時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮では脱北者がどう扱われるのか?

2017-07-20 00:20:08 | 北朝鮮
一般的なイメージでは、脱北者は帰国すれば
裏切り者として処刑され、一族共々惨殺されるか、
あるいは強制収容所に送られ餓死寸前まで虐待を受けるか…といったものだと思う。


韓国を中心として世界各地で活動している脱北者の多くは
北朝鮮を自由と人権のない閉鎖的な社会であると評価しているし、
批判をしようものならば些細なことでも殺されるか収容所に送られるのだと喧伝している。


では、実際には北朝鮮は脱北者をどのように扱っているのだろうか?


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2014年に脱北し、
韓国のテレビ番組に出演経験がある女性が最近北朝鮮に戻り、
韓国を批判していたことがわかった。CNNが報じた。




この女性、チョン・ヘソンさんは韓国では「イムジヒョン」と名乗っていた。


脱北者らが北朝鮮の政治や文化を語る
テレビ番組「牡丹峰(モランボ)クラブ」への複数の出演経験を持つが、
北朝鮮政府の公式サイトで15日に公開された動画で、同番組が「政治宣伝」で、
「北朝鮮の悪口を言うよう命じられた」と批判した。



チョンさんは「番組がうまくできたら、映画に出て人気者になれると思っていた」と話す。
「心身ともに辛い思い」をした彼女は北朝鮮で両親と暮らしているという。



脱北者を韓国で待つのは、
スパイでないことを調べる検査や、韓国社会への適応プログラム。



資本主義社会への不慣れから絶望感や疎外感を抱く脱北者は多く、
脱北者支援機関のハナ財団が1700人の脱北者を対象に行なった調査によると、
2割以上が自殺を考えたという。

北朝鮮メディアの報道によると、12年以降に北朝鮮へ戻った脱北者は25人。
しかし、うち5人は再び脱北している。



チョンさんは
「お腹いっぱい食べられて、たくさんお金がもうかるという幻想につられて」脱北したが、
韓国は金儲けに執着した国だったとして、ソウルでの生活は「生き地獄」だったと語る。


北朝鮮当局は、戻ってきた脱北者を政治宣伝の道具として優遇。
公務員として雇うケースもあるという。



https://jp.sputniknews.com/asia/201707193898317/
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脱北者を語るさいに欠かせないのが韓国における彼らの非人道的な待遇であり、
これは日本政府の難民に対するそれと良い勝負である。


逆に言えば、この件に触れずに
ただひたすら北朝鮮を非難している脱北者は注意して観察すべきだと思う。


私が知る限りでは北朝鮮は戻ってきた脱北者に対して
鞭ではなく飴を持って接する傾向が強い。


もちろん、ケースバイケースだが、
上の記事にあるように、ほとんどの脱北者は経済的な理由で難民になるので、
強烈な体制批判をしない限りは、歓待し、そのことをもって体制の正当性をアピールする。


実際、金正恩が意外と国民の受けが良いのは寛大な姿勢を
少なくとも表面上は見せているからで、裏切り者は即刻死刑というものとはほど遠い。


そこで疑問に思うのは、一体、北朝鮮の地獄体制を非難するジャーナリストは
実際の状況を確認してから、発言をしているのだろうかといったものである。



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ある17歳のマケドニア人の学生は、
「マケドニアは経済もひどく低迷していて、10代は働くことも許されない。
だから金を稼ぐには独自の方法を見つける必要がある」と、
トランプ支援のサイトを立ち上げるだけで、
数千ドルの広告収入が手にできてしまう、そこに稼ぎを見出すしか生きる術がないことを訴えた。

http://chosonsinbo.com/jp/2017/07/hj170715/
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いくら経済が発展しつつあるとはいえ、
未だに北朝鮮の現状は厳しいと言わざるを得ない。

そのような状況下で地方の寒村に住む人間が
経済的理由で「情報筋」となって外国の「人権団体」に情報提供することがある。

(実際、デイリーNKやアジアプレスのような情報機関は
 提供者に見返りを与えている)


出版や映画等を通じて積極的に活動している脱北者の中には
後に偽証が発覚した人間も少なくないし、同じ脱北者から批判を受けている者もいる。


そこまで踏まえた上で、どこまでが真でどこまでが偽なのか
見定めなければならないのだが、そうした手続きを行っている
ジャーナリストが多く存在しているだろうか。甚だ疑問である。



北朝鮮は中国と不仲なのか?

