時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

金正男殺害について気になること・2

2017-02-23 23:10:09 | 北朝鮮
事件から1週間が経過したが、一向に捜査が捗らない。

事件当時、マスメディアは北朝鮮の工作員の犯行なのだと確認もせず喧伝したが、
その後、北朝鮮とは無関係の人物であり、悪戯を仕掛けるよう頼まれたと証言したことがわかった。


通常なら、ここで視野を広げ、北朝鮮だけでなく第3の国家組織によるケースも考慮すべきものだが、
マレーシア警察もマスメディアも引っ込みがつかなくなったようで、未だに北朝鮮黒幕説を唱えている。



一方、ネットでは一連の報道を懐疑的に見ている人間も少なくないらしい。

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金正男氏殺害事件について韓国諜報機関は
朝鮮民主主義人民共和国の朝鮮人民軍偵察総局が犯行に関与したと発表した。
ところがSNSやマスコミで事件の動向を見守ってきたネットユーザーらは、

正男氏の異母弟である金正恩氏が兄殺害を命じたという韓国政府の情報を鵜呑みにした
西側マスコミの報道に懐疑的な視線を投げかけている。


韓国SNSユーザーのひとりは、容疑者とされる2人の女性の1人、
ベトナム国籍のドアン・チ・フォン容疑者(29)は事件から2日が経過して
犯行現場に現れたところを逮捕されたことから、
これはプロの殺人工作員の行動には似つかわしくないと強調している。


もうひとりベトナム在住のネットユーザーは、スプートニク・コリアからのインタビューに対して
「現地時間2月16日正午、ベトナム政府はドアン・チ・フォン容疑者が逮捕という声明を表していない」
ことから「ベトナムではもっぱら、金正男氏は金の払いが悪いと不満を表した娼婦と喧嘩したあと、
心臓発作で死んだのではないかという噂が流れている」と語っている。

https://jp.sputniknews.com/incidents/201702173349162/
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日本では完全に北朝鮮の仕業だということになっているのだが、
実際には容疑者数人を逮捕しても手掛かりを得られない状態にある。

次から次へと容疑者が増えるのは、誰が黒幕なのかがわからないからだ。


そもそも、今回の事件は事実の確認もせずに
マスