時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

ねこねこブログと小池ゆり子、そして知事選

2016-07-30 23:53:32 | 反共左翼
24時間後の今頃にはもう都知事が決まっているのだろうが、
下馬評では小池ゆり子に決まりそうだとか・・・石原に猪瀬に舛添、そして小池。

結局、都民はこの17年間、常に極右政治家を支持してきたし、今後もそうするということなのだろう。

もちろん、先の参院選で東京から共産党党員が小選挙区で勝利していることも踏まえれば、
何も都民全員が自民党の支持者というわけではないのだが、都民の総意としては、そういうことになる。


というよりも、今回の都知事選で目につくのは自民党に対して反感を抱いている人間が
よりによって自民党よりも右向きの人間に票を入れてしまうという現象である。


今の自民党に不満を抱いている人間が
対抗軸としてもっとおかしな人間を選んでしまう。



これについてリテラが興味深い記事を書いていた。

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政治家である以上、権力の中枢を目指すのはある意味当然であろうし、
時どきの情勢によって誰とでも手を組み、「政界渡り鳥」と揶揄される振る舞いも、
それだけでただちに非難されるべきことではないのかもしれない。

ただ、これほど権力志向が強く、マッチョな思想の持ち主が、
今回はなぜ、「女性だから」「自民党と戦っているから」という理由だけで、
「リベラルでソフトな改革派」のイメージを獲得できるのか。
その点は少し考えた方がよさそうだ。



昨年末までの8年間、大阪を席巻した「橋下現象」を観察してきた私としては、
両者に共通する構図があるような気がする。


守旧派のドンが支配する議会。それと結託して既得権益を固守する役所、さらには労働組合。
そういうズブズブのドロドロが固着した既存の体制をぶっ壊し、一掃してほしい。

大阪の場合なら「役人天国」と呼ばれた公務員の腐敗を懲らしめてほしい、
東京なら前任の猪瀬氏や舛添氏のような、いわゆる「政治とカネ」問題を二度と許すまい。


橋下徹氏も、小池氏も、そういう不正への怒りと改革志向に押し上げられた。


政策の中身よりも政治家としての資質。
過去の言動や実際の思想よりも、旧体制に立ち向かう姿勢や語り口。


彼らが歯切れよく訴える「カイカク」の中身がなんであれ、
その響きはとりあえず、マスメディアや無党派層にウケがいい。

偽装であったとしても、そのポジションを首尾よく獲得し、イメージをうまく作ったほうが勝つのだ。

橋下氏は政治家になる以前のタレント時代に
テレビでは何を語るかよりも、どう語るかだ」と持論を述べ、
大阪府知事時代には「府民は視聴者だと考えていた。だから府民にどう映るかだけを重視した」と語った。

大阪市長になり、都構想の効果額が議論されていた時には「数字は見せ方次第だ」と職員にハッパをかけ、
中身が市民に理解されていないと指摘を受けると、「車を買う時に設計図まで見る人がいますか?」と開き直った。



政策の中身など誰も見ない、それよりイメージが大事なのだ
ということを繰り返し述べてきたわけだ。
で、それは結果的に「ほぼ正しかった」ことを、
8年間を通じて高止まりし続けた支持率と選挙の強さによって証明してみせた。


「ほぼ」と言ったのは、大一番の都構想住民投票では敗れたからだ。
だが、あの結果とて、都構想の瑕疵や危うさが理解されたからだと断言することはできない。

都構想反対派が掲げた「大阪市なくしたらアカン」「We Say No!」などのキャッチフレーズが、
賛成派の「CHANGE OSAKA!」「二重行政の解消」にかろうじて勝った、
つまり、橋下氏がたった一度だけ「イメージの闘い」に敗れた結果ではなかったかと私は見ている。

http://lite-ra.com/2016/07/post-2458_2.html
http://lite-ra.com/2016/07/post-2458_3.html
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テレビでは何を語るかよりも、どう語るかだ
政策の中身など誰も見ない、それよりイメージが大事なのだ


昭和を代表する政治学者である丸山眞男は「実感信仰の問題」を挙げていた。

それは日本語が感覚的なニュアンスを表現する言葉が豊富である一方で、
論理的な普遍概念をあらわす表現がきわめて乏しいこと、
感情や立ち居振る舞いを微細に表現する伝統があること、日本のリアリズム文学が
勧善懲悪のアンチテーゼとしてしか機能せず合理精神や科学的思考を持たなかったこと、
まぁ、要するに日本人には理屈よりも情念に動かされる傾向があることを指摘したわけである。


「なんとなく」や「イメージ」や「語り口」に簡単に流される一方で、
このような知識や論理でなくイメージで生まれた信仰は容易には崩せない。


きっかけさえあれば簡単に立場を翻すが、なければ理屈にあわなくても固執し続ける。
こういうことを戦前と戦後の日本の思想状況の有り様に照らし合わせながら丸山は危惧したが、
半世紀を経ても全く状況は変わらないばかりか、以前よりも感情中心の政治へとなりつつあるように思える。


今回の都知事選に対しても「反自民だから」「政治と金がないから」「女性だから」という
非常に安直な理由で小池氏を支持する「リベラル」がそれなりにいる。


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都知事選の期日前投票で小池ゆりこさんに一票を投じてきました。
今回の都知事選で当選の可能性があるのは、鳥越俊太郎氏、小池ゆりこ氏、増田寛也氏の三人で、
岩手県知事時代に岩手の財政を極度に悪化(公共事業推進で岩手県の借入金残高が二倍になった)
させた増田さんは論外として、鳥越さんと小池さんのどちらに票を投ずるか迷っていたんですが…。


昨日テレビで放映された、鳥越俊太郎さんが小池ゆりこさんに対して、
「病み上がり」という言葉を使ったことで「差別だ!」として責め立てている映像が酷すぎた…。

もう絶対に何があろうと鳥越俊太郎だけはありえないと思いました。
昨日のアレ見て、表現規制問題に関わったり関心がある人々、筒井康隆さんの「断筆宣言」で
筒井さん側に立った人々、そういった人々の大半は「鳥越俊太郎だけは絶対ありえない!!」
と強烈に感じたと思いますよ。私もその一人です。

~中略~

今日の朝の番組で都知事候補三人に政策を聞いていて、
「若者と高齢者、どちらに重点的に政策を行いますか」って質問に、
鳥越さんと増田さんがグダグダっとぼやかしていたのに比べ、小池さんだけがはっきりと
「高齢者を蔑ろにする訳ではないが、若者が伸びてゆける環境でこそ、
 東京全体が元気になっていく、若者を重点的に支援したい」ってはっきり言っていて、
好感が持てたというのもありますね。

http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1906978.html
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冷静に考えてみれば、たとえ口下手でも正しい意見を持つ人間はいるのだが、
まさに「言葉狩りをした」とか「質問にハキハキ答えた」という
テレビの前のパフォーマンスだけを根拠に誰に投票するのかが決定されている。


沈黙が銀になり、雄弁が金になってしまっている。


実のところ、上のサイト(ねこねこブログ)の人物は以前、こういう文章を書いていたのである。

初音ミク達ボーカロイドが好きです。
新自由主義に反対です。日本共産党を支持しています。全部真剣です。



「全部真剣です」と書いてから10年もしないうちに鞍替えするこの心変わりの速さ驚愕である。
 この人物、生活保護を受けており、その都度、Amazonギフト券を読者に催促していたのであるが、
 それはともかくとして生活保護者の立場から論じた彼の日本社会論はそれなりに説得力があった。


そんな彼が、小泉政権下で新自由主義の旗手として邁進していた小池氏に簡単に投票してしまう。
ちなみに彼女は超タカ派。改憲派であり在特会やネオナチとも関わりがある典型的な差別主義者だ。


そんな彼女を自称反新自由主義者で共産党支持者の人間が簡単に票を投じてしまう。
これは一体、なんなのだろうか・・・あまりにもシュールで笑えないコメディである。


まぁ、Sealdsの「戦争はんたーい」運動があれだけ持ち上げられたことを思えば、
右翼も左翼ももはや理屈ではなくイメージで戦っているのかもしれない。

「なんとなく」既存の権力と戦っていそうな人物をフィーリングで選ぶ。
 これが大半の人間の民主主義なのかもしれない。


最近、河出書房から出版された奥田愛基氏のプロマイド写真が表紙になった
ものすごく気持ちの悪いゴミなんかはその辺をよく表現していると思う。
(そういう意味ではあの本は芸術品か・・・)



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都知事選挙に小池さんが自民党を割って自民党と対決する
ドン・キホーテとして出てきたのは、良いことと感じましたね。

女性が政治や仕事で活躍することを一番嫌っているのは、
男性優位な戦前の守旧的社会を目指している今の与党なわけで、
東京都知事が女性になったらそれは痛快だなと思いましたね。

http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1906323.html
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私は以前、ヒラリー・クリントンについて
「女性」という自分が持つ属性を最大限に利用して悪意を隠す狡猾な老婆と評したような気がするが、
まさに小池は日本版ヒラリーと言える人物だ。


騙されるな! 小池百合子は“女性の敵”だ!
待機児童を狭い部屋に詰め込み、女性だけに育児押しつけ、性差別丸出しの少子化論も…
(http://lite-ra.com/2016/07/post-2436.html)

小池百合子の選挙狙い「コミケを応援します」にオタクは騙されるな!
マンガやアニメの規制を主張した過去が
(http://lite-ra.com/2016/07/post-2443.html)

そういう意味では、まだ増田や鳥越のほうがまだマシだと思えるのだが、
ねこねこブログ管理人氏は、小池を女性の味方、言葉狩りの被害者であるかのように認識している。


もはや事実と判断が逆転しており、事実をもとに判断を下すのではなく、
判断を下すために事実を歪めているような、ネトウヨと大差ないレベルに陥っている。

どうしてこうなったのかと考えてみたところ、思い当たる節があった。


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日本経済新聞「トランプ氏 在日米軍撤退も」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS04H1C_U6A500C1PE8000/


共和党のドナルド・トランプ氏は4月、外交政策に関して演説し「米国第一」の原則を掲げた。
米国の利益にならない海外の米軍を縮小。
中国、ロシアとの関係改善を唱え、米外交を大胆に転換しようとしている。

対日政策は強硬だ。日米安保条約は「不公平だ」として、
在日米軍の駐留経費で日本の負担を大幅に増やさなければ撤収すると表明した。


日米安保なくなるかもしれませんね…。
いまだに、「アメリカが日本を守ってくれる」などと考えるのは
ミュンヘン会談において「英仏がチェコを守ってくれる」という考えなみにありえないかと…。



まさに、
「すべては終わった。見捨てられ打ちのめされた日本は
 沈黙と悲しみと包まれて闇の中に退場する」という感じですね…。

結局のところ、アメリカの石油確保戦略として、中東・日本を繋ぐシーレーンが必要だっただけで、
シェールオイルで全部まかなう戦略においては、アメリカ単独にとってみれば
このラインはいらなくなる、ゆえにモンロー主義的に振舞うなら、
日本を捨てて東アジアを中国に任せても問題ないという判断なのかなと思いますね…。

小松左京の「アメリカの壁」ですね…。


日米安保がなくなった場合、中国がダイレクトに日本の本州に攻めてくる可能性は低いと思いますが
(中国が日本を武力制圧しようとする場合、先に韓国を制圧しないと日本を武力制圧するのは難しい)、
尖閣諸島のような島嶼部は武力によって占領されるかも知れませんね…。

あと、日本はシーレーンを中国に封じ込められたら戦わずして終わりなので
(憲法九条の縛りで日本から打って出ることはできないため、海洋封じ込めされた場合、何も行動できない)、
日本政府は米軍撤退後は中国に完全に服従するという選択をとる可能性が高いと思います…。


かんべむさしのSF「サイコロ特攻隊」は日本が海洋封鎖されただけで壊滅する話ですが、
実際にそうなると思いますね…。

~中略~

日本が中国の支配下に入った場合、日本の一般的な生活水準が大幅に低下する上に、
様々な自由(民主主義的な権利)が束縛されることは間違いなく、
日本に生きる全ての人々の未来がなくな
るわけで、
しかし日本の国内政治的・国際地政学的現状においてどうしようもなく(手のうちようがない)、
本当に悲しむべき残念なことです…。

http://nekodayo.livedoor.biz/archives/1900596.html
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典型的な中国脅威論。


私は思想の基軸が「反共」であるために簡単に右翼と手を組む左翼を反共左翼と呼んでいる。


彼ら反共左翼の何がすごいかというと
中国や北朝鮮をヘイトするあまり、右翼と大差ないレベルの主張を取っていることだ。


例えば軍事問題一つを考えてみても、そこには「日本」の防衛が念頭にあり、
米軍に脅かされている現地の女性のことなどは全く眼中にない


そのくせ都合の良い時にはいかにも女性の地位向上を願っているかのように演じて見せる。
そういう薄っぺらいフェミニズムは、反フェミニズムに対する何より心強い応援である。


普段は「戦争はんたーい」と言っておきながら、
いざ現実的な中国との外交に関すると途端にタカ派と大差ない意見を取ってしまう。

そのため、きっかけさえあれば簡単に右翼を支持する。

ちなみに軍事に対する小池の姿勢は以下の通り。

酷すぎる安倍政権の沖縄いじめ…
米軍属事件対策の防衛省パトロール隊が基地反対派を監視! 小池百合子も沖縄ヘイト



まさに「中国が攻めてくるから米軍は残るべきだ!」という意見は安倍政権と全く同じものである。
こういう思想的な脆さを抱えながら反グローバル(笑)を掲げていれば、まぁ結果は推して知るべしだ。


今回の都知事選、小池に票を入れるのは右翼だけではない。
場合によっては、去年の夏に「戦争はんたーい」と叫んでいた人間もまた
フィーリングでなんとなく抱いた「女性の味方」というイメージに則って投票するかもしれない。


そういう輩は私たちの予想以上に多い気がする。

小感想・佐藤優『「池田大作 大学講演」を読み解く』

2015-11-14 21:30:46 | 反共左翼
本屋で立ち読みした。いや、本当に立ち読みで良い本だと思う。
最近、よく池上彰氏とタッグを組んでいる佐藤優氏が書いた本。

私としてはゴールデンタイムにファミリーをターゲットに
右翼的言説を「中立的意見」と粉飾して偏見を助長させる池上彰のほうが性質が悪いと思うが、
この御仁も中々キレのある文章を書くなとちょっと感心した(嫌味です)

以下、出版元の潮出版社から。

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“知の巨人”が池田SGI会長の思想と言葉の力に迫る。

池田SGI会長によって世界諸大学・学術機関、
創価大学で行われた15の講演の解説集。

なぜ創価学会は世界宗教と成り得たのか――。

「池田氏にとって、真理は常に具体的だ。平和についても、抽象的な理論ではなく、
 いま、ここで平和を実現するために一人ひとりが自らが置かれた状況で
 何を行うかがたいせつなのである。

 そのことが、昨今のいわゆる集団的自衛権、安保関連法案をめぐる議論で問われた。
 創価学会と価値観を共有する公明党が頑張らなかったならば、
 日本が戦争に参加するハードルは著しく低くなってしまった。


 現実的に見た場合、公明党が平和を守ったのである。」(「あとがき」より)

http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=3973
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確か公明党って安保法案に賛成していたような・・・(汗)


【全文】公明党・山口代表が安全保障法制について会見



「公明党に失望」平和学の世界的権威ガルトゥング博士が批判
―公開書簡で池田大作氏に安保法制反対呼びかけ


安保法「反対署名」受け取り拒否 公明党の不思議

創価学会本部が安保法案を公式コメントで支持することの意味について

一応、フォロー(?)すると、創価学会の会員の中には安保法案に反対する人間もいる。
上から3番目の記事は反対書名を持参した会員を公明党が門前払いしたことが書かれている。


なお、会員のブログを読むと、以前から
佐藤氏はこの手の本を書いていたようで、バッチリ批判されている。

佐藤優が創価をヨイショする訳


こんな記事も書いていたらしい。


 「潮」08年11月号 佐藤優寄稿論文「信教の自由を侵害する政治家の『不見識』」より

新自由主義が蔓延する現在にあって、以上のような「再分配」の観点から見ても、
公明党は新自由主義政策の行きすぎに対するブレーキ役を果たしてきたと思う。

また、イラク戦争やアフガニスタンの問題でも同様の役割を果たしてきたと思う。
自民単独であれば、もっと違うシナリオになっていたと思う。」


小泉構造改革を支えてきたのは公明党だったような・・・(汗


要するに、公明党がいなければ、もっと非道くなっていたと言いたいらしい。
だが、公明党が協力しなければどうなっていたかなど、誰にもわからない。
それこそ神のみぞ知るというものだ。

そもそも、新自由主義自体は十分、やりすぎだったわけで、
まるで丁度良い塩梅に調整されたかのような佐藤氏の言い方には違和感がある。


少なくとも公明党の反対というものは自民党にとって困らない程度の反対だったと思う。
上記記事が書かれた2008年の時点では、民主党のほうが頑張っていた。
ねじれ国会でことごとく自民党を妨害していたのは民主党であり、その逆ではない。


以上、ざっと見たが、公明党が平和の党ならとっくの昔に自民党とケンカ別れしているはずで、
百歩譲っても平和主義を掲げているのは一部の会員であって、
創価学会が組織として平和運動を展開したわけでもない。


よくもまぁ、こんな提灯記事が書けるなと感心するが、
ある意味、こういう人物だからこそ池上彰と意気投合できるのだろう。

そういう意味では非常に貴重な本だったのかもしれない。
(今の論壇のレベルを知る上でと言う意味で)

在日朝鮮人の日本人差別は許されるのか?

2015-10-25 23:14:34 | 反共左翼


世界記憶遺産に南京事件関係資料が登録されたことに対して、いまさら日本南京学会に期待する意見を見かけて失笑した - 法華狼の日記


前回の続き。
まぁ、いろいろ言いたいことはあるが、コメント欄で展開されている議題として、
在日コリアンが日本社会で差別されていることを言い訳にして、
日本人に対する差別発言を正当化することはできるのかという論点があると思う。

これに対して、下の在日コリアン二名は全く問題ないと思っているようだ。

「こっちに責任転嫁するんじゃないよ。私の思考もその書き込みも、
 あらゆることが全て、貴方たち日本物のせいで起こっていることだ。」

「生物学的本質主義言説を容できない、非難するということになんら異論はありません。
 彼(彼女)自身、そこに論理的整合性がないことぐらいわかっています。
 分かっていてここで書いていることを差別主義者と規定するならそれはそうでしょうが、
 私は差別主義者とは「差別言動を吐く者」ではなく、
 「社会における差別構造を生産、存立維持する者」と捉えています。


 少なくとも彼(彼女)が何を言おうが差別構造を作り出すことは不可能です。
 そのこともまた彼自身分かっています。

 よって、「反論、批判」を「動機を顧慮」して考えているわけでもありません。

 「日本人」として何が批判できるか、ということもさることながら、
 私個人としては何を批判しているかに関心があります。」

要するに、自分が悪いと自覚してんだから問題ないというわけだ。
残念ながら、発言を見る限り、問題の人物は全く反省せず、その後も差別発言を続けている


また、勝手に差別主義者の定義を自分で書き直し、そのことをもって
眼前の人種差別者を「レイシスト」ではないと断言するこの人物は一体何なのだろうか?


日本には、当然ながら、在日朝鮮人が日本人を法的・社会的に差別する構造は存在しない。
だが、それを理由に、在日朝鮮人が日本人に対して血縁や民族性を理由に攻撃しても
差別主義者には該当しないのだろうか?詭弁としか言いようがない。


この手の連中を見てつくづく思うのは「本当に迷惑な人間というのは、
やたらと自分の民族性を誇張して他人の蔑視と攻撃を正当化するよな
」ということだ。


それなりに在日コリアンたちの言葉を読んできた身として、
間違いなく、この手の連中は在日コリアンでも極端に外れた人間だと断定できる。


だが、他の人間がどう感じるかはわからないわけで、
「在日とはしょせん、このような考えなのだ」と思う人間がいても不思議ではない。
むしろ、日本人に限らずコリアンも含む殆どの人間は非常に不快な念を抱くだろう。


どんな理由があろうとレイシズムの正当化はできないのであり、
この意見に立つ限り、黒人も白人もコリアンもジャパニーズも関係ない。



他方、ある事実を理由にレイシズムを正当化するのは、
まさに「反日」を理由にヘイト・スピーチを正当化するネトウヨと同じ思考だ。



在日差別を理由に、日本人差別を正当化する一部在日朝鮮人と
領土問題などの「反日」行為を理由に朝鮮人を差別する一部日本人のどこが違うのだろうか?



この限りにおいて、在日もネトウヨも同じ穴の狢になることは大いに有り得るし、現にそうなっている。

掲示板(今回の場合、コメント欄だが)というのは不特定多数の人間が読んでいるのだから、
特に日本人とかコリアンを代表するからには、それなりのマナーやヒューマニズムをもって、
尊敬されるべき人物として振舞って欲しいものだが、なかなか上手くはいかないようだ。

感想「シリア難民が成田に押し寄せる日」(中央公論2015年11月号)

2015-10-16 23:45:11 | 反共左翼
今月号の中央公論の対談。
ラディカル・ポリティクスというシリーズの一環らしい。

ラディカルというより、典型的なコンサバティブな対談だった。

しょっぱなから、難民キャンプをテロのリクルートセンターと断定
「ISISが難民と称してテロを送り込んでくる」とのたまっていた。
難民のふりをしたテロの入国という主張はネトウヨのそれと同一のものである。

ちなみにドイツ連邦情報局は難民の中にISISはいないと断言している。

では、佐藤と山内は難民受け入れに反対なのかと言うと、そうではないようで、
シリア難民を一人も受け入れない(山内談)イランは、
セム族優越主義の差別国家なのだそうだ。



イランが本当に一人もシリア難民を受け入れていないかどうかは定かではないが、
少なくともヨルダン、レバノン、イラクのシリア難民に救援物資を届けている。

Iran’s Red Crescent Sends 150 Tons of Aids to Syrian Refugees
Red Cross commends Iran for humanitarian aid to Syrian refugees

そして、山内は現在、世界で最も難民を受け入れている国の中に
イランがある(世界第2位)ことになぜか触れようとしない



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2012年末時点の世界における難民は約1,540万人であり,前年同時期より約130万人増。

主要な難民発生国は,
ア アフガニスタン(約256万人),
イ シリア(約247万人),
ウ ソマリア(約112万人)。

主要な難民ホスト国は,
ア パキスタン(約160万人),
イ イラン(約86万人),
ウ レバノン(約86万人),
エ ヨルダン(約64万人),
オ トルコ(約61万人)。

外務省のHPより
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あまり知られていないが、イラン・イラク戦争、
イラク・アフガン戦争とこれまでイランは多くの難民を受け入れてきた。

イランはアフガニスタンの隣国であり、
公式で約86万、非公式も含めると約300万の難民を国内に抱えている。

この間、経済制裁によって国内の経済事情が危うくなり、難民へのサービスが低下し、
そのことで人権団体から非難されているのも事実ではあるが、それでも受入国の上位に位置する。

そもそも、イランに向けて経済制裁を下したり、
アフガニスタンを攻撃したりしたのは一体どこの国なのか
と思えば、
大国の戦争のツケを途上国が払わされている現状に対して一切文句を言わず、
イランの対応が不十分だとふてくされる人権主義者様の皆様にはウンザリさせられる。


「よその国よりはマシではあるが、それでもなお不十分」という一文の
「不十分」の文字だけ切り取り、あれやこれやと騒ぎ立てる。品の無いことだ。

こうした事情を山内が一切知らないとは考えづらい。
意図的にシリアに味方する国家を悪漢として描こうとしているように見える。
(本当に無知のせいで語っていたならば、それはそれでよくプロを気取れるなと思うが。
 彼は岩波書店にも多くの著作を残しており、また事典も編纂している本物のプロだ。
 その彼が、イランがアフガンの難民を20年以上も受け入れていることを知らないはずがない)

山内は他にもロシアに難民が向かわない理由として、
「シリアをモジャモジャにした張本人だから」と決め付けた上で、
シリア人以外も行こうとはしませんけどね(笑)とコメントしているが、

その説明では、シリア国内の反体制武装組織に訓練を施し、
武器を与える欧米に難民がなぜ向かうのかが説明できない。



中央公論の別のページでは、西側の軍事支援も難民発生の原因として語る識者もいたが、
佐藤と山内は終始、プーチン、アサド政権の非難一辺倒で全然ラディカルではなかった。


佐藤にいたっては、先の難民=テロ発言もさることながら、
ヨーロッパは多宗教が共存している地域だからイスラム教徒には合わないという、要は

「イスラム教徒は他の宗教を認められないから日本やヨーロッパに来ても
 他人と共存するこどなど不可能であり、孤立感を覚えるに決まっている」


と言う理屈でシリア難民のEUへの移動をたしなめている始末だ。
(こういうヤツに原稿料を払って沖縄問題を語らせている『週刊金曜日』って何なんだ?)


しかも、佐藤は「欧米の反アサド派武装組織への支援が難民を発生させた」という
ロシアやシリアの言い分を知っているのである。


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シリアのジャアファリ国連大使が、一部の国連加盟国による
テロ組織への支援を無視しているとして国連のパン事務総長を批判しました。

シリアのテレビチャンネルによりますと、ジャアファリ国連大使は国連の非公式の会合で、
「パン事務総長は報告の中で、国連加盟国が100以上の国から
 多くのテロリストをシリアに派遣しているという事実を無視している」と表明しました。

ジャアファリ大使はまた、
「パン事務総長は、これらのテロ組織がシリアで人々に対する最悪の犯罪を行っており、
 最終的にシリアとその基盤を消滅させるということについて、まったく触れていない」としました。

さらに、シリア難民が海域で苦しんでいるのは、西側諸国の責任だとして、
彼ら難民は外国の支援を受けたテロリストの手から逃れようとしていると述べました。

ジャアファリ国連大使は、
「人権を叫ぶ多くの国は、難民に対して国境を閉ざしており、
 彼らを海で救出するのも控えている」と語りました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/57936
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こういう意見を知りながら、どうせムスリムが来たって
ヨーロッパ社会で協調できないんだから来るなと遠まわしに言っているのが佐藤&山内。

実にラディカルである。どちらかと言えばウルトラナショナル(極右)だが。
同化できない人間を排除しようとするのは立派な排外主義である)



終始、このような論調で、アサドだけを攻撃するテロリストは善で、
アサドだけでなくヨーロッパでもテロを起こす集団は悪という認識のもとで話されていた。

ラディカルというよりは、産経や文春で語られているような偽善的な対談。
もっとも、私は山内氏や佐藤氏だけを非難しても意味がないと考えている。


本当に問題なのは、戦後日本を代表するであろう左翼出版社である岩波書店が
両者を好意的に受け入れ、しばしば本を書かせているという事実だろう。

岩波には、岩波現代文庫と題して、既存の出版物から
次世代の人間に伝えるべき作品を厳選収録したシリーズがあるのだが、
山内も佐藤もバッチリこの文庫に著者として参加している。


しかも山内は日本の軍事に直接コミットする国家安全保障局の顧問を務めたり、
歴史問題に関しても「中国や韓国は日本の悪事を殊更に強調している」という内容の
評論文を読売新聞に寄稿したり、産経で同じ趣旨のコラムを書いたりしている人物なのだが、
彼に何度も本を書かせた岩波書店とは一体何なのだろうか。これは避けて通れない問題だと思う。


反対デモで語られなかったこと (安保法案、強行採決について)

2015-09-19 00:02:25 | 反共左翼
安保法案が衆院の時と同様に参院でも強行採決された。
議事録なし、事実上の野党議員締め出しで行われたもので会議の体をなしていない。
憲法57条および59条に違反しているような気がする。


一昨日のデモでは警察が参加者を数人逮捕していたらしい。


まるで「天安門」、阿鼻叫喚の国会前
―安保法制反対デモを警察側が過剰警備で弾圧、一部参加者の逮捕も


「国会前が埋め尽くされている絵を撮らせるな!」
…警察によるデモ隊過剰警備の背景に官邸の圧力が!



これに対する右翼の回答がこちら。

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9月14日、産経新聞がウェブ版でこんな見出しの記事を公開した。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が12日・13日に実施した合同世論調査で
「安保法案に反対する集会やデモ」に関してアンケートをとったところ、
〈最近注目を集める反対集会だが、今回の調査からは、
「一般市民による」というよりも「特定政党の支持層による」集会という
 実像が浮かび上がった〉というのだ。

この記事に、ネトウヨたちは大喜び。
「やっぱりあいつらは共産党だった」「反日政党支持者がデモを起こしている」
などというコメントを拡散させている。

しかし、それがいったいどういう調査結果にもとづくものなのか、
改めてチェックしてみたら、これがびっくり仰天。

国会周辺など各地で行われている安全保障関連法案に反対する集会に
 参加した経験がある人は3.4%にとどまった。
 共産、社民、民主、生活各党など廃案を訴える政党の支持者が7割を超えた
〉から。

それだけが根拠らしいのだ。

マスコミの世論調査で普通に野党の名を答えただけで「一般市民」じゃなくなるのか?
という疑問もさることながら、それ以前に、安保法案反対デモの参加者が、
安保法案に反対している政党を支持するのは当たり前の話ではないか。

http://lite-ra.com/2015/09/post-1496.html
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この法案を支持する連中の頭の悪さがよくわかる良記事。


とはいえ、反対者が秀才ぞろいかと言えば、そんなことはない。
上で紹介した志葉玲氏の記事だって中国と全く関係が無いのに、
「まるで天安門」と表現するあたり、おいおい……と思ってしまう。

まるで天安門ではなく、天安門事件が日本的だったに過ぎない。

というより、今回のデモおよびEUのデモを見て思ったのだが、
よその国でも行われていることが中国に限っては「弾圧」と表現されるのは何故だろう?

天安門事件はその規模や大きさが通常のそれではないからまだ理解できるが、
通常のデモに対する中国のそれはヨーロッパやアメリカのそれと変わりないのに、
なぜ前者のみ「弾圧」と日本では表現されるのだろうか?

それでいて、何故か「反日」デモに関しては中国の「官製デモ」であり、
中国国民の総意ではないという解釈が当たり前のようにされている。

そのわりには、日本大使館や日本企業の店に投石するシーンを映して、
いかにも中国人は野蛮なのだというイメージを植え付けるのにご執心だ。

中国は悪だという結論を前提にし、一定の方向へと誘導するテクニックが、
ごく普通の「中立」的な新聞やニュース番組、知識人が行う現状を見るに、

何と言うか、今回のデモは「戦争反対」の4文字が先行して
「中国とどのように接していくか」という
 肝心な部分が議論されていなかったような気がする。




今、手元に『中国をどう見るか』という本があるが、
この本は中国に関する保守派の態度を次のように批判している。


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「ためにする議論」型の非難

この型は、「自分のことは棚に上げ」の立場の保守政治家とかさなる部分が多い。
ただし、分けて考える意味がないわけではない。

中国が社会主義であるかどうかに関係なく、
中国を日本の脅威・ライバルと決めてかかる日本人は、昔から少なくない。

中国を常にそういった目でしか見られない人は、
中国の立場が弱くなることに資するなら、なんでもしたがる。

中国は天安門事件で先進諸国の集団制裁にあった。
となれば、それに乗らない手はない。これが「ためにする議論」型の人々の反応だ。

「ためにする議論」型の多くは、
台湾が中国と統一することを必死になって邪魔しようとする人たちとかさなっているし、
中国包囲網をつくることにことのほか熱心なのもこの型の人に多い。

中国が何をしても、すぐ「中国脅威」と騒ぎ立てるのも、この型の特徴だ。

軍事費増大、兵器近代化、核実験、台湾沖ミサイル発射・軍事演習、
尖閣、東沙、西沙、南沙群島領有問題などなど。

しかし「ためにする議論」型の多くの人々は、軍事知識が一般国民よりはるかに豊富で、
自分たちがとなえる「中国脅威」の実態が脅威からかけ離れていることを、
じつは誰よりもよく知っている。中国の軍事費増大、兵器近代化、核実験は、
圧倒的なアメリカの軍事力からわが身を守るための必死の努力だということだ。

(同書、34‐35頁より)
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実は、この文章は2000年、
つまり15年も前に書かれたものである。



自民党や右翼の言い分が今と全く変わっていない。


なんてことはない、南シナ海で中国が云々というのは最近になって騒がれた話ではなかった。
それをさも、ここ数年、中国が台頭してきてヤバいのだという風に吹聴した
自民党やその支持者、特に学者やメディア、ジャーナリストの責任はとてつもなく重いだろう。

この15年の間で中国が日本を攻撃したことが只の一度たりともあっただろうか?
集団的自衛権が認められていなかったために日本の安全が脅かされたことがあっただろうか?


