け捕り以外に入手することができない。

しかも、一日に長距離を遊泳し、音に敏感なイルカが、狭い水槽に入れられ、
人間の歓声に囲まれながら芸を行うのだから、ストレスですぐに死んでしまう。

当然、需要は相当にあるわけだ。


イルカ・ビジネスはロー・コスト(沿岸漁業なので石油がかからない)、
ハイ・リターン(1頭1500ドル。傷つきは食肉として販売)のボロい商売なのである。




このイルカ・ビジネスを暴露したのが『ザ・コーヴ』だった。

追い込み漁の盗撮だけピック・アップされるが、実際には、
イルカ・ビジネスの構造と、食肉偽装(※)の解説に時間が取られている。


そもそも、イルカ調教師が行っている保護運動なのだから、
当然、水族館ビジネスに対する反対が活動のメインになっているのは馬鹿でもわかる。



それを理解せず、誇り高き日本人が的外れの批判をやっている間に、
国際社会は大きく動いていたというわけだ。



今回の措置は追い込み漁自体を規制するものではないので、強い批判ができない。
太地町をはじめとした「伝統」や「文化」を強調する連中を封じる上手い手だったと思う。
(水族館だけでなく動物園も巻き込んだのも良かった)


追い込み漁を隠れ蓑に世界の水族館にイルカを売りさばいてきた太地町。


皮肉にも、「伝統」や「文化」を前面に押し出し事業の倫理性を正当化したために、
彼らがもっともやりたかった事業が撤退に追い込まれてしまった。大失態である。


採算が取れなくなる可能性大である以上、
今後、追い込み漁自体も規模を縮小せざるを得ないだろう。






※イルカを鯨として販売している。イルカは小型ハクジラの通称だから、
 間違いではないが、それでも勘違いして買う客はそれなりにいるだろう。

橋下徹の功績・補足

2015-05-26 00:14:36 | 日本政治
橋下徹が実際には、その辺の悪徳政治家と大して変わらないことは
ちょっとばっかり、彼について調べた人間なら、誰でも知っていることである。


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橋下市長が

1 自分の「橋下徹後援会」会長の息子の奥下剛光という人物を

2 大阪市の特別秘書に雇って、

3 大阪市の財政から年600万円余りの給与を払っているが(大阪市で言うと課長職クラス)

4 ちっとも仕事をしている風でもないので

5 奥下氏に支払った給与を橋下市長が大阪市に返せ

という住民訴訟が起こされているのですが、

この奥下氏は日本で唯一の政令指定都市の市長特別秘書なんです!


自分の後援会長の息子を縁故で雇って
大阪市から税金で高給支払っていて全然働かないのにまだ辞めさせない!


これほど納税者をナメた行為がありますか?

http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/614b4d8c748721c599eadad9118cd007
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橋下徹がやったことは、(主に福祉の)コスト・カット、
ハコモノ(自分の友人が経営している企業に仕事を斡旋)、
公募と言う名のコネクション採用(自分の番記者を学校長に任命)である。


もっと簡単に言えば、これまであった「無駄金」を削り、
新しい無駄金を作り、大阪の借金を前より増やした。

これが全てである。



以前、橋下がやっていることは
中古車を売り、欠陥車を買うようなものだと述べたことがある。



いまだに信者は彼を崇拝しているわけだが、連中は上の記事を読んでも、
まだ彼が既得権益と対決する改革者だという幻想を抱くのだろうか?

まぁ・・・抱くんだろうな。信者とはそういうもんだ。


結局、橋下徹というのはテレビしか後ろ盾がなく、過激な言動で
知識がなく、ミーハーで影響されやすい人間(ネトウヨが多い)の関心をひくことでしか
集票することができなかったプロパガンダの申し子のような男だったのだろう。

橋下徹の功績

2015-05-25 22:20:32 | 日本政治
そんなものはない!
・・・と一言で済ませられる問題ではないので、あれこれ書きたいと思う。


橋下大阪市長の功績というまとめ記事を偶然見つけた。

これを見ると、どうも信者はよくわかっていないんじゃないかと思えてならない。


結論から述べると、橋下徹は知事時代に
6兆4千億円という過去最大の輝かしい赤字をたたき出した功績がある。


借金を減らすどころか、1600億円も借金を増やした。これは本人も認めているところである。


しかも、この間、橋下は府民・市民の福祉サービスを縮小させた。
2011年時点で、教育・医療福祉を見るだけでも、これだけのことをしている。


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●1年期限の「定数内」講師を急増
 07年4206人(9・2%)→10年5780人(12・3%)

●私学経常費助成を大幅削減
 11年度は小学校50%、中学校35%と削減幅を拡大。
 高校は昨年同様10%を削減。小学校への1人当たりの助成額は、
 府は11万5千円で全国最低レベル(国標準30万円)に

●学校警備員補助を廃止
 09年度は交付金化(5億円)→11年度からゼロに。
 橋下知事「子どもの安全は府の仕事ではない。
 学校設置者の)市町村の仕事」(10年9月議会答弁)。
 府の補助廃止に伴い2011年度は9市町村が廃止

●さらなる府立高校統廃合を計画
 「3年続けて定員割れの学校は廃校」(教育基本条例案)

●街かどデイハウス補助金を削減
 09年度から基本補助の上限を600万→300万円
 補助金交付額は07年度4億6172万円→10年度1億4058万円
 街かどデイハウス数は07年度127→10年度110
 対象市町数は07年度28→10年度24

●高齢者住宅改造助成と見守り訪問を廃止
 住宅改造助成は09年から、見守り訪問は11年度から廃止。
04年度1173件(4億3900万円)。

●障害者・福祉団体への補助金を廃止
 団体運営費補助=07年度8団体1235万円→09年度以降0、
 施設運営補助=07年度3団体3283万円→11年度1団体794万円

●救命救急センターの補助金削減 千里救命救急センターは3億5千万円を0に

●公害患者死亡見舞金を廃止 09年度から廃止。
 認定患者数は約1万4千人(08年に288人、1440万円)

●障害者ガイドヘルパー派遣事業補助金を廃止 11年度からゼロに(07年度は5029万円)

●障害者福祉作業所、小規模通所授産施設への補助金を削減
「障がい者福祉作業所運営助成費」=新規分への補助は10年度限りで廃止、
 約2億3千万円(既補助決定分は継続)。

●「障がい福祉施設機能強化推進事業費(授産施設)」
 =府単独事業だったが10年で廃止。1億2247万2千円


●「小規模通所授産施設機能強化支援事業」=府1/2、
  市町村1/2だったが府は10年で廃止。4212万円81施設。

●府の補助金対象となっている障害者福祉作業所・小規模通所授産施は
 07年4月1日282施設→11年4月1日72施設

●軽費老人ホーム(ケアハウス含む)運営助成費を改悪


●老人福祉施設運営助成費を算定する際の「民間施設等職員給与改善費」
(職員の勤続年数に応じて設定)を段階的に廃止。
 11年度は11年度所要額の1/3減、12年度は11年所要額の2/3減、13年度で全廃。

●福祉医療(通院・入院とも1回500円)の改悪を計画
 重度障害者・児(1・2級、64歳までの精神障害者は対象外)、
 ひとり親家庭(18歳まで)、子ども(通所0~2才、入院0~6才)

http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-11089572990.html
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ノンフィクションライター・森功氏は、

「単年度で見ると黒字になっていますが、
 これは借金をして黒字に見せかけただけ。実際は赤字ですよ」

要するに、財源不足により、国からの地方交付税が十分でないため、
 その穴埋めに臨時財政対策債という地方債を発行して借金をしただけです。
 年間3000億円ぐらいずつ、合計1兆円は突破しています


「橋下氏がやったことは結局、コストカットであって、収入を増やしていません。
 企業で言えば収益を生む構造になっていないのです。
 税収をもたらす政策を立てるべきで、カットだけでは企業は成り立ちません。
 それをもって再建というのはおこがましいですよ」

と述べている(http://www.asagei.com/2421)

これに加えて、100億円以上をかけて欠陥ビルを購入し、
しかもそのビルに府庁を移転しようとし、見事に失敗した。金をドブに捨てたわけである。


コストカットで浮いた金でハコモノをやり、見事に赤字を増やした橋下。


ネットの信者を騙すのはわけないが、さすがに関係者を騙すことはできず、
橋下は、その後、大阪府知事から大阪市長へとランクダウンした。


その後も、校長を公募したら不祥事を起こされたり、
しかもその校長が元・橋下の番記者だった(つまりコネ採用)り、
尊敬していた石原と喧嘩別れしちゃったりと政治家としての信用は落としまくる一方で、
ますます、彼は、メディアを利用し聴衆を扇動するポピュリズムに依存するようになった。


大阪人権博物館への執拗な攻撃・経済封鎖や在特会の代表者との口論など、
メディアやネトウヨが喜びそうなネタを投入しては、主役を演じきった。


その最大のイベントが今回の大阪市住民投票だったと言っても過言ではない。
(ちなみに、まとめ記事ではこの茶番にかけた無駄金についてツッコミを入れていない)


逆を言えば、彼はそうすることでしか地位を維持することができなかったわけである。


既得権益って、なに?既得権益者って、だれ?(追記あり)

公務員叩きは結局市民生活に跳ね返ってくる一例


橋下の手法は、大阪府(大阪市)は腐敗している、公務員はその手先だ、
だから正義の俺が正してやるというストーリーをメディアに拡散させて、
選挙で投票数を稼ぐという強引なやり方だった。

これは短期的には強力なものだが、時間が経てば、
それほど大したことをしていないことが周囲にバレる弱点もある。


今回の住民投票で全住民の3分の2が反対・棄権をしたのは、それが原因だろう。


橋下はバレそうになるたびに、新たな話題を投入し、
ごまかし続けて8年間を過ごしてきたわけだが、もう限界だった。

自分より先輩議員の極右政治家、石原慎太郎と、既存の自民党を
敵に回してしまった以上、政治家としての後ろ盾を失ってしまった。
(特に前者との決裂はかなり手痛いものだった)


引退表明をしたのは何も酔狂でやったわけではなく、
本当に今後、政界で生きていくだけの力がないのである。


政治家には支持基盤というものが必要だが、橋下の場合は、それがテレビしかなかった。

彼が脱税をしようと不倫をしようと、問題発言をしようと、
主張が二転三転しようと、大したダメージもなく過ごしてきたのはそのためである。

とはいえ、同じテレビを使う政治家でも、橋下は安倍とは違う。
安倍には家系という強力な武器があり、自民党という強力な集票マシーンもある。

他方、橋下は支持者が変動的であり、その都度、過激な演出をしなければならない。
顔の見えない支持者しかいない。いつ崩れるかわからない砂上の楼閣だったのだ。


冒頭で紹介したまとめ記事(虚偽の情報が多分に含まれている)を見ても、
彼の信者が見事にネトウヨしかいないことがわかる。


結果として、彼の功績は、借金を増やし、福祉を縮小し、
大阪における差別を黙認・助長させ、極右を増やしたことが挙げられるだろう。

大した男である。本当に。

佳子内親王・脅迫犯は極右思想の人間だった

2015-05-24 00:08:56 | 日本政治
私は常々、他国や他民族の人間を差別する人間は、
自国や自民族の人間に対しても差別をする
と考えている。



先日の佳子内親王に対する脅迫を行った人物が逮捕されたが、
話を聞けば、どうも典型的な排外主義者、つまり安倍や橋下の親戚だったらしい。


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巨大ネット掲示板「2ちゃんねる」上で
佳子内親王を脅迫したとして、20日夜、東京・大久保在住の男(43)が逮捕された。

佳子内親王を名指しして「逆らえないようにしてやる」
「ICUには同志の仲間がたくさんいる」と書き込み、
皇宮警察の警備を強化させるなどした偽計業務妨害の疑い。

報道によれば、男は調べに対して「警察の業務を妨害するとは思わなかった」
「スレッドを盛り上げるための悪ふざけだった」と話しているという。


~中略~
本サイトが容疑者のものとみられるツイッターアカウントを調べてみると、
そのプロフィールには「行動する保守運動支持」との自己紹介が。

さらに、頻繁にこんなツイートを投稿した形跡が見られたのである。


〈これ迄、日本人の無関心、日本人の和を尊ぶ国民性につけこんで、
 どれだけ反日在日、外国人、サヨク、メディアが跋扈していたか! 
 こいつ等は弱者を騙る敗戦利権既得者共だ〉(2013年1月16日)

〈結局暴力反原発、不逞在日、慰安婦と ぜーんぶ繋がってますがな〉(13年2月18日)

〈韓国や在日韓国朝鮮コミュニティが嫌いな最大の原因は、
 彼等の社会に日本に関して『反日』というキーワードで思考停止し
 自浄能力が全く働いてないところ。強制連行や従軍慰安婦など
 次から次へと嘘の上塗りをして、日本人が怒らないと思っているのは正気の沙汰ではない。
 そこんとこわかってる?〉(13年4月2日)

〈朝日新聞はもはや新聞ではない。というかずっと前からだか。
 朝日新聞は単なる反日原理主義者の機関紙にすぎない。
 反日原理主義で有ることが利である団体、個人が崇拝しているだけ。
 カルト宗教と全く同じ。
 彼等は自分に異を唱えるものは全て敵対視し攻撃を加える〉(14年8月22日)

(沖縄の反基地運動として他のユーザーが提示した写真を引用しながら)
〈沖縄の朝鮮左翼? いや、支那人に行動が似てるな。
 人の車に勝手にのっかり、勝手な主張。悪い奴らだ。”
 うわぁ~(; ̄ェ ̄) 仮に同じことされたら
 間違いなくマジギレしてこの婆ブン殴ると思う…〉(14年6月30日)

~中略~

一方、サヨクは生理的に嫌いだったらしい。

〈純粋にサヨクの人に聞きたい なんでお風呂に入らないの? 
 もしくはお風呂に入れないの? 先日サヨクの集会を偶然見たけど、
 もうクサイ、クサイ、クサイ 煽り抜きで、本当に臭い。
 ・°°・(>_<)・°°・。〉(12年11月30日)


このように男は、明らかに在特会ら行動保守にシンパシーを感じ、
ヘイトデモに賛同し、「サヨク」や朝日新聞を嫌悪し、
「在日特権」というデマを信じ込む、ネット右翼の典型のように見える。


そして、気になるのは、安倍首相に関連するツイートだ。

安倍首相のTPP交渉に関するブログらしきものを読み
〈これは絶対によんだほうがいいよ!いかに安倍さんがいかに凄いかがわかる。
 賢い人だ!〉と絶賛するユーザーに対して、〈この方とほぼ同じ見解です〉という返信をしている。


またニュース記事を引用し、
〈最高!! 安倍首相演説会..中国や韓国の記者も参加を希望したが、
 認められなかったという〉というツイートに対しては、
男は〈やっぱりね、一度挫折して這い上がってきた経験はでかいね〉
と好意的な感想を述べている。

http://lite-ra.com/2015/05/post-1124.html
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当サイトでは、朝日新聞は左翼ではなく、すこぶる権力側のメディアであると、
しょっちゅう説明している。逆を言えば朝日⇒左翼と解釈している人間は、
新聞記事(社説すら!)も読まずに右翼の手のひらで踊らされているわけだ。



このニュースは右翼サイトでも扱われているが、当初はこういう記事だった。

キチガイ左翼が佳子さまへ犯罪予告 
脅迫で警視庁が捜査へ 犯人は朝日新聞擁護の新大久保在住で自称韓国人の無職男性


このまとめ記事を書いたサイト管理人は、こうコメントしている。

「単体の書き込みだけ見てると成りすましっぽくも見えるんですが、
 前後の書き込み見るとマジモンのキチガイ左翼でしょうねこれ。」


見事に当てが外れたわけだ。


後の記事では、こうコメントしなおしている。

ネトウヨが朝鮮人を自称して
 過激な書き込みをするのは日常茶飯事なので驚きはしませんが

(このブログのコメント欄でもたまにあります。IPぐらいは変えましょうねw)、

この犯人の書き込み履歴からは
マジモンのキチガイサヨクにも見えるしでどうも判断に迷いますね。どっちなんでしょうか。

※ネトウヨの成りすまし書き込みって、
もっとバレバレなのが多い。あそこまで手の込んだ書き込みするのか?


結局、成りすましかい。アホちゃうか

http://nakamichisokuho.com/kaigainews/korea/kakosamakyouhakuhan-taiho.html


いかに誇り高き日本人(笑)が適当な判断をしているのかがよくわかる。
この管理人は四の五の言う前に誤報を流した謝罪をすべきだろう。


いっぱしのジャーナリストを気取るわりには、
自分たちのミスに大変甘く、いまだにコメント欄では、
現実を認めずに、あーだこーだとブー垂れている。これが日本人の一般的姿らしい。



ところで、リテラは「典型的なネトウヨ」と表現しているが、
「ネトウヨ」と「通常の右翼」の思想信条に違いはない。

あたかも別種のように表現することは、
結果的には、内親王に脅迫の言葉を送るようなアホと
通常の右翼は違うのだと言っているようなもので、あまりいただけない。



私の見る限り、誇り高き日本人というのは、歴史に無知で、
国語力に乏しく、自分の思い込みを前提に語るため、矛盾した発言をよく語る。


例えば、天皇に逆らうなど言語道断という意見にしたって、
その理屈に従えば、鎌倉幕府や室町幕府は当時の朝廷に逆らって出来たもので、
安徳天皇を入水自殺へと追い込んだ源頼朝や、後醍醐天皇に弓を引いた足利尊氏は
日本史上、最低最悪の反日主義者ということになる。そんなアホな話あるか!


ちなみに徳川家も、源氏の血を引く一門であり、
天皇殺しの末裔が明治維新直前までこの日本を支配していたことになる。


とすると、明治維新以前の日本は暗黒の時代であったわけだし、
武士は右翼にとっては許しがたい存在であるはずだが、実際には
右翼は武士道を取り上げ、昔の日本人=武士であるかのように語っている。


このように、イメージだけで好き勝手語っているので、
矛盾した発言をよく言っている。こういう間抜けどもが
標準的日本人にされるのだから我々一般日本人にとっては、大変迷惑な話ではあるまいか?

民主党・維新とつるむことを決意

2015-05-23 21:27:25 | 軍拡
まー、やっぱりというか何と言うか、
民主党が軍事問題に関して維新の党と協力体制を築くことにした。

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民主党の岡田代表と維新の党の松野代表が国会内で会談し、
後半国会の焦点である安全保障法制の関連法案について、
問題点が浮き彫りになるような審議が必要だなどとして、
与党側に徹底した審議を求めていくことで一致しました。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150521/k10010087141000.html
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ここで重要なのが、そもそも維新の党は
自衛権について、どのように考えているのかということだ。




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維新の党は、我が国の領土・領海・領空、国民の生命・財産を守るため、
平和主義を掲げる憲法の理念を踏まえながらも、現実的に出来うる限りの対応をしていく。


とりわけ、より即応性が求められる昨今の核・ミサイル技術の進展等を
含む安全保障環境の変化に応じ、「自衛権の再定義」が必要だと考える


従来からの日本政府見解では、
自国に対する武力攻撃が発生したか否かで個別的および集団的自衛権を区別し、
憲法で認められるのはこの定義に沿った個別的自衛権のみとしてきた。


他方、憲法に定められた日本国民の平和的生存権や
生命、自由及び幸福の追求権の趣旨を鑑みれば、

仮に、我が国が直接的に武力攻撃を受けていない状況下であっても、

密接な関係にある他国に対する攻撃の結果

我が国に戦火が及ぶ蓋然性が相当に高く、

国民がこうむることとなる犠牲も深刻なものになる場合には

それを阻止し我が国を防衛するために「自衛権」を行使することは

憲法解釈として許容されるものと考えられる。




これを「自衛権の範囲の明確化」、すなわち「自衛権の再定義」と呼ぶ。


ここで再定義された現行憲法が認める自衛権は、
純粋な他国防衛のための自衛権の行使を認めるものではなく、
国連決議もない他国の戦争に加わることに道を開くものでは断じてない。


