時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮の水爆実験について3

2016-01-08 23:29:16 | 北朝鮮
それにしても、北朝鮮は、なせ核兵器を手放すことが出来ないのだろうか?
その答えの一つには、前回の記事で指摘したように米韓による常時の武力威嚇があるが、
経済的側面から説明すれば、金正恩政権以降の北朝鮮では
北朝鮮の軍縮・経済発展・核開発が密接につながっていることが挙げられる。



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北朝鮮の新聞と放送は“水爆保有”を強調し、
「(核と経済の)並進路線」が「勝利」したと大々的に報道している。

5月の労働党第7回大会を控え、
「核武力建設」は成功したから、「経済建設」に邁進しようという雰囲気を盛り上げた。

北朝鮮労働党機関紙の労働新聞は、7日付で計6面のうち5面を「水爆実験」の報道に割いた。

労働新聞は6面の論説で
「水爆を保有する国は、5つの国連安全保障理事会の常任理事国だけだった。
 我が国(北朝鮮)が今年初め、初の水爆試験で完全に成功したことで、
 水爆まで保有した核保有国は6カ国に増えた」と主張した。

北朝鮮の“水爆などの核兵器保有”を既成事実化しようとする意図と分析される。
同紙は「水爆試験と水爆の保有は、我が国の合法的な自衛的権利であり、
誰にも是非を問われることのない、正々堂々たる措置」とし
「わが共和国は、核拡散防止条約(NPT)の外にある国だ。
 いかなる国際法に照らしても違反にはならない」と報じた。

労働新聞は、別の記事で
「水爆試験は(米国の)『戦略的忍耐』政策への答えとなる。
 米国の『戦略的忍耐』政策は、終局破滅を迎えた」と強調した。

オ・スヨン労働党書記は同紙の4面で
「経済建設と核武力の建設を並進させるために戦略的路線は、最も正当な路線」だと主張した。

“核保有国としての誇り”を並進路線の別の軸である
“経済発展”の動力にしようという報道も相次いでいる。


朝鮮中央通信は6日、黄海製鉄連合企業所のキム・ミョンソン氏が
「最初の人工衛星の成功的な発射と地下核試験の成功の喜びを分かち合った
 当時の情熱を取り戻している。党第7回大会に向けて...
 鋼鉄の生産を高いレベルで正常化していく」と語ったと報じた。

また、平壌市の琴台協同農場のホ・チュングム管理委員長が
「私たちの農業労働者は党の第7回大会が開催される今年に必ず豊作を成し遂げる」
と誓ったと報じた。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22991.html
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結論から述べると、北朝鮮は近年、軍事費を削減して
その分を食料問題の解決や経済発展のための予算に充てているのである。


こういっては何だが、金正日の時代は本当に大変だったようで、
肥料や栄養剤すらろくにないという非道い状態だったらしい。

そこで息子の金正恩は、農業問題の解決を緊急の懸案事項とし、
農業の機械化、品種改良など、農業技術を向上させ、平行して既存の集団農業制度を廃止、
より少人数に経営を任せ、収穫に応じて報酬が変化する圃田担当責任制を導入した。

この結果、100年に1度と言われた大かんばつがあった2014年に
2013年度よりも5万トン収穫を増産することに成功したのだった。

こういう動きを無視して近年の金正恩政権の政治を語ることは不可能だろう。

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水産部門では海面養殖に本格的に取り組もうとしている。
昨年は大漁を記録したが、国内の需要を十分に満たすには至らない。
平壌市卸売所・水産物商業課のリ・チャンド課長によると「養殖の拡大が必須」だという。

「船を出せば漁ができる。90年代は油不足で船が出せず漁ができなかったが、
 いまは国家レベルで対策が立てられている。それで各地の水産事業所の収益が上がった。
 事業所には養殖施設があるが、飼料が供給されないので稼動していなかった。
 これからは事業所が独自に解決できる」

http://chosonsinbo.com/jp/2015/03/pr1502/
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上の記事は2015年2月の時点での話。石油がなくて漁が出来ないと聞くと
本当に90年代は、どこの社会主義国も苦労していたのだなと思ってしまう。

農業に限らず、工業においても生産システムの改革が行われた。
簡単に言うと部分的に市場主義を導入したのである。


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すなわち、工業部門では生産組織権をその空間に利用する。
企業所が独自的に新製品、品種を開発し、生産できるようにすることだ。