結局、安保法案は、ここ数年の国際情勢の変化に対応したものではなかった。
15年経っても未だに治らない病気に引きずられたものだった。



このような中国アレルギーの産物が現状に対応できるとは思えないが、
他方で、このアレルギーは日本の主流左翼にもしぶとく存在するような気がする


「まるで天安門」などというフレーズは、まさにそれを示す好例である。

 他にも、「北朝鮮なみの独裁」という表現も見かけたが、
 これも隣国を敵視するという点では自民党と大差ない。むしろ本質的には同類だ。

 ペンで脅すか銃で脅すかの違いでしかない。

 そもそも、ここまで北朝鮮のイメージが悪化したのも、
 彼ら平和主義者たちの絶え間ない北朝鮮バッシングのせいでもある。

 
 要するに、私が言いたいのは
脅威など存在しない。軍備を維持するために、ソ連の脅威に代わって
 冷戦終結直後から使われ始めた古臭いイデオロギーだ
」ということである。

北朝鮮は2002年の頃から日本との協議には積極的に応じているし、
応じているからこそ拉致問題に関する自国の関与を認めたわけだが、
その都度、日本からの強硬な姿勢によって会議は中断された。

その結果、2006年にテポドンが発射されると、
「それみたことか」と右翼も左翼も北朝鮮悪漢論に熱中した。

今では金欲しさに核ミサイルを発射する危ない国だというのが共通見解になっている。
米韓軍事演習の中止と引き換えに核開発はやめると何度も繰り返し発表されているにも関わらず。


こういう隣国への敵視が右も左も大差なかったことが、
結果的には「戦争反対」という言葉が独裁政権に敗れた原因だったのではないだろうか?



「戦争反対」ではなく「中国・北朝鮮との関係改善を」と言うべきだったのではないだろうか?
そして、それが戦略的に「言えなかった」(それを語れば民衆に支持されなくなる)のが
左翼が右翼に勝てない理論的弱さではないのだろうか?

感想・『チャーチル  不屈の指導者の肖像 』

2015-08-29 23:55:14 | 反共左翼
岩波書店から今月25日に出版されたチャーチルの評伝。

内容自体はいたって普通のもので、
目新しいことが書かれているわけでもないが、読んで裏切られることも無い。


しかしながら、第二次世界大戦が終わって70年の記念すべき日に
チャーチルを賛美・擁護する本を日本の左翼出版社が売ってしまった。

(しかも岩波は学術出版社では最大手)

この事実は非常に重い。


私は何度か、反共左翼という言葉をもって戦後日本の知の衰退を表現してきた。

簡単に説明すると、

①戦後の日本の知識人は、日本国内に共産党員を増やさないために生かされてきた。

②40~70年代までは、共産党に対抗する存在(社会党を含む新左翼)として
 与党に対抗する主勢力となる一方で、共産党をけん制し続けた。

 実際、この時期の社会党、何割かのマルクス主義者は共産党を「旧左翼」、
 自分たちを「新左翼」と称し、自らの優位性を主張し、前者を攻撃し続けた。

 この際、内ゲバを初めとする暴力主義、選挙を軽視するデモ・ストライキの濫用、
 内部の権力抗争等により彼らは弱体化し、中には右翼と連携をとる者も出現する。

 (今では信じられない話だが朝日新聞社や岩波書店も以前は彼らのパトロンだった)
 

③こうして、右翼から自分たちの対抗軸として利用されることで
 新左翼はその存在を認められ、そこそこ強いライバルとして戦後民主主義を形成して行く。
 
 これは見せかけの議論、民主主義を示すには好都合の試合だった。
 どちらかが劇的に壊滅しないよう、打ち合わせ済みの戦いだった。

 無論、新左翼の存在をゆるすことで、
 右翼は彼らからの攻撃を受け続けることになったが、
 所詮、それは国家が公認するレベルの反対行動に過ぎなかったことを意味する。

 戦後民主主義が中途半端に牽引されたものだったという自覚は、
 おそらく、当事者も含め、多くの左翼活動家にはないものと思われる。

④そして冷戦が終結し、共産主義革命の可能性が消滅した結果、
 用済みとなった彼らは消滅、社会党に至っては解党、社民党は虫の息の状態に陥る。

 代わりに自民党の離党者と融合した混合政党である民主党が対抗馬になった。

 そして、新左翼が激減することで共産党を激烈に批判する者、
 共産党と敵対するグループを結成する左翼が消えたことで、
 皮肉にも共産党への圧力が減り、現在、共産党の議席が増えつつある。



 実際、現在の学生をはじめとする若手運動家は共産党と連携の形をとっている。
 社民党ですら、かつてほどの敵意はなく、協力しあうケースが出来上がっている。


⑤しかし、冷戦終結直後からの新左翼からの共産党の息の根を止めようとする攻撃は
 今でも続いている。結果として彼らの多くは右傾化し、保守とさして変わらない存在になった。

 言論・ジャーナリズムの分野では、未だに新左翼の残滓が跋扈している。


 先の都知事選でも、共産・社民が連携して擁立した宇都宮氏をけん制し、
 細川元首相を新左翼の残党が擁立し、共産批判を繰り返したことは記憶に新しい。


このように反共を主軸とした左翼が未だに論壇で支配権を握り、
 出版、講演を主として何かと共産主義を批判する一方で、
 1世紀以上前から続く植民地主義への批判は非常にお粗末になっている。


 
 典型的な例として、大日本帝国の戦争犯罪を責める一方で、
 イギリス、フランスの植民地支配に対する批判がさして行われていない。

 それどころか、当時の植民地主義者を美化・礼賛する本を売り出している。


 スターリンや毛沢東を悪魔化する本が量産される一方で、
 チャーチルやケネディを褒め称える本が店頭に並んでいる。



 これは、ナチス・ドイツとソ連を全体主義国家とみなして非難する一方で、
 大戦終結後も一貫して植民地国の独立運動を弾圧し続けた西洋諸国を
「ナチスやソ連とは質的に違う」存在として称える西洋中心史観そのものだ。




以上を踏まえた上で、なぜ「不屈の指導者」とまで称える本が
第二次世界大戦終結・70周年のこの時期に、岩波から出現してきたのか?


アパルトヘイトで有名な人種差別の国、南アフリカの誕生のきっかけとなった
ボーア戦争に従軍し、劇的な脱走を遂げた捕虜として英雄となったチャーチル。

その名声を利用して政治家活動を開始したチャーチル。

南アフリカの植民地省政務次官として、
現地白人と連携をとりながら、人種隔離政策を着々と進めたチャーチル。



事実上の奴隷貿易(中国人移民を奴隷労働させた)を行った植民地経営者チャーチル。
ロシア革命直後、ソ連との和解に断固反対し、戦争の継続を望んだチャーチル。
大戦後、すぐさま鉄のカーテンを下ろし、ソ連を国際政治から孤立させようとしたチャーチル。


これが不屈の指導者の正体だ。
チャーチルを「中立」の立場から「客観的に」描く。その意味を考えてみて欲しい。


ちなみに、岩波からのスターリンの本は、
『磔のロシア』『スターリンという神話』『私のスターリン体験』
『スターリンの鼻が落っこちた』『スターリン主義』など多数あるが、
いずれも、今回のチャーチル本とは違い、対象の人物を非難するものになっている。


要するに、イギリスやフランスは偉い!ナチスとソ連は悪い!ということだ。

このような歴史観がどれほど前者の植民地主義を免罪させるものか……

戦後70周年を記念する本や番組が続々作られているが、
基本的にはこの歴史観に軸をおいたもの、つまり英仏+米の敵国を悪漢とし、
共産主義やイスラム原理主義が民主主義に敗北する歴史として描くものとなっている。


よって、当時、イギリスがイランやギリシャ、インド等に下した弾圧、
フランスがアルジェリアやベトナムの市民に行った虐殺、
アメリカの日本や韓国を属国化させる事実上の保護国化の動きは
きれいさっぱり忘れられている。



このような西洋をヒーローとした歴史叙述は
現在、中東や北アフリカ、東ヨーロッパにおけるNATO加盟国の進軍
あるいは内戦勃発の誘導、テロ支援を見る限り、全く役に立ちそうもない。

かえって眼前の悪事を見えづらくさせている。


(ウクライナの内戦に関する報道がいかに歪んだものかは
 ちょっとこの問題について学んだものなら誰でもわかるものだ)



最後に、この反共左翼の影響は他ならぬ日本共産党にも及ぶものであることを指摘したい。
日本共産党はソ連や中国からの干渉に反撃するため、同国の賛同者に対して敵対し、
かつ自身も他の共産党とは極力、協力せず、対決の姿勢をとった。

西洋マルクス主義の批判などは、その典型的な例だと言えよう。


翻って、新左翼は「敵の敵は味方」方式を採用して、
冷戦の時期は、東ヨーロッパや北朝鮮、中国、ソ連と友好的に接するようにした。


ところが、所詮はアテツケのレベルの好意だったので、
すぐに反ソ、反中に転じるか、冷戦後に掌を翻してこれらの国を攻撃し始めた。


もともと仲が良くなかった日本共産党は、彼らほど熱心ではなかったが、
それでも「私はアイツラとは違う」ということを強調するため、
ソ連・中国批判は行ったし、今もあまり友好的ではない。



つまり、東欧・アジア・アフリカの旧共産圏国家に対する悪魔化工作の動きに
現在の日本共産党は、これといって反対していない。熱心に支持もしていないが。


こういった弱点を抱えてしまったことを踏まえれば、
このチャーチルの評伝は、よくある評伝として片付けるよりも、
現在の言論界の状況(西洋中心史観、反共・ムスリム史観に消極的に追従する)を
如実に表したものとして、違う意味で強く評価すべき佳作だと言えるだろう。
(『磔のロシア』と良い勝負だ)

さる女性学者への省察

2015-08-03 23:10:04 | 反共左翼
日本の女性学・ジェンダー研究のけん引役として活躍してきた上野千鶴子氏。
新たな学問を開拓した人物として尊敬してはいるが、活動家としては正直3流であろう。


そもそも、彼女は慰安婦問題からして90年代から
吉見義明氏と俗に言う上野・吉見論争なるものを繰り広げていた。

http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/19/222810

(ここで一部が読める)

この論争と平行するようにして、
彼女は宮台真司氏と一緒になって売春肯定論を展開していた。

より詳しく言えば、セックス・ワーク論というもので、
売春を規制するよりも先に、売春婦の労働条件の改善を優先したものなのだが、
結果的には売春と言う行為を好評価しており、その点をよく批判されていたりする。

http://blog.tatsuru.com/2013/05/29_0836.php


言わば、女版和田春樹といったところか。

学者としては大変優秀に違いないと思われるのだが(※)、
活動家としては「それはどうよ」と思わせる発言ばかりしているような気がする。

(※ 和田の北朝鮮論や上野のセックス・ワーク論については
   私は反対の立場なので、あえて「に違いない」と「思われる」と表現した。

   とはいえ、この点を除外すれば、両者とも優秀な研究者である)



さて、その上野氏が女性週刊誌でコメントを述べていたようで、
早速、右翼に目をつけられている。


安保法案反対の上野千鶴子氏「女性も戦争に行く時代になる」


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「アベ政治を許さない」――そう書かれたプラカードが国会前を埋め尽くす日が続いている。

『安全保障関連法案に反対する学者の会』に名を連ねる
東京大学名誉教授の上野千鶴子さん(67才)は7月20日に開かれた記者会見で、
安全保障関連法案の強行採決に対する抗議声明を発表した。



「この法案が通れば、政権が憲法の解釈を変えたことになり、憲法が根幹から揺らいでしまう。
 憲法順守の立憲主義、ひいては国民主権が揺らいでしまいます。
 そしてこれからは世界中至る所で行われている米国の戦争に巻き込まれてしまう。

 政府は自衛隊の“派遣”と言っていますが、事実上の“派兵”で命の危険が伴います。
 後方支援といえども前線とリスクは変わらないし、戦場から戻ってきた後も問題です。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることになるでしょう。
 そういう場所に国民の仲間を送るのでしょうか。

 法案が通れば、日本が戦後70年、戦死者を出さず戦争で
 人を殺さず国際社会で築き上げてきた“非戦ブランド”が台無しになってしまう」


また、上野さんは「これからは女性も戦争に行く時代になる」と指摘する。

「若い女の子が、“戦争になっても、男の子だけ行くんでしょ”と言っていました。
 そんなことはありません。ハイテク戦争の時代、女性だって
 “共同参画”する可能性は決して低くない。しかも今の自衛隊は志願制ですが、
 徴兵制になることも充分考えられます。
 女性にとって無関心ではいられないのは当然のことです。

 政治に対して、“言ってもしょうがない”っていう無力感を持っている人が多いと思うんです。
 ましてや、女性にとって“怒り”という感情は許されてこなかった。
 でも、今怒らなくて、いつ怒るのでしょうか。怒りのマグマを今こそ爆発させる時です」

※女性セブン2015年8月13日号

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右翼どものクソみたいな反論は、特に思うことは無いのだが、
それでも、次のコメントにはちょっと思うところがあった。

「徴兵制云々は「ねーよw」で終わりだな。 
 女性も戦争にってのは、男女平等にしろって普段から煩いんだから本望でしょ?
 都合良い時だけ守れとか言わんよね?」


「戦争は男が行くものって考え方、嫌い」

「戦場でも男女平等になるのよね。
 私の仲いいイギリス人の先生なら「フェミニズム万歳」って言うわねw」


これらコメントは、上野氏の発言の一部分だけあげつらって囃し立てている。

前半部の兵士の派兵やPTSD云々の箇所を読めば、同氏が女性のことだけを
考えているわけでもないし、ましてや男性だけ戦場に行けと言っているわけでもない、
むしろ、その反対の立場だからこそ、集団的自衛権に反対しているのは明確だ。


そもそも、徴兵制云々は、若い女性(教え子?)の
「どうせ男子だけ行くんでしょ」という発言へのアンサーであるわけで、
「女性も戦場に生かされる、偉いこっちゃ!」と騒いでいるわけでもない。


この辺の理解ができない辺り、さすが右翼である。
日本人の誇りがどーたらこーたらほざくわりには、国語力が全く無い。


とはいえ、ここまでボロクソに右翼を批判しておきながら何だが、
上野氏の発言自体にも問題があることをこれから指摘してみようと思う。



「これからは世界中至る所で行われている米国の戦争に巻き込まれてしまう」


『これまで』の日本国を振り返ってみれば、朝鮮戦争、ベトナム戦争、
 湾岸、アフガン、イラクと常にアメリカの戦争を支持・支援してきた。


反戦論者の多くに見られるのが「戦うか・戦わないか」の二元論で考える態度で、
あたかも、これまで日本が戦争に関与してこなかったのかのように語るのだが、
実際には日本はアメリカの戦争にすでに関わっているのである。


日本は戦後、公に参戦してはいないが、協力はしてきた

アフガン・イラク戦争の際、日本政府は最大限の支援を行った。
この支援には学者の支援も含まれる。

名高い国際政治学者たちがアフガン・イラク戦争および中東のカラー革命を
正しい戦争として支持・アメリカ軍への協力を政府に促した。

このことは私にとって絶対に忘れられない事件である。


本来、日本政府に対してNoを叩きつけるべき学者がYesと言った。
しかも「アラブの春」という言葉を発明して、
数年経つ今も、革命自体は肯定した立場を維持している。


こういうアメリカ追従の学者・政治家の姿勢を何とかしない限り、
日本は国際平和に何らかの貢献ができないと私は思う。



「後方支援といえども前線とリスクは変わらないし、戦場から戻ってきた後も問題です。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることになるでしょう。
 そういう場所に国民の仲間を送るのでしょうか。」



平和論者に多いのが、この手の殺す側の人間を擁護する見解だが、
より重要なのは、殺される側、すなわち現地の民間人の心配だろう。



例えば、今、パキスタンではタリバンが潜伏しているという理由で
アメリカの無人戦闘機が住宅地を爆撃し、民間人が犠牲になっているが、

こういう事態を見ても、「戦う人間の気持ちを考えろ!」戦法は
「無人機にすればOK」で簡単に論破されてしまう。


本当に戦争に反対したいのなら、今、アメリカやイギリス、フランス、
その属国・同盟国が世界各地で何をしているのかを説明したほうが良いだろう。


(最近のニュースで言えば、イスラエル兵の幼児殺しなどが相当する)