本定義に基づく同盟協力の具体的見直しも必須であるが、
まずは自らを守る体制の整備と、外交努力や信頼醸成による
脅威の低減に率先して取り組むべきである。


とりわけ島嶼防衛等における武力攻撃に至らない侵害への対応、
いわゆるグレーゾーン事態への対処は、喫緊の領域警備の課題として取り組む必要がある。
また、再定義された自衛の措置が、国連による集団安全保障に移ったとしても認められよう。

https://ishinnotoh.jp/policy/policy3/
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「密接な関係にある他国」と文章をぼかしてはいるが、
維新の党のホームページの別の箇所では、安全保障は日米同盟が基軸だと明言している。


要するに、アメリカと戦闘した結果、
日本が攻撃され「そうになってい」る場合、
自衛権を行使すると語っているわけで、これは安倍政権の言い分と大差ない。



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日本の中谷防衛大臣が、
集団的自衛権を行使し、状況によっては
北朝鮮のミサイル基地を攻撃することが可能だと語りました。


ロイター通信によりますと、中谷大臣は19日火曜、
異例の表明として、北朝鮮がアメリカをミサイル攻撃した場合、
日本は北朝鮮を攻撃することが可能だと述べています。


日本の報道各社が、中谷大臣の話として報じたところによりますと、
このミサイル攻撃は大惨事になると思われる為、その結果を考慮し、
日本は北朝鮮に対するあらゆる軍事作戦に入る用意があるということです。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/54828-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%80%81%E3%80%8C%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AF%E5%8C%97%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E3%81%AB%E8%BB%8D%E4%BA%8B%E6%94%BB%E6%92%83%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E3%80%8D



中谷氏は、集団的自衛権行使につながる「存立危機事態」について、

「非常に深刻な被害が及ぶ事態では
『座して死を待つ』のではなく、日本なりの対応をしないといけない」と説明。

北朝鮮のミサイル基地の攻撃が可能かとの質問に対し、

「(米国が)武力攻撃を受けていることが大前提」としながらも
「深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」であれば可能との見方を示した。

(http://mainichi.jp/select/news/20150518k0000m010014000c.html)
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このように、自民党と大差ない(というより全く同じ)主張をする
維新の党と、民主党はどうやって協力しようと言うのか?


私は前から民主党は左右混合政党だと言っていたが、
これなどはまさにその典型例だ。協議はするが賛成はしないとは明言していない。


つまり、十分な討議を通じて、ズルズルと軍拡へとゴーサインを送る
腹積もりなのではないだろうかと思えてならない。



日露共同研究プロジェクトについて

2015-05-22 00:29:28 | ロシア・ウクライナ
日本とロシアの学者が共同で本を執筆するプロジェクトが進行中らしい。

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露日の協力が実った好例となったのが
両国の研究者グループによって出された露日関係史についての1冊。

そのロシア語版のパイロット本のプレゼンテーションは今日、
5月21日東京で開催されたフォーラム「未来の露日関係への視点」に合わせて準備されている。

このフォーラムには現在、日本を公式訪問中の
セルゲイ・ナルィシキン下院(国家会議)議長も出席した。

ナルィシキン氏はロシア語版の方で読者ヘ向けた挨拶文を載せてもいる。

本のプロジェクトの長を務めるのはモスクワ国際関係大学の学長で
アカデミー学者のアナトーリー・トルクノフ氏。

露日の研究者集団の作業を直接的に牽引しているのは
ロシア側はモスクワ国際関係大学東洋学科のドミトリー・ストレリツォフ学科長と、
日本側は法政大学法学部の教授でヴァルダイ・クラブのメンバーでもある下斗米 伸夫教授。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20150521/360924.html#ixzz3amsufbVl

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あのトルクノフと下斗米が仕切っているという時点で
内容は推して知るべしだが、まぁ一応学術書の水準にはなっているのだろう。
(私は買わないけど)


重要なのは、下斗米も述べているように、
別にこれが両国の政治見解に基づいたものではないということ。


ロシアには、それなりに反プーチン派というか、
下斗米いわく改革派、西洋主義者がいるわけで、トルクノフはその典型的人物だと思う。


つまり、はじめから語る人間は選別されているわけで、
その辺が本プロジェクトが特に問題なく進んだ背景にある。


下斗米本人も次のように述べている。

「日本はかつて中国や韓国と一緒に関係史を編もうと
 類似したプロジェクトをたてたことがありましたが、
 それとは異なり、この露日プロジェクトは成功したと思います。

 中国、韓国とのプロジェクト実現化の過程では
 過去の歴史の事実、時代の評価があまりにも異なったため、
 共通した見解にたどり着くことはできませんでした。

 ところが露日プロジェクトではそうした大きな矛盾や対立点はありませんでした。

 3年にわたる作業のなかで3度の公式的会談と非公式的会談が1度催されており、
 常時欠かすことなくコンタクトがとられてきました。

 プロジェクトは露日関係の、つまりロシア人と日本人が
 コンタクトを持った最初の瞬間からの全期間を網羅しています。

 とはいえ、一番の力点は20世紀に置かれています。

 つまり両国関係の拡大の主な段階は20世紀にあるととらえられていること、
 そしてプラスして領土問題、日本兵抑留問題、互いをどう受け止めているか
 というような問題点も個別のテーマとして取り上げられています。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20150521/360924.html#ixzz3amtHCdiU


なんだか日中韓の各学者による歴史教材作りについて軽くディスってるが、
これは恐らく、日中共同歴史研究についての批判なのだろう。

これは集団的自衛権の支持者というか提唱者である北岡伸一が
主導した研究プロジェクトだった。まぁ、結果は言わずもがなだ。


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日中歴史共同研究について、日本側座長の北岡伸一氏の談話が「読売新聞」に載っていた。

それによれば、日本の侵略戦争や南京虐殺事件について
日本側が認めたとする中国側の言い分にたいして、北岡氏が次のように反論している。


中国側は今回の研究で、日本が中国を侵略したことや
南京虐殺を認めたことが成果だと言っているが、議論した結果
そうなったのではなく、そもそも日本では多くの歴史家や政府も侵略と南京虐殺を認めている。



しかし、もし日本側が最初から日本の侵略や南京虐殺を認めていたのであれば、
日中歴史共同研究ということ自体が提起されなかったのでは? 



そもそも、日中歴史共同研究は、小泉元首相が靖国神社参拝を強行し、
さらに日本の侵略を否定する安倍晋三氏が首相になる、という事態の中で、
日本側が提起して始まったもののはず。


それをいまさら「日本の侵略や南京虐殺は日本は元々否定していなかった」
などと言うのは、あまりに不誠実ではないだろうか。

http://ratio.sakura.ne.jp/archives/2010/02/01221120/
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こういう部分でも、微妙に下斗米らしさが滲み出ているわけだが、
上の北岡などは存外、正直で、共通の歴史像が描けなかったから
パラレル・ヒストリーという手法をとったと告白している。


この点、下斗米は
「この研究の目的はいわゆるパラレル・ヒストリーですから、
 日本とロシアでどの問題についてどれだけ違いがあるかということを
 互いに民間の立場で調べるということでした。

 ですから各国を代表する歴史家、国際政治の専門家が書いていますが、
 これは個人の見解であって、政府の見解を述べているわけではありません。

 にもかかわらず、私はこれは大変成功したのではないかと思います。
 その理由は、情報、意見がお互いに違うことを前提に研究を始めたのですが、
 意外に接点があることがわかりました。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20150521/360924.html#ixzz3amx72FIe

と、まぁプロジェクトの主導者の一人だから、
立場上そう言う他は仕方ないが、同プロジェクトの絶賛に終始している。


しかし、日中共同歴史研究が失敗ならば、日露の共同歴史研究もまた、
パラレルヒストリーの形にせざるを得なかったのだから、
下斗米論に従えば、これもまた失敗だったとは言えるのではないだろうか?



細かい部分にケチをつけて申し訳ないのだが、
私はこの学者のくせに妙に役人というか社員というか、
俗っぽいというか、八方美人と言うか、このロシア研究者の姿勢には
大きな抵抗を覚えてしまう(いわゆる佐藤優現象)。


なお、日中韓では、政府によるものではなく民間が立ち上げたものとして
『未来をひらく歴史』というものが10年ほど前に出版されている。


これは新しい教科書をつくる会や日本の右傾化に対応して
笠原十九司氏などの歴史学者が主導して執筆したものだ。

この本自体、なかなか読み応えのある内容なのだが、
日本の右傾化に対応するという目的のもと編まれた本ゆえに、
女性史などのテーマ史が端に置かれてしまった。その弱点を克服するべく、
『新しい東アジアの近現代史』というのが2012年に日本評論者から出版された。


つまり、少なくとも市民社会のレベルでは日中韓の共同歴史研究は上手く言っている。
とはいえ、これは10年以上に渡る学者間の討論によってようやくかなったものだ。


逆に、少なくともロシア下院議長が関与しているように政府の息がかかり、
かつごく短期間で特に問題なく仕上げられたという言葉を聞くと、
どうもこれは国同士の一種の仲良しパフォーマンスで終わったのではないかと疑ってしまう。

まぁ、読むに越したことは無いが、読まなくてもよい代物なのだろうと思う。

小倉紀蔵氏は和田春樹と一緒

2015-05-21 22:14:25 | 北朝鮮
右翼には右翼向きの、左翼には左翼向きの意見を用意し、
どちらのメディアでも活動できるように上手く立ち回る学者。


下斗米伸夫氏や酒井啓子氏について、前の記事でそう評価したわけだが、
実は、北朝鮮問題についても、似たような学者がいる。


その中の一人は和田春樹氏で、彼に関しては色々な人から批判されているので、
ここではあえて書かないが、もう一人、最近目立ち始めた人物として小倉紀蔵氏がいる。


最近、藤原書店から『北朝鮮とは何か―思想的考察』という本が出版された。

そこでは、北朝鮮報道についての批判も書かれているのだが、
こう言っては何だが、小倉氏がやってることは和田氏の二番煎じだ。


慰安婦問題に対する態度がまさにそれで、次のように言っている。


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<「独善」に陥るな> 道徳の束縛が行き過ぎる最大の罪は、事実の見方が独善的になることです。日韓対立の核心は慰安婦問題ですが、日本は河野談話などで「戦時における女性の人権蹂躙(じゅうりん)」という普遍的問題と位置づけ、謝罪してきました。日本に植民地時代の歴史を正視するように迫る韓国側はこの事実も直視すべきですが、それを拒むゆえに事態が混迷しています。

 一方、日本側は韓国が問題をグローバルな観点から提起している意味をよく考える必要があります。韓国は1987年の民主化実現と冷戦崩壊を受け、グローバル化、IT産業化、文化輸出でめざましく成長しました。国民こぞって特定の目標に突進する、朱子学の影響が強い一元的社会の強みが発揮されたといえるでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20141030/p5

この問題について、ゲストとして出演していた
小倉紀蔵教授(京都大学大学院)がコメントを求められていた。

彼が語ったことの概要は、以下のとおりである。

・検証の過程を今回明らかにしたことは、大変良いことだと思う。

・慰安婦問題など国際問題は、双方が100%満足するということはありえない。

・そのような中でお互いへの接点を少しでも見出そうと、
 この20年間、日韓両国の政府は非常に努力をしてきた。

・努力をしてきたのは河野氏など日本側だけでなく、
 日本との接点を探るべく韓国政府も懸命に努力をした。

しかしそれをぶち壊してきたのが、
 韓国にいる慰安婦の運動体と、パク・クネだ。


・パク・クネは日本を不道徳の塊であるかのように吹聴して回っているが、
 これは日本を侮辱しているだけでなく、韓国も侮辱している。

・なぜならば、この20年間努力をしてきた韓国政府が全くの無能であった、
 と言うに等しいからだ。

・パク・クネの告げ口外交は、韓国人に誇りを持たせるようなものではなく、
 むしろ韓国人を辱めている。


・韓国人が未だに事大主義から脱していないことを、
 世界中に知らせているようなものだからだ。


このことに対しては、日本の嫌韓派ではない人達、
 韓国を理解しようとする人達でさえ、本当に怒っている。


・この番組に出演したのは、私自身も大変に憤っているからだ。

http://blog.goo.ne.jp/willow1972/e/e93984a5d2121dddd251a8f755eea18b
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あえて言おう。私は怒っていない。


そもそも、パク・クネはニュー・ライトという
日本は良いこともしたんだお!という親日派知識人に味方する政治家であり、
ガチガチの反日主義者ではない。


そのため、彼女が就任してしばらくは、
独裁者の孫とA級戦犯の孫、仲良くしようぜという雰囲気があった。


ところが、国内世論に逆らえずに慰安婦問題に対して
もともとは「仲良くしようぜ」派であり、日本から好評価されていた李明博が
一転して民族主義的な行動をとったように、彼女も反日(笑)的な態度を取るようになった。


要するに、パク・クネは腹の中では日本との軍事同盟の強化を優先したいのだが、
国内の声がうるさくて、仕方なく文句を言っているわけで、むしろ消極的なのである。


韓国政府の消極的な態度に対して、積極的に運動を行ってきたのが
韓国国内の市民団体(特に女性団体)であり、彼らと慰安婦本人が協力して、
今日までの社会世論を形成してきた。韓国の反日(笑)の推進者は慰安婦本人でもあるわけだ。



そもそも、日本がこの20年間、必死に解決に向けて努力してきたなどというのは
真っ赤なウソだろう。少なくとも、安倍政権以降は、まったくその気が無い。


小倉は和田春樹と同様、日本のアジア女性基金活動を高評価しているが、
これは当の慰安婦本人から否定された活動だ(日本の法的責任を回避するものなので)


「日本政府は謝ろうとしたのに韓国の民間団体がその好意を踏みにじったんだ!」
という言い分はネトウヨの決まり文句で、和田春樹、大沼保昭、下村満子などの
同プロジェクトの関係者が失敗の責任を他国に転嫁した際に述べた言葉を繰り返している。


つまり、小倉の言い分はネトウヨを調子付かせるだけの詭弁であり、
実際、この20年間、慰安婦の声に日本政府は一切耳を傾けてこなかったのだから、
今日の今日まで、慰安婦にむけて国家賠償を行うことを拒否してきたのではないか?




小倉は2000年代は嫌韓はさほどなかったかのように語るが、とんでもない話だ。

嫌韓は、少なくとも2004年に『嫌韓流』という本が売れたように、ずっと前からあったし、
そもそも韓国人を差別する風潮は戦前からあったもので、急に降ってわいたものではない。


こういうデタラメを韓国研究者が語る。これこそが怖いのである。



小倉の藤原書店から出版された本は、実は某左翼サイトで絶賛されているのだが、
私は前に彼の北朝鮮論を読んだ時、そのどっちつかずでいて、微妙にズレた論調に
なんとも言えない気分になった。和田春樹の著作を読んだような気分。
(北朝鮮を弁護しているのか非難しているのかよくわからない中途半端な本ということ)


佐藤優現象というのは、存外、どこにでもあるのかもしれない。
それでメシが食えるのだから本人は良いのだろうが、読者にとっては迷惑な話である。

日本のロシア研究者は本当に信用できるのか?

2015-05-21 21:46:31 | ロシア・ウクライナ
恐らく日本で最も有名なロシア研究者といえば、下斗米伸夫氏だろう。

1998年から2001年まで朝日新聞客員論説委員、
2002年から2004年まで日本国際政治学会理事長を務めた人物で、
NHKをはじめとしたテレビ局の取材にもよく応じている。


昨日のスプートニクの記事にも同氏のコメントが紹介されていた。


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ナルィシキン議長の訪日は、露日関係、さらに広義では、
ロシアと欧米の関係における、これらのネガティブな傾向の克服に寄与するだろうか?


日本の著名な政治学者で法政大学の教授、
そしてヴァルダイ会議のメンバーでもある下斗米伸夫(しもとまい のぶお)氏は、
ラジオ「スプートニク」からのインタビューで、この問いについて次のように語ってくださった。


「私もそれを大変期待しています。去年、
ウクライナをめぐるいろんな意見の対立が東西間で起き、日本はどちらかというと
ロシアに理解を示しながらも、しかしながら制裁をする立場でした。


これに対して今何よりも起きていることは、
今年になって米露の対立を激しくさせないということで、欧州も日本も意見は一致しています。

ミンスク合意をきちんと守るというプーチン大統領の発言は
その意味で非常に前向きですし、米国もどこまでこれを利するか。 


この問題の根っこにはやはり、ウクライナ問題について、
我々が、特に西側があまりにも知らなさすぎたことがあります。


あれだけ複雑な問題が国内にあったり、経済の崩壊があったりということを
西側が知らなかったことも大きな原因であったということがわかったわけです。


ですから今、米露が対立することがむしろマイナスになっており、
和解の方向に進むことがグローバルな平和に役に立つのではないかと思うのですね。
その意味で、私もこれから出かけますが、ナルィシキン代表団の訪日にとても期待しています。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20150520/356940.html#ixzz3alcbol15

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岩上安身氏のウクライナ問題に関するインタビューには次のように答えている。


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岩上「まず、ウクライナ危機とはどういうものか、
ということから振り返っていきたいと思います。
そもそも、ウクライナ語とロシア語というのは、どのような点で違いがあるのでしょうか」

下斗米「もともとは同根なんですね。
ウクライナの『クライナ』は『すみっこ』という意味で、普通名詞です。
『ウクライナ』という仕組みを作ったのは、ロシア革命時のレーニンです」

岩上「キエフのユーロマイダンで『クーデター』があり、
その後、ロシア語の使用禁止、という事態になりました」


下斗米「クリミアの住民は、ほとんどウクライナ語が分かりませんでした。
言語をめぐる争いは、アイデンティティをめぐる争いです」


岩上「ウクライナ国民の平均年収は、ロシアの5分の1程度、と言われています。
これは、月に2万円強、という金額です。非常に貧しい暮らしを強いられています」


下斗米「オリガルヒが、国家の富の8割を独占していますが、
彼らは税金をほとんど払っていません。そこに、日本が資金援助を行っても意味がありません。

ロシアは、それなりに政経分離をし、オリガルヒを権力から引き離しました。
しかし、ウクライナではそれができていません。オリガルヒでないと、
政権に関与することができません。ですから、常に政争が起きるのです。


IMFが170億ドルの資金援助をすると言っていますが、
これはウクライナの安定にとって有害です

日本がやるべきことは、資金援助ではなく、人材の育成や、
エネルギー技術の提供といったことではないでしょうか。

日本が払ったお金は、結果的に、ガス代として、ロシアのガスプロムに回ることになります」

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244787 (今月7日の記事)
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こうしてみると、なかなか参考になる意見を仰る方だと思われる。

ところが、この下斗米氏、媒体によって微妙にスタンスを変えており、
例えば、記者クラブの会見では今回の政変は宗教対立やーと主張していたりする。



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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2014年4月号に掲載)

「新冷戦」をこえて

注目のウクライナ情勢について、歴史的に大きく俯瞰し、刺激的に説明してくれた。

キー­ワードは、サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』と
フランシス・フクヤマの『歴史­の終わり』のふたつの本のタイトルだった。


前者はソ連崩壊後の世界秩序は安定ではなく­、文明の対立が起きると主張。
後者は民主主義と自由の勝利で冷戦は終結し、平和と自由­の時代に入ったと分析した。


下斗米さんは、今回のウクライナ騒動がロシア正教とカトリック教という
東西ローマ帝国­の歴史を引き継ぐ文明の「断層線」に起きたと指摘し、
結果的にハンチントンの主張が現実になり、フクヤマの分析は間違っていたと語った。




そして、ロシアは欧米文明とは異なる道を目指し、G8を抜け出る覚悟を決めた。
代わり­に、BRICSやG20など多極化世界に生きる道を考えている。


イデオロギー対立の冷­戦ではなく、文明的価値観の対立の時代の到来である。
ロシアは、西の欧州から東のアジ­アへと向かう。


「脱欧入亜」の戦略の始まりで、日本はチャンスと捉えるべきだと主張し­た。
歴史と文化と長期的観点から現代を考える重要性を示してくれた講演だった。

https://www.youtube.com/watch?v=O8EpK4tv52g
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経済学者であるウィリアム・イングドールは、
近年のウクライナやグルジアでの革命は、ロシアをぐるりと包囲し、
同国からEUへのエネルギー経路をNATOの支配下におくために画策されたと述べる。

実際、グルジアのサアカシュビリにせよ、ウクライナのユシチェンコにせよ、
米国の役人と関係があり、米国の団体の指導を受け、「革命」に臨んだ。



ロシアの新たな封じ込めというものに加えて、私は2014年2月のキエフ政変は
EUやIMFが融資の条件として提示する緊縮政策を巡る争いだと考えている。


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ウクライナは向こう2年間に350億ドル(約3兆6000億円)の
国際的な支援が必要だとしており、国際通貨基金(IMF)は
同日、正式な支援の要請を受けたことを明らかにしました。

政変前にも国際的融資の交渉が行われており、
IMFは構造改革の実行を条件として要求。

これには財政赤字圧縮のため、
家庭に対する燃料費補助金の撤廃などが含まれていました。


主要閣僚は首相を含めて、
ティモシェンコ元首相率いる親EUの政党「祖国」などに所属。

親ロシアの旧与党・地域党は排除されました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-01/2014030107_01_1.html
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すでに、この緊縮政策のいくつかは実行済みであり、
当サイトでは、公共料金の値上がりや炭坑の閉山に対する抗議デモについて
紹介してきた。当たり前の話だが、文化うんぬんよりも生活を巡る戦いなのである。



下斗米教授の会見は、2014年の4月、つまり、日本でもウクライナに対する
EUやIMFの非情な要求についての情報が取得できる時期に開かれた。

当サイトでも、経済が背景にあることを2014年3月の時点で、すでに指摘している。

つまり、日本の新聞社(記者たち)が基本知識を取得するために催された会見において、
下斗米教授は、どういうわけか、この経済的背景について語らず、
文明の衝突論をもって説明しているのである。


これが日本のウクライナ報道に与えた影響と言うものは推して知るべしである。

西側はウクライナ問題について知らなさすぎる!と語っているが、
その無知さを結果的に推し進めてきたのは他ならぬ下斗米本人だ。



ちなみに2014年4月21日に開催されたシンポジウムでは、
下斗米教授はステファン・バンデラを「東からはファシスト!」と説明している。

ライト・セクターやスヴォボダなどの極右政党に関しても
ネオナチ?と、はてな付きで説明する。
(http://www.ris.ac.jp/rpra/research/track_record/avfpmp00000016b7-att/005.pdf)



↑の集団がネオナチかどうかハッキリしないらしい

腕のハーケンクロイツが見えないのだろうか・・・(汗



これに加えて、下斗米氏はNHKの論説でも、宗教戦争説を主張しているが、
そこでは微妙にクリミア半島の歴史を理解し切れていない印象を受ける。


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ロシアは言うまでもなく政治経済でも大国ですが、
同時に独自の歴史と文明を持つことでも有名です。


そしてこの問題にウクライナ問題は直接つながります。

というのも千年あまり前に
キエフがキリスト教化したことがロシア国家のはじまりであるからです。


昨年7月に正教の受礼1025年祭がキエフであり、
プーチン大統領とキリル総主教も出席しました。

ロシアとウクライナとはその意味で同祖であり、兄弟国ということです。


もっともウクライナにはその後宗教的にカトリックの影響が強まり
東方カトリック(ユニエイト)教会が西部を中心に影響をのばしましたので違いが生じました。


クリミアをめぐる紛争は、ロシア側から見れば歴史的にいえば
どちらのものかという問題をめぐる一種の兄弟げんかのようなものでした。


もちろんソ連崩壊から23年もたってその国境線を変えるということは
国際法からいえば、ロシアの行動は国際法違反といえます。

日本政府がこの点でロシアを批判するのは当然です。


ロシアはクリミアの地を自らの歴史のゆかりの地としてきました。

エカテリーナ女帝による併合に始まり、19世紀半ばのクリミア戦争です。
それ以前はクリム汗国というイスラム系の地、そしてさらにその前には
カライムというユダヤ教徒がいて、これがクリミアの語源かもしれません。
歴史は現在につながります。戦後一時期ユダヤ人国家をここに作る計画もありました。


~中略~


現在のウクライナの傾向を「脱露入欧」といった人がいますが、
その意味ではロシアは今回の兄弟げんか、ウクライナ・クリミア紛争を契機に
「脱欧入亜」する東方シフトが強まりそうです。


シベリア・極東開発とアジア太平洋国家を目指すのが
21世紀ロシアの課題とプーチン氏は昨年末にいいました。


かといってロシア人がアジア人になるのも大変です。
なにより超大国としてアメリカと新しい関係を目指している中国との同盟も議論されています。

もっとも冷戦当初は弟分だった中国ですが、
儒教的秩序観のないロシアが今の中国を兄とみることもできません

バランスをとるプーチンはあくまで経済近代化を目指す以上、
先進国G7でしかも東の国日本とのパートナー関係強化に乗り出しそうです。

ロシアはクリミアという、彼らのいう「固有の領土」を取り戻しました。


プーチン氏が尊敬するスラブ主義者作家ソルジェニツインは
北方領土はロシアのものでないといいましたが、日本との条約交渉は進むという観測もあります。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/183811.html

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19世紀半ばにあった露土戦争で獲得した土地が
「固有の領土」でないのならば、北方領土はなおさらではないか?


尖閣諸島や竹島は言うまでもない。


また、儒教の要素がないからロシアは
中国とパートナーになれないというのなら
キリスト教的価値観を有しない日本とは
なおさら馴染めないのではないだろうか?