2017-07-19 23:11:38 | 北朝鮮
トランプ政権がスタートし、あわせて米朝間の緊張が高まった冬から春にかけて、
政府に釣られるように日本のメディアは朝中間の関係悪化を喜々として伝えていた。


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石炭輸入停止で関係ぎくしゃく 北朝鮮、異例の中国批判


中国が北朝鮮からの石炭の輸入を停止したことを受けて、
中朝関係がぎくしゃくしている。

北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、
「対外貿易も完全に遮断するという非人道的な措置もためらいなく講じている」
との論評を出した。


中国の名指しは避け、「『親善的な隣国』だと言っている周辺国」としたものの、
北朝鮮が友好国の中国を批判するのは異例だ。



中国は18日、年内の輸入停止を発表。

商務省は、5度目の核実験を受けた昨年11月の国連安全保障理事会の
制裁決議で定められた上限(年間750万トンか年間約4億ドル)に近づいたためと説明した。

ただ、中国の貿易統計によると、1月の輸入量は144万トン(約1億2千万ドル)余り。

中朝関係者の間では「本当に上限に近づいているのか」などと、
政治的な意図をいぶかる声もある。

http://www.asahi.com/articles/ASK2T44KNK2TUHBI00N.html

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日本を代表するジャーナリスト、池上彰大先生によると、
中国は最近、北朝鮮に対して制裁の意思を見せるようになり、
これまでのように中国に擁護してもらう形で核開発をすることはできないぞと
意気揚々と解説をしていた。


しかし、本当に中国と北朝鮮の関係は悪化しているのだろうか?

次の記事を読んでみよう。


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中国と北朝鮮の貿易額が増加




中国の税関が、同国と北朝鮮との貿易額が増加したことを明らかにしました。

フランス通信によりますと、中国の税関当局の報道官は
13日木曜、北京で記者会見し、


今年前半6ヶ月における北朝鮮との貿易額が
10.5%上昇したことを明らかにしています。




また、
「今年前半6ヶ月で、北朝鮮に対する中国の輸出は29.1%増加し、
北朝鮮からの輸入は13.2%減少した」としました。



アメリカは、対北朝鮮制裁に関する中国の行動に抗議しています。


韓国のムン・ジェイン大統領も最近、
中国の政府関係者に対し、北朝鮮のけん制に向けてさらなる努力を行うよう求めました。


国連安保理は、北朝鮮のミサイル実験を受け、同国に制裁を科しています。



北朝鮮はこれまでにたびたび、アメリカと韓国が軍事演習を継続し、
またアメリカ軍が朝鮮半島に駐留している限り、
北朝鮮も先制攻撃能力や軍事力の強化を続行する、と表明しています。


http://parstoday.com/ja/news/world-i32682

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ご覧の通り、むしろ中朝間の経済活動はより活発になっているのである。


確かに中国は北朝鮮の核開発に対し否定的な見解を見せているが、
それはアメリカのアジアにおける軍事活動への非難とセットになったものだ。
(日本のメディアは得てして後者の部分をカットして報道する)


ロシアも同様の見解で、
アメリカがアジアにおいて軍事的プレゼンスを拡大しようとする動きを
自粛することをもって、朝鮮半島の安定は達成されるとみている。



ところが、このことが日本のメディアによると
大変、厄介で無理解な言動になるようで、例えば朝日新聞は次のように述べる。


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もう一つの難題は、ロシアと中国である。

国連安保理の論議で、
ICBM発射を非難する報道声明はロシアの同意を得られず難航している。

北朝鮮への圧力は、ロシアと中国の協力なしには効果を発揮しない。

ICBMが地球規模の安保環境を危うくする以上、
中国もロシアもこれまで以上の危機感を日米韓と共有できるはずだ。

米国との覇権争いのような狭い対外戦術の中に朝鮮半島問題を位置づけるのではなく、
国際社会の安定という共通の利益に目を向けるべきだ。


http://shasetsu.seesaa.net/article/451647083.html
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この社説、非常に問題の有るものなので、
改めて批判・検討を加えたいが、これによると、
アメリカのアジアにおける軍拡の動きは些事に当たるようで、
中国とロシアのスタンスは非難されるべきものになるそうだ。


冗談ではない。
実際には、アメリカや韓国、日本こそアジアの脅威になっている。


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アジアの情勢変化の中で、
日本と韓国は、アメリカ、ロシア、中国と共に、北朝鮮に敵対的な立場を取っています。


