時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

平和のためには核よりも空爆の阻止が必要

2016-01-18 23:59:33 | 国際政治
スプートニク紙の魅力の1つに、アンドレイ・イワノフ氏の評論が読めることが挙げられる。

モスクワ国際関係大学国際問題研究所の上級学術専門家であるイワノフ氏の見解は、
日本の知識人のそれとは一線を画しており、国際政治を別視覚から見直す際に大いに参考になる。

例えば、核保有に関する次の論説などは、日本では決してお目にかかれないものだ。

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日本は正しくない 
世界を脅かすのは原爆にあらず、世界制覇を狙うマニヤックだ



国連総会は核兵器廃絶を呼びかける日本発案の決議を採択した。
だが世界が実際に核兵器を廃棄した場合、より安全になるのだろうか?

モスクワ国際関係大学、国際調査研究所の上級研究員、アンドレイ・イヴァノフ氏は、
この件に関して次のような考察を表している。

「今年、日本の出した決議は、あらゆる形の核兵器が引き起こす
 大きな人道的なカタストロフィに関連し、深い憂慮を表しており、
 あらゆる核保有国に核兵器のない世界を創設する方向性で作業を行なうよう呼びかけている。

 日本がこうした決議を発案する理由は理解できる。日本は核兵器がもたらすこの最悪の
「非人道的カタストロフィー」を1945年8月の時点ですでに身をもって経験したからだ。
 当時、米国の投下した2発の原爆で広島、長崎でおよそ10万人の一般市民が犠牲になった。

 この新兵器の恐ろしさについて米国はその投下実験を
 ニューメキシコ州で行なった段階ですでに熟知していた。

 だが、知っていたからといって日本に対して原爆を使用することにも、
 その大量生産を行なうことにも何の妨げにもならなかった。


その後、核兵器はソ連に出現し、それに続いてさらに数カ国が核保有国となった。
しかもこの兵器はたゆまない改良 を重ねた。だから今ある核兵器、数十、数百にも及ぶ核弾頭は
当時、日本の2つの都市を住民もろとも焼き尽くしたあの原爆よりも何千倍も強力なものとなっている。

露米の保有する核兵器を使用するだけでも、互いを、そして全世界を数回にわたって破壊する
ことができる。まさにこれがゆえに露米の核大国は互いに戦争を抑止してきたのだろうと思われる。

この脅威が核戦争が起きないための唯一の確かな保証ではないことはわかる。
このほかに純粋にこれは理論上の危険性だが、核兵器がテロリストの手にわたることもありうる。
このことからも、今年の核兵器廃絶決議は出されているのだが、
核大国はこの呼びかけを無視しており、これは日本の決議への投票でもはっきり示されている。

だからといってこれが、例えばロシアが先駆けて米国に
核攻撃を行なおうとしていることを示しているのだろうか? 
否。ロシアにはそうした意図はないことはロシア指導部が示している。
そしておそらくはこれを信じてもいいだろう。なぜならロシアは、自国の存在ないしは
その一体性を危うくする攻撃を受けた場合にのみ核兵器を使用することを明確に示しているからだ。

米国がロシアに核攻撃を行なおうと欲しているかどうか、それはわからない。
まぁ、気でも狂わない限り、欲するはずはないだろう。

だが米国は今、欧州に核兵器を配備しようとしている。

ロシアは欧州を威嚇していないにもかかわらず。
米国はNATO拡大を熱心に進め、その後でロシアを非難して、
『ロシアがNATO陣営の境界線に接近する危険を冒したからだ』
というのだ。


米国はロシアとの境界線にますます新型の兵器を配備している。
それ以外にも米国は、ロシアの大陸弾道ミサイル発射装置、軍事施設、
産業の中心地に対する、巡航ミサイルによる電光非核集中攻撃コンセプトを採択した。


それからさらに米国はロシアと国境を接する諸国で、
民主主義を推し進めるという旗印のもとにその秩序かく乱を行ない、ロシアが米国の標準に即し、
米国の助言や直接的な指令を遂行しようとしないとして、これに対する制裁を発動している。