実際、ロシア下院議長のナルィキシン氏は、
韓国が経済的に将来もっとも有望なロシアのパートナーだと発言している



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ソウルを訪問中のロシア下院(国家会議)のセルゲイ・ナルィシキン議長は、
米国の対露制裁に迎合しなかった韓国指導部の立場を高く評価した。


「韓国指導部は第3国からの圧力、脅迫に負けず、
 米国および一連の西側諸国の宣言した対露制裁のような、
 国際法、WTOの規定を侵害する違法な措置をとらなかったことをロシアは高く評価する。」


ナルィシキン下院議長はソウル公式訪問で表した声明でこう語った。

ナルィシキン下院議長は韓国大企業のリーダーらとのビジネス・ブレックファストの席で
「西側欧州の企業がとった『制裁賛歌』がもたらすものは
 損失と好機を採り逃す以外、何もない」と語った。

朝食の席にはサムスン、LSネットワークス、デリムモーター、
ロッテ・グループ、大宇造船海洋、BHIからの代表者らが出席。

ナルィシキン下院議長は、「われわれは、私たちの結びつきが
十分に明確かつ高度な自立的価値を持つものであり、様々な外交的要因、
まして第3国からの圧力などの拘束を受けるものであってはならない
という点に立脚している」と語っている。


ナルィシキン下院議長は朝食の出席者らに対し、
ロシアは韓国との政治コンタクトのレベル、回数の拡大を見込んでおり、
双方のパートナーらは経済協力の拡大、新プロジェクトの実現に成功するはずだと約した。

ナルィシキン氏は韓国をアジア太平洋地域全体における
ロシアの経済パートナーの中では最も将来性が高いと絶賛した。


続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20150519/352675.html#ixzz3am4lmj1D


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韓国は儒教の国でもあるが、キリスト教の影響も強い国だ。
宗教だけで敵・味方が分かれるのならばロシアは韓国と手を結ぶだろう。



下斗米教授の意見は上にあるように、自分の願望を結論として提示するために
ちょっと無理のある論理を展開していることがわりと多い。


露土戦争で完全に獲得した土地を「彼らにとっての」「固有の領土」と
あたかも、そうでないかのように言ったり、カギ十字を腕章にしている集団を
ネオナチ?と、はっきりそうとは判断できないかのように説明したりなどなど……


極め付けが北方領土問題で、ロシアが4島返還を考え始めたかのように語っているが、
当のロシアは返さない(少なくとも2島返還のみ)のを前提にしている。

https://www.youtube.com/watch?v=nR3cIHylOIo
↑2015年2月の番組における下斗米氏の発言


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日本の与党自民党の高村副総裁(元外相)は、
日本訪問中のナルィシキン下院議長と東京のロシア大使館で会談し
「北方領土問題を解決するため、プーチン大統領に日本に来てもらいたいと、
 安倍総理大臣は真剣に考えている」と述べた。

先にプーチン大統領は

ロシアは、クリル問題について日本と対話する用意があるが、
 それは日本の議会によって批准された1956年の文書を基礎にしてだ
」と述べている。



なおロシア政府の立場は
南クリルは、戦争の結果、ソ連に編入されたもので、
 島々に対するロシアの主権は、国際法上認められたもので、疑いの余地はない
」というものだ。


続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20150520/355271.html#ixzz3am6vP14Z

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ロシアのラヴロフ外相は、
より強圧的な言葉で、日本に対しての注文をつけている。



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ロシアのラヴロフ外相は、
ナルィシキン議長の訪日を前に「ロシア新聞」からのインタビューに答え、
南クリルの領有権問題に関する日本との意見の相違の解決について、
ロシアは日本に国連憲章を参照するようすすめていると述べた。



ラヴロフ外相は、
「私たちは常に日本側に問いかけている。
『皆さん、貴方方は第二次世界大戦の結果を認めていますか?』と。
彼らは、『全体としてはイエスです。ですがこの問題では、ノーです』と答える。

『それではなぜ皆さんは当時、国連憲章を批准したのですか?
そこには戦勝国が行ったことは全てゆるぎなく、
無効にすることはできないと述べている第107条がありますよ』」

と述べ、ラヴロフ外相は、日本は第二次世界大戦の結果に疑問を呈する唯一の国だと指摘した

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20150520/356940.html#ixzz3am6md7Vs

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ロシアは北方領土を単なる辺境の島にするつもりはなく、
歴史的に、かなりの額を投資して開発を進めてきた。それについては、
当の下斗米氏自体がNHKの番組に解説役として出席しているので知らないわけがない。



「戦後65年、なお解決の糸口すらない北方領土問題。

 実はソ連は、占領当初から4島の戦略的価値を重視、実効支配を
 計画的に推し進めてきたことが明らかになってきた。

 そして今や、ロシアの経済発展を背景に、実効支配は完成に近づきつつあるのだ。

 NHKは、北方4島に2度に渡りロシア人クルーを派遣、
 大きく変わりつつある島の姿をとらえることに成功した。

 かつて棄民の島と言われた島も、プーチン大統領が主導した大規模投資が実り、
 ロシア人島民たちは豊かで近代的な生活を送っていた。


出演者 下斗米 伸夫 さん (法政大学教授)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_2925.html」



今年2月に放映されたテレビ番組では、ウクライナ問題が北方領土返還の鍵なんだと
力説しているが、そんなわけがないことは当の教授がよく知っているはずだ。


どこの国に大量の金額を投資して開発してきた島を他国に明け渡すだろう?



以上、元朝日新聞論説委員にして日本国際政治学会理事長の
随分とまぁ、いい加減な意見について俯瞰してきたが、これが単に
下斗米教授個人の問題ならば、ある意味どうでもいいのだが、実際には



「プーチン氏がクリミアで行ったことは、
 旧ソ連の独裁者スターリンが日本に行ったこと(北方領土の占拠)と同根だ」。

 北海道大の木村汎名誉教授はそう断言し、
 クリミア併合がソ連時代の領土拡張の動きと酷似していると非難する。

 また、プーチン氏が来日しても北方四島の歯舞、色丹の2島返還を超える
 選択肢は考えていないとの見方がロシア側研究者の間でも支配的だとした上で、

「なぜ日本はウクライナの問題で遠慮しなくてはならないのか。
 むしろ、積極的に対露制裁に踏み込むべきだ」

 と、日本政府の姿勢に疑問を投げかけた。

 http://ai.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1397625147/ 」

と述べる木村汎が高名なソ連・ロシア研究者であることを踏まえれば、
いかに政治的な理由で飯を食わせてもらっているかが容易に想像できる。



つい最近までプーチンがロシアで汚職政治をしていると言っていた塩原俊也氏が
一転して、「ウクライナ問題でプーチンを責める日本共産党はアホ」と言ったり
するのが典型的だが、どうも外国研究者というのは、その場その場で聞き手が
欲しがっている論調をサービスして語る癖でもあるのではないだろうか?


下斗米氏にせよ、中東研究者の酒井啓子氏にしても、
私は佐藤優現象の一環であるように思えてしまう。


つまり、左には左用の、右には右用の意見を器用に切り替え、使いこなし、
どちらのメディアとも仲良くなれてしまう世渡り上手な学者。


下斗米氏や木村氏、塩原氏もそうだが、
佐藤優も元々はロシア人と一緒に仕事をする外交官だったし、
あの和田春樹や加藤哲郎もソ連・ロシア研究者だ。とすれば、
本当に、ロシア研究者というのは胡散臭いのが随分と多いように思われる。


無論、論文集等の研究者しか読まないような雑誌に載る学者には
まともな人間がいるだろう(多分)が、彼らの意見は一般の耳には入らない。


少なくとも日本においては、チョムスキーやサイード、
ポール・クレイグ・ロバーツのような人物はいないと思っておいたほうがいいだろう。