「日本が戦後70年、戦死者を出さず戦争で
 人を殺さず国際社会で築き上げてきた“非戦ブランド”が台無しになってしまう」


非公式として日本は、朝鮮戦争において、機雷の撤去や細菌兵器の開発・投下を
行っているし、アメリカ・韓国軍の一員として参戦する旧日本兵も存在している。


確かに公式の場では参戦はしてこなかったが、
アメリカの横暴を黙認し続けてきた70年間でもあるわけで、

その辺を軽視・無視して日本平和国家論を唱えるのは如何なものかと感じる。


「しかも今の自衛隊は志願制ですが、徴兵制になることも充分考えられます。」


現在、アメリカは志願制だが、ベトナム戦争の時代から、
貧困層の人間が兵士に志願したくなるようなシステムを構築していた。


つまり、失業・貧困の状態にある人間が
最も簡単に就ける職業が軍人なのである。



ということを考えれば、志願制ならOKという話にはなるまい。


無論、上野氏は志願だろうと徴兵だろうと結果的に兵士が
ダメージを負うのだから、戦争には反対だと主張しているわけだが、
結果的には、「志願制ならOKで、徴兵制ならNO」という理屈に対して
強力な反撃を与えることに失敗している。その中途半端な見解のために。


「政治に対して、“言ってもしょうがない”っていう無力感を持っている人が多いと思うんです。
 ましてや、女性にとって“怒り”という感情は許されてこなかった。
 でも、今怒らなくて、いつ怒るのでしょうか。怒りのマグマを今こそ爆発させる時です」


これは、多くの人間がそうだと思うが、
日本人の政治に対する無気力感の原因として左翼の弱さがある。


民主党が何だかんだで政権を奪取できたのも、
年金問題をはじめとして、次々と自民党の悪事を暴露した強さに惹かれた面が大きい。


対して、上野氏をはじめとして、日本の主流左翼は総じて
反対意見といいつつ、非常に控えめな、あるいは弱腰なNOを唱えており、
その中途半端な意見はかえって、強力なYesとなって敵を応援する結果に終わっている。


徴兵制云々についての問題は、その典型的なものだ。

志願制自体が問題なんだ!
アメリカでもどこでも貧困層を戦場に送っているんだ!
韓国を見ろ!徴兵制と言いつつ、金持ちや有名人は金を払って免除されてるじゃないか!


これぐらいの語気で志願制というものを通じて、経済のみでは秋足らず、
命の格差すら生じさせている現代国家の残忍なシステムを非難しなくては
中盤で引用したネトウヨどものように無視されて終わってしまうのではないだろうか。


ヘイト・スピーチはダメ!と言いながら思いっきり北朝鮮バッシングをしている
有田芳生氏もそうだが、この国の有名な活動家は中途半端な意見を掲げているので、
敵に対抗するには弱すぎて、結果的に敵対者の意見を勝たせてしまっている。


上野氏だけを責めてもどうしようもないが、岩波・金曜日、すなわち、
現在の主流左翼はもう少し本質的な部分を語らないと、結局のところ、
右翼と同じで支持稼ぎのパフォーマンスだと失望されてしまうのではないかと心配になる。


実際、左翼は信用できないと語る人間は少なくない。
もちろん、右翼を支持するための詭弁として語る阿呆も相当数いるが、
本当に、右翼も左翼も信用できなくて右往左往している人間も多い。

彼らに対して強い左翼を見せ付けることも今後必要になってくるのではないかと私は思う。

ネトウヨは小林よしのりにもっとキレていいと思う

2015-07-30 22:01:26 | 反共左翼
『週刊金曜日』に、あの小林よしのりのインタビュー記事が掲載されていた。


最近、小林は自分のことを棚に上げ、同胞であるはずのネトウヨを攻撃しているのだが、
その内容が結構笑えるもので、例えば問題の記事では

「安倍は、保守速報などのデタラメ情報を自分のフェイスブックで紹介している。
 けしからん!」といったことを述べているのだが、

 お前が言うなと思うのは私だけだろうか?


どうも小林によると、
あの『ゴーマニズム宣言』というコミックは活字媒体に属するものらしい。


今から15年ぐらい前の話だが、彼のウソだらけの漫画を読んで、
今で言うところのネトウヨに相当する連中が大量発生したことがある。


確か「ワシズム」とか言う雑誌を小学館から出していたし、
その時、小林よしのりファンクラブのようなものを作っていたし、
会員になったら、よしりんバッジをくれるとか書いてあったと思う。


何と言うか、外で暴れない在特会って感じだったのだ。



普通、過激な右翼というのは街宣車に乗ったり、大学のキャンパスに乱入したりして
ギャーギャー騒ぐものなのだが、彼の場合、それをメディアでやっていたのである。


いわば、ハードの媒体で暴れる既存の右翼に対して、
ソフトの媒体で暴れたのが小林よしのりだった。



無論、評論家や作家など、
ソフトの媒体(雑誌や本、講演など)で右翼活動をする人間は多くいたのだが、
よしりんの場合、それを漫画でやったことに新しさがあった。


活字が読めない人間をターゲットにデタラメ情報を有料で売りつけたのである。


結果、『戦争論』を読んですっかり騙された中高生が
自分の友達に又貸ししたりして、鼠算式に信者が増えていった。
このあたり、今のツイッターでまとめブログの記事を拡散するアレに似ている。


そのスタイルは今も変わらないと思うのだが、よしりんが言うには、
なんでも、今の若者は活字が苦手だからゴーマニズム宣言が読めないらしい。


……ネトウヨは小林に怒ってもいいんじゃないだろうか?


書いている内容は同じなのに、わざわざ金を払う馬鹿がどこにいるというのだ。


思えば『嫌韓流』が発売された頃までは、右翼=小林というぐらい彼は目立っていて、
学者や評論家も、渡辺昇一や櫻井よし子より小林の著作を批判していた。

それぐらい、影響力のある本を書いていたのである。


ところが、ネットの技術が発展し、ブログやYouTubeやニコニコ動画が
誰にも使えるようになる2004年~2006年あたりから、状況は一変して、
いつのまにか小林の存在感は非情に薄くなってしまった。

(少なくとも前よりは)


ブームがすぎたと言えばそれまでだが、
情報発信の中心が企業(マスコミ)から個人に移ったのが大きいと思う。


何と言うか、最近の小林よしのりを見ると、
時代の流れについてこられない昔の教祖様を見るようで心苦しい。

「反日」そして「中国」 (学者・ジャーナリストの言葉の使用について)

2015-07-28 23:13:10 | 反共左翼
リテラに次の記事があった。

学生たちのデモ団体SEALDsにデマ攻撃と公安を使った揺さぶり
安倍政権の体質は中国共産党と変わらない!

(http://lite-ra.com/2015/07/post-1333.html)


執筆した梶田陽介氏は、以前、「米軍基地反対派が
ハーフの女児を暴行した」という右翼が流したデマを暴露した人物である。

「基地反対派がハーフ女児暴行」は右派のデマ攻撃だった! 元国会議員も関与


「週刊誌が書くべき記事はこのようであるべきなのだ」と感心した覚えがある。

アカデミズムと比べてジャーナリズムがはるかに勝っている点として、
早いということ、(基本的には)自由にテーマを決められることが挙げられる。


学問の場合、どうしても論文の形にまとめるには時間がかかるし、
業界への貢献が優先され、社会へのアクチュアリティが軽視されがちだ。
(もちろん、社会に役立つ学問にしようとする動きはあるのだけれども)


その点、上の記事は目下、反対派にむけて行われているプロパガンダ活動に対して
即座に強力なカウンターを食らわし、逆に賛成派の言説の怪しさを暴露した
とても内容がある記事だったと思う。


その梶田氏が「中国共産党」という言葉をマイナスの意味で使うのは少し残念だ。



 冒頭に紹介した記事には、


「 憲法で保障されている「思想・良心の自由」や
 「集会・結社の自由」にのっとって行動しているだけの市民を犯罪者扱いし、
  嫌がらせと弾圧を加える。安倍政権の本質は安倍首相の大嫌いな
  中国共産党とたいして変わらない、ということかもしれない。」