最近、ロシアの政府高官が、
朝鮮半島問題の解決を促すロードマップの作成を明らかにしました。


このロードマップは、2つの原則に基づいています。


一つ目は、北朝鮮の核問題は、この国とアメリカの二国間の問題であり、
両国はその解決を目指して話し合うべきだということです。


二つ目は、このようなアプローチの土台作りとして、
アメリカはまず、地域における軍事演習をやめ、
それに対して北朝鮮もまた、核・ミサイル実験を停止すべきだ
ということです。



こうした中、アメリカは、朝鮮半島問題の解決を望んでおらず、
それを、朝鮮半島や日本における軍事駐留を続け、
中国に対して政治的、軍事的な圧力を行使するための機会として利用しています。


そのため、ロシアが提案したロードマップは、
アメリカやその同盟国に歓迎されませんでした。




とはいえ、
日本と韓国は、朝鮮半島で戦争が起こった場合の結果を強く懸念しています。


なぜなら、北朝鮮は、脅迫を感じた場合、
日本と韓国の基地にいるアメリカ軍やそれらの国の施設を攻撃することになり、
その被害は予想を超えるものとなると考えられるからです。


こうしたことから、アメリカのアジア政策に同調せざるを得ない日本と韓国の政府は、
ロシアと中国による、朝鮮半島問題の解決への積極的な役割を求めているのです。



中国の大学のロシア・中央アジア研究所の所長は次のように語っています。


「地域における戦争の勃発を防ぐことができるのは、中国とロシアだけである。
 中国政府は、朝鮮半島の情勢変化に対して強い懸念を抱いており、
 そのような戦争が地域のすべての国にどれほど悲劇的な結果をもたらすかを知っている。

 とはいえ、双方の政治的な不信感は状況をさらに悪化させており、
 深刻な軍事衝突が起きる可能性もあるが、まだそれを阻止することはできる」



ロシアは、中国に比べて、朝鮮半島危機による影響が少ないものの、
この危機を中国に更に近づくために利用しようとしています。


その一方で、日本と韓国の懸念を利用し、この危機を機会に変えようとしています。


ウクライナやクリミアの問題を巡って
アメリカやヨーロッパの制裁を受けているロシアは、中国と同調し、
制裁による圧力を緩和するために、中国との技術、経済協力を利用しようとしています。


ロシアは、日本とも北方領土問題による対立を抱えており、
ロシアが、北朝鮮問題を巡って、日本と韓国の懸念を緩和した
見返りを求める可能性も決してないわけではありません。


こうしたことから、日本政府はこの問題の解決へのロシアの支援を求めていますが、
慎重に行動しており、その要請を中国のみに向けてきました。


イギリスのシンクタンク、王立国際問題研究所・国際関係機関の政治顧問である
ジェームズ・シェール氏は次のように語っています。



「朝鮮半島情勢は、1953年以来、最悪の状態にある。
だが、地域の軍事衝突を予想する前に、真の脅威を生み出したり、
それを減らしたりするさまざまな出来事が存在することを忘れてはならない。
それら一連の出来事には、双方の挑発的な行動、脅迫的な発言、肯定的な努力がある」



いずれにせよ、アメリカは朝鮮半島において、
あらゆるレベルで、常に緊張を作り出してきました。



なぜなら、アメリカの一部の関係者によれば、
地域に戦争の影を落とすだけでも、アメリカにとっては戦争と同じ効果があるからです。


いずれにせよ、日本政府は、
国連安保理の常任理事国であるロシアが、中国と真剣な協力を行えば、
北朝鮮問題に対するアメリカの政策に効果的な影響を及ぼすことができると考えています。


ただしそれには、各国が、地域の安全と利益を、決断の基準に据えることが必要なのです。

http://parstoday.com/ja/news/japan-i32584
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朝鮮半島の問題の解決は
アメリカの北朝鮮に対する敵視政策の放棄なしには達成されない。

非常にシンプルな解なのだが、
政府に忖度してか、あいも変わらず敵視政策を続行するよう叫ぶマスメディア。


中朝間の不仲説はまさに、安倍政権が全力で米朝との衝突を煽っていた時期に
頻繁に発信されたものだった。情報のチェックをするのではなく、
権力側に都合の良いデマゴーグを再生産するのであれば、
メディアの社会的存在意義はどこにあるのだろうか。