時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

大東亜共栄圏の地図

2015-07-03 19:48:38 | 歴史全般
よく、日本はアジアを開放するために戦ったのだという声を聞くが、
それは公式文書をもってしても、簡単に論破できる。




大本営政府連絡会議が残した1940年9月16日の「日独伊枢軸強化に関する件」では、
日独伊の戦争を世界再分割の戦争と位置づけ、日本の取り分を決めている。


日本が領土とすべき地域を「皇国の大東亜新秩序建設のための生存圏」としているのだが、
これがアジアどころかオセアニアまで含む広大な地域を含んでいる。欲張りすぎ。


(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-05-23/2015052301_01_1.html)

この方針に基づいて、日独伊三国軍事同盟が結ばれた。

つまり、ドイツとイタリアが「欧州における新秩序建設」を担当し、
日本が「大東亜における新秩序建設」を担当することを承認しあったわけである。


どう見ても、他国への侵略を共謀したとしか解釈できないだろう。

[朗報] 元朝日新聞記者、来期も北星学園で雇用決定

2014-12-19 00:30:19 | 歴史全般
元朝日新聞記者である植村隆氏が来期も大学で雇用されることになった。

産経新聞の悔しがる姿が目に浮かぶようだが、
それはどうでもいいとして、私が気になったのは、朝日新聞の報道の仕方だ。


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慰安婦問題の記事を書いた元朝日新聞記者、
植村隆氏(56)が勤める北星学園大(札幌市厚別区)は17日、
植村氏との非常勤講師の契約を来年度も継続することを発表した。


植村氏はすでに更新を打診され、受け入れる意向だという。



北星学園大には3月以降、植村氏が朝日新聞記者時代に書いた
慰安婦問題をめぐる記事は捏造(ねつぞう)などとする電話やメールが相次いだ。


5月と7月には植村氏の退職を要求し、
応じなければ学生を傷つけるとする脅迫文も届いた。

10月には、大学に脅迫電話をかけたとして60代の男が威力業務妨害容疑で逮捕された。


この日、記者会見に臨んだ田村信一学長は
「我々だけが先頭に立って戦い続けるのは限界があるとの認識だったが、
 行政を含めた様々な社会の支援が出てきたことから雇用継続を決めた」と述べた。


最終的な判断は、会見に同席した大学を運営する
学校法人「北星学園」の大山綱夫理事長と話し合って決めたという。



田村学長は10月末、学生の安全確保のための警備強化で財政負担が増えることや、
抗議電話などの対応で教職員が疲弊していることなどを理由に、
個人的な考えとして、植村氏との契約を更新しない意向を示していた。

しかし、その後の学内での議論では学長の方針に反対する意見が相次いだ。

中島岳志・北海道大准教授や、作家の池澤夏樹さんら
千人以上が呼びかけ人や賛同者に名を連ねた「負けるな北星!の会」が発足するなど、
学外でも大学や植村氏を支援する輪が広がりをみせた。


田村学長は当初の考えとは違った結論になったことについて、
「380人の弁護士が脅迫文が届いた事件について刑事告発したり、
文部科学大臣が大学を後押しするような発言をしてくれたりしたことが大きかった
」と話した。


一方で、田村学長は
「支援の輪は大きくなりつつあるが、まだ現場の教職員も不安を抱えている。
それでもキリスト教による建学の理念に立ち返って前に進もうと決めた」
と苦しい胸の内を明かし
、文科省や道警、弁護士らと連携して
大学の安全管理などを一層強化するとした。


大山理事長は
脅しに屈すれば良心に反するし、社会の信託を裏切ることになると思った
と述べ、植村氏との契約更新に賛成の立場だったことを明かした。


植村氏は2012年度から北星学園大に非常勤講師として勤務。
留学生向けに日本の文化や芸術を教えたり、新聞を使って世界情勢を解説したりしている。


契約が継続されることになった植村氏は
「これからも学生たちと授業ができることを何よりもうれしく感じています。
大学も被害者で、学長はじめ関係の方々は心身ともに疲弊しました。
つらい状況を乗り越えて脅迫に屈せず、今回の決断をされたことに
心から敬意と感謝を表します」とのコメントを出した。(関根和弘)

http://www.asahi.com/articles/ASGDK5J69GDKIIPE03N.html

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これだけを読むと下村博文文科相などの応援によって
「当初」の考えを改め、勇気をもって暴力に立ち向かったかのように見える。

だが、実際には、この事件はもっと重大な問題を孕んでいる。


次の英文は今月の初め(12月2日)に掲載された
ニューヨーク・タイムスの記事から引用したものである。
(なお、訳文は私によるもの。試薬なので正確な訳は読者にまかせる)

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Mr. Uemura said
上村記者は以下のように話している。

The Asahi had been too fearful to defend him, or even itself.
「朝日新聞は怖がって私を守ってはくれません。自分たちに対してすらそうです。
In September, the newspaper’s top executives
9月に同新聞の経営トップは
apologized on television and fired the chief editor.
テレビで謝罪して編集長を解雇しました。」

“Abe is using The Asahi’s problems
「安倍は朝日の問題を利用して
to intimidate other media into self-censorship,” said Jiro Yamaguchi,
他のメディアが自己検閲するように脅しているのです」と山口次郎氏は話した。
a political scientist who helped organize a petition to support Mr. Uemura.
彼は政治学者で植村氏を援助する請願団体の組織づくりに貢献している。
“This is a new form of McCarthyism.”
「これは新しいマッカーシズムの形態です。」

Hokusei Gakuen University, a small Christian college
北星学園は小さなキリスト系の大学で、
where Mr. Uemura lectures on local culture and history,
そこで植村氏は地方の文化や歴史の授業をしているが、
said it was reviewing his contract because of bomb threats
大学側は同氏の雇用を見直すと話している。爆弾による恐喝が
by ultranationalists.
極右によって行われたためだと言っている。

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つまり、植村氏は朝日のサポートを受けずに
この問題に対処したのである。


一応、朝日新聞は、この問題の動向を記事にもしているし、
社説にも書いてはいるが、直接の援助はしていなかった。



普通は、自分の元社員が苦しんでいるのだから、
全面的にバックアップするものだが、あくまで「中立」の姿勢を保ったわけだ。

これがどういう意味を示すのかは言うまでもない。


また、学長をフォローするかのような叙述も気になる。


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北星学園大学(札幌市、田村信一学長)は9月30日、
元朝日新聞記者で日本軍「慰安婦」報道に関わった非常勤講師(56)を
「辞めさせないと、ボンベを爆発させる」などの脅迫文が届いている問題で
声明を発表し、大学としての基本的立場を明らかにしました。


声明では、
(1)学問の自由・思想信条の自由は教育機関において最も守られるべきものであり、
侵害されることがあってはならない。したがって、あくまで本学のとるべき
対応については、本学が主体的に判断する

(2)日本軍「慰安婦」問題ならびに(非常勤講師の)記事については、
本学は判断する立場にはない。また、本件に関する批判の矛先が
本学に向かうことは著しく不合理である

(3)本学に対するあらゆる攻撃は大学の自治を侵害する卑劣な行為であり、
毅然(きぜん)として対処する―としています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-02/2014100201_02_1.html
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北星学園は当初、このように脅しには屈さない態度を示していたのである。
それが、11月の初めに「やっぱ、来期の雇用やーめた」と態度を翻した。


つまり、当初の考えとは違った結論に達したのではなく、
当初の考えに「戻った」にすぎないのである。

なぜ、途中で手のひらを返したのか?
その態度は反対者をどれほど失望させたのか。

このことを朝日新聞は書いていない。



それどころか、実際には時系列順に大学の態度を整理すると、

屈しない→屈します→やっぱり屈しません

なのに、朝日新聞の記事は、屈します→屈しません

という叙述になっている。これでは印象操作も良いところだろう。


繰り返すが、田中学長は
「キリスト教による建学の理念に立ち返って前に進もう」と
 もったいつけた言い方をしているが、一度は屈している。

 それも、「脅しには屈しないぞ!」と言った1ヶ月後に。
 その約1ヶ月後に「やっぱり屈しないぞ!」である。


こんなコロコロ意見を変える男が学長をやっていることが
どういう状況なのか、もう少し危機感を抱いてほしい。



大体、掌を返した理由も、入試を前にして受験者数、
入学者数が減ることを危惧したからである。金の問題>人権だったのだ。


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従軍慰安婦問題の報道に関わった朝日新聞元記者が
非常勤講師を務める北星学園大(札幌市厚別区)に、元記者を辞めさせろとの
脅迫文が届いた問題で、田村信一学長が講師と来年度の契約を更新せず
雇用しないことを検討していることが31日、複数の大学関係者への取材で分かった。


非常勤講師を支援するために教職員らが30日に発足させた
「大学の自治と学問の自由を考える北星有志の会」の関係者などによると、
学内には脅迫文に対応する危機管理費用など財政的な問題や、
来年以降の入試への影響などを懸念する声があるという。

http://www.sankei.com/life/news/141031/lif1410310019-n1.html

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まぁ、産経の誤報である可能性も大いにあるが、
少なくともキリスト教の倫理精神を語る資格がある人物には見えない。


ガリレオ・ガリレイを題材にした戯曲『ガリレイの一生』を書いたブレヒトは、
ガリレオの罪は一度発表した地動説を、後に否定したことにあると述べている。

初めから争いを避けたコペルニクスと違い、
ガリレオは一度戦いを始めておきながら、途中で権力者に寝返った。

それは前者よりも重い罪なのだとブレヒトは語る。


田中学長も初めは「毅然として対処する」と言っていたのに、
後にその立場を放棄した。朝日は一部始終を傍観していた。

それがどれほど記者に重いダメージを負わせていたか……


最終的に雇用を継続させたと言っても、
朝日新聞と北星学園の学長・理事長の冷淡な態度は追及されるべきだろう。


こういう一見、客観的な文章であるかのようでいて、
絶妙な文章力で、さりげなく自分たちの責任をはぐらかしていては駄目だ。



以前から朝日は、この問題について実に中途半端な報道をしていた。


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慰安婦報道にかかわった元朝日新聞記者が
勤める大学へ脅迫文が届き、警察が捜査を進めている。

インターネット上では、元記者の実名を挙げ、
「国賊」「反日」などと憎悪をあおる言葉で個人攻撃が繰り返され、
その矛先は家族にも向かう。暴力で言論を封じることは許せないと市民の動きが始まった。

~中略~

攻撃は北星学園大にとどまらない。
帝塚山学院大(大阪府大阪狭山市)にも9月13日、
慰安婦報道に関わった元朝日新聞記者の人間科学部教授(67)の
退職を要求する脅迫文が届き、府警が威力業務妨害容疑で調べている。

元記者は同日付で退職した。

~中略~

植村氏によると、その後、
自宅に面識のない人物から嫌がらせ電話がかかるようになった。
ネットに公開していない自宅の電話番号が掲載されていた。

高校生の長女の写真も実名入りでネット上にさらされた。

「自殺するまで追い込むしかない」
「日本から、出ていってほしい」と書き込まれた。

長男の同級生が「同姓」という理由で長男と間違われ、
ネット上で「売国奴のガキ」と中傷された。


~中略~


朝日新聞は10月1日付朝刊で
元記者の勤務先の大学に脅迫文が相次いで届いたことを報じた。

2日付で「大学への脅迫 暴力は、許さない」と題した社説を掲げたほか、
毎日、読売、産経の各紙も社説で取り上げ、厳しく批判した。


朝日の慰安婦報道を紙面で批判してきた産経は
同日付で「大学に脅迫文 言論封じのテロを許すな」と題した「主張」を掲載。

「報道に抗議の意味を込めた脅迫文であれば、これは言論封じのテロ」
「言論にはあくまで言論で対峙(たいじ)すべきだ」と訴えた。

~中略~

八木秀次・麗沢大教授(憲法学)の話〉 

慰安婦問題を報じた元記者が中傷されていることを
当事者の朝日が問題視して、読者の理解を得られるだろうか。

普段、企業や役所の不祥事を厳しく追及しているのだから、
執筆の経緯を元記者が自ら説明すべきだ。ただ、個人を
「さらし者」にして攻撃するネット文化にくみすることはできない。

脅迫は許されないし、職を奪うまでの行為は行きすぎている。


古谷経衡(つねひら)さん(著述業)の話〉 

朝日の慰安婦報道は国際社会に負の影響を与えたと考えている。
だが、暴力で要求をのませる行為は許せない。

脅迫状の送り主は日本の名誉を回復したいと考えているのだろうが、
日本は元記者らが脅される国だと、国際的評価を下げるだけだ。

短絡的な行動が後を絶たないのは、「愛国」を掲げさえすれば
厳しい批判を受けない、保守派のあり方にも問題がある。


http://www.asahi.com/articles/ASGB362XRGB3UTIL06C.html

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産経や八木、古谷、そして下村文科相は極右陣営に属する連中だ。

今回の事件は偶然起こったものではなく、極右が焚きつけたものである。

放火魔にガソリンとライターを提供したようなものなのである。


日常的に、ネトウヨに餌を投下している極右の責任こそ、
朝日新聞は問うべきではないだろうか?



「右翼の人でさえ反対してますよ~」という書き方は、
 相対的に右翼が正常であるように弁護しているようなものだ。


焚きつけられた人間も問題があるが、焚きつける人間のほうがもっと問題だ。

(また、古谷や八木たちの話からは脅迫は駄目だが街宣はOKという印象も受ける)


今後、また同じような事件が起き、最悪、犠牲者が出たとしても
八木や古谷は「おお、なんということだ!」と嘆くのだろうか?


試しに彼らの著書をリスト・アップしてみよう。


八木の著書

『論戦布告――日本をどうする』 1999年6月。
『誰が教育を滅ぼしたか――学校、家族を蝕む怪しき思想』 2001年5月。
『反「人権」宣言』 2001年6月。

『国民の思想』 産経新聞ニュースサービス、2005年3月。

『日本の国家像と国民の思想』 國民會館〈國民會館叢書 67〉、2006年11月。
『公教育再生――「正常化」のために国民が知っておくべきこと』、2007年1月。
『日本を愛する者が自覚すべきこと』 2007年7月。

『憲法改正がなぜ必要か――「革命」を続ける日本国憲法の正体』2013年11月。

共著

渡部昇一、呉善花 『日本を誣いる人々――祖国を売り渡す徒輩を名指しで糺す』 2011年2月。
渡部昇一、潮匡人 『日本を嵌める人々――わが国の再生を阻む虚偽の言説を撃つ』2013年9月。



古谷の著書

『フジテレビデモに行ってみた! 大手マスコミが一切報道できなかったネトデモの全記録』
 青林堂、2012年1月。

『韓流、テレビ、ステマした 韓流ゴリ押しの真犯人はコイツだ!』
  青林堂、2012年6月。

『竹島に行ってみた! マスコミがあえて報道しない竹島の真実』
 青林堂〈SEIRINDO BOOKS〉、2012年11月。

『ネット右翼の逆襲 「嫌韓」思想と新保守論』 総和社、2013年4月。

『反日メディアの正体 戦時体制(ガラパゴス)に残る病理』
  KKベストセラーズ、2013年12月。

『クールジャパンの嘘 アニメで中韓の「反日」は変わらない』
  総和社、2014年2月。

『若者は本当に右傾化しているのか』 アスペクト、2014年4月。

『もう、無韓心でいい』 ワック・マガジンズ、2014年8月。

『知られざる台湾の反韓 台湾と韓国がたどった数奇な戦後史』 PHP研究所、2014年10月。


どうだろう、タイトルを読むだけでも強烈な内容だと思わせる本を
この連中はせっせと書き続けてきたのである。


「韓国を憎め!中国を憎め!」と言ってきた連中なのである。

そういう輩が、いざ爆破予告や家族まで狙う人間が出てくると、
「やりすぎだ!」と話すのは、あまりにも無責任な態度ではないか。


それを朝日は追及しない。これこそが問題なのだ。

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Ultranationalists have even gone after his children,
極右は植村氏の子供の後を追いまわし、
posting Internet messages urging people
インターネットに彼の娘が
to drive his teenage daughter to suicide.
自殺するように追いやるようメッセージを送っている

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言葉の暴力がエスカレートした事件であることを
ゆめゆめ忘れてはいけない。

事件の再発を防ぐためにも、これまでにも何度か主張しているが、
慰安婦制度がれっきとした史実であること、
それを証明する史料と最新の研究動向を紹介する必要があるだろう。


今のところ、共産党や週刊金曜日が新聞社やテレビに代わり、
その役目を果たしているが、植村記者が話している通り、
この問題について及び腰の朝日が果たして根本的な解決にむけて動くのだろうか?

「それはない」と思わざるを得ない。現状を見る限りでは。

アジア女性基金の問題について

2014-12-06 00:33:16 | 歴史全般
同じく、イ・ウォンミョン教授の文章から。


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「アジア女性基金と日本政府の責任回避>

先に紹介した大沼保昭「慰安婦問題とは何だったのか」(2007)と
柳原一徳「従軍慰安婦問題と戦後五十年」(1995年)での議論をもとに、
「女性のためのアジア平和友好基金」(以下「アジア女性基金」と略称)に関して、
なぜ私が日本政府がしっかりとした被害者の補償作業に協力しなかったと主張したか、
簡単に説明します。


1.1995年6月1日、日本政府は、いわゆる「民間募金構想」、
すなわち、「女性のためのアジア平和友好基金」の事業計画については、
次のように述べています(柳原編、33-34)。


①従軍慰安婦のための国民的な補償のための資金を民間からの資金で調達する。

②従軍慰安婦のための医療、福祉などを目的とした事業を行う者については、
政府の資金から資金をサポートする。

③事業が実施されるとき、政府は、従軍慰安婦に国家としての
率直な反省とお詫びの気持ちを表明する。

④政府は、過去の従軍慰安婦の歴史資料を整理して、歴史の教訓とする。



2. 上記の政府発表から確認できるのは、

1)それは「民間募金」の性格を持つこと、

2)「従軍慰安婦のための医療、福祉などを目的とした事業媒介機関」については、
政府の支援金になることがありますが、「慰安婦個人への補償」には、
政府の資金が使われていない
ことを意味します。


3. 大沼教授も自身の著書の中でメリットを明らかにしたが、政府から借り入れた資金は
「財団法人アジア女性基金」を運営するための人件費と運営費、事業費として、
また、その多くは慰安婦への補償ではなく、同時代の女性に対する暴力を
予防するための事業に使われたと明らかにしています。
(大沼、131)。


4. しかしながら、日本政府は慰安婦問題に対する
国際社会の批判が公論化されるたびに、アジア女性基金をもとに、
日本は慰安婦一人一人に首相の謝罪の手紙を送って補償していると、
戦後補償責任の正当性を国際社会に広報する世論戦を展開するために、
アジア女性基金を積極的に活用しました。



5. アジア女性基金について、日本政府が「非協力的」だったとは、これを意味します。
日本政府の一貫した態度は、戦後賠償責任の問題はサンフランシスコ講和条約と
日韓協定で終わった。だから慰安婦個人の国家賠償責任がないということです。

朴裕河教授は個人補償の多くの部分が公的資金と言っているが、
これはこのような事実をまだ知らないか、誤認していることから始まったと思われます。


6. 大沼教授も述べているが、慰安婦問題が日本社会で沸騰された初期を除いて、
日本政府は慰安婦問題という「台風」は時間の経過ととも静なるとの態度で
一貫しています。政府の発表の中で、「過去の従軍慰安婦の歴史資料を整理して
、歴史の教訓に時にする」という方針もやはり回避しました。


7. 民間の「アジア女性基金」を作り、募金に参加した人々の善意は尊重されるべきです。
しかし、これとは別に、私は「アジア女性基金」を作り、運営を担った
大沼教授などの認識からは、日本敗戦後の「一億総懺悔」論のように、
植民地主義と帝国主義の責任主体を蒸発させた現象と似た印象を受けました。

これが私の主観的印象なのかは、じっくり考えてみましょう。

8. 慰安婦問題の「責任主体」は誰でしょうか?日本政府です。


日本政府が責任を背負うことは何でしょうか?

「国家賠償」はいったん論外にするにしても
(私はその時期がいつでもしなければならないという立場ですが)、

「教育」の次元ではこの問題が反映されるよう
「歴史資料を整理して」「教訓にする」ための行動に出ることです。


しかし、現在の日本政府はどうでしょうか?

教科書検定承認の問題でも分かるように、
責任を否定する行動をむしろ強化しています。


9. 私は日本軍慰安婦問題の専門家ではない。
現在は切迫して山積した個人的なことが多く、余裕がありません
(すぐに次の週にある世界市民教育のシンポジウム関連の発表文もこれから記述します)
が、いつか機会があれば、慰安婦問題に対する私なりの体系的な思いを込めた文を
一方書いて発表することで、研究者としての私の責任を背負おうとはしています。

10. しかし、わたしは朴裕河先生と「問題設定」が違うので、
(先生の慰安婦問題についての議論は、脱植民地主義の一角の
「サバルタン」(従属的社会集団)の概念と関係があるのではないかと推測するが)、
先生の著作を中心に議論をすることはないでしょう。もちろん、
私は自分の視点から「事実」を見つけ、「解釈」し、
また、「批判」をすべき議題があるからです。

11. 議論の過程で、朴裕河先生の心を痛めたなら、心よりお詫びを申し上げます。
フェイスブックのスペースというのは、リアルタイムに意見を提出している
ところなので、私はミスしたことも多いでしょう。皆さんの健闘を祈ります。
http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/06/005231
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このように、アジア女性基金自体が
日本政府の国家責任の否定に利用されており、
最悪な場合、慰安婦制度という史実そのものの否定に利用されている。


加えて、慰安婦制度をめぐる問題は差別の問題である。
日本の極右は在日・本国コリアンを差別するための口実として、
日本人の誇りを傷つけるチョーセン人を許すなという正義をでっち上げているのだ。


このことに関して韓国のニューライトが無知だったとするならば、
彼らは自分の利益のために差別に加担したも同然だ。卑劣極まりない。


なお、イ教授も述べているように、
首相の謝罪文をネタにして「日本は既に謝罪している(のに韓国は……)」
という言説を流し、「その事実をアメリカに知らせれば慰安婦問題は解決される」
という珍説を述べている自称インテリジェンスがいる。池上彰だ

日本近代史に欠けているもの

2014-12-01 00:48:28 | 歴史全般
中塚明氏の朝鮮史を読むと、
いかに近代日本の発展が朝鮮への侵略と表裏一体であるかがよくわかる。


それにも関らず、日本の通史(明治史や近代史の通史も含めて)
では、朝鮮に対する記述が少ないような気がする。



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986年から続いている朝鮮大学校歴史実習が11月13日から15日にかけて行われ、
4年制学部の2年生と教育学部と短期学部の1年生が参加した。


現地実習に先駆けて、10日から12日まで、
朝大教員と外部講師による5つの講義が行われ、
学生たちは「関東大震災と朝鮮人虐殺」、
「日本軍と朝鮮人軍『慰安婦』」、「広島、長崎の朝鮮人被爆者」、
「太平洋戦争と朝鮮人軍属」の4つのテーマについて各自研究を行った。



1日目、学生たちは埼玉県本庄にある本庄市立歴史民俗資料館を訪れた。


旧本庄警察署があったこの地では、
関東大震災時に収容されていた同胞43人が
隣接された演武場で暴徒と化した民衆によって虐殺されたが、
資料館には1枚のパネルと数冊の本以外にそれを物語る展示物はない



学生たちは長峰共同墓地の
「関東大震災朝鮮人犠牲者慰霊碑」を訪ね花を手向け、追悼文を読んだ。
1959年に日朝協会によって建てられたこの碑にも民衆の虐殺行為への言及はない。


続いて学生たちは栃木県日光市の足尾銅山に向かった。
銀山平にある「中国人殉難烈士慰霊塔」を見学し、
足尾銅山の3つの抗(通洞抗、本山抗、小滝抗)のうちもっとも山奥にあり、
朝鮮人、中国人が多く収容された小滝抗跡を歩き、「朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑」を訪れた。


中国人慰霊塔と比べ、
あまりにも粗末な木製の碑の前で
生徒たちは沈痛な面持ちで黙祷をささげた。



その晩宿所では、総聯栃木県本部の崔朝雄委員長が
「足尾銅山と朝鮮人強制連行」というテーマで講義を行った。


2日目には足尾銅山の坑道内を見学した。


1940年8月から足尾銅山に連行された同胞の数は累計2416人。

しかし、坑道内にある年表には
「1940年戦時体制の中
労働力不足の補充として朝鮮人労働者を使用」
の一文のみが書かれ、世界遺産登録に向けての
「日本の近代国家創りに貢献した歴史ある観光施設」
が全面に押し出されている。



学生たちは専念寺で追悼式を行ったあと、
精錬所と足尾ダムを見学し、夜は西崎雅夫さん
(関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会
・一般社団法人ほうせんか)による講義
「八広に追悼碑ができるまでー東京の朝鮮人虐殺の実態ー」を聞いた。


最終日、学生たちは11月13日に「強制性」を否認する
新しい説明版が設置された松代大本営地下壕に向かった。



そこには総聯長野県本部の李光相委員長もかけつけ、説明を行った。

委員長は市当局の「非常に姑息なやり方」に怒りを露わにしながら

植民地政策により強制的に連行された犠牲者の存在を否定する
 安倍政権と世論の動きには、私たち自身のルーツにかかわる問題として闘わなければ。


 日本人もそうだが、同胞の中でも世代が変わり、実感がわかない部分もあると思う。
 
 しかし今日本列島の各地で
 同時多発的に起こっている歴史修正の動きもヘイトスピーチなどの差別も本質は一緒。


 若い人たちが過去の歴史の事実を知り、守っていくことが重要」だと述べた。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/11/sk1118-2/
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悪の権化として描かれることが多い総連だが、言ってることはすごくまとも。
逆に、総連に反対する人間が歴史改竄やコリアン差別を是認している。


私が北朝鮮バッシングについて懐疑的なのも、
やってる連中が差別主義者だったり歴史改竄工作を平然とやっていたり、
そういう極右と一緒になって人権を語っている姿がどうにも胡散臭いからだ。

実際、嘘ばっかり語っている連中で、
その言説の一端はこのブログでも取り扱ってきた。


私は、こういう連中が跋扈しているのも、元をただせば、
上の記事が述べているように、コリアンをのけものにした歴史叙述に
あるのではないかと思う。正直言って、私は足尾銅山=鉱毒事件であり、
コリアンが戦時に強制連行された場所でもあることは知らなかった。


日本史では足尾銅山=田中正造・鉱毒事件であり、強制連行は除外されていた。


最近は少しずつ工夫されてきたが、
それでも日本史は大和民族の歴史であって、マジョリティの歴史である。


簡単に言ってしまえば、黒人やインディアンを抜きにして
アメリカ史が語られているようなもので、相当問題があると思う。


公平性や中立が要求される日本史のテキストや通史で
こういうマイノリティを排した歴史を描くことを歴史家は許してしまった。


この責任はとても大きいと思うのだが、
まぁ……一部の識者を除いて特に論じられることもないのかもしれない。

佐々木克『幕末史』を読んで

2014-11-08 23:04:08 | 歴史全般
第一人者による最新の史料を駆使して書かれた本が
良書になるとは限らないことを実証してくれた労作。



これを読むぐらいなら岩井忠熊氏の
『大陸侵略は避けがたい道だったのか』のほうを読んだほうがいい。


なぜならば、一方は幕末を美化して描いたものであるのに対して、
もう一方は幕末の時点から大日本帝国の負の点、すなわち、
武力主義と天皇信仰が存在したことを指摘しているからである。


戊辰戦争の折に発表された「奥兆按撫の宸翰(しんかん。天皇直筆の文書のこと)」には、
既に日本の威光を海外に知らしめ、安寧をもたらすという八紘一宇の原型となる主張がある。


大日本帝国のお家芸、すなわち、国家の危機を強調して国民の関心を国外に向けさせ、
内乱の拡大を防止する政策が戊辰戦争時からあったわけである。

その後、江華島事件をはじめとして朝鮮半島を植民地化する作戦が
約半世紀続き、ついに韓国併合、1945年まで占領・統治されていく。


以上、述べたような大日本帝国の原型が幕末の時点であったことを、
佐々木氏の『幕末史』は一切触れていない。


逆に、挙国一致という思想が、いつしか天皇中心の政治に変貌してしまったと嘆いている。
(つまり、質的な変化があったと暗にほのめかしている)

その割には大日本帝国憲法を絶賛している。


憲法学者の故・長谷川正安は、
同憲法の構造的性格として、天皇制が時代の推移にも耐えられるよう
計算されて規定されていること、三権分立が規定されてはいるものの、
それら三権を天皇が統括することが重用されたこと、憲法上、帝国議会は
天皇の立法権に協賛するだけのものでしかなかった
ことを指摘している。

立憲君主制の現れとしてベタ褒めしている佐々木氏とは対極的な考えである。


天皇制と拡張主義が当初から存在していたことは明白だが、
これを佐々木氏は認めず、明治憲法を絶賛し、アジア侵略から目をそらす。


案の定、この本は大河ドラマのように史実を羅列するだけで終わっている。
マニアは面白がるだろうが、ここから現在の日本の歴史改竄行為や
軍拡路線に対して対抗する理論を構築するには全く役立たないだろう。


代わりに前述の岩井氏の著作、長谷川氏の著作(『昭和憲法史』)を推薦したい。
まぁ……絶版だが。日本では言論の自由はあるが、読むべき本は読めず、
害悪になるだろう本が量産され、たたき売りされているわけで、
こんな自由が守られることのどこに意味があるのだと言いたくなってしまう。

與那覇潤氏の著作について

2014-05-31 22:48:00 | 歴史全般
今日、本屋に立ち寄ってみたところ、
一応、歴史家かもしれない與那覇潤氏の「中国化する日本」が
文春文庫として売られていた。こんな本が文庫化かぁ…さすが文春。



POPに「東大生協でランキング1位」という文字が…気のせいか?


仮にこんな本(大事なので二度言う)がよく読まれるなら
世も末だなぁ・・・もっとも、マクニールの『世界史』が
東大・早稲田・慶応の文庫ランキング1位になるくらいだからなぁ…


與那覇氏の著作の致命的な問題点は、
先行研究を恣意的に歪めて紹介するところにある。


この点は、下記サイトで詳しく書かれているので参照してほしい。

http://watashinim.exblog.jp/18496216


一例だけ挙げると、同化政策の一環として創氏改名を行ったと
主張する水野直樹氏の著作が「同化政策ではなかった」という
全く逆の意見を述べたものとして、引用されている。



以前、「戦友を殺されているのだから報復で中国人を虐殺しても
しかたない」という意味で書かれていたはずの陣中日誌の文章を
「中国人を殺すのもほどほどにしとけよ」という意味だとして説明する本を
読んで、腰が抜けそうになったが、与那覇氏もこの手の類で、
出典先の文章を都合よく解釈し、まったく別の主張を叫び、
「~氏も言っている」「学会の常識」とみなして正当化している。



私は文春だから怪しいと思って手をつけなかったが、
少なくともこの数年で同書を「すげー!」とペラペラめくっている
東大生がそれなりにいるのだろう。凄いな……うん……


ツチノコが存在するのは学会の常識
と生物学者が言っているようなものなのだが……




売名行為がウマイ人だと、簡単に歴史家になれてしまうらしい。
今の大学(少なくともアメリカ研究では)、血が滲むような思いで
良質な論文をいくつも発表しても、なかなか専任講師になれないのだが……


知ってますか?建国記念の日

2014-02-12 23:44:56 | 歴史全般
昨日、2月11日は建国記念の日だった。
憲法記念日などとゴロが似ていることから、この日に
現在の日本国の建国が宣言されたと思う人もいるのではないだろうか?