自分で源泉を探し出し、生産する製品、品種に関しては
生産者と需要者の間で合意して価格を決めるようにしている。

貿易および合営合作権も企業所が創発的に経営活動を繰り広げられるようにする空間となる。


労働者に対する報酬も企業所が決める。
企業所の総収入から中央予算と地方予算など納付する分を除いた残りが、企業所の分配となる。
企業所分配の範囲内で、労働者に働いたぶんだけ労働報酬(生活費)を与えるようになる。
その金額に制限は置いていない。


かつては、■生産拡大、■科学技術発展、■労働報酬、■文化厚生などなどの用途に従った
項目ごとに予算の分配率が決められていたが、今は企業所が自主的な決定によって配分できる。

収入の100%を生産拡大するための設備更新に使うこともでき、
労働者に対する報酬に100%まわすこともできるということだ。


農業部門では分組管理制の中で、圃田担当制を実施している。
協同農場では作業班の下に分組がある。
協同農場で分組は20人程度で構成され、担当する土地の規模は平均50町歩程度だ。

圃田担当制とは、分組を再び細分化して3~5人で構成し、
ここに一定の規模の圃田を決め農事を行わせる方法だ。

圃田ごとに収穫、脱穀にいたるまですべての農事に責任を持たせ、
その結果によって分組単位協同労働もともに考慮しながら農民に分配を行う。

これまでは国定価格によって義務收買を進め、
現金分配を行っていたが、現在は現物分配を実施している。

農民が自分の消費分以外の穀物を食糧販売所に持って行けば、
市場とほぼ同じ価格で売ることができる。
農民が分配された穀物で必要な日用品を調達する交換收買も進められている。


工業、農業を問わず、最近強調されているのが「具体的な経済計算による経済管理」だ。
どれだけ働き、どれだけ使い、したがってどれだけ与えればよいのか、
共同で生産したぶんはどれだけになり、個人に該当する分はどの程度か。
このようなことを正確に計算されている。

http://plaza.rakuten.co.jp/tsuruwonya/diary/201312240000/
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このように、部分的に経営権・販売権を労働者本人に委譲することで、
働いた分だけ、結果を出せば出すほど報酬が増えるようなシステムに変化させたのである。

これが功を奏して、金正恩政権下では経済発展と食糧増産が可能となった。
もちろん、先進国と比べればまだまだだが、少なくとも金政権は仕事はしていたわけだ。


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パク・ヨンマン大韓商工会議所会長は3日、
北朝鮮が地方の“市場”を中心に市場経済への移行が急速に進展しているとし、
北朝鮮の体制不安を前提とした既存シナリオの代わりに、
南北間の経済協力を活性化するための対策が必要だと強調した。

パク会長は3日、商工会議所出入り記者との新年インタビューで
これまで(韓国社会の)北朝鮮に対する認識は未だに飢謹に苦しみ、
 統制された社会で国家主導の配給制が失敗し、
 平壌(ピョンヤン)と他の地方の所得格差が大きいということだったが、
 (最近、北朝鮮専門家たちと会った結果)実際には全くそのような状態ではなく、
 北朝鮮の体制不安に対する認識を新たにしなければならないようだ
」と明らかにした。

パク会長は「北朝鮮が市場を通じて市場経済を許容してからかなりの時間が経った」とし、
地方は市場を通じて(各個人が)自分で取り引きを行い、私企業が生まれ所得が高まったが、
むしろ平壌では(このような活動が難しいため)都市貧民が生まれ暮らしが厳しい状況
」と話した。

パク会長は平壌市民の所得が低い理由と関連して
「国家が指定する工場や職場で義務的に働くため、
 市場に参入する自主生計型の事業ができずにいる」と説明した。

パク会長はさらに
北朝鮮にはもはや飢謹はなく、餓死する人もいないし、
 市場経済を相当部分許容したため個人企業のような組織ができ事業を行い、
 政府が緩い形で税金を集めている
とし、
使用中の携帯電話が280万台を超え、北朝鮮住民の需要は多いが物がなくて買えない状況」と話した。

パク会長は
これまで商工会議所が準備してきた北朝鮮急変シナリオの代わりに、
 北朝鮮の市場経済への移行が始まっており、国家主導の有無を問わず
 地方都市は全て市場経済によって支えられている状況で、
 韓国が何をできるかを先に議論することが必要だ
」と話した。


