時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

上からの解決 -慰安婦問題における日韓の妥結について

2015-12-29 23:19:55 | 国際政治
恐らく日本の右翼も左翼も納得が行かない最悪の決着のつけ方だったと思う。
とりあえず、このニュースがロシアでどう報じられているかを見てみよう。


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Japan finally ready to apologize for using South Korean female sex slaves during WWII
(日本、ついに第二次世界大戦中の韓国人女性性奴隷の使用について謝罪する用意をする)


Japan has finally reached the stage
   where it is ready to apologize for enslaving thousands of ‘comfort women’
     from South Korea during World War II
      – something that has long been a source of contention between the neighbors.

(日本は、第二次世界中に韓国で数万の従軍慰安婦を奴隷化したことに対して
 謝罪する用意をする段階に、ついに到達した。
 長い間、従軍慰安婦は隣国同士の対立の原因となっていた。)

The agreement on Monday between South Korea and Japan
     is considered a landmark deal and concerns decades of animosity
  because of failure to agree that
      Korean women were forced into sex slavery run
       by the Japanese empire for the purpose of comforting soldiers.

(https://www.rt.com/news/327241-japan-comfort-women-korea/)
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重要なのは韓国人の女性を性奴隷にしていたと日本政府が認めたという認識。
誰がどう言おうと、今後、日本政府はこの合意に反する行動はできない


中国外交部(外務省)は以下のようにコメントしている。

「慰安婦の強制連行は、
 第二次世界大戦中に日本の軍国主義がアジア諸国の人々に対して行った深刻な非人道的犯罪だ。
 日本は侵略の歴史を正視・反省し、責任ある態度で関連問題に対処するべきだ。
(http://j.people.com.cn/n/2015/1229/c94474-8996836.html)


安倍政権にとっては、これで今後、慰安婦問題でケチをつけられることもあるまいと
思ったかもしれないが、今回の妥結は上記の歴史認識について公的な反発が出来ないことを意味する

すでに台湾やインドネシアでは自国も韓国同様の待遇をするように求めている。
臭いものにフタをしたつもりで、逆にフタを開けてしまったかもしれない。


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ロシアの東洋学者、ドミートリイ・ストレリツォフ氏によれば、
問題解決の兆しはここ数か月、肌に感じられていた。2014年初頭には
安倍首相の就任以来凍結されていた両国の政治コンタクトが再開していたからだ。


「11月、日中韓の3か国サミットが行われた。
 その中で、安倍首相とパク大統領の首脳会談も初めて行われた。
 これは両者の妥協への努力の表れだった。米国というファクターも影響を与えた。

 米国は東アジアの最重要同盟国である日韓の紛争が
 長引いていることを強く懸念しており、日韓対話の再開に全力を挙げていた。

 米国はこの問題においては韓国の側に立ち、
 ほとんど恒常的に日本に心理的圧力をかけていた。

 米国の多くの州に慰安婦記念像が建立されさえした。
 この間米国は、妥協すべきは日本の側だ、という立場を明確にしていた


今回見いだされた慰安婦問題の解決の形式は、韓国側をも満足させるはずだ、とストレリツォフ氏。

「10億円規模の特別基金の創設には、日本の国費が投じられる。
 これは韓国にとっては極めて重要なことだ。というのも、
 これまで日本側は、政府の参加なき人道手段による問題解決を図ってきた。

 過去の朝鮮植民地化に関する問題は、国家レベルでは、
 1965年の外交関係再開宣言の時点で解決がなされている、という立場からだ。

 それが今回、日本は、ほぼ初めて、この立場を去り、
 国費から費用を拠出することを決めたのだ


続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20151228/1381062.html#ixzz3vinrzOKA

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繰り返すと国際政治の場では
日本の慰安婦制度は絶対悪であり、今回の妥結は
日本がようやく己の悪を認めたという認識がされている。


これは韓国に限らず、中国、ロシア、イラン、フランス、アメリカ等に通じるものである。


「The Japanese military used Korean, Chinese, Taiwanese,
 Dutch and Australian women as sex slaves for soldiers during World War II.
日本軍は韓国人や中国人、台湾人、オランダ人、オーストラリア人の女性を
  兵に向けての性奴隷として第二次世界大戦中に使役した
)」

 (ラジオ・フランス・インターナショナルの記事より

今回の日本政府の決断は上の事実を公認したものである。



慰安婦日韓合意でネトウヨが「安倍、死ね」の大合唱!
でも安倍の謝罪は二枚舌、歴史修正主義はさらに進行する


安倍本人は、このことに気づかず、あるいは意図的に忘れ、
形ばかりの謝罪と賠償を行い、歴史の改竄を続けるつもりかもしれないが、そうは問屋が卸さない。

国際的な圧力は前より強まったものであることは自覚して欲しいものだ。







慰安婦問題妥結で解決遠のく強制徴用問題


[社説]法的責任なき慰安婦問題の最終解決はない

慰安婦被害者・挺対協「少女像の移転は認めない」

他方で問題点も多く存在する。

第一に、今回の解決法は村山政権時のアジア女性基金と同じ方式であること。
第二に、日本政府の法的責任が曖昧にされたままであること。
第三に、今後、慰安婦本人や家族、遺族、支援団体の行動や発言が抑制される可能性が高いこと。
第四に、慰安婦像設立などの下からの社会運動を完全に否定するものであること。

大まかに言っても、これだけの問題点が存在する。
この点についてはハンギョレが詳しく論じているので、関心のある人は紹介記事を読んで頂きたい。


慰安婦合意…父と娘、半世紀超えた拙速“瓜二つ”
被害者が眼中にない“最終解決”…対国民談話まで


何よりも、今回の妥結は市民の意志を完全に無視したものであることが問題である。
今、韓国は軍事政権時代の大統領、チョン・ドファンを批判しただけで逮捕されるような有様だ。

[ニュース分析]全斗煥風刺ポスターが有罪…失われる表現の自由

こういう軍事政権時代の批判が公に言えなくなっていく中で、
慰安婦に一言も相談せずに勝手に決められた今回の妥結。少女像を作成したキム・ウンソン氏は
少女像には韓国政府も自省し、反省しなければならないという意味も込められている。
「国がちゃんとしていれば、国民がそのような被害を受けることはなかったはずだ」
と語っている(http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22911.html)。


金氏が指摘するように、今後、慰安婦像の撤去を皮切りに韓国政府が
慰安婦や市民団体の活動にまで干渉・制限してくる可能性は十分考えられる。
(反日国家、反日国家と小うるさいが、韓国の与党、セヌリ党は親日派の政党である)

「帝国の慰安婦」朴裕河教授の在宅起訴に学者ら54人抗議声明(全文)

最後に、これは大変重要な指摘だが、今回のような日韓関係の改善を重視する「解決」は
実は、日本や韓国の反共左翼が盛んに主張してきたことだ
ということである。


①自分たちは誰よりも慰安婦のためを思っていると主張し、
②事実の正誤や法的責任の有無の確認よりも早急の解決を優先し、
③慰安婦問題未解決の責任を日本政府から挺対協(韓国の主要な市民団体)に転嫁し、
④アジア女性基金型の解決方法を強く推す

こいつらの特徴を簡単に説明すると上のようになる。
私は反共が主軸であるがために、同目的を持つ右翼と簡単につるんでしまう左翼を
反共左翼と呼び、厳しく批判しているが、上の共同声明にも地味に右翼知識人が混ざっている。

案の定、今回の妥結の背後には、
中国をけん制するために日韓の政治的軍事的結びつきを固めたいアメリカの動きがあったようだが、
この連中も究極的には、中国や北朝鮮に対する否定的な感情が声明を決意した背景にあるのではないか?
(実際、北朝鮮バッシングの代表者やイラク戦争支持者などがリストの中に微妙に混ざっている)

どちらが飛車か銀かで揉めているだけで、
アメリカという王将の指示に従い、棒銀戦法を忠実に実行しようとする点で両者に変わりはない。


以前、このように表現したわけだが、今回の妥結はまさにその見本のような例で、
加えて、上のような政治や外交を優先した上からの解決を、
他ならぬ両国の左派系知識人が支持し、反対者を攻撃している。

こういう冗談では済まされない日韓左翼の右傾化を見逃してはならないだろう。

海外メディア、アベノミクスの破綻を報じる

2015-12-29 00:08:38 | アベノミクス批判
アベノミクスは開始当初から多くの左派系エコノミスト・学者から批判を受けてきた。

代表的な論者として、下関市立大学の関野秀明氏、
エコノミストの浜矩子氏、ケインズ経済学者の伊東光晴氏などが挙げられる。

筆者が特に推しているのは関野氏で、彼が共産党が発行する経済誌『経済』に
定期的に投稿するアベノミクス批判からは、かなり勉強させてもらった。

まぁ、その勉強の発端になったのは立命館の松尾匡教授からの激励なのだが……
知らない人のために紹介すると松尾教授は左翼を自認するリフレ派の経済学者で、
以前から一貫してアベノミクスを支持してきた方である(本人は否定するかもしれないが)


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まず、このエントリー、アベノミクスで正規雇用者も増え始めた!!
では、「生産年齢人口」(15歳~65歳人口)に対する割合で、
正規雇用、非正規雇用の推移が計算されていて、正規雇用の比率の増加が示されています。

これによれば、非正規雇用の率は、民主党政権下から引き続き、一貫して増えています。

他方、正規雇用の率は、民主党政権下では2009年の40.4%から
2012年の40.5%へと0.1%ポイント上昇しただけだったのに対して、
その後、2014年(10月までの平均)の41.1%にまで、2年で0.6%ポイント増えています。
とても見やすい折れ線グラフにされていますので、リンク先をご覧下さい。

さらに、もう「非正規雇用がー」は通用しない
というエントリーでは、率ではなく絶対数で見ても、
2014年に入って「正規社員は4-6月期、7-9月期と連続して前期比で増加している。
しかも、7-9月期は前年同期比でも10万人増加している。」という指摘がなされています。
これもグラフ入り。
データ、グラフ元は「労働力調査(詳細集計)平成26年(2014年)7~9月期平均(速報)」

また、
正規雇用を希望する人 非正規のほうがいい人というエントリーでは、
上記「労働力調査」から、正社員の仕事がないから不本意ながら
非正社員に甘んじている人の数と、その人たちの非正社員に占める割合をグラフにされています。
これも2013年、2014年の間で傾向的に下がっていて、特に2014年に入ってからは、
データのある第3四半期まで下がり続けていることが見て取れます。

そもそも、雇用が増えているのが非正社員だったとしても、
今まで職がなかった人が職にありついたならば、
「ありがたい、この職をまた逃したくない」という気持ちが真っ先にくるのは当然ですから、
言葉の使い方を慎重にしないと、「非正規が増えているのはいけません」的な
言い方だけしていたのではこうした層の人たちから反発を買う恐れがあります。

気がついたら、こうした層の人々がこぞって
自民党の支持者になって日の丸を振っていることになりかねません。

それに、「総雇用者所得」で見ると増えているとする
安倍さんの言い訳もあながち無視はできません。消費需要につながるのは、
一人当たり賃金ではなくて、総雇用者所得だからです。

http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__141215.html
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上のページでは、正規雇用者数が増えているとか倒産件数が減っているとか、
アベノミクスの恩恵は、こんなにもあるのだと熱弁を振るっているのだが、
雇用を創出したという主張はアベノミクスの生みの親の一人である浜田宏一氏も唱えている。


なぜアベノミクスで庶民の給料は上がらなかったのか?


伊藤元重教授「これから創造的破壊が起きる」
――アベノミクスと働き方変革の因果関係とは?



伊藤教授は直接には雇用情勢が改善されたとは述べないが、今後、アベノミクス効果で
労働力が不足する(売り手市場になる)と語るそれは、松尾・浜田両教授に通じるスタンスだろう。

松尾氏はエッセーの末文に
安易な「アベノミクス失敗」論はやめてほしいし、
 そもそも何度も言いますが、「アベノミクス」という言葉を
 反対側の陣営が口にするのはやめて下さい。2016年に好況の熱狂の中で、
 安倍応援アイドルが「アベノミクス!アベノミクス!」と叫んで踊り回ったらどうする!」
と記しているが、同氏によると来年の選挙時には日本は好況になっているらしい。


「足下では景気回復の恩恵を感じる人が確かに増えていて、
 それが内閣支持率の増加に結びついていることは間違いない」
 (http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__150218.html)

「マスコミなどでは、「景気回復の実感はない」と
 決まり文句のように言っていますけど、そんなふうにおっしゃる人はたいてい、
 もともと安定して、比較的まともな賃金の職の人なんですよね。
 過去20年の「改革」不況で最も苦しんできた層の人たちの間では、明らかに事態が動いています。
 
実感はない派の人たちは
景気回復がコケて安倍さんに失脚してほしいあまり、現実から目をそむけているのかもしれません

が、今後、景気回復を否定するようなことを言えば言うほど、私たちが最も依拠すべき
こうした層の人たちを、かえって安倍さんの側に追いやる結果になる
でしょう。」
 (http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__140503.html)

とまぁ、自信満々に述べていた松尾氏だが、その後、日本経済はどうなったのだろうか?
スプートニク紙は次のように伝える。

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アベノミクスは死んだ、経済蘇生は失敗
(2015年12月28日)

日本政府のあらゆる尽力にも関わらず、日本経済は全く蘇生する気配を見せていない。

大規模支援の甲斐なく状況はますます下降線をたどっており、
先週発表された統計は二重のショックを国民に与えた。

先週、日本の失業率が今までの3.1%から3.3%に上昇したことが明らかにされた。
この数値は今年1月からの間で最高で、これにより主婦の財布の紐が引き締められた。

ところが今、明らかにされていることはそれよりも更にひどい。
小売業の売り上げも当初の予測の0.6%ダウンを上回り、
最新の調査では1%減少していることが明らかになった。


2014年に行われた消費税増税による、その前後の影響を考慮しない場合、
この売り上げダウンは2011年の東日本大震災以来、最大となっている。


工業生産の景気もいまひとつ。11月、指標は3ヶ月間で初めて落ちたが、これは
世界第3位の経済大国の復興は少なくとも2016年の初めに持ち越されたことを示している。

メーカーは近い将来にも生産拡大を考慮しているものの、
弱弱しいデーターは期待された輸出と需要の増加で経済は押し上げられ、
2%の目標レベルまでインフレを速めるという日本銀行の予測に疑問を呈すものとなった。

個々の指標が物語るのは、異常高温気象による冬物の被服販売に大きな損失が出て、
これにより小売販売が年間で1%落ちこんだ事実。

エコノミストらは輸出における再生の兆候はすでにあることから、
工業に方向転換が起きることは期待できると指摘している。

一方で需要は依然として低いままで、とても経済復興に力を貸すどころではない。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/business/20151228/1380251.html#ixzz3vcpLtgAj
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・・・景気回復ねぇ

最近、アベノミクスの宣伝があまりされないからおかしいと思っていたら、
いつのまにか、こういう事態になっていたという笑えない話。

そもそも、この経済政策は経済史の視点から見れば安倍オリジナルのものではなく、
むしろ、小泉純一郎の経済政策をそのまま踏襲したものである。
それを説明するために、中国の人民網の解説記事を提示しよう。



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「アベノミクス」は日本を損なう

~中略~

「アベノミクス」は何も新しいものではなく、金融緩和とその関連政策の総称に過ぎない。
経済の遅れた国では、紙幣の無闇な発行は、壊滅的な悪性のインフレを引き起こす可能性が高い。
経済の発達した国では、政府が紙幣を増刷しても財産を作り出したことにはならなず、
資源の間違った配置をもたらし、内部の危機を引き起こす。

日本は貨幣の潤沢な先進国であり、貨幣増刷によって引き起こされる
物価上昇の効果は明らかでなく、やはり厳しい問題が生まれている。

「アベノミクス」は物価の下落を恐れ、消費を奨励しており、
 民間の貯蓄は減り、政府の負債率は世界一に達している。

インフレで利益を得ているのは大企業である。

大企業は市場に障壁を形成し、小さい企業のチャンスを減らしている。
日本企業には年功序列の習慣があり、年齢の高い社員が高い地位を占め、
若い社員はなかなか昇進できず、会社の人材コストは高い。

これは労働法の保護によるものであると同時に、インフレ政策の擁護とも関係がある。
日本人は極度に勤勉な労働なしには、生活水準の低下を防ぐことができないのである。

だが日本の物価上昇は明らかでなく、政府のデフレへの恐れを呼び、
量的緩和の推進を促している。生活水準がなかなか上がらないのもインフレによる悪影響である。


政府による刺激を過度に信じ、紙幣増刷によって
成長を促進できると考えたことは、日本の過去20年の最大の間違いだった。


市場化改革が大々的に進められた小泉時代にあっても、この考えは転換されなかった。

2001年に小泉純一郎が首相に就任すると、民営化と自由化の改革が始められ、
中でも難題となっていた郵政改革の実現が旗印とされた。

この改革において、
小泉首相は自らの政治生命を賭けることも厭わず、郵政系統の民営化を推進した。
通貨政策の分野では、小泉首相とそのブレインは掛け値なしの「インフレ派」であり、
日銀に通貨政策の緩和を繰り返し求め、「デフレ」と対決しようとした。


でたらめな通貨政策は小泉改革の寿命を縮め、
いくつかの民営化改革を行ったほかは、日本に持続的な活力を与えることはできなかった。


~中略~

経済発展に対するインフレのマイナス影響は、
短期的に大きく現れるものがあるだけでなく、長期的にゆっくりと出てくるものもある。


その道理は多くの経済学者の古くからの関心となってきた。
ハイエクはかつて、インフレは、政府が紙幣を増刷し過ぎた時だけに起こるもので、
それ以外にはあり得ないと指摘している。インフレの危害は、
オーストリア学派の経済学者によってとうの昔に研究されていたのである。

それにもかかわらず今日の日本政府が(そのほかの多くの国の政府も)
デフレへの対決姿勢を崩さず、インフレを頑強に追求しているのには、ため息を禁じ得ない。

http://j.people.com.cn/n/2015/0915/c94476-8950183-2.html
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これは9月に書かれた記事だが、1ヵ月後にはこういう記事が書かれた。




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アベノミクスに疲れの色

日本政府はこのほど10月の月例経済報告を発表し、経済情勢への総括判断を下方修正して
「一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とした。

日本政府が総括判断を下方修正したのは1年ぶりのことだ。人民日報が伝えた。

最近、日本経済には再びデフレの兆しがみえている。

アベノミクスの「3本の矢」の効果がはっきりと出ていない状況の中、
9月14日にうち出された「新3本の矢」は具体性の乏しさや目標と実際との乖離が指摘されている。

▽物価指数は低下 国民の実質負担が増加

今年4月以降、日本政府は経済の総括判断で「緩やかな回復」という表現を維持してきた。
共同通信社は、安全保障関連法案が批判を受ける中、支持率の一層の低下を避けるため、
日本政府は経済の実際の状況を覆い隠すことにしたと指摘する。


日本政府は2013年初頭にアベノミクスの「3本の矢」をうち出し、
1本目の「大胆な金融政策」では3年以内にインフレ目標2%を達成し、
日本経済の長年にわたるデフレ傾向を打破するとされた。

40%を超える大幅な円安、食品やエネルギーの輸入価格の高止まりにより、
日本は生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)が14年度は前年度比2.8%上昇した。

だが消費税率アップや国際原油価格の大幅下落の影響により、
CPIは4月以降、0.3%を下回る低水準をうろうろしてきた。

今年8月にはさらにマイナス0.1%にまで低下し、28カ月ぶりの低下となった。

~中略~
指摘しておくべきことは、日本の食品価格はここ2年間に大幅に上昇したが、
消費者物価指数を算出する際には生産食品を除外するため、
インフレ指数は低下しているものの、国民の実質的負担はかえって増加しているということだ。

日本政府は2年連続で企業の賃上げを誘導してきたが、
今年6月末現在、従業員の実質所得は前年同期に比べ3%低下した。

米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは9月に日本国債の格付けを引き下げ、
アベノミクスの効果に疑義を呈し、経済成長が鈍化したため、
11年度から14年度にかけて日本の平均所得は減少し、
日本経済はデフレからなお脱却できず、巨額の財政赤字を背負うことになったと指摘した。

日本銀行(中央銀行)が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、
大規模製造企業の業況判断指数(DI)は12で、前回調査時の6月より3ポイント低下し、
2四半期ぶりの低下となった。経営者は経済の見通しにますます慎重な態度を取るようになっている。

市場では、日銀の金融政策はすでに行き詰まったとの声が聞かれる。

経済情勢が悪化すれば、日銀は必ず追加緩和を行い、これにより円がさらに値下がりし、
物価がさらに上昇し、消費が再び打撃を受けることになるという。

http://j.people.com.cn/n/2015/1026/c94476-8966933.html
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アベノミクスを否定すると野党の支持率が減るかのように語る人間もいるが、
現実では、アベノミクスに効果があるのではないかという期待が支持率を支えている。

(特に株高はそれを如実に示したものだろう)


とするならば、「アベノミクスは正しいのだ、効果があるのだ」と喧伝した
一部のメディアや経済学者の言葉こそ、安倍政権を下から支えてきたとは言えないだろうか?


少なくとも、私からすれば自分の暮らしを良くしてくれるのであれば、
自民党だろうと民主党だろうと投票するし、実際、2009年の衆院選で
民主党が自民党に大勝したのは、景気回復への期待が込められていたからだ



経済政策が正しいのであれば、好き好んで共産党や社民党に投票する人間がどこにいるだろう?
あれほど露骨な軍拡を目論みながら支持率は4割を下回ろうとしない。
それは、少なくともアベノミクスが効いているという信仰があるからではないだろうか?
(ほとんどの人間は、これ以上の経済が悪化しないことを望んでいるのである)


松尾教授が今年の6月に開いた講演会のパンフレットには
「「アベノミクス破綻」に最後の希望をつなぐ人を見るたびに、暗澹たる気持ちがいたします。
 2016/7衆参同時選挙、自民単独2/3確保し、改憲に王手をかけるために
 安倍は緻密な計画と信念を持ってやっており、2016/7頃に
 景気が良くなるように着実に手を打っています。」と予言している。


しかし、よくよく考えれば来年を待つことなく今年の9月に安保法案は可決され、
それを支えた議席数は、まさに一部の人間がアベノミクスは効果があるのだ、
アベノミクスのおかげで救われた人間がいるのだと叫ばれた2014年の選挙で得られたものだった



あの時、もし一人でも多くの学者がアベノミクスによって実質賃金は下がる一方だと
語ってくれれば、話は大きく変わったかもしれない。今とはなっては後の祭りだが。

最後になるが、松尾教授は1ヵ月後に
『この経済政策が民主主義を救う』という本を出すらしい。

アベノミクス支持者の高橋洋一氏が
『この金融政策が日本経済を救う』という本を書いていたのを思い出す。


紹介文によると、
「改憲に突き進む安倍政権のもとで、これから景気はどうなっていくのか? 
 対抗する左派・リベラル派は何をすべきか? 
 人気の経済学者による経済予測と「勝てる」提言。」とあるが、正直、どこに勝たせたいのだろう?

今年になって松尾氏は左派政党の連合を主張しているのだが、
反リフレ派の共産党がこれに耳を傾けることはまずない(正しい判断だと思う)。

とすると、社民と民主の連合なのかということになるが、民主は政治的には自民党と大差なく、
実際、歴史改竄や靖国参拝、あるいは改憲を支持したり実行する議員も党内に多く存在する。
あきれたことに維新の党と手を組むことを公言してしまったし、とても票を入れる気になれない。

左派系民主党員と社民党の連立、新党結成は、まぁ考えられなくもないものだが、
正直、単に自民党に席を取られたくないためだけに作った政党に誰が入れるだろうか。
(私は絶対に入れたくない)


松尾教授にしても、Sealdsの連中にしても、ビジョンと言うものを見せてくれないので、
単に自民党の議席や支持率を減らしたいだけの運動に見えてしまい、
その点が生活が悪化し、これ以上の経済悪化を防ぎたい保護的な大衆に響かないような気がする。

他の政党にまかせても大丈夫だろうかと思わせるには、それなりのビジョンが必要だ。
つまり、今の経済政策のどこが問題で、どう変えるべきなのかというビジョン。

「アベノミクスはそのまま継いで、改憲だけなくします」という程度の意見なら、
 自民党の左派も同じことを言っているわけで、全く効果がないだろう。

 この手の弱いNoほど与党にとって力強いYesはない。
 今の左派に必要なのは中途半端な反対ではなく、真っ向からの対決姿勢だろう。

津村一史『中東特派員はシリアで何を見たか』小感想

2015-12-28 00:42:45 | 読書
今の新聞記者のレベルの低さを知るにはうってつけの一冊。

これは理系・文系どちらの学者・ジャーナリストにも言える事だが、
あるテーマを研究する際には、とりあえず先行研究の読み込みから始めるのが定石である。

つまり、いきなり実験や現地調査を始めるのではなく、
ある程度、下調べをして基本知識を得てから、既存の研究の検討をするのである。
(その作業の中で自分の研究のオリジナリティを確立させていく)

国際問題の場合には、例えば、朝日や読売等の国内の新聞は言うまでもなく、
スクープトニクや人民網、イランラジオ、他にもル・モンドやアルジャジーラなど、
他のメディアでシリアがどのように伝えられているかをチェックしてから取材に当たる。

それが常識だと思っていたのだが、どうもこの本を読むと、そうでもないらしいことがわかってきた。
津村記者は実際にシリアに来て取材を行う中で、初めから悪と決め付けた自分の態度を反省する。

言い換えれば、彼はそれまで少しもイランやロシアのメディアに触れようともせず、
イギリス・フランス等の反アサド国側から発信する情報を鵜呑みにしていたわけだ。


実際、彼は英米仏等の西側国家がシリア国内の「反体制派」に武器を支援した結果、
その武器がダーイシュ(IS、イスラム国)に使われていることを知り愕然とするのだが、
そんなことはロシアやイランがずっと前から言っていたことである。

何しにシリアに言ったんだよと悪態をつきたくなる。

日本国内、それも海外メディアから取得できる情報を再掲されても困る。
イランやロシアの言い分には正しいものもあると言うのであればまだわかるが……

同じ本ではシリアを支援するロシアに理解を示す一方で、ロシアがウクライナで
「親ロシア派」に武器を支援していることを非難する頓珍漢なことが書かれている。

客観的に観て、ウクライナに、より露骨に干渉しているのは欧米列強であり、
彼らはシリア同様、自国に都合の良い集団に武器を支援し、軍事訓練を施した。

彼ら「反対派」(多くがネオナチ)がマイダンで暴動を起こし、
IMFの条件を呑むことを拒絶したヤコヌヴィチ大統領が追放された。


イギリスやドイツの石炭産業を活性化させるために自国の炭坑を閉山させること、
国営企業を民営化させること、公共料金を引き上げること、年金の額を引き下げること、
いわゆる新自由主義の受け入れがなされ、アメリカ人が政府の要職に就いたりさえした。

結果、緊縮策を受け入れられない地方の州(特に炭坑が多く存在する南東部)が反発し、
住民投票が実施され、極めて民主的な手段でドネツク・ルガンスク州の独立が決定された。


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ドンバス炭鉱の労働者達は、
ドネツク州からのウクライナ軍部隊撤退を要求し、無期限ストライキに入ると発表した。

タス通信記者に、ウクライナからの離脱を求め独立を宣言した
ドネツク人民共和国石炭産業省のコンスタンチン・クズィミン第一副大臣が伝えた。

現時点では、ドネツク上空をウクライナ軍の戦闘機が飛行している。
市の中心部は比較的平穏だが、多くの商店、銀行、カフェなどは営業していない。
公共交通機関は、状況により運行したりしなかったりの状態だ。

手元にある情報によれば、ドネツク市民に対し、3時間以内に
希望者はすべて町を離れるよう警告が出された。しかし現在のところ、
市民が積極的に町を離れる様子はない。ドネツク人民共和国スポークスマンは、
近くウクライナ軍によるドネツク急襲作戦が開始されると見ている。
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日本の記者は「親ロシア派」と称するが、元々は地方議会と連携して発生したものである。
ルガンスク州の州議会幹部会は、住民投票の支持を表明していた。

その表明は、次のように書かれている。

「ウクライナでは現キエフ政権とその保護者たちが扇動した内戦が起こっている。
 数十人の人々が命を落とし、数百の家庭が喪に服し、
 数百万人の人々の心に憎悪が生まれたのは彼らの責任だ。
 ウクライナ国民の半分が、犯罪者やテロリストとみなされた。

 それは、彼らが考えるウクライナの未来と、
 キエフで政権に就いた政治家たちが考えるウクライナの未来が異なっているからだ。

 キエフ政権は彼らと対話するかわりに、数百万人の市民に対して、
 対テロではなく、まさにテロ作戦を展開した。

 これは欧州現代史における自国民に対する最初の軍事作戦であり、
 市民に対する公のテロだ




こうして、病院や教会、学校、家屋が独立を認めない政府軍によって爆撃された。
重要なのは、キエフはドネツク・ルガンスクのインフラを破壊し市民を殺害したが、
「親ロシア派」はキエフまで行って、同様の破壊行為は行っていないということである。


これはシリア全土を手中に収めようとするシリアの「反体制派」と大分違う。
彼らは単に、自分たちの経済と生活を守りたいだけで、ウクライナ全土をロシア化する意図はない。
(逆にマイダンで暴動を起こした連中は文字通りウクライナをアメリカ化させているわけだが。
 アメリカに亡命中のグルジア元大統領がなぜかウクライナの州知事に任命されたのはその好例だ)

こういうことは、ちょっと調べればすぐにわかることなのに、
その程度の努力も怠る記者が一丁前にウクライナ問題について語るのは如何なものか?

これに限らず、ウクライナしかり、シリアしかり、
いかに周囲の言葉を鵜呑みにしていたかがよくわかる本になっており、
本人は「そんなオレだが現地に飛んで生まれ変わった!」と強調したいようだが、
私に言わせれば「こんなのでも体力と話術があれば記者になれるんだな」とあきれた次第である。

橋下徹に最後まで転がされ、尻尾をふり続けた大阪の新聞とテレビ局
…退任会見の醜態をあらためて振り返る!



国内でもこのザマだ。
どうも駄目な記者ほど現地に行けば何かわかるという信仰を持っているような気がするが、
実際は、現地に行っても理解できない人間は山ほどいるのである。大阪のそれは好例だろう。

記者に必要なのは現場に行くことではなく、いかに柔軟な考えができるかということ。
正確に言えば、日本政府の公式見解に対して一度は疑うことができるかということだ。

ウクライナにせよ、シリアにせよ、日本政府と全く同じ歩調を取るようではいけないだろう。

継続するサウジアラビアのイエメン空爆

2015-12-26 00:31:57 | 中東
パリのテロ事件以降、シリアのロシア空爆は急に良い空爆にされてしまったわけだが、
多いときは1日に100回以上出撃するこの爆撃が果たして本当に市民を巻き込んでいないのか、
大いに疑問である。確かにISの掃討には効果があったわけだが、それでもなお全肯定は出来ない。

とはいえ、ロシアの空爆が現段階で民間人を巻き込んでいるかどうかハッキリしないのに対して、
はっきりと市民を殺害しているのがわかっているのに何もお咎めがない国がある。


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サウジアラビア軍の戦闘機が、新たに、イエメン各地を数回に渡り爆撃しました。

イエメンのサバー通信によりますと、サウジ軍の戦闘機は23日水曜、
新たな犯罪の中で、イエメン北部サアダ州にある複数の村を爆撃し、
これにより、女性2名と子供3名合わせて民間人5名が死亡、他6名が負傷しました。

サウジ軍はさらに、イエメン西部のフダイダ州のある居住区や、
首都サヌアのある地区を攻撃し、この中で、イエメン人の市民数名が死亡しました。

こうした中、イエメン軍と人民委員会は、サウジのこれらの攻撃への報復として、
イエメン南部タイズ州に進軍し、サウジの侵略軍を撤退させました。

イエメン軍はこの作戦で、同国南部ジャウフ州において駐屯地を解放し、
さらにサウジ軍の拠点を砲撃し、これにより、サウジ軍兵士数名が死亡しました。

http://japanese.irib.ir/yaman/item/60908-%
E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A
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サウジアラビアのイエメン爆撃は、あの国連でさえ少しは取り上げているのに、
どういうわけだか、日本のメディアの扱いはかなり悪い。

先月の記事だが、イランラジオのナジャフィー解説員は次のように述べている。



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イエメンにおけるサウジアラビアの犯罪と国連の消極性

サウジアラビアの空爆によるイエメン人の大量虐殺は、
イエメン各地で現在も続けられています。イエメン政党のカラマは声明の中で、
サウジアラビアとその同盟国の空爆は、イエメンの人々に対する戦争犯罪とみなされると表明しました。

この声明では価値観、国際法などに対するサウジアラビアの侵害行為について指摘しています。
カラマはサウジと同盟国の政権がイエメンの人々を虐殺した犯罪国家だとして、
サウジアラビアとその同盟国の政府関係者の国際刑事裁判所における訴追を求めています。

カラマはまた、イエメンの人々に対して行われたすべての犯罪を調査し、
国際法規に基づきその責任者を処罰する必要があるとしています。

この声明では、国連などの国際機関に対して、サウジアラビアのイエメン人に対する犯罪を
すぐに停止させ、陸・海・空によるイエメンの封鎖を解除する措置を取るよう呼びかけています。

イエメンの革命最高委員会のフーシ委員長は、
サウジアラビアの犯罪に対する国連と国際メディアの黙認を非難しました。

フーシ委員長はまた、イエメンの人道問題を担当する国連調整官と会談する中で、
「イエメンの人々はサウジアラビアの犯罪に対し国連が無関心であることに、
 憤慨し、失望している」と語りました。さらに、サウジとその同盟国の
イエメン各地の空爆と抑圧的な封鎖から生じている、イエメンの危機的な人道状況に触れ、
「この攻撃は人々の状況をより危機的に、より困難にしている」と述べました。

フーシ委員長は、「イエメン北部サアダ州の国境なき医師団の付属病院への攻撃は、
サウジと同盟国による、価値観や国際法規、人道に反する明らかな侵略行為を示すものだ」
と語りました。また、イエメンの人々が国連のアフメド・イエメン特使の立場に
不満を抱いているとして、「アフメド特使はイエメンを攻撃する側の代弁者であり、
サウジアラビアのアプローチを実行しようと努力している」と述べました。

さらに、イエメンにおける政党による政府の樹立と、
選挙の実施、民主主義の原則の強化の必要性を強調しました。



国連のイエメン人道問題担当調整官も、
この会談でイエメンへの各種の人道支援の用意を強調し、
サウジアラビアのイエメン人に対する犯罪に遺憾の意を表明しました。

国連がサウジの犯罪に消極的な態度をとり続けている中で、
国連のドゥジャリク事務総長報道官も、国境なき医師団の病院への空爆において、
サウジ主導の連合がその責任者だとしながら、「国連はこれに関する調査を開始することはない。
その調査に必要な設備もなく、またそれに必要な人材も有していないからだ」としました。

http://japanese.irib.ir/yaman/item/59419-%E3%
82%A4%E3%82%A8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%81%AB%E3%81
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上の説明に加えれば、イエメンの革命最高委員会は、以前から国連のアフメド・イエメン特使に
国連監視下でのハーディ元大統領との和平協議に参加する用意があると述べている


つまり、フーシ派政権は協議の容易ができている一方で、
それを問答無用でひたすら爆撃し続けているサウジ・アメリカ連合軍があるわけで、
冷静に考えれば、これは大いに報道されてしかるべきニュースになるはずなのだが・・・

空爆「まるで無差別」 ロシア介入後に急増「シリアを逃れるしか」

代わりにこういう記事が載せられる。
この記事はイドリブ県からの難民にインタビューしたものだが、
この地域はアメリカが軍事支援している自由シリア軍とアルカイダ系のヌスラ戦線が
共同して統治していたわけだが、上の記事ではあたかも自由シリア軍だけのように書かれている。

一方で、同記事が書かれた約2週間後の記事では、こういう記事を載せてもいる。

反体制派の「穏健派」と「過激派」をどう区分するかも難問だ。
 米欧やトルコが「穏健派」として支える「自由シリア軍」は、
 北西部の要衝イドリブ県を今春制圧した際、米国がテロ組織に指定する
 アルカイダ系武装組織「ヌスラ戦線」の支援を得た。食料や生活費を得るため、
「穏健派」とISやヌスラとの間を行き来する戦闘員も少なくない
という。」
(http://digital.asahi.com/articles/DA3S12126129.html?rm=150)

いやいや、あんたらも「穏健派」と書いてただろ?という話である。
朝日新聞は、自分が書いた記事の内容を半月もしないうちに忘れてしまうのだろうか?

しかも、素直に考えれば「穏健な」武装組織なんて今のシリアにはいないことはわかるはずなのだが、
どうも彼らの頭の中では自由シリア軍はあくまでも「穏健派」なのらしい。

冒頭の文で私がロシア軍が民間人を巻き込んでいるのかいないのかハッキリしないと
書いたのも、自分たちの都合で「穏健派」と書いたり「テロ」と書いたりする連中が
このシリア内戦について、ある種のストーリーを勝手に書き上げているからである。

恐らくロシア軍も万能でない以上、民間人も殺害していると思うのだが、
朝日新聞が主張する根拠として提示されているのが例の反体制派の亡命シリア人1名で
構成されるシリア人権監視団体だったり、イエメンの空爆について全く報じなかったり、
どうも怪しい点が多く観られる。故意の無差別爆撃なのか否かがわからない。
そのため、最終判断が出来ない状態にある。


イエメンと対戦、U22が引き分け リオ予選へ強化試合 サッカー
(http://www.asahi.com/articles/DA3S12111905.html)


これがイエメンに関する朝日新聞記者が執筆した最新の記事である。
今月に入って、朝日の記者が報じた記事はサッカーの記事しかない。
少なくとも朝日デジタルで閲覧可能の記事の中では。ふざけてるのだろうか?

こういう露骨に情報を切り貼りして報道しているのがバレバレなので、
どうも朝日新聞は信用がおけないのだが、よその新聞も似たり寄ったりだ。

冷静に考えれば、イランやロシアの御用メディアと謗られようはずの
イランラジオやスプートニクがきちんとサウジの爆撃を報じているのに対して、
一応、表現や言論の自由を行使しているはずの日本のメディアがこのざまである。

こういう逆転現象がなぜ起きるのか?非常に興味がある。

来年2月にイランで選挙実施

2015-12-26 00:12:33 | 中東
来年の2月26日にイランで議会選挙・専門家会議選挙が実施される。
(専門家会議とは、高位のイスラム法学者で構成された議会)

24日木曜の時点で議会選挙には5921名が立候補し、そのうちの562名が女性だという。
(専門家会議の選挙には801名が出馬予定)

これに関して、イランラジオのアミーンザーンデ解説員は以下のように説明している。
イランの政治システムを知る上でも、一読の価値があるかと思う。

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イランには、ここ数日、選挙の雰囲気が漂っています。
内務省の呼びかけにより、第5期専門家会議と第10期イラン議会選挙の候補者の登録が始まり、
これらの選挙の実施に向けた準備が整えられています。これらの選挙は2016年2月26日に実施されます。

イランのローハーニー大統領は、21日月曜、
内務省の選挙本部を訪れ、専門家会議の議員の候補者登録を行いました。

ローハーニー大統領は記者会見で、専門家会議を体制の最も重要な柱だとし、
「今日国の中で連帯と統一を有するなら、それはイスラム法学者による統治のおかげだ」と述べました。

ローハーニー大統領は選挙への女性の参加についても、
「我々は女性の参加に関して先進的な国のひとつである。
 国の運営のすべての分野、福祉サービスの分野において女性が参加しており、
 女性の参加が男性よりも多くないとしても、その影響力は小さくない」と語りました。

また、
「議会選挙、さらには専門家会議の選挙で、女性が登録すべきであり、
 これは我々にとって世界的な重要性を有している。この選挙により、
 言動において国の運営において主な決定を下すのは人々と選挙での投票だと表明する」と述べました。

さらに、「革命後、イランは宗教的民主体制を実現した最初の国だった」と語りました。

イランの議会制度は、議会での決定が国民の将来に直接影響するようなシステムとなっています。
経済、政治、文化、社会など、様々な分野での議会の措置により、
実際、政府とイスラム共和制の計画と方針が決定されます。

憲法によれば、イラン国会はイスラム共和制において、法案を可決し、成立させるほか、
国の行政機関の監視や閣僚の信任など幅広い権限を有しています。

政情や外交分野の問題における国会の役割もまた、
政府の後ろ盾と体制の力のひとつと見なされています。
国民の代表である議員の権限と義務により、国会は独立した権限を有する権力機関になっています。

イラン国会はこれまで、様々な思想、様々な政治的経歴をもつ議員の存在により、
浮き沈みを経ながらも、概して発展の道を歩んできました。

このためこの選挙は今も登録が行われている最中ですが、
イランの選挙の空気が国内外のメディアの注目を集めています。

これに関して、選挙の健全性の強調、資格の検討、
議会と専門家会議の構成の変更の可能性などの問題に焦点が当てられています。

http://japanese.irib.ir/news/%E6%9C%AC%E6%9
7%A5%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF/item/60853

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イランの最高指導者は国政において最高決定権を有しており、
また戦争において最高司令官の役目も負うため、独裁者というイメージが流布しているが、
実際には普通直接選挙で選ばれた専門家会議のメンバーによて選出され、監察を受ける。

また、この専門家会議の議員も8年ごとに入れ替わるため、
国民が選んだ宗教権威者が最高指導者を監督するシステムになっている。

また、これとは別に通常の内政・外交は議会(マジュレス)が担当し、
こちらは4年ごとに290人の議員が直接選挙で選ばれる。女性議員の比率は少ない。

ただし、それがイラン女性の差別に繋がっているかと言えば、それは誤りだ。

イランでは、次官級の官職や各省庁の報道官、大学教授、医師、
航空機のパイロットなどの高所得者の職に女性が多く就いており、
例えば、イランでは一般医の49%、専門医の40%、高度技能専門医の30%を女性が占めている。

また、近年、イランでも女性運動が盛んになっているが、
それはイラン社会における女性の進出が背景として存在する。

以上、ざっと見てきたが、シリア・北朝鮮と共に人権侵害国家と言われるイランだが、
その政治制度は宗教国家の割には意外なまでに民主的で、少なくともサウジよりはマシだ。
(サウジでは女性参政権がつい先日、認められた。また王族の権力が異常なほどに高い)

イランにも至らない点は山ほどあるわけだが、それは過激な亡命イラン人が要求する
現イランの政治体制あるいはイランという国家そのものの消滅なしでも改善できると思われる。

シリアもしかり、中国もしかり、どうも欧米ならびに日本の左翼の多くは
民主化を盛んに語る割には、異常なまでに選挙制度というシステムを軽視しており、
代わりに一部の「民主派」による公道や施設の占拠、暴動を礼賛したがる傾向がある。

今月の岩波新書でも、香港の雨傘革命を、実際には参加者の比率は低く、
現地住民には経済を麻痺させるものとして不評を買っていたのにも関わらず、
「日本も見習うべきではないだろうか」と絶賛されていて大いに驚いてしまった。

あくまでも彼らは数の上では少数派であり、皮肉なことに自国の民主化を叫ぶ彼ら自身が、
選挙制度という民主システムを平然と無視し蔑ろにしていることについてもう少し検討すべきだろう。


この点は、最近やたらと持て囃されているSEALDsにも言えることだ。
安保法案に反対しているからというだけでベタ誉めされているようにも感じる。
少なくとも、彼らの主張をホームページ等で確認しているようには見えない。

この手の直接行動主義の問題点についても色々書きたいところだが、それは後日改めたいと思う。

過去最大の軍事費-とまらない軍拡の裏で (62→7000)

2015-12-22 23:35:57 | 軍拡
来年度の日本の軍事費が前年度より740億円増え、5兆500億円に達する見込みだとわかった。
http://jp.sputniknews.com/japan/20151222/1356060.html#ixzz3v3ryLrEf

この軍拡の裏で同時進行しているのが思いやり予算の増加である。
そもそも、思いやり予算は1978年に基地で勤務する従業員の給与支払いを一部負担する形で始まった。
その後、対象は住宅費、光熱費、水道費、滑走路等の建設費と拡大の一途を辿った。

結果、90年代後半には3000億近くまで膨張し、現在、7000億を越えている

62→7000億

物価の上昇を考慮に入れても、凄まじい勢いで負担が増えていることがわかるだろう。
赤旗の山田秀明記者は次のように述べている。

「9月19日に安倍政権・与党が強行した戦争法の成立で、
“日本の軍事分担が増したので、せめて『思いやり予算』を減額させてほしい”―。
 これが財政審の卑屈な要求でした。ところが、この要求ですら米側に突っぱねられて屈服
 減額どころか、今後5年間にわたり増額を受け入れてしまったのです。

 米国の同盟国でこれだけの財政支援をしている国は日本以外にありません。
 これでは、日本本土や沖縄への米軍駐留の戦略的な意義が失われても、
「日本がカネを負担してくれる」というそれだけの理由で米軍は居座り続けるでしょう。」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-12-17/2015121702_02_1.html

2009年、沖縄米軍基地問題について鳩山由紀夫首相(当時)が
どれだけコンタクトを取ろうと奔走しても、頑として応じようとしなかったことを思い出す。

対話をしようとすらせず、ひたすら無視し続け、移設を進めようとする態度を見て、
私は、これまで自分が抱いていたオバマ像が完全に間違いだったことに気がついた。

どれだけ親米的態度を取って尽くしても、
思いやり予算をどれだけ増やしても、
アメリカ合衆国は日本政府を金づる程度にしか受け止めていない。


他方で、思いやり予算の増額はアメリカが直接に要求したものではない。

思いやり予算の拡大は、日米軍事同盟、
より正確に言えば米日主従同盟の共同軍事演習と連動して不可避に生じる現象である。


イランラジオのヴァガーリー解説員の説明を以下に抜粋する。

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アメリカと日本の共同演習

アメリカと日本の共同演習が、伊丹駐屯地で始まりました。
この演習は日本とアメリカの軍隊6500人が参加しています。

軍事関係者は、この演習の実施の目的を、
サイバー攻撃への対策と一部の地域諸国のミサイルからの防衛だとしました。
日本の中谷防衛大臣とアメリカのケネディ駐日大使は、この共同演習を視察しました。

ケネディ大使は、日米の軍事・安全保障協力を非常に重要なものだとし、
その重要性を説明する中で、オーストラリアなどいくつかの国際オブザーバーが
この演習を監視すると強調しました。

この演習の実施は、軍事・安全保障協力の拡大に向けた両国の努力を物語っています。

安倍総理大臣は、最近のアメリカのオバマ大統領との会談で、
「日本はアメリカと更なる協力を行うだろう。軍事分野での協力がその最も重要な協力だ
としました。

これに関して、日本はカリフォルニア州での銃撃事件後、
テロ対策におけるアメリカとの協力に向けた用意を表明しました。
アメリカの国防安全保障協力局もまた、最近の報告の中で、日本にアメリカ軍が
広く利用している無人偵察機グローバルホーク3機を売却することを明らかにしました。

日本によるこの偵察機の購入は、国外での自衛隊の駐留を認める安保関連法の可決後、
自衛隊の建て直しに向けた日本の計画の枠内で行われています。

アメリカはおよそ4ヶ月前にも、
オスプレイ5機を売却する総額3億3300万ドルの契約を締結しました。


日本の防衛省は、以前、オスプレイと先進型ホークアイの購入を考えていると表明していました。
アメリカと日本の軍事協力の拡大の一方で、日本の防衛大臣は最近、
「日本はアメリカによる弾道ミサイル防衛システムの配備を検討している」と述べました。

西側の同盟国との軍事協力の拡大にむけた日本政府の努力と時を同じくして、
日本の政府筋は、2016年の同国の防衛予算を5兆円に拡大する決定を明らかにしています。

この報告によれば、日本の来年度の予算には、
沖縄の普天間基地移設に関する予算も含まれるということです。
2012年12月の安倍政権誕生から4年連続で軍事予算は増加しています。

(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/60566)
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「共同」軍事演習ではあるが、決して「対等」軍事演習ではない。

軍事演習の拡大と強化が続く限り、その費用の多くは日本が負担するものになる。
加えて、日本の軍備もアメリカ製品を買わされるようになってくる。

大手学習塾で「オリジナルテキスト」を買わされることに似ている。
無論、オスプレイが好例だが、その戦闘機の性能や安全性は二の次にされてしまう。


「防衛費」は「軍事費」ではない。これは国を守るためのお金では決してない。
 特定の国の政府や企業の喉を潤すために貢がれるものだ。

ここで、周辺諸国の対米関係に目を移してみよう。以下の記事は半年前に書かれたものだが、
未だに、というよりも日本の軍拡が止まらない今だからこそ一読の価値があると思われる。


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台湾という名の「てこ」、米国にとっては未だ活用効果あり

台湾の野党、民主進歩党の蔡 英文(さい えいぶん)主席が米国で手厚い歓迎を受けたことは、
米国は台湾問題を利用して中国へ作用を及ぼす「てこ」をキープしようとしていることを示している。

ここ最近、米国と台湾の間ではこうした軍事面での積極的なコンタクトが図られているが、
これは米国には台湾の安全の保証人としての役割を捨てる気はないことを示している。

蔡 英文氏は、台湾の大統領候補としては
史上初めて、米国務省の建物内で直接に米外交官らと会談を行った。


しかも、この会談を直々に執り行ったのは、
ジョン・ケリー国務長官に次ぐナンバー2の人物であるトニー・ブリンケン国務副長官だった。

中国が、来年1月に予定されている台湾大統領選挙で中国国民党への
支持に傾いていることを考慮すると、野党、民主進歩党の蔡 英文氏の受け入れが
これ見よがしに高いレベルで実施されたのは、米国側からの政治的歩みだと捉えることができる。

というのも、蔡 英文氏が主席を務める民主進歩党は
中国との余計な急接近には反対する立場をとっていることから、
米国は台湾と中国の国益が固く一致することにはあまり関心を抱いていない。

米国は、台湾問題を長期にわたって未解決に維持する現状維持をよしとしている

米国側にとってはこれは、
近い将来、米国は台湾の安全の保証人の立場を演じ続けることを意味する。

中国抑止の可能性が低まったことに関連し、
米国は台湾の軍事的要求を満たしている自らの役割を強調しようとしている。
まさにこの要因から米台湾の軍人らの間の軍事コンタクトの拡大が図られているのだ。

2014年末に米国のペリー級フリゲート艦4隻、3億7千ドルの米国への供給が承認された。

2015年は米台湾の合同演習、合同トレーニングがいくつか予定されており、
この中には台湾で「心理作戦および情報戦争」に取り組む
米軍部隊のラインでも同様の演習、トレーニングが行われる。

双方の関係にとってはかなり稀有なアプローチとなったのは、
ハリー・ハリス海軍大将が米軍太平洋司令官に就任するセレモニーの席に、
台湾の 厳徳友(ヤン・ゼフ)参謀本部長が参列していたことだ。

それまでは米国マスコミ報道にもあったように、台湾の軍人の代表は
ハワイでの海軍パラシュート作戦を記念したシンポジウムに参加したことはあった。

シンポジウムは太平洋司令部によって行われていたが、
今までは台湾の代表がこうした類の行事に参加したことは吹聴されてはこなかった。

仮に台湾向けの米国の軍事供給量が
以前より少なくなるとしても、やはり重要な象徴的な意味は持ち続ける。

こうした努力を受け取るのは中国や台湾のみならず、この地域における米国の連合国も同じだ。
南シナ海の状況が緊張化することを背景に、
米国は台湾関係においては路線維持にますます大きなアクセントを置いており、
まさにこれによってアジア太平洋地域における米国の連合国らに重要なシグナルが送られている。

米国の地域安全保障を維持する能力に対して疑問が高まるなかで、
連合国らには米国が「自分たちを捨てることはない」との確信を抱かせねばならない。
こうした場面で台湾は長年にわたる米国との軍事関係もあって目立った例として使うには好都合なのである。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20150618/467327.html#ixzz3v42W0eau

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安部晋三をはじめ、多くの右翼は「中国の脅威」を叫ぶが、何のことはない。
実際には「アメリカにとっての中国の脅威」なのである。


相手国の安全などこれっぽっちも考えていないことは、
韓国の米軍基地において、密かに細菌兵器が開発されていたことからもわかるだろう。


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今年5月、烏山(オサン)基地で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウィルスの実験が
「初めて行われた」という米軍が表した声明は、韓国の世論をすっかり混乱させた。

これを物語るのは17日(木曜)に米韓軍間合同検査委員会が表した結果だった。

合同委員会の委員長を務めるチャン・ギョンス少将の声明によれば、
コロナウィルスおよび腺ペストの非活性サンプルは危険な細菌を発見し、
特定するという人員訓練のために用いられたもので、こうした訓練が行われるのは
烏山基地ではすでに16回目で、それまではソウル中心部の龍山(ヨンサン)基地で行われていた。


両国の軍部は韓国に持ち込まれたバクテリアは
「人体にいかなる害も一切与えなかった」という声明を表したが、
ロシア人軍事専門家のウラジーミル・エヴセーエフ氏は、こうした完全な機密状況で
このような演習を行うという事実自体が危惧感を招かないわけにはいかないとして、
次のように語っている。


米国防省はかなり前から世界中を実験室にして、
 マスコミの注意を惹かずに、どこであろうとも細菌兵器の実験を行ってきている。


 このため韓国で行われた『演習』はありうる細菌の脅威に対抗するというよりも、
 北朝鮮に対して使用しうる細菌兵器の製造のためという可能性は十分にある。

 もしそうであるならば、米国はこの分野で効力を持つ条約に歴然と違反している。
 国の領域の外で細菌兵器を製造しようという米国の計画は、最も入念な分析を必要としている。
 
 米国は、ロシアが同様の兵器を開発しているとして、これをしょっちゅう非難しているが、
 実はこの開発を行っているのは米国のほうであることを確証する事実が
 ますます露呈するようになってきた。」

米国が韓国にコロナウィールスを送りつけたことが発覚すると、北朝鮮の国連大使は今年夏、
これは朝鮮半島で戦争が勃発した際に北朝鮮に対して生物兵器を使う目的があるのだろうとして
米国を非難する声明を表している。こうした開発がまずは細菌が領内に存在する韓国にとって
明らかな危険を伴う
にもかかわらず、このテーマには未だに十分な注意がむけられていない。

現在米国は、近いうちにも韓国領内の米軍配備についての合意に変更が加えられ、
そこに危険な細菌物質の運搬、その扱い、安全な無害化についての通知プロセスの
明確な記載がなされるようになるとして韓国をなだめようとしている。だが不測の事態の保証はない。

また「北の脅威」が去った後、
細菌兵器の分野での米軍の実験結果がどう使われるのかについても、誰も何も言っていないのだ。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151222/1354460.html#ixzz3v49ZNkFj
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こうしてみると、日本・韓国・台湾、そして今回紹介しなかったフィリピンは、
アメリカと言う王将を守るために捨て駒にされる歩や金のようなものだ。

日本と韓国の小競り合いなど、しょせんは、どちらが飛車か銀かの争いにすぎず、
両国がアメリカの指示に従い、団結して棒銀戦法を忠実に実行する点では変わりはない。


以上、国際関係から日本の軍拡と思いやり予算の拡大について論じたが、まとめると、

①日本の軍拡はアメリカとの共同軍事演習の増加・強化と連動している。
②その負担およびアメリカ製の軍備購入の半強制が軍事費拡大の要因である。
③そのため、日本にとって、その演習や平気が本当に必要かどうかは二の次にされる。
④他国も同様に、その国の軍拡は防衛上の必然性ではなくアメリカの戦略に基づいたものである。

その解決策としては

①反基地運動を多国的なものに変化させなければならない。
 現在の運動は、どれも自国の基地に限定されており、他国の反基地運動に参加したりはしない。
 
 アメリカのアジア外交における戦略そのものが変わらない限り、
 基地に関する問題は解消されない。

②日米同盟における両国関係の非対称性を強調し、中道右派を転向させることが必要。
 具体的には、沖縄の翁長県知事のような人間を反対派に変化させ、味方を増やすべきだ。

 つまるところ、民主主義とは如何に反対派を裏切らせるかを競うゲームなのだから。

③アジアだけでなくヨーロッパや中東・アフリカにおける問題と一括して考える。
 例えば、ウクライナのキエフ政権に対する経済援助と軍事支援と結び付けて考察する。
 
 こうして、アメリカの国際戦略そのもの、あるいはアメリカに留まらず、
 フランスやイギリスを含めた旧宗主国の旧植民地国の干渉に対して抗う姿勢を見につける。

 つまり、特定の国や人物を個人攻撃するような卑小な運動に終わらせず、
 帝国主義や植民地主義そのものへの否定と廃絶を目指す大きな運動へと展開させる。

 あまり風呂敷を広げるのも問題だが、少なくとも視野を広げ、
 世界史の視点から沖縄の基地や日本の軍拡について考えなくてはならないだろう。
 そのためには、非欧米圏の逆サイドから焦点を当てた記事を読むことが要されるはずだ。

一発ネタ

2015-12-22 22:02:13 | 浅学なる道(コラム)
人気ユーチューバー・はじめしゃちょーが謝罪 
「ニベアクリームでお風呂作ってみた」動画に批判殺到



ユーチューバーのはじめしゃちょーが12月17日、
炎上していた「ニベア風呂」動画について、自身のチャンネル内で謝罪しました。

【炎上していた「ニベア風呂」動画】


●「ニベアクリーム100個で風呂」で炎上

はじめしゃちょーと言えば、YouTubeのテレビCM
「好きなことで、生きていく」シリーズにも出演していた人気ユーチューバー。

しかし、12月15日に投稿した「ニベアクリームでお風呂作ってみた Nivea creme bath」
という動画が炎上。「これはふざけすぎ」「ニベアの無駄使い」など、
多くの批判が寄せられる形となっていました。

動画の内容は、「肌荒れがひどいので、ニベアクリームを100個使った
“ニベア風呂”に入ってみた」というもの。動画内ではニベアクリーム100個を順に開封し、
浴槽へ叩きつけたり、口に入れる、全身に塗りたくるといった様子が収められていました。

結局、動画は2日間で140万回以上再生されたものの、
コメント欄は「不快派」と「擁護派」が入り乱れて大荒れ状態に。


●「今後もスタンスは変えない」と宣言

こうした流れを受けて、はじめしゃちょーは12月17日、
「ニベア風呂と今後について」と題した動画を投稿。「ニベア風呂」動画について
振り返りつつ「不快に思った人はいると思うのでそこは謝ります」と謝罪しました。


ただ、「昔から大量買いはやってた」「コーラ風呂を作った時はこんなに批判されなかった」と、
なぜ今回に限って荒れたのか、逆に視聴者に質問を投げかける場面も。
「もったいない」という意見については、「ニベア風呂を作りたかったからやった」
「目的がちゃんとあってやっているから、それは無駄遣いではない」と反論しました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151217-00000118-it_nlab-sci













シャルリーエブド事件再考

2015-12-22 00:23:55 | 欧米
先月に起きたパリの同時多発テロ事件は容疑者がすでに殺害されており、
ダーイシュ(イスラム国、IS)の声明があったことから、恐らく同組織の犯行と見られている。

しかし、冷静に考えれば、手柄の横取りというのは十分有り得るし、
この事件をきっかけにフランス国内の市民監視やシリアへの空爆が強化されたわけで、
どうも腑に落ちないというか、何か肝心な情報が手元に入ってきていない感触を得る。


今年の1月に発生したシャルリーエブド紙襲撃事件においても、
容疑者は警察に殺害されており、真実を知るものが誰もいない状況でテロの脅威が叫ばれていた。

そこで今一度、シャルリーエブド事件を読み直してみたいと思う。


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〈ニュースの窓〉浮上する陰謀説/シャルリー・エブド襲撃事件

パリで起きたシャルリー・エブド紙襲撃事件は残酷な「イスラム過激派によるテロ」として、
「表現の自由を守る西側」と対峙された。だが、数々の重大な疑問が浮上している。


公式報道による事件の概要

1月7日、パリ市内にある風刺週刊誌を発行しているシャルリー・エブド本社に
覆面をした複数の武装した犯人が襲撃し、警官2人や編集長、風刺漫画の担当者や
コラム執筆者ら合わせて12人を殺害、9日には別の襲撃犯がユダヤ系スーパーマーケットで
人質をとって立てこもり4人が犠牲となり、襲撃犯は計3人が射殺されたとされる事件が発生した。

犯人は自動小銃AK-47で武装し、相当な軍事訓練を受けたプロのようだったと報じられた。
フランス政府は「表現の自由」、「団結」を叫び、断固テロとたたかうことを宣言、
世界からは約40カ国の指導者、政府高官らが終結し「デモ行進」した。

数多い矛盾と疑問点

だが、不審な点や疑問は数多い。第一に、2人の犯人が使用したとされる車には
彼等の身分証明書が残されていたという点だ。とうてい「プロ」がやることではない。
9.11事件で無傷のパスポートが倒壊したビルの残骸の中から見つかったことを思い起こさせる。
また、車を運転したとされる18歳の少年が完璧なアリバイがあるとして
自首した事実を欧米メディアのほとんどが報じなかった。少年は事件とは無関係だった。

第二に、本事件の捜査を担当した司法警察の幹部が不可解な「自殺」を遂げた。
だが、この重大なニュースを主要メディアは報道しなかった。
警察当局は彼が「鬱病」あるいは「燃え尽き症候群」を患っていたと説明した。
そんな人物を事件の根幹に関わる捜査の責任者に任命するはずがない。

第三は、襲撃犯が路上でロシア製の自動小銃AK-47で2人の警官を射殺したとされる
現場の様子を鮮明に捉えた動画にある。当局もメディアも、路上に横たわっている
1人の警官に「犯人」が駆け寄りながら「とどめを刺す」一発を頭に撃ったと発表した。

だが、ユーチューブに載った初期の動画を観ると、明らかに銃弾は当たっていないし、
数十センチも離れた路面から白い煙が出ているのがはっきりわかる。空砲である。

もしも破壊力の強い実弾が至近距離で頭に命中すれば吹っ飛ぶか、大量の血が出る。
しかし、実際は一滴も血が出ていない。また、もう1人の死んだはずの警官は
こっそりスマホをポケットから取り出して「自分撮り」してまた動きを止めている。

この動画を観て不審に思ったあるフリージャーナリストは、
現場にはないはずの大量の「血痕」のようなものが「残され」、
囲いがしてあると伝えながら、不自然さを強調した。また、その動画は後にほぼ抹消された。

一部残っているものは編集されていて、「射殺された」瞬間が「残酷」だとしてぼかしが入っている。

最後に、世界のリーダーたちが何十万人もの「怒れるデモ隊」の先頭に立ってスクラムを組んで
行進しているように見える場面があるが、実際には彼等の後ろには誰もいなかった。
完全な演出だったのである。ドイツのメディアが暴露して判明した。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/02/sinbo-j_150223-2/
(朝鮮新報2月21日の記事より)
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今になって思えば、シャルリーエブド事件では、事件の真相解明、つまり、
誰がなぜ、どのように計画を練ったものなのかを解明することよりも、
この事件を政治や軍事に最大限に利用することのほうが優先されてしまった
のではないだろうか。

本来なら事件の背景として存在する欧米内でのムスリム差別や
シリア・イラクをはじめとする旧植民地国に対する旧宗主国の軍事・政治干渉についても
内外の研究者を交えて、きちんと議論を重ね、特に後者については戒めるべきだった。

そのツケが数ヵ月後の今になって回ってきている気がする。
先の地方選挙における国民戦線の健闘は、その良い象徴と言えるだろう。

すなわち、シャルリーエブド事件を通じて
フランス国内に蔓延するイスラモフォビアを撲滅する機会があったはずなのに、
これといった対策が練られなかった結果、極右政党の大幅な躍進を許してしまった。

「暴力の根底には社会の差別がある」という重大な命題を見逃してしまった。
 このことは大いに反省してしかるべきだし、今からでも遅くはないはずだと思われる。


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真の自由

年始から衝撃のニュースが世界を駆け巡った。
フランスの新聞社「シャルリ・エブド」襲撃により、17人の犠牲者が出た。
言論を暴力で弾圧し、人々を殺害した残虐行為に怒りを禁じえない

▼事件後、フランスでは「言論の自由」を守るデモが拡散。
 しかし、イスラム教関連施設に対する襲撃が相次ぎ、イスラム寄りの発言が
「テロ擁護」として抑圧されている。極右政党が支持率を大きく伸ばす一方、
 ドイツなどではイスラム社会との融和や難民の受け入れ拡大を求めるデモも行われているという

▼同紙は14日、事件後初めて発売した紙面の表紙にイスラム教の預言者・ムハンマドの風刺画を描いた。
 欧州メディアの多くがこのことを報じつつも、風刺画自体の掲載は見送った。
 暴力には反対するが、相手を傷つける風刺にも反対する姿勢だ

▼短絡的で偏重な風刺は人種差別を助長する。
 同紙の風刺画の中には、中傷、侮辱、嘲笑にしか感じ取れない下劣な作品も少なからずあった。
 言論に、人を傷つけ、貶める自由など認められない

▼一国の指導者へのテロをテーマにした映画が外交関係よりも重んじられ、
「朝鮮人を殺せ」という暴言が警察の保護の下に白昼堂々叫ばれる、
 そんな無分別な「自由」を盾に、異民族、異文化、異教徒に
 自分たちの価値観を押し付ける傲慢さを看過できない。
 違いを認める寛容、相手を思いやる尊重こそが憎悪の連鎖を断ち、自由を守ることになる。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/01/il-480/
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上の文章は朝鮮新報のコラムから引用したものだが、
シャルリーエブド事件を単に向こう側の問題として片付けてしまうのではなく、
こちら側の問題(言論の自由の名の下、差別が看過される問題)として扱った良い記事だと思う。

デイリーNKおよび同紙編集長の高英起氏によれば、朝鮮新報は北朝鮮の別働隊であり、
北朝鮮当局が総連本部、朝鮮新報本社、同紙記者との綿密な打ち合わせの上で記事を作成するそうだ。
(http://dailynk.jp/archives/32149/2)

「これらの記事はいずれも、記者個人の自由な裁量で書かれているわけではない。
 北朝鮮当局と朝鮮総連本部、朝鮮新報本社、現地記者が綿密な打ち合わせの上で
 作成しているのであり、言わば北朝鮮の準公式メッセージなのだ。」(by高英起氏)


高氏本人は
「今年1月にフランスの週刊新聞シャルリー・エブドが襲撃された際には、
 なぜかテロリストよりも米国を猛非難する記事を掲載した」と否定的に評価しているが、
仮に朝鮮新報の記事が北朝鮮政府、総連本部にチェックされ、準公式メッセージとして
発信されているとすれば、なかなか北朝鮮は本質を突く能力を持っていると評せざるを得ない。

金正恩の髪型に関する報道

2015-12-21 21:22:22 | 北朝鮮
冷静に考えればデマだとわかるものでも、北朝鮮が絡むと簡単に信じられるのは、
結局のところ、北朝鮮と言う国に対する偏見や蔑視が蔓延しているからなのだろう。

北朝鮮が若者に金正恩氏と同じ髪型を強制?
英メディア報道に「米国が北朝鮮を悪の枢軸国というのもよく分かる」―中国ネット


金正恩の髪型(覇気ヘア)を若者に強制させているということだが、
実のところ、このデマは去年の春にもまことしやかに囁かれたものだった


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 北朝鮮当局が、国内の男子大学生に対し、
 最高指導者である金正恩第1書記と同じ髪形にするよう発令したと、
 欧米メディアが28日までに一斉に伝えた。

 独裁国家の北朝鮮では髪形にも厳しい規定が存在し、
 かつて「長髪禁止令」が出されたこともある。

 ただ、金第1書記のトレードマークでもある側頭部を大胆に刈り上げた
 独特の髪形への「統一令」に対しては、国内でも不評の声が上がっているという。

 髪形の自由すら認められない北朝鮮。その“異質さ”が改めて浮き彫りなった。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140329/kor14032911370001-n1.htm
(産経新聞より)


「Radio Free Asia」の報道によると、北朝鮮の男子大学生たちは現在、
金正恩最高指導者と同じ髪型にすることが「推奨」されているという。

女子学生には、李雪主夫人の短い髪型が推奨されている。

この記事の情報筋によると、髪型に関するこの指針は、
法的な命令ではないが、かなり強制力をもつものだという。

首都平壌市で3月はじめに導入され、今後は北朝鮮全土で
段階的に導入されていくと見られるが、この髪型にためらいを感じている人たちもいる。

「我々の指導者は、非常に特殊な髪型をしています」と、Radio Free Asiaに匿名で述べる人もいた。
「顔や頭の形は人それぞれですので、あの髪型がすべての人に似合うとは限りません」

北朝鮮では以前から、市民の髪型についての規定があり、
女性は18種類、男性は10種類の中からしか、自分の髪型を選ぶことができなかったという。

http://www.huffingtonpost.jp/2014/03/28/north-korea-kim-jong-un-hair_n_5047003.html
(ハフィントン・ポストより)

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上の写真は2014年5月時点の平壌科学技術大学の学生たちを写したものだが、
見て分かるように、髪形は統一されていない。




(http://chosonsinbo.com/jp/2014/06/20140604riyo/)

ダメ押しで同じ時期に同じ記者が撮影した写真を提示しておく。
産経が語るように頭髪の長さには規定があるかもしれないが、
少なくとも、金正恩と同じ髪型にせよというお達しはないようだ。





(http://chosonsinbo.com/jp/2014/04/20140409riyo-2/)

この写真は、2014年4月に平壌で撮影されたものだ。
金正恩と同じ髪型をしている子どもは見当たらない。



(http://www.huffingtonpost.jp/erick-tseng/8-days-in-north-korea_b_8519636.html)

では、現在はどうなっているのか。上の写真は、今年の9月に北朝鮮を訪れ、同国を
「奇妙で嘘くさく、プロパガンダだらけで不安定な国だった」と酷評した人物が撮影したものだ。

見ての通り、金正恩の髪型をしている子どもなど一人もいない。





同じ人物が平壌市内の公園で撮影したもの。
どうでもいいが、上の記事、「北朝鮮の国民は忠実な奴隷」と評価する一方で、
自分を無視しないで好意的に接してくれた人々は褒め称えるというナイスなものだったりする。

逆を言えば、アメリカのザ・右翼のような人物が撮影した写真だからこそ、
北朝鮮の良いイメージを植えつけようとする意思は一切ないと断言できよう。



(同じく、2015年9月に平壌で撮影されたもの。
 若者はもちろんのこと、年配の男性も髪型は統一されていない)

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思春期を迎える青少年にとって
「ヘア・スタイル」は、もっとも最初に気を遣う身だしなみの一つだろう。

ところが、北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。
もし、当局の言うことを聞かない場合は、無理矢理バリカンで刈られるという。


デイリーNKは、昨年10月に脱北したリ・チョルフン君(10代仮名)から
「北朝鮮の最新青少年事情」について話を聞くことができた。

チョルフン君は「ヘア・スタイルに関しては、特に取り締まりが厳しい」と語る。
では、どのようなヘア・スタイルにしなければならないのか?

男子は、無条件に『覇気ヘア』にしなければなりません

「覇気ヘア(ペギモリ)」とは、金正恩氏のあの特徴的なヘア・スタイルだ。
 庶民の間では「あの方(正恩氏)のヘアスタイル」とも言われている。

北朝鮮では理髪店に行くと、何も言わなくても勝手に覇気ヘアにされる。
チョルフン君によると、ささやかな抵抗を試みる青少年もいるらしいが・・・。

「後ろを刈り上げず、前髪を伸ばしているのが青年指導員(風紀委員のような役割)
 に見つかったら警告を受けます」

もし、警告を受けても切らなければ、どうなるのだろうか。

「バリカンで虎刈りにされてしまいます。仕方なしに散髪に行くけど、
 髪が生えそろうまでは恥ずかしく帽子をかぶらなければなりません」

北朝鮮メディアは「覇気ヘアが若者の間で大流行! !」と宣伝しているが、
やはり北朝鮮のイマドキの若者からすれば「ダサい覇気ヘア」というイメージがあるようだ。

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上の文章は、今年の3月にデイリーNKというメディアが発信した記事から引用したものである。
男子は無条件に覇気ヘアをしないといけないそうだが、実際はご覧の通りだ。

脱北者がウソをついているのか、そもそも脱北者に取材してすらいないのか。
そんなデイリーNKだが、今年の9月末になると次のように真逆の内容の記事を掲載した。



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北朝鮮メディアは、
金正恩第1書記の特徴的な刈り上げヘア・スタイルを「覇気ヘア」と褒め称える。

一般住民は、そんな呼び方はしないらしいが、
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、
金正恩氏は「俺のヘア・スタイルやファッションを真似するな」という指示を下したという。


RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、
「わが国の幹部たちは、長年、最高指導者の服装やヘアスタイルを慣行として真似てきた」という。

実際、故金正日総書記も、愛用していた綿入りのジャケットと同じものを
中央党幹部にプレゼントするなど、自らのファッションを真似ることを薦めてきた。

それだけではなく「私の筆跡も真似しなさい」と言い出したことから、
幹部たちは先を争って金正日氏の真似をした。忠誠心を見せる意味合いもあったが、
嫌々ではなくそれなりに楽しんでいたようだ。

ところが、金正恩氏は「自分の真似」をされることが、お嫌いなようだ。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、幹部らの間で
最高指導者のズボンにまつわる次のようなエピソードが広まっている。

「ある現地指導に同行した崔龍海(チェ・リョンヘ)氏が、金正恩氏と同じズボンを
 履いていったところ、公衆の面前で激しく叱責され、ズボンを履き替えさせられた」


ズボンにブチ切れた金正恩氏の言動は、「俺の真似をするヤツは、絶対に許さない」
という意味で受け取られ幹部たちは、服屋に注文していた「金正恩ルック」を次々にキャンセルした。

朝鮮では、高級幹部の粛清、公開処刑が相次いでおり、金正恩氏の
気に入らないことをすれば、どんな目に遭わされるかわからないという恐怖心があるからだ。

ある情報筋は「元帥様(金正恩氏)も、部下たちの行き過ぎたおべっかを
やめさせるという意図があったのだろう」と分析したが、その一方で
「単に自分を神格化させたいだけだ」と金正恩氏を批判する幹部の声を伝えた。

http://dailynk.jp/archives/52701
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これまでに紹介した各記事をかなり好意的に評価すると、
2014年3月「髪型統一令」→2015年9月「髪型禁止令」→2015年11月「統一令」
と変化したことになるだろうが、常識的に考えれば頻繁に指示が変わるわけがないし、
以下に述べるように、デイリーNKやラジオ・フリーアジアの主張が二転三転しているので、
その線はないと断言して良いと思う。


デイリーNKの編集長である高英起氏は今月(12月1日)に以下の記事を載せた。



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金正恩「オレのマネ禁止令」の痛すぎる勘違い

北朝鮮ではかつて、時の最高指導者が「ファッションリーダー」的な存在でもあった。
しかし金正恩氏の代になってから、その評判はダダ下がりのようだ。

~中略~

金正恩氏は白いコート、ゆったりしたズボン、腹が出て見える袖の短いシャツを着るなど、
上述の事情から「ビシッ」と決めるのを好む北朝鮮男性のトレンドと真逆を行っており、
「ダサい」とのイメージがすっかり固まってしまったのだ。

売れると見込んで「元帥様(正恩氏)の服」を作った服屋は、
あまりの売れ行き不振に頭を抱えているという


さらに金正恩氏は「俺のヘア・スタイルやファッションを真似するな」という指示を下し、
ファッションでも忠誠心を低下させる結果を自ら招いてしまった。

そもそも、あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが
彼が「若者のために」と思ってデザインさせた学校制服もまた、情け容赦ない酷評を受けている。

デイリーNKは北朝鮮における「イマドキ10代おしゃれ事情」を知るため、
昨年10月に脱北したリ・チョルフン君(仮名)にインタビューした。


彼の金正恩デザインに対する評価は、
「あんなダサい制服を着たら人間の価値が下がります」と何とも無慈悲なものであった。


ちなみに、北朝鮮のファッション・シーンで「イケてる男」の代名詞となっているのは、
どうやらロシアのプーチン大統領であるようだ。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kohyoungki/20151201-00052019/
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お分かりだろうか?

1回目の記事では、デイリーNKは
「北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。
 もし、当局の言うことを聞かない場合は、無理矢理バリカンで刈られる」と報じたのだが、
2回目の記事では、
あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが
と髪型の強制などないかのような書き方に変化しているのだ。


問題の脱北者も、
男子は、無条件に『覇気ヘア』にしなければなりません
と答えたはずなのに、
「あんなダサい制服を着たら人間の価値が下がります」と別の言葉に変えられている。

髪型は強制、服装は非強制という解釈をしようにも、
金正恩が自分の髪型と服装を真似しないようにとの指令を出したと明記される以上、
そのような好意的な受け取り方も出来そうにない。

インタビューの日時が明記されていないので、高氏がその脱北者に再び取材したのか、
それとも今年3月のインタビューを参照しているのか、いまいちハッキリしないが、
いずれにせよ、1回目の報道と2回目の報道では、内容が全く異なっている。

前者の報道では強制的に髪型が変えられているように語っているが、
後者の報道では強制ではなく、党主導のブームが不発に終わったかのように書かれている。


仮に2014年3月「髪型統一令」→2015年9月「髪型禁止令」となったのならば、
それこそ、最高の北朝鮮バッシングのネタになるだろうし、その経緯も含めて
報道するのが自然であり、初めから統一令がなかったかのような書き方はしないだろう


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「覇気ヘア」を真似よ!? 金正恩氏の「髪型」考察〈週刊新潮〉

デイリー新潮 12月8日(火)8時1分配信

“アシメ”に“ロブ”に“ボブディ”……
何の暗号かと思えばいずれも今年、日本の若者に流行(はや)った髪型の呼称。

それぞれアシンメトリー=左右非対称、ロング・ボブ、ボブとミディアムの中間の意だそうだが、
北朝鮮が誇るファッション・リーダー、金正恩氏が今年、全国に流行らせた髪型こそ“覇気ヘア”である。

「デイリーNKジャパン」編集長の高英起氏は言う。

後ろと横を刈り上げるスタイルで、青少年に流行していると言われています

氏が以前に流行らせたのはサイドを高々と刈り上げた“野心ヘア”だったが、これが進化し、
何とも覇気横溢、黒電話の受話器にしか見えぬ、すこぶるいなせな髪型となったのである。

ただ、流行とは言っても、実態は当局のチェック下にあり、
 髪を刈り上げていない男子が無条件で虎刈りにされているのです
」(同)

虎刈り男子の悲嘆たるや思うに余りあるが、なにせ髪型と服装に関する規定が存在し、
髪が伸びれば栄養が奪われ、長髪は知能に影響を及ぼすとするお国柄。

英紙も11月26日、男子の髪は最長2センチまでと定められ、
「はさみを持った監視官が男子学生の髪を切って歩いている」「粛清が始まった」と報じた。
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3月→「北朝鮮ではヘア・スタイルにも北朝鮮当局のチェックが入る。」

12月1日→「あの強烈な髪型と極太ズボンを好んで真似る若者がどれだけいるのか疑問だが」

12月10日→「ただ、流行とは言っても、実態は当局のチェック下にあり、
      髪を刈り上げていない男子が無条件で虎刈りにされているのです」

わずか9日後に真逆のコメントが掲載されている。

強制なのか非強制なのか。いったい、どちらなのだろうか?
デイリー新潮の記事を読む限り、髪型統一令は現在進行形であるかのような印象を受ける。
というより、それ以外に受け取りようがない気がする。

「ただ、流行とは言っても~無条件で虎刈りにされているのです」というコメントは
 3月の記事の内容そのものだが、そうなると、仮に真実だとしても、去年の10月以前の状況を
 あたかも今年の状況であるかのように語っているわけで、それはそれで問題である。


そもそも、髪型禁止令が出たという情報は、ラジオ・フリー・アジアを初めとする
海外機関の伝聞情報であり、デイリーNKも高英起氏も現場の写真を取っていない。

北朝鮮で「覇気ヘア」が多すぎ 脱走兵の見分けがつかず

恐らく、覇気ヘアに関するデイリーNKの記事の中では最も古いものだと思われるが、
この記事に掲載された写真でも、肝心の兵士はヘルメットを被っており、髪型がわからない。

そこまで流行しているのならば、いくらでも証拠の写真を入手することができるはずである。
先に挙げたアメリカ人のように観光客として平壌に入って大学生たちと写真を撮れば良い。

ところが、これだけ覇気ヘアが流行していると言いながら、
肝心の覇気ヘアをした若者が一切、登場しない。全て文字媒体。しかも伝聞。不思議なことである。

情報自体も、対象が大学生に限定されるのか、それとも10代全般なのかが曖昧模糊としている。
去年8月の中国紙の報道では男性全体に強制されていると書かれている。

初めの報道では存在していた李雪主の髪型を強制されるという情報も、
いつのまにかなかったことにされている
。素直に考えてデマとしか言いようがない。


以上、長々と語ってきたが、これは本当に、
この髪型に関するデマが去年から何度も繰り返されているためであり、
どこかで誰かがハッキリと「これは嘘だ」という必要があるのではないかと感じたからである。

そのうち、本当にこういうアホな指令が発せられるかもしれないが、
現段階では、恐らく短髪にせよという党の指示が曲解されて伝わっているような気がする。
(衛生問題を考えれば、短髪にしろという指令は十分考えられる)

いずれにしてもデイリーNKは、せめて自分たちの過去の主張が誤報だったのか否か
ぐらいは、もう少しハッキリさせても良いだろう。現段階では単なるプロパガンダに見える。


・追記
9月29日付けの高英起氏の記事には、
「覇気ヘアはマネどころか、一部では半強制化されており、
 「床屋へ行くと無条件で覇気ヘアにされる」という証言もある。」と書かれている。
(http://bylines.news.yahoo.co.jp/kohyoungki/20150929-00049972/)

この書き方は極めて不誠実かつアンフェアだと思う。
「無条件で覇気ヘアにされる」と「一部では無条件で覇気ヘアにされる」では意味が大分違う。

仮に「一部」と修正するならば、
北朝鮮のどの地域、どのケース・どの団体で強制されているかを明記しなければならないし、
その後の報道においても「一部では」のフレーズを挟み続けなければなるまい。

ところが、実際には高氏は数ヵ月後には元の表現、つまり「一部では」のフレーズを削って
北朝鮮全域で髪型が強制されているかのような印象を受ける表現に戻している。一体どちらなのか?

また「半強制」という表現があるが、無条件で覇気ヘアにされ、断れないのだから、
これは常識的に考えて、高氏は「強制」と書くべきだろう。

どうも後々、反証されることを恐れて
「一部では」「半強制」という言葉を付け足し、逃げ道を用意したように見える。

あるいは「強制」としてしまうと金正恩がファッション・リーダーを目指そうとしたが、
無様に失敗したという別の記事と矛盾してしまうからか。いずれにせよ根拠を提示すべきだ。

同氏の主張が根拠薄弱で曖昧であること、その主張が短期間の内にコロコロと変わるのは、
ラジオ・フリーアジアの報道内容をそのまま語っているだけだからだと思う。

自分で調べていないから、詳しい内容が書けないのである。

唯一、独自に取材したものと思われる「床屋へ行くと無条件で覇気ヘアにされる」という証言も
例の脱北者1人のものしかなく、情報筋()に同様の証言をさせることもなく、使い回しをしている。

それが悪いとまでは言わないが、せめてインタビューの全内容を公表してもらわないと
「一部」と断定するだけの根拠がどこにあるのか(あるいは無いのか)はっきりしない。

金正恩の機嫌を損ねれば処刑されるはずなのに、
なぜ、金正恩にケンカを売るような真似が強制されているのか?
そのリスクを背負う理由はどこにあるのか?その点を明らかにすることが今後の彼の仕事だろう。

北朝鮮コーラス・グループ北京コンサート中止事件の真相2

2015-12-21 00:21:42 | 北朝鮮
前回の記事で、歌詞が反米的だということで検閲を通らなかったことが
北朝鮮のコーラスグループが中国での公演をキャンセルした原因だったと話した。

その上で、勝手な憶測で自国の右派系新聞と大差ない意見を述べた韓国の左派系新聞、
ハンギョレについて批判したが、では日本はどうかと言うと更に非道い状況にある。

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聯合ニュースによると、韓国の情報機関・国家情報院は、
北朝鮮の牡丹峰(モランボン)楽団が北京公演を中止して帰国した理由を、
公演内容が金正恩(キムジョンウン)第一書記の崇拝一色だったためと推定した。
国情院が十四日、韓国国会の情報委員長に報告したという。

公演のリハーサルの際に演目が判明し、中国側が観覧する
共産党指導部メンバーの格を下げたため北朝鮮側が反発、公演を中止したという。
一方で、金第一書記の水素爆弾への言及が公演中止の理由である可能性も排除できないとした。

一方、十四日に開かれた韓国国防省の会合では、
北朝鮮による核実験や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を含む
ミサイル発射実験が続く可能性が高いと、関係者に注意を促した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201512/CK2015121502000107.html
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上の文章は、12月15日の東京新聞の記事を引用したものだが、
何度も言っているように、国家情報院(国情院)という機関は韓国の秘密警察であり、
軍事政権時代から何度も無実の罪で国民を逮捕・拘禁・拷問をかけたり、
最近で言えば大統領選の際にパク・クネの政敵を中傷するコメントをツィッターで大量発信したり、
統合進歩党の議員がクーデターを企んだと言う偽の証拠をでっち上げたり、
北朝鮮に関してもデマばかり飛ばしている機関なのだが、そこの意見を
さも傾聴の価値があるかのように伝えるのは一体どういうことなのだろうか。

そして、案の定、今回も誤報だったわけだが、訂正もせず、
東京新聞は本当は歌詞を巡ってのトラブルだったことに一言も触れていない。

「まだ確定された事実ではない」として報道しないとするのであれば、
 なぜ同じく憶測レベルだった水爆を巡るトラブルだという説を記事に書いたのか。

先月、東京新聞は90年代以降も拉致を続行していたと証明する文書が発見されたと報じたが、
北朝鮮について長年、取材を行っている成田俊一氏は偽書である可能性が極めて高いと見ている。

例えば、拉致という言葉は北朝鮮では「ラプチ」と書くのだが、韓国式の「ナプチ」になっている。
問題の文書は「金正日主義対外情報学」と言うらしいが、「金正日主義」という言葉は存在しない。
「金日成-金正日主義」「金正日愛国主義」という言葉ならあるが、2012年以前には使われていない。
他にも北朝鮮で使われていないフォントが使われているなど、改竄の疑いが深い。


そもそも、日本で言えば慰安婦が軍主導のものだったと証明する文書が
発見されたというレベルの大ニュースであるはずなのに、騒いでいるのはなぜか東京新聞のみ。

それも、続報といったものは未だに一切伝わってこない。
アメリカや中国、韓国などの他国メディアも関心を持たない。

私に至ってみれば、今週の週刊金曜日を読むまでスクープ自体知らなかった。
こんなガセに反応しているのは、北朝鮮バッシングの権威()である高英起ぐらいだ。

ちなみに、その高氏は黙っていれば良いものを公演中止事件について、こう書いている。

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本欄では、金正恩第1書記の「水爆保有」発言に
中国側が不快感を示し、公演を観覧する幹部を大幅に格下げ。
これに激怒した金正恩氏が「報復」に出たとする見方を紹介した。

そんななか、韓国の情報機関は、モランボン楽団が予定していた
公演内容に問題があったと指摘する。では、何が問題だったのか。

モランボン楽団に限らず、北朝鮮の文化芸術の柱は、
故金日成主席、金正日総書記、そして金正恩氏の偶像化がバックボーンだ。
公演から金正恩氏偶像化の演目を除外したら、そもそもモランボン楽団の公演自体が成り立たず、
そのことは、中国も公演前からわかりきっていたはずだ。

ということは、金正恩氏の偶像化が問題視されたとは思えない。

それよりも筆者は、公演のなかで、核や長距離弾道ミサイルを賞賛する演出が
中国側を刺激し、それに北朝鮮が反発したという見方に注目する。

http://blogos.com/article/150309/
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高氏はロイター通信の記事が出た後も訂正も反論もしていない。
こういう下手な鉄砲数うちゃ当たる戦法は、盟友である東京新聞とそっくりだと思える。

とはいえ、北朝鮮を非難する専門家()のレベルがハッキリしたわけであり、
そういう意味では良いリトマス試験紙になったかと思う。


いずれにしても、国情院のような機関の言い分を垂れ流して
報道したつもりになっているのが我が国の大手メディアの現状であって、
これを看破するにはやはり、海外メディアの記事をよく読まなければならないだろう。