実のところ、この日は日本が建国された日ではない。
初代天皇ということにされている「神武」が即位した日なのだ。


この21世紀におとぎ話のエピソードを
史実のように扱うというこのセンス!

いやはや、素晴らしいものである。



天皇制を非難あるいは擁護するさいに見落としやすいのが
天皇制批判と天皇批判は全く違う」ということである。

前者は大日本帝国が築き上げ、戦後も継続されている国家システムへの批判であり、
後者はただの個人攻撃である。



天皇制の何が良くないかというと、その絶対性にある。

建国記念の日もまたしかりで、冷静に考えれば歴史的な根拠が
まったくない上に、日本国憲法には宗教の自由が保証されている
はずなのに、一つの宗教にすぎないはずの神道のエピソードを
国が挙げて祝うべきこととしてしまう是非について議論が必要なはずだ。

にも関わらず、天皇ゆかりというただそれだけの理由で
公の議論が暗黙の了解で自粛されている。このように、
天皇という言葉を盾に国家権力が絶対正義とされてしまう。

君が代しかり、靖国しかり、ここが非常に問題なのである。

注意深く見ると、天皇制は天皇の美化という形をとりつつ、
それ以上に天皇の承認を得た国家を一切の過ちを犯さず、
完全なるものとみなし、崇拝と隷従を強制する点にその特徴がある。

虎の威を借りたキツネとでも形容できようか。
神様が治めるこの国が間違っているはずがない。
この国に楯突くことは神を冒涜することだ。こういう理屈である。

このシステムは天皇が人間であることを宣言したことによって、
また国民主権を憲法で認めたことによって多少のダメージを負ったが、
その後、日本国の象徴(つまり、天皇や天皇制を批判する者は
国に叛意を持つ者と同義であることにされる)として維持された。


戦前には御真影といって天皇の写真が大変神聖なものとみなされ、
この写真が飾られている場所を通る際には敬礼をしなければ
ならなかった。現在、御真影は旗や歌といったより記号的なものへと
変化し、これを一種の踏み絵として現政府の忠誠心を試すものとしている。


国家や政府に一切の責任を負わせず、負担を国民に強いるという点で
このシステムは非常に前時代的、非科学的、宗教的なものである。



檀君神話を歴史教科書に載せている韓国でさえ、
檀君を想像上の人物(正確には古代朝鮮に存在した指導者の総称)と
みなしている。歴史と神話を同一視するのは残念ながら日本ぐらいだ。


今日のニュースで安倍総理が自身の靖国参拝や改憲解釈、慰安婦問題
について、現実を見ていないとしか言いようがない発言を行っていたが、
彼の言葉もまた自己陶酔的というか、狂信的なのもまた、この天皇制の
根幹にある「国家や政府は一切悪くない」という強いイデオロギーに
精神を侵されているからであろう。


国家に反省を強いない、
さらにいえば、国家に無反省を強いる点にこそ
最も天皇制の恐ろしい点であり、この絶対王政を
除去することがどれだけ日本の未来に有益なことか……

と私は思うのだが、世間的には天皇=天皇制と考え、
平成天皇の人柄と天皇制の欠陥を混同するために、
天皇制の批判→天皇への侮辱と一発簡易変換され、
なかなか意見を聞かれることはない。

だが、塵も積もればなんとやら、
それは間違っていると叫んだ人間が過去にいたことを
未来の人間に伝えていくことこそが大事なのだと思う。

スペイン人民戦線・補足

2013-07-10 19:57:18 | 歴史全般
スペイン内戦中のスペイン政府は決して共産党の独壇場ではなく、
社会党をはじめとした各政党の連合国家だったと前回説明しました。

で、中央政府の意見を無視して集団化をはじめ、土地を没収し
あまつさえ生産力を落としてしまったアナキストの行為が
1937年5月に起きたアナキスト暴動へ対する厳しい弾圧の
背景にあったこと、単純にスターリンの走狗として
スペイン共産党を語るのは解釈としては不適であることも述べました。

今回の記事はその補足ですが、どうも不破氏は連載を始める前に
ウォルター・ラカーのスターリン本を読んでいたようです。

ウォルター・ラカーの略歴は本によりますと、
テロリズム、ユダヤ人問題などについて20作以上の著作を発表し、
高い評価を得ている現代史家

ワシントンDCの戦略・国際問題研究センター
国際リサーチ・カウンシルの共同議長を務める

だそうです。

ピンと来ないかもしれませんが、これは凄まじいことです。
というのも、この研究センターとは、アメリカの保守派が
取り仕切っているシンクタンクで、ネオコンの牙城、
事実上の対日謀略の司令塔とも評されています。

要するに、世界各国へ対するアメリカの
干渉政策のプランをここで作っているわけです。

http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/36ff9392cc63d3631b4ee93750c21d8d
http://ameblo.jp/souldenight/entry-11477967975.html

つい最近では安倍首相がここで演説を行ったり
ここのメンバーが極右の安倍首相を警戒する風潮を
たしなめたりと、ヤバ気な雰囲気が漂っております。

で、そのネオコンの牙城に所属するラカーがユダヤ人で、
テロリストの研究家で、ユダヤ人問題のスペシャリスト
となっていると、この男、断定はできませんが、普段は
イスラエルやパレスチナの問題に関与している…というより
もろイスラエル支援政策に協力しているのではないでしょうか。

この男はイラク戦争が始まる2002年に
『大量殺戮兵器を持った狂信者たち』という本を書き、
誰もが核・化学・生物兵器を持てる今、テロリズムの脅威が
飛躍的に拡大したと危機を煽りました。

その直後に生物兵器を持っているとの疑いをかけられた
イラクが攻撃を受け、イラクの指導者サダム・フセインが
殺されるわけです。当然、イラクは生物兵器を持っていませんでした。

目次からしてすごいのですが、テロリストの動機として
「マルクス・ムハンマド・アルマゲドン」を掲げています。

要するに、コミュニストやムスリムは危険極まりないという
ことです。ラテン・アメリカをはじめとする弱国へ対する
侵略プランを練っているところで働いている方が書く
テロリズム論、各軍事関係者に支持されるテロリズム論
というのは、おおよそ凄まじく体制的とは言えないでしょうか?