パク会長はこれと関連して
「朝鮮商業会議所(韓国の商工会議所と似た機構)への門戸を開いて、
 原産地証明のようなものは直ちにできそうだ」とし「(政府と協議する必要はあるが)
 南北が共に会員である国際商業会議所(ICC)を通じればできそうだ」と話した。

パク会長は国際商業会議所の執行委員を務めている。
パク会長はまた「韓国の多様な貿易取引先を活用して、
北朝鮮産の物品が海外市場に進出できるよう仲介貿易を活性化することも可能だ」とし
「朝鮮商業会議所が発行した原産地証明を根拠に、
 大韓商工会議所が北朝鮮産という原産地証明書を発行し活用することもできる」と話した。

パク会長はさらに「気候協約ができれば北朝鮮の“炭素排出権”も買ってくることができる」
とし「北朝鮮は産業化が出来ていないため(炭素排出権が)大量に残っていくだろう」と話した。

http://japan.hani.co.kr/arti/economy/22941.html
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水爆実験を行った3日前に書かれたハンギョレの記事である。
北朝鮮の経済発展は、同国に否定的な韓国の新聞でさえ認めざるを得ない段階になっている。

では、経済制裁を受けているにも関わらず、資金は一体どこから持ってきているのだろうか?。
それは、先述したように軍事費を削って予算を捻出しているのである。

核武装というと物騒な響きを持つわけだが、経済的にみると
通常兵器の開発等の軍備拡張に力を入れるよりも安上がりで防衛が可能となる。

経済改革にしてもそうだが、急に金が増えたわけではなく、
元からあった無駄を排する省エネ戦法で少しずつ経済を向上させていると見てよいだろう。

ハンギョレの記事では、北朝鮮元幹部が「北朝鮮内部からすると、
強大な核抑止力を備えているから、軍にも従来の軍備にこだわるよりも、
経済建設に協力することを求める、金第1書記のメッセージだと思われる
」と指摘している。
(http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22972.html)


こういう次第なので、現在の北朝鮮に核を放棄させると言うのであれば、
同国の安全保障、より正確に言えばアメリカやNATOに攻撃されないという
確実な保障と同時に、北朝鮮の経済発展への協力が求められる。
その場合、IMF式ではない形での金融・経済支援が必要となるだろう。

IMF式とは現在、ギリシャやウクライナに課せられている緊縮政策を条件とした経済援助だ。
IMFは歴史的に資金提供の条件として、貿易自由化、国営企業の民営化、外国からの投資の自由化、
国内における規制緩和、つまり、価格の自由化、補助金削減、農地市場・労働市場の自由化、
さらには行政機構の合理化、社会福祉、社会サービス予算の削減などを要求してきた。

結果として、福祉サービスの低下と経済格差の拡大、インフレなどが起き、
チリやベネズエラのように90年代の時点で貧困率が著しく増加するなどの人災が発生した。

沖縄を見てもわかるだろうが、現在の経済支援は大金と引きかえに
現地に多大な負担を強いるようになっている。このようなタイプの支援はすべきではない。

一応、六カ国協議においては、経済支援と引き換えの核放棄がうたわれているのだが、
その支援が大国にだけ利益になるものなのかどうなのかは定かではない。

制裁だけでなく、六カ国協議の復活を求める声も大きいが、
その場合、どのような提案を行うかについても深く考えるべきだ。

「国際社会の平和」のために弱国が犠牲になるような支援は北朝鮮は許さないだろう。

北朝鮮の水爆実験について2

2016-01-08 00:16:32 | 北朝鮮
前回取り上げた朝鮮新報の記事だが、昨日の時点で以下のように書き換えられていた。

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○元の記事

朝鮮が初の水爆実験/朝鮮政府が声明発表

朝鮮中央通信によると、朝鮮政府は6日に声明を発表し、
同日午前10時、初の水素爆弾実験が成功裏に行われたと伝えた。

声明は、「われわれの技術、われわれの力に100%依拠した今回の実験を通じて、
われわれは新たに開発した実験用水素爆弾の技術的諸元が正確であるということを
完全に確認し、小型化された水素爆弾の威力を科学的に解明した」と指摘した。

声明は、今回の水素爆弾実験について、
米国をはじめとする敵対勢力による核威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を守り、
朝鮮半島の平和と地域の安定を担保するための自衛的措置であると指摘した。


そのうえで、朝鮮は責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が
朝鮮の自主権を侵害しない限り、すでに明らかにしてきた通り、
先に核兵器を使用せず、どのような場合にも関連手段と技術を移転することはない
と述べた。

また、米国の対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、
朝鮮の核開発中断や核放棄は絶対にありえないと強調。
正義の核抑止力を質、量ともに絶え間なく強化していくと明らかにした。

朝鮮中央通信は同日、金正恩第1書記が昨年12月15日、
朝鮮労働党を代表して初の水素爆弾実験を行うことに関する命令を下し、
今年1月3日に最終命令書にサインしたと伝えた。

また、今回の核実験が朝鮮労働党の戦略的決心に沿って行われたと指摘した。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/20160106riyo/

○修正後の記事

朝鮮が初の水爆実験/朝鮮政府が声明発表

朝鮮中央通信によると、朝鮮政府は6日に声明を発表し、
同日午前10時、初の水素爆弾実験が成功裏に行われたと伝えた。

声明は、「われわれの技術、われわれの力に100%依拠した今回の実験を通じて、
われわれは新たに開発した実験用水素爆弾の技術的諸元が正確であるということを完全に立証し、
小型化された水素爆弾の威力を科学的に解明した」と指摘した。

声明は、水爆実験の成功によって、
朝鮮は水爆まで保有した核保有国の前列に堂々と立つことになり、
わが人民は最強の核抑止力を備えた尊厳高い民族の気概をとどろかすことになったと述べた。

また、今回の水素爆弾実験について、
米国をはじめとする敵対勢力による核威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を守り
朝鮮半島の平和と地域の安定を担保するための自衛的措置であると指摘。

米軍の原子力空母打撃集団と核戦略飛行隊を含むすべての核打撃手段が
絶え間なく投入されている朝鮮半島とその周辺が、
世界最大のホットスポット、核戦争の発火点になっていること、


米国が敵対勢力を糾合して各種の対朝鮮経済制裁と謀略的な「人権」騒動に執着して
朝鮮の強盛国家建設と人民生活の向上を阻み、「体制崩壊」を実現すべく狂奔していることに言及し、
朝鮮の水爆保有は主権国家の合法的な自衛的権利であり、
誰もけなすことのできない正々堂々たる措置であると強調した。

声明は、朝鮮は責任ある核保有国として、侵略的な敵対勢力が朝鮮の自主権を侵害しない限り、
すでに明らかにしてきた通り、先に核兵器を使用せず、どのような場合にも
関連手段と技術を移転することはないと述べた。

そのうえで、米国の対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、
朝鮮の核開発中断や核放棄は絶対にありえない
と強調。
正義の核抑止力を質、量ともに絶え間なく強化していくと明らかにした。

朝鮮中央通信は同日、金正恩第1書記が昨年12月15日、
朝鮮労働党を代表して初の水素爆弾実験を行うことに関する命令を下し、
今年1月3日に最終命令書にサインしたと伝えた。
また、今回の核実験が朝鮮労働党の戦略的決心に沿って行われたと指摘した。
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より民族主義的な主張になったと同時に、米韓の継続した武力威嚇についても言及されている。

北朝鮮が述べているように、アメリカと韓国は毎年、北朝鮮の領海付近で軍事演習を実施している。
その演習では核兵器を搭載することができるB2ステルス爆撃機・B52爆撃機・F22ステルス戦闘機が
参加しており、2005年には北朝鮮の首都である平壌上空を飛行、急降下と急上昇を繰り返していた。


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米韓合同軍事演習「フォールイーグル」(野戦機動演習)に
ステルス戦闘機F22が参加する理由は、平壌への威嚇にあるとされる。

米国は軍事演習を使って、もうひとつの重要な対北心理作戦「作戦計画5030」
(北朝鮮動揺計画)を行っているとされるからだ。その中身は、レーダーに捕捉されない
ステルス戦闘機を平壌上空に送りこみ急降下や急上昇で威嚇するというものだ。

米軍が同演習にステルス機(当初はF117)を投入したのは2005年から。
同年の夏、平壌上空に侵入する「5030」の秘密作戦があったことをスクープしたのは、
日本の軍事専門家、恵谷治氏だった。恵谷氏はいう。


「この年F117は平壌上空から
金正日総書記の住む宮殿めがけて急降下、急上昇を繰り返した。
爆撃機の爆音と振動はものすごい。
金総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ


恵谷氏のスクープはその後、予期しない形で裏付けられている。
米韓合同軍事演習に参加していたF117のパイロットが米軍事専門誌に
「私にとって最も記憶に残る任務は北朝鮮の領空をかき回したことだ…
その任務のことを考えると、気が遠くなるような感じだ」(エアフォース・タイムズ)と証言したのだ。

北朝鮮は、通常なら国際社会に『米帝が領空侵犯の暴挙』などと騒ぐはずだが、
これまで一切、反応してこなかった。これは「捕捉不能なステルス戦闘機に
北朝鮮空軍機は緊急発進すらできなかった」(恵谷氏)からだと分析されている。

今回、F222機が沖縄県嘉手納基地から「フォールイーグル」に参加のため
韓国北部の京畿道烏山の米軍基地に到着したのは3月31日だった。
その後、訓練に従事し、4月3日には沖縄に帰還している。
最高速度マッハ2・5、戦闘行動半径約2200キロ。

恵谷氏は「F22は平壌に侵入しただろう」と推測する。

平壌では1日最高人民会議が開かれていた。
2日には「寧辺の核施設再稼働」宣言も行われている。
米国が対北心理作戦を仕掛けるには絶好の時期だったはずというわけだ。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130407/frn1304071023001-n1.htm
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元は産経の記事らしいが、こういう軍事演習が毎年行われている現状に対して
北朝鮮が強く抗議するのは、ごく当たり前の感情だと思うのだが、多くのメディアは、
この演習を「例年行っているもの」と称して、問題のあるものとは認めてこなかった。

「いつもやっている演習」→「だから問題ない」というこの理屈はいかがなものだろうか。
 その理屈でいえば、北朝鮮の核実験もいつもやっていることだから問題ないのではないか?
 
こういう理不尽な主張を当然視しているのが今のメディアや知識人の態度なのである。



上の地図は日本地図を上下逆さまにひっくり返したものだが、
北朝鮮は、上図のように周辺を米軍基地に囲まれ、
核弾頭を搭載できる爆撃機や、同国の都市・基地への空爆が可能な戦闘機が
定期的に飛び回っている状況の中
、水爆実験を行ったというわけである。
その意図は抑止以外の何者でもない。
(なお、上図には記されていないが韓国にも米軍基地はある)


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北朝鮮、「水素爆弾は使用しない」


北朝鮮が「どの国に対しても核兵器は使用しない」と表明しました。

イルナー通信によりますと、北朝鮮は7日木曜、
水爆実験の実施を発表した北朝鮮に対する世界的な非難に対して、
「北朝鮮は単にひとつの実験を行ったに過ぎず、侵略されない限り
 決してそれを他国に対して使用することはない
と述べました。

北朝鮮はさらに、
「北朝鮮の核兵器製造計画はアメリカの北朝鮮に対する敵対政策の終結によってのみ停止される。
 そうでなければ、核開発を断固推進する」としました。

アメリカと一部の国は、北朝鮮で6日水曜発表された水爆実験に疑問を示していますが、
この問題は世界で大規模な反響を呼んでいます。

韓国は、声明を発表し、
「北朝鮮の行動は挑発行為であるのみならず、朝鮮半島の存続と未来にとっての脅威だ」としました。

この核実験の実施を受け、国連安保理は緊急会議を開催し、北朝鮮に対する新たな決議を採択し、
同国による核実験の実施に対抗するために新たな措置を講じることが必須だとしました。

北朝鮮の同盟国である中国でも、抗議文書が北朝鮮大使に手渡され、中国政府の抗議が伝えられました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61307
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一連の報道を見て、納得がいかないのは北朝鮮と米国は未だに戦争中であり、
平和協定を結ばない限り、いつ北朝鮮が攻撃されてもおかしくはないという状況を
全く考慮していないことだ。

北朝鮮と同様に大量虐殺兵器を有しておきながら、対話によって放棄し、
その後、アメリカ主導の多国籍軍の攻撃によって滅んだ国が二つある。


イラクとリビアだ。

イラク戦争では、2003年3月、国連安保理の容認なしに米英などが武力を行使したが、
同年10月の安保理決議1511で、事後的に同国への攻撃が追認された。

リビアもまた同様に大量虐殺兵器を放棄した後に、
NATOが現地のイスラム過激派と協力しながら爆撃を行い、文字通り地球上から消滅した。

この件について国連の潘基文事務総長は、
この空爆は国際社会が「市民を保護する責任」を実践しているのであって
不当な内政干渉には当たらないと語り、
軍事行動の目的はカダフィ政権の打倒ではなく、
あくまで 「一般市民の保護」 にとどまるのだと強弁した。