という箇所がある。このような表現にはあえて苦言を呈したい。


何度も書くが、現在の右翼は、
中国や北朝鮮を悪役に仕立て、それに対抗する存在として日本を対置する
というイメージを好んで使っている。




このように書き換えてみれば、よくわかると思う。


「 憲法で保障されている「思想・良心の自由」や
 「集会・結社の自由」にのっとって行動しているだけの市民を犯罪者扱いし、
  嫌がらせと弾圧を加える。安倍政権の本質は安倍首相の大嫌いな
  翁長知事とたいして変わらない、ということかもしれない。」



いやいや、待て!沖縄県は市民にそこまで嫌がらせをしていないぞ!
というのが当然の反応だと思うのだが、相手が中国になるとこの理屈は通じないらしい。



もちろん、中国政府も完全無欠の善政を敷いているわけではないのだが、
「安倍と同じ」と言うのであれば、弾圧の手段を比較して、その共通点を提示すべきだろう。

記事とは全く無関係の中国共産党を、悪の象徴としていきなり持ち出してくるのはおかしい。



もしかすると、梶田氏は去年の香港の雨傘革命を思い出しながら書いているのかもしれないが、
この雨傘革命が実のところ、欧米の支援により動いていたことや、
実際の革命では暴力的な手法も使われたことを思えば、同運動への対応を、
非暴力的な手段を用い、外国からの指導がない運動団体への攻撃と同一視することはできない。




……とまぁ、こんなことを書いてしまったが、別に梶田氏に限ったことではなく、
学問の場でも、安易に中国、北朝鮮、反日といった言葉を、
マイナスのイメージを持たせて使い、
結果的に保守派とさほど変わらない立場から意見を述べる人物が多くいる。



特に、領土問題に対する中国や韓国の運動、声明を「反日」の一言で
片付けてしまう人文学者には正直、驚いてしまう。


もちろん、沖縄の「反米」デモのように、抵抗の形態として認識・使用しているのであれば
問題は無いが、実際は過剰なナショナリズム(国粋主義)として認識・使用している場合が多い。


尖閣諸島に関しては、私も勉強不足で、まだ断言することは出来ないが、
竹島に関しては、完全に大日本帝国が軍事的目的から日露戦争の時期に占領したものであり、
これに対して領土権を主張することは何ら奇妙なことではない。


にも関わらず、竹島の領土権を主張した=反日として扱い、領土問題を
ナショナリズムとナショナリズムの激突として理解する学者が随分といる。


もちろん、外交問題にまで発展するほど両国の国民が
この問題に対してピリピリしている以上、ナショナリズムはどこかに介在してくる。
だが、仮に日本が原爆投下に対する賠償をアメリカに求めたとして、
それら抵抗の動きを「反米」の一言で片付け、
アメリカ人が嫌いな連中がした行き過ぎた行為と評価しても良いのだろうか?

とう言うことである。



先日、読んだスプートニクの記事でも、憲法学者の小林節氏が
安保反対を表明するために「このままでは日本が北朝鮮のようになってしまう」
と語っていた。


これは北朝鮮=最悪の国家と言っているようなもので、
安倍の説く「北朝鮮脅威論」と皮肉にも通じる見解である。



日本とは全く異なる政治的・経済的背景を無視して、
悪の帝国として便利に利用するこの態度には正直辟易させられる。


ここのサイトで何度も指摘しているが、
北朝鮮は米韓の軍事演習さえ中止すれば、
核放棄に応じるというメッセージを定期的に発信している



また、逆らう者は容赦なく処刑というイメージは
韓国の国情院をはじめとする反北勢力が構築したもので、
実際には、何度かの「更正」期間が与えられている。


人権弾圧の象徴として非難されている収容所の数、
正確に言えば収容者の数も大幅に減らしてきた。


これらの事実を指摘した上で、なお同国を批判するのであれば理解できるのだが、
北朝鮮地獄論を唱える自称リベラル・中道・左翼は、単に
日本や韓国の右翼が唱えている言説に乗っかっている印象を強く受ける。
(主張する内容が保守派のそれとそっくり)


とどのつまり、これらの言説は一見、反対派の意見のように見えるが、
実のところ、殴るか、なじるかの手段のレベルで異議を唱えているにすぎず、
隣国を悪としてみなす敵視政策については保守派陣営と同じ立場なのである。




そういう輩が果たして本当に進歩的な意見を提示できるのか……
という一抹の不安を私は持っているのだが、これは杞憂に終わるのだろうか?



仮に集団的自衛権の容認を阻止できたとして、
そこから一歩踏み込んで隣国の関係を改善することは出来るのだろうか?


私は無理だと思う。

ポツダム宣言発表70周年

2015-07-26 23:09:49 | 反共左翼
今日はポツダム宣言が発表された日だが、
この前日に同宣言を否定的に表現した池上彰氏の言葉を聞く限り、
どうも、この宣言の意味がよくわかっていない人が多いのではないかと感じる。


といっても、真面目に学校の授業を聞いていた人なら、ナチスが敗れても
なお戦おうとする日本に対して降伏を求める宣言であることは知っているはず。


ポツダム宣言はアメリカ・イギリス・中国が、全ての連合国に支持の下、
日本が抵抗を止めるまで対日戦争を止めないことを表明したものである。

それだけでなく、ポツダム宣言は連合国による戦後の日本に対する占領、
領土の確定、戦犯裁判、戦争賠償にも言及しており、その意味で戦後の日本を
形作ったものでもあると言えるだろう。


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中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争が一歩ずつ勝利へと向かう
さなかの1945年7月27日、日本の上空には同盟国の航空機が大挙して現れた。


この時、空から降ってきたのは爆弾ではなく、
日本語で書かれた数百万枚ものビラだった。

ビラには歴史的な意義をもつ文書、すなわち中国、米国、英国の3カ国が
7月26日に共同で発表した「ポツダム宣言」(後にソビエト連邦も加わった)
が印刷されていた。


これは負け戦になってもなお抵抗を続ける日本の狂気の戦争遂行者に対し、
同盟国がつきつけた最後通牒だった。



今日、「ポツダム宣言」の発表から70年が経過した。

歴史は歩み続け、第二次世界大戦の血なまぐさい日々は
すでに遠い記憶だが、人々は今なお「ポツダム宣言」を記念する。
これは歴史の海の中で大切な出来事を埋もれさせないようにするためだけではない。

「ポツダム宣言」は単なる最後通牒ではないのだ。


これは日本軍国主義の「無謀な世界征服の野望」や
「武力による侵略戦争の発動」という本質を正確にあぶり出したものでであり、
戦後の領土問題の処理、戦犯の処分、日本の「民主主義的傾向の復活を強化」
することについて、明確な規定をうち出したものだ。


歴史を振り返ると、「ポツダム宣言」は「カイロ宣言」などの文書とともに、
戦後の国際秩序構築の法的基盤となっている。



だが現実が再三告げるのは、かつて「ポツダム宣言」を受諾して
戦争の桎梏から抜け出した日本だが、すべての日本国民が
この文書の権威を心から認めて敬意を払っているわけではないということだ。


一部の日本人の心の中では、第二次世界大戦後の平和的な国際秩序が、
何かと衝突することなどあり得ない、強制力のある確かな制約にはなっていないのだ。


今年の早い時期、日本では安倍晋三首相が国会での答弁で、
「ポツダム宣言」における日本の戦略戦争の定義をはっきり認めることを拒絶した
とのニュースが伝わり、国際世論は騒然となった。


日本側はその後、この件について「メディアを通じた言い訳」を繰り返したが、
安倍政権のここ数年間の歴史認識、憲法改正、隣国との領土問題などでの動きを
少しみれば容易にわかるように、日本の政界には「ポツダム宣言」を
認めようとしない人々が確かに存在する。

http://j.people.com.cn/n/2015/0726/c94474-8926319.html
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右翼がポツダム宣言を認めようとしないのは、ある意味当然の態度であるが、
中立やリベラルや平和主義者を気取る連中が軽視・無視するのはおかしい。


本屋では池上氏の著書が多数売られていて、その中にはロングセラーやベストセラーもある。

こういう状況について、ノーと言わないばかりか、
むしろ彼ら自称中立者とつるんでしまう左翼や平和主義者を見ると、
日本の社会運動の致命的な病巣が放置されている気がしてしまうのは考えすぎだろうか?