私はレーガン政権の外交に関与したリチャード・パイプス
など、アメリカのソ連研究家は多分に自国の侵略・干渉行為に
加担しているので、どうも限界があるように感じてなりません。

全否定はしませんが、多分にアメリカに都合のよい
解釈がされてはいないかと思います。特にソ連崩壊後には
エリツィン派(崩壊支持者)の研究者とアメリカの研究者が
つるんで、ソ連史のスタンダードを書いていたりするのですが、
そういう従米研究家が書いたスタンダードって本当に大丈夫かな
と思うのです。

というわけで、そういう連中の一人が書いたスターリン論って
マジで大丈夫かっていう話です。日本共産党はソ連とは違う
という点を強調して今日まで活動してきましたが、その独自路線
の弱点がここに現われているのではないかと思います。

不破哲三氏の「スターリン秘史」に物申す

2013-07-09 23:11:55 | 歴史全般
共産党の元指導者である不破哲三氏が現在、スターリンの他国への
干渉政策を雑誌「前衛」で連載していることは前々から知っていました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-12-24/2012122405_01_0.html

インタビューも既に読んでいましたし、今年で83歳ですから
もうこのような学術研究に没頭するようになったのかなといった程度で
特に気にしてはいなかったのですが、今日その連載を本屋で読み、
「ちょっとこれはな・・・」とその問題点が目につき、
本記事を書いた次第です。


まず、連載の長所ですが、読みようによっては
スターリンが物凄くリアリズムに行動しているということが
よく伝わってくるというところはとても良かったと思います。

実際、スターリンは東京裁判にしてもアメリカと対立するのを
避けるため、基本的に欧米列強の言い分に賛同せよと命じていたり、
英仏がヒトラーを利用してソ連を攻撃させようとした際に、
これを逆手にとって独ソ不可侵条約をとり欧米を出し抜いたりと
共産イデオロギーに縛られない柔軟な策を打ち出しました。

私はこの手法は政治家としては200点満点だったと思います。
状況に応じてベストの策を打ち出す。

彼がもしイギリスかフランスの外相だったら
今日までの数々の罵声を浴びることもなかったでしょう。

(これは、スターリン外交をこれでもかと罵倒しながら
 同時代の欧米列強の帝国主義政策に関して何にも言及しない、あるいは
 これらと関連付けてソ連外交を語ろうとしない論者にむけての皮肉です。)

とはいえ、これはあくまで「政治家」としての評価であり、
コミュニストとしてはどうなのかと言えば話は別で、
私はスターリンは共産主義者というよりは
むしろ国家主義者だったと考えています。

そもそも社会主義という言葉は、国家と社会を対置すること
から生じています。古くはトマス・ペインですが、まず人間は
集団生活を送るに至って社会というものを結成する。

しかる後に、治安を維持するために国家が生まれるのだが
この国家がいつのまにか生みの親である社会を蹂躙するようになる。
そこで、国家ではなく社会の益を重んじる社会主義が登場するわけです。

ですから、社会主義の反対語は国家主義であり、
いわゆる国家社会主義という言葉は矛盾した言葉と言えましょう。

国家主義者というのは国家(体制)を維持・発展させることが
最大の目的ですから、場合によっては弾圧や搾取も平然と
行ってしまう所があり、スターリンも天才的な手腕を持って
ソ連を防衛した一方で、その代償として防衛に邪魔になる
であろう国内の分子の殺害や急速な近代化を推し進め、ソ連を
大国化させていきました。その詳細は日本の無数の「知識人」が
執拗に説明をしているので、ここでは深く問いません。

ともあれ、スターリンをソ連の防衛・発展を
第一に考えていたとするならば、一連の行動も
納得がいくのではないかなと思っています。

この点については不破氏と私の考えはほぼ一致しているので、
特に何か言うことはないのですが、このスターリン秘史、
スターリンとコミンテルンとの繋がりを指摘する性質上、
やはりここだけは譲れんぞという批判点もあるのです。

それは、簡潔にいえば「大国史観」になっているということです。

これは冷戦史で物凄く幅を利かせている考え方なのですが、
とにかくある物事を資本主義(アメリカ)対共産主義(ソ連)の
争いという構図で説明したがるもので、当事者たちの積極性を
無視しているものです。

例えば、岸信介ですが、こいつはCIAと繋がりのあった
元A級戦犯でしたけれど、繋がりを理由にして岸を単なる
アメリカの駒としてしか描かない論者がいて、私はそのような
考えは、岸自身の野心と責任を透明化させてしまうと考えています。

蒋介石とか李承晩とか戦後間もなくアメリカをバックに独裁体制を
開いた国がありましたけれど、アメリカの走狗として描くことで
彼らが行った弾圧を逆に矮小化してしまうのではないかと思うのです。

そうですから、コミンテルンの歴史にしても、
当時の各国共産党の自主性と言いますか、ソ連の息がかかっていても、
したたかにそれを利用していたという点を無視してしまうと、
実像がぼやけてしまうのではないかと思うわけです。

で、私が今日読んだ7回目の連載ですけれど、ここでは
スペイン内戦に言及していたのですが、これを読む限りでは
スペイン共産党が単なるスターリンの人形になっていて、
実のところ同党が当時のソ連とは全く異なるシステムを
狙っていたという事実はきれいさっぱり忘れ去られています。

たとえば、農業制度です。内戦において無政府主義者や
その追従者たちは「農地の集団化」を望んでいましたが、
スペイン共産党はこれに反対して、農民個人に対する土地の割当を
主張しました。これはソ連型のコルホーズに真っ向から逆らう動きであり
仮に彼らがスターリンの命令実行部隊であるならば説明のつかないことです。

で、実際にカタロニアではこの無政府主義者の政策の結果、
農業生産が低下し、大多数の農民が農地を放棄しました。

また、工業政策においても同様で、無政府主義者たちは
100人以上の労働者を抱えている企業で労働者の集団化が
義務付けられました。これは国家ではなく労働組合が権力を
掌握することを狙ったものでしたが、結果的に工業生産が
ガタ落ちになりました。

これが後のカタロニアでの暴動につながっていくのですが、
こういった経路を抜きにして不破氏は話を進めているので、
1937年5月以降のカタロニアにおける無政府主義者との
戦いも、いわゆるスターリン「お得意の」「でっちあげ」の
「虐殺」「恐怖政治」といった言葉で説明されるわけです。