いずれの地域においても、現在は混乱の状態であり、ISなどの過激派の巣窟となっている。
空爆さえなければ、このような事態は発生しなかったのである。


両国の体制を破壊し、過激派によるテロと同国への空爆で
何千何万の人命が失われた最大の責任者は国際社会(国連)そのものだ
と言えよう。


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サウジ戦闘機がサヌア空爆でクラスター爆弾を使用

サウジアラビアの戦闘機が、イエメンの首都サヌアの住宅地を禁止兵器で空爆しました。

イエメンのニュースサイト・サバーネットによりますと、サウジの戦闘機は
国連の警告を無視し、6日水曜、サヌアの住宅地をクラスター爆弾で空爆しました。

国際法規によりますと、クラスター爆弾は禁止兵器とされています。

サウジの戦闘機がサヌアで大々的にクラスター爆弾を使用していることで、
多くのイエメン市民が死亡し、またサヌアのインフラや建物に大きな被害が出ています。

サウジアラビアによるこの犯罪は、国連がサウジ主導の連合軍による
クラスター爆弾のイエメンでの使用に関して警告してから、わずか2日後に行われました。


イエメンの数百人の学生は6日、サウジのイエメン各地に対する
攻撃の継続に抗議して抗議集会を行い、教育機関に対する攻撃を非難しました。

イエメンの大学生は、イエメンに対するサウジ主導の連合の攻撃停止のために、
国際社会が努力するよう求めました。

サウジアラビアは一部の同盟国とともに、アメリカの支援を受けて、
昨年3月26日からイエメンに対する大規模な攻撃を開始しました。

この攻撃により、これまで、
女性や子供を含むイエメン人数千人が死亡し、数万人が難民化しました。

また、イエメンの80%のインフラ施設や医療施設、
サービス施設も破壊されています。


http://japanese.irib.ir/yaman/item/61301-%E3%82%B5%E3%8
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サウジアラビア主導の連合軍による
住宅地へのクラスター爆弾の投下は
北朝鮮の水爆実験と同じ日に行われた。


以前から警告を受けていたにも関わらず、それを無視して行ったサウジの空爆と
警告を受ける前に行った水爆実験のどちらがより悪かは子どもでもわかることだ。

住宅地を狙ったイエメン市民の殺害は無視に近い反応で、
誰も死なない単なる実験には経済制裁の検討である。


国連の報告によると、2014年9月から11月にかけてのアメリカのシリア空爆で、
デリゾール、イドリブやアレッポ等において民間人を含む865人が死亡している。

この間、北朝鮮はシリア国民の誰も殺していない。

今年の2日にはイスラエル軍がガザ地区を爆撃しているが、
イスラエルは国際社会から経済制裁を受けたことは一度たりともない。

当然、北朝鮮はパレスチナの人々を殺害したことなどはない。

右翼が何かと目の敵にする御用新聞の朝日の社説には「東アジアの脅威であるだけでなく、
世界の核不拡散と核軍縮の努力に逆行する振る舞いに、国際社会は厳しく臨むべきだ。」
と書いていたが、明らかに平和を脅かしているのは欧米とその同盟国である。


核を持つか持たないかを基準に善悪二元論を展開し、
眼前のジェノサイドには目もくれようとしない「国際社会」が平和の守り手になれるのだろうか?

その独善的な態度がイスラム過激派を産み、彼らから報復を受けているのではないか?
先のパリの同時多発テロは、その象徴的事件だったのではないか?

私は北朝鮮だろうとどこの国だろうと核は持つべきではないと考える。
そのためには相手国の安全が保障されることが何よりも必要とされると思う。

北朝鮮の苦境を知りながら、あえてアメリカに対して一切の批判を行わず、
同時期に行われたサウジアラビアなどの親米国家の民間人虐殺を不問とする
現在の「国際社会」(正確には大国中心の国際政治)はあまりにも偏った正義感を有していて、
殺されてもよい人間と滅んでもよい国を話し合って選んでいる。それではいけないと思うのである。