米国は、ロシア領内をも含めて、そこにイスラム帝国復興を標榜する
ダーイシュ(IS,イスラム国)などのテロ組織を自国の連合国のうち数カ国が、
例えばトルコやカタールなどが支持することには少なくとも目をつぶっている。

そうしておきながら米国は、ロシアが勝手にテロリストと戦おうとしているといってはこれを非難し、
ロシアが共に力をあわせて戦おうという呼びかけても、これを退けている。

オバマ大統領は、米国こそが地球で唯一のリーダーであり続けねばならないと主張し続けており、
米国の首位に疑念を持つもの全ては人類の敵と見なしている。

そうでありながら、おわかりだろうが、米国も原爆を手放す気はないのだ。
日本よ、世界に対し、核兵器廃絶を訴えるかわりに連合国、米国に向かって
世界の排他的リーダーシップを要求することをやめるよう呼びかけたほうが、
より現実的ではないだろうか? 世界覇権を夢見たナポレオンもヒットラーもその末期は悲惨だった。
残念なことだがこうした夢が人類にもたらした代価はあまりに大きかった。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/opinion/20151208/1288606.html#ixzz3xbl4bdtR
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上の評論は、現実の国際政治の情勢を考慮せず、単に核弾頭を
保有しているかどうかで善悪を判断しようとする平和主義者には書けないものだろう。

冷静に考えれば、平和というものは核をなくすかどうかではなく、
侵略的な行動を見せている国家に対してブレーキをかけられるかどうかにかかっている


現実を見れば、米英仏、サウジ、トルコ、イスラエル等々の西側によるテロ支援、空爆が
核保有を巡る議論ほど白熱したことはない。核を持っているかもしれないという理由で
経済制裁をイランが受ける一方で、サウジはイエメンを空爆しても制裁などされたことがない。

これではアベコベである。
大事なのは、武器を持つかどうかではなく、武器をどう使うかどうかであるはずだ。
ただ持っているだけで制裁を受ける北朝鮮と他国を爆撃しても制裁を受けないサウジアラビア。

核を持っているかどうかが他国を侵攻しているかどうかよりも重大な問題にされている。
それは、誰にとって有利になるものだろうか?

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サウジアラビアの戦闘機が、
イエメンの首都サヌアを攻撃し、これにより数十名が死傷しました。

イルナー通信によりますと、サウジアラビア軍の戦闘機は18日月曜、
サヌアの住宅を空爆し、これにより多くの死傷者が出ました。

また、いまだに多くの人々が瓦礫の下敷きとなっており、
これまで、最終的な死亡者の数は発表されていません。

また、サウジ軍の戦闘機は18日、サヌアの警察関連施設を空爆し、
これにより少なくとも20名が死傷しました。


さらに、イエメン中部マーリブ州の歴史的な都市シルワの各地を攻撃しました。

こうした中、イエメン軍と義勇軍も、18日朝、サウジアラビアの犯罪に報復するために、
2発のミサイルをイエメン中部のダンマール州からサウジアラビアの拠点に対して発射しました。

また、サウジアラビア国境付近では、イエメン軍と義勇軍により、サウジの侵略者多数が死傷しました。

こうした中、イエメン軍のミサイル部隊は、
サウジアラビアのナジラン州やアシール州のサウジの拠点を攻撃しました。
一方、イエメン南部アデンでは、自動車による爆弾テロにより、10名が死亡しました。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/61602-
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このような記事は向こうのメディアでは頻繁に書かれている。
イランや北朝鮮に対する態度とサウジに対する態度は随分と違う。

前者は誰一人殺していないにも関わらず地域の安全を脅かすということで制裁を受け、
後者は住宅地やインフラ施設を爆撃しているのに核を持っていないから非難されない。

もちろん、全く非難されていないわけではないが、
イランや北朝鮮にたいするそれと比べれば、相対的に見て、ほぼ無視に近い反応だ。

そもそも、北朝鮮に対する態度だって随分と不公平なものである。
例えば、次のことを私たちのどれだけが知っているだろうか?


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朝鮮の水爆実験の4日後、
米軍のB52戦略爆撃機がソウルの南に位置する鳥山周辺を低空飛行した。
南の連合ニュースは「核兵器を搭載していた」と伝えた。

B52には30Mtの核兵器が搭載可能だ。
 広島級原爆の一千倍の破壊力に値する。


各国メディアは「4回目の核実験を強行した北朝鮮をけん制する狙い」があると
被害者と加害者の立場を逆転させて伝えた

B52は水爆実験の前から、南との合同軍事演習に投入され、
朝鮮を核攻撃するための模擬飛行を行っていた。


米国が核で恫喝したからこそ、朝鮮は核抑止力強化の道を選んだ。


∇B52の飛来がニュースになったのは、米国政府が情報を提供したからだ。
 以前は、戦略兵器の動員が秘密裏に行われた。ところがオバマ政権は、
 軍事的示威活動をわざと公にする傾向がある。今回の場合は、アリバイ作りだ。
 水爆実験に対して米国が「適切な行動」をとっていると
 内外にアピールするためのデモンストレーションであろう。

∇オバマ政権の対朝鮮政策は手詰まり状態にある。
 大統領自身、朝鮮の「体制崩壊」を追求すると公言しながら、
 米国が「軍事的オプションを選択できない」ことを認めている。

 先日行われた任期最後の年頭演説で大統領が朝鮮問題に一言も触れなかったのは、
 自らの無為無策を認めたようなものだ。大胆に政策転換を図り、朝鮮との対話に臨むことが
 唯一の活路だが、B52を飛ばして世論を欺く無能な大統領には、問題解決の意志も能力もないようだ

http://chosonsinbo.com/jp/2016/01/skst-76/
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北朝鮮の姿勢を「脅迫外交」と呼ぶ人間には、
この国がアメリカ合衆国からどういう威嚇を受けているのかについて知らないのだろうか?

結論から言うと、そんなことはない。
例えば、朝日新聞の論説委員を努め軍事評論家(笑)として活躍する田岡俊次氏は
米韓の合同軍事演習を見学したことがあるそうだが、特に問題はないと評価していた。

アメリカが一切、北朝鮮との協議に応じようとせず制裁に執着していることは周知の事実だが、
逆に北朝鮮が核で脅迫してアメリカに言うことを聞かせようとしているとみなすのが
日本の知識人のスタンダードな見解である。一切の悪は敵にあり、自分にはないというものだ。


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何しろ北朝鮮が米国からほしがっているのは、米国がユーゴスラビアにおけると同様
軍事的手段で北朝鮮態勢を変更しようとすることはない、という保証だけなのだ。

金正恩第一書記はそうした保証を得ることで、
既に着手がなされた中国式の経済改革を進める大きなチャンスを手に入れ、
それで北朝鮮は絶対的に正常で持続力ある国家になることが出来るというのに。

しかし、こうした展望は、どうやら、米国のお気に召すことはないようだ。
今やすっかり資本主義国の中国が気に入らないのと同様に。
何しろ中国は、経済成長により、ますます強力な米国にとってのライバルとなっているからだ。
こうしたライバルを軍事的手段で解体することは米国にはできない。
もう遅すぎる。北朝鮮については遅れたくない、と考えているかも知れない。

米国政府内では、どうやら、米朝二者協力の発展を通じて北朝鮮を戒めるという可能性は、
全く検討されていないように見える。米国は、彼らの見るところではもっと簡単な、
力による北朝鮮問題の解決を選好する用意があるらしい。

ではもし北朝鮮が本当に既に充分実用可能な核兵器をもっているとしたら?
もし先日の潜水艦発射式弾道弾実験もやはりブラフやビデオモンタージュでなかったとしたら。
そのとき北朝鮮鎮圧作戦は、多数の犠牲と大規模破壊に転じるかも知れない。
それも北朝鮮だけでなく、韓国、日本にも犠牲を出すような。
日本にも米軍基地はあり、北朝鮮はそれらへ弾道弾を撃ち込む可能性もあるのだ。

ゆえに、常にコルト拳銃をつかむ
カウボーイ式の習慣を捨て、話し合いを試みたほうがよくはないか。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/asia/20160111/1421721.html#ixzz3xbwALM13
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重要なのは、人間は核兵器などなくても人を殺せるということだ。
ウクライナ南東部において行われた中央政府の空爆、イエメンの空爆、アフガンの空爆。

確実に民間人が犠牲になっているのに、ただ国際政治で覇権を握っているというだけで
何ら制裁を受けることがない現状に対して、もう少し憤っても良いのではないだろうか?

核を持っているか否かのみが問題とされ、核を持とうとする国の実情を考慮しない。
それは誰にとって都合のよい考えなのだろうか?深く検討する余地がありそうだ。

欧米、イランの核関連の経済制裁を解除し、ミサイル関連の制裁を発動する

2016-01-18 23:32:08 | 中東
このたび、イランの核活用に関する一切の金融・経済制裁が解除された。

「核兵器を所持しているのでは」という理由だけで制裁を受けてきたイランだが、
 長い期間をかけ、協議を続け、ようやく限定的に活用が許され制裁も解かれた。

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イランと6カ国は、2年近くの間、数々の困難な協議を続けた結果、
昨年7月14日、ウィーンで得られた合意、
つまり包括的共同行動計画により、歴史的な合意に向け、大きな一歩を踏み出しました。

イランは、根拠のない主張により、
国連憲章第7章と国連安保理決議に基づく圧制的な制裁のもとに置かれました。


しかし、イランの核協議団は、困難な協議の中で、
イラン国民の権利を守ろうと努め、建設的な協議と協調を支持していることを世界に示しました。

現在、ウィーンの声明とIAEA国際原子力機関の事務局長の最終報告の発表により、
包括的共同行動計画の実施の準備段階が最後の局面に達しました。

天野事務局長の報告と、1月16日のウィーンでの共同声明は、
イランによる信頼醸成のための取り決め実施を認めるものであり、
今度は、核問題を理由とした対イラン制裁の解除など、取り決めを実行する番です。

とはいえ、イランの関係者は、
協議の相手側の口実探しや約束違反を忘れるべきではないことをよく知っています。

包括的共同行動計画とその後の結果は、
国内、地域、世界のさまざまなレベルで評価することができます。
イランの核活動は、最近まで、マイナスの憶測に基づくものでした。
しかし、そのような雰囲気は、現在、変化しています。
この合意は、どのような角度から見ても、重要かつ戦略的な合意となっています。

包括的共同行動計画は、実際、新たな機会です。
とはいえ、全ての問題は終わったと考えるべきではありません。
このような合意には、強みと弱点が存在します。

現在、イランは、技術的、科学的な面から正確かつ成文化された計画に基づき、
包括的共同行動計画の最初の8年は、商業、産業目的のウラン濃縮を伴う研究・開発計画により、
一部の制限を受け入れながら、核の科学的な基盤を維持し、経済的な目的を推進するために、
この計画の後の機会を利用する
ことになります。

これらは注目に値する成果であり、イラン外務大臣の言葉を借りれば、
多くの国にとって、実現不可能な願いとなっています。

http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/61563-
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 このこと自体は大いに喜ぶべきことだが、
 他方でアメリカは「核とは関連しない制裁は今後も続ける」と発言し、
 それどころか、ミサイル開発に関与したということで17日に新たな制裁を発動させた。


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米財務相は17日、イランのミサイルプログラムに関連し、追加制裁を発表した。
通信社ブルームバーグが報じた。

追加制裁の対象となったのは、イランの弾道ミサイル開発に関与した11の団体・個人。

ニューヨークタイムズによると、追加制裁の発表は数週間前に準備されていた。
しかし米国側は、イランで拘束されていた米国人が釈放され、
イランから出国した後、追加制裁を発表した。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20160118/1449780.html#ixzz3xbY2MyoI

今日、米国のルー財務長官は
米国は、核プログラムをめぐるイランとの合意に関係しない、
 制裁措置導入を続けるだろう
」と述べた。


ルー財務長官は、次のように伝えた―


「これまで常に述べてきたように、包括的共同行動プランが効力を発しても、
 その力は、イランの行動をいまだ受け入れられない他の分野には及ばない。
 我々は、共同行動プラン外の制裁に関し、目的に適った行動を続けてゆくだろう。

 もっと広い意味での米国の禁輸措置は、今後もその効力が残される。
 米国の銀行を含め、米国人は今後も、事実上あらゆるイランの機関との協力を禁じられる

とはいえ共同行動プランの導入は、非常に重要で画期的な事だ。
調整された経済制裁を前向きに転換するため、影響力ある役割を果たし得る事を示している。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/politics/20160117/1446786.html#ixzz3xbY8HLxa
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結局、イランが話し合いに応じても制裁は続行されるのである。

フランスやイギリスも大概だが、このアメリカという国の極悪さは、やはり一線を画する。
沖縄の米軍基地もそうだが、相手の意見を一切聞こうとしない。

今、沖縄の宜野湾市では市長選が行われようとしているが、
オバマ・安倍両政権は市長が誰になろうと辺野古基地への移設はやめないと公言している。
(そもそも、ここ数年の市長選や知事選、衆院選の結果は全て移設にNoの意を示しているし、
 今も反対運動は継続して行われているが、アメリカも日本も彼らの声に耳を傾けようとしない)

結果が決まっているのに過程を気にすることのどこに意味があるのだろうか。
初めから制裁を続けるつもりなら、移設を続けるつもりなら、何のために話し合いをするのだろうか。
何のための選挙なのだろうか?それは民主主義という空想をでっち上げるための茶番なのか?

欧米はシリアや中国、北朝鮮、イラン、キューバ、ベネズエラなどの
要するに自分たちの敵国が民主主義を尊重しているかどうかを非常に気にするわけだが、
私に言わせれば、見せ掛けの協議と選挙で真の民主主義を汚しているのは連中のほうである。

アメリカはイランの対話に応じるべきだし、沖縄の選挙結果も尊重すべきだ。
そして、それは日本の公僕であるはずなのに
アメリカのエージェントであるかのように振舞う日本政府の役人・政治家にも言えることである。

台湾選挙が終わって

2016-01-18 22:47:31 | 中国(反共批判)
選挙が終わり3日も経たないうちから民進党は日本との関係を強化する意向を見せた。

蔡英文次期総統、日本との自由貿易協定締結に意欲/台湾

民進党はアメリカ主導のTPPへの参加を公約に掲げている。
ひまわり学生運動は中国との自由貿易協定に抗議する運動だった。
中国とはまっぴらごめんだが、アメリカや日本となら是非ともということなのだろうか?

TPPは協議の時点で大国有利の経済同盟であることが指摘されているし、
単純な経済協定ではなく、軍事同盟にもつながるものだという意見もある。

そういう協定への参加をマニフェストにした政党が圧勝するのを見ると、
台湾社会の右傾化、この国が非道く歪んだ方向へと進んでいるような印象を受けるのだが。

週刊東洋経済によると、学生運動家の多くは自由貿易そのものに懐疑的らしい。
とはいえ、時代力量(運動家達が結党した政党)が民進党と選挙で協力し合ったということは、
自由貿易に反対といっても、中国に対するそれほど激しい怒りを覚えてはいないようである。

民進党は元々は文字通りの民主化運動家たちが立ち上げた政党で、初期メンバーはいずれも
政府に抗議するなり何なりして逮捕あるいはそれに近い弾圧を受けていた。

それが今では新旧宗主国に恭順し、植民地時代への回帰を望んでいるわけだから
随分と様変わりしたなと思うと同時に、元々そういう要素はあったのかもしれないとも感じる。

今回の選挙では蒋介石のひ孫も当選したらしい。
蒋介石といえば、台湾に逃れてきた後に元々住んでいた台湾人を虐殺し(二・二八事件)、
その後、アメリカや日本の庇護を受けながら専制政治を行った人物だ。

そういう人物のひ孫が選挙で勝つというのは、
パク・チョン・ヒの娘が韓国大統領に当選するのと同じくらいの無気味さを感じる。

ひまわり学生運動に参加していた連中は、今回の選挙をどう評価しているのだろう?

民進党の圧勝など世も末だと憤りを覚えているならばともかく、
国民党を倒せたことに満足して、民主主義の勝利だと浮かれていたら大いに問題がある。