確かにカタロニアにおいてアナーキストと追従者に対する
徹底的な弾圧がなされたことは事実です(今のところ。
というのも、信じがたい話ですが、わりと本気で研究者も
含め、ソ連に少しでも有利な事実はもみ消す暗黙の掟が
論者の中にありますから。ソ連タブーと私は読んでいます)。

しかし、それは何もスターリンが命令したからというわけではなく、
その原因はすでに一年前から起きていたスペイン一地方における
アナキスト達の権威化と、当時の人民戦線政府の指導者である
社会党のラバリョ・カバリェロがコミュニスト抜きの政治を
行おうとしたこと等々の事実があったのが大きな原因です。

なぜこう考えなければならないかと言うと、スペイン共産党は
1937年5月以降、社会党やカトリック教徒と協力をしているからです。

仮にスターリン方式を採っていたとするならば、
これら社会党やカトリック教徒に対しても同様の攻撃を
行い、人民戦線と言いながら、その実共産党一党支配の
体制へと改造したはずです。ソ連の防衛に邪魔な存在は
すべからく排除するのがスターリンのやり方なのですから。

どうもスペイン内戦に顕著なのが、このカタロニアの暴動をもって、
共産党とアナキストとの虐殺する側・される側としての構図を引きたがる
傾向で、この場合には、スペイン共産党と協力していた集団が完全に
無視されるんですよね。で、仮に言及していたとしても、なるほど
形式的にはそうだな!だが実際は・・・という表現をもって
強引に共産党一党独裁を主張したがるわけです。

その暴動の鎮圧の手段もまた、不破氏に言わせれば
スターリン虐殺と同じ手法だったと書いてあるのですが、
参考文献が載っていませんし、何と言いますか、かなーり
怪しいな~と思います。

スターリンの手先→弾圧が起きた→スターリン虐殺と同じ
という安直な発想が生まれているんじゃないかなと思います。

そもそも、スターリンの粛清では、少しでも嫌疑をかけられた
人間は、すべからく捕まっているのですが、当時のカタロニアでは
そこまで大々的な弾圧もなかったわけで、これを
「恐怖政治」とまで表現してしまう不破氏の論調は、
スペイン共産党が当時、人民政府に貢献した点を
ごっそり削除してしまうのではないかと思うのです。

不破氏によればスターリンはコミュニストとアナキストの
対立を見て、いっそのこと、この機に潰したら?と
言ったようですが、それ自体は事実としても、
具体的な方法は彼が行った粛清のそれとは異なります。

スターリン粛清の際には、そのシナリオを知る人間を
最後に殺して事件を闇に葬るのですが、当時のスペインで
同じことをやったかというとそれは違う。スターリンの
主導のもとで弾圧を行ったのかは非常に疑わしいです。

さて、その後、スペイン革命はナチスとイタリアの援助と
それに対する欧米の黙認によって敗北するのですが、
この点も社会主義国の批判を前提にした各書によると、
スペイン共産党が全責任を負うことになるようです。

しかし、スペイン革命は第二次世界大戦の前哨戦とも
言える戦いで、イギリスやフランスなどの当時バリバリ
植民地を持ち、同地での搾取と弾圧を行っていた国々の
動きも関連付けて総合的に判断しなければ、世界史として
スペイン革命を描くのは大変難しいのではと思います。

加えて、その後もフランコによる独裁政権は彼の死後
1975年まで継続し、その間、スペイン共産党は非合法の政党として
独裁に抗っていきます。最終的に議会制や多党制を重視する政党と
なり、他の左翼政党と組んで統一左翼を結成し現在も選挙に挑んでいます。

この統一左翼という考えは間違いなくスペイン革命時の
人民戦線をモデルとしたものです。スペイン共産党を
スターリンの走狗以上の何物でもないとする歴史観は、
革命後の共産党の動きを全く無視した暴論とも言えるものです。

以上から、私は不破氏のスターリン秘史は、まぁスターリンの
対外政策を語るという性質上そうならざるを得ないだろうなーと
思いながらも、なお各国共産党を単なる支部としかみず、彼らの
独自性や積極性を無視した(あるいは歪曲した)という問題を
孕んでいると考えています。

不破氏もこんなもん書く暇があったら当時の欧米の病的とも
言える反共政策を書いてほしいもんですが、やっぱ立場上
無理なんでしょうか?私はチャーチルやローズベルトが
善人扱いされる風潮にはどうも納得がいかないのですけどね。

そもそも、こういう歴史観は彼の・・・というより
一方的に不破氏につっかかっている加藤哲郎のそれなんですが、
まぁ・・・さすがに80歳を超えると現場で出張らせてくれない
のかなぁ・・・志位さんや市田さんが連日のように日本中を
駆け巡って選挙活動をしている中、ずいぶんとまぁ・・・ねぇ?

私は現在、ロシアで強権的な政治を行っているプーチン派と
対決しており、ソ連崩壊直後からのエリツィンによる新自由主義や
チェチェン紛争への反対を行っていたのが旧ソ連共産党だという
事実から、単純にソ連共産党=悪とする歴史観には非常に疑わしい
ものを感じるのです。そろそろ行き過ぎた反共ヒステリーに対して
コミュニストとして何か言ってほしいのですが、やっぱ反共が国策
となっているこの日本では政治的に無理なのかも・・・

八重山事件について

2012-09-22 19:08:45 | 歴史全般
最近読んだ沖縄問題の本から。

八重山事件の詳細は、他のサイトに譲るとして、
個人的に思うのは、作る会が作った教科書を使わないなら
教科書は無償で支払わないぞとあからさまに脅迫し、かつ
その通りに実行したことである。

保守系の政治家と政治団体に後押しされた
保守系自称教育者が教育長となり教育に圧力をかけ、
逆らう市区町村には経済制裁を下す。

しかもそれがさしてニュースにもならない。
圧政や独裁といえば、共産主義国を連想するよう
我々は洗脳されているが、実際は自国内で平然と
なされているようだ。

にしても、沖縄戦という多大な犠牲と
琉球処分という侵略行為、米軍による占領、
おまけに米軍基地という犠牲を強いられてなお、
大日本帝国は素晴らしいんだ!と言い張る教科書を
乗せたがる石垣市教育長たちは何者なのだろうか。

ズブズブという擬音語が聞こえてくるようだ。

追記
八重島事件といい、大阪市といい、
教育委員会を悪者に仕立て上げ、教育に政治を介入
させる最近の行為は目に余るものがある。

大津市のいじめ事件にしても、単に教育委員会を
攻撃したいという保守系に押されてなされたものでは
ないだろうかと邪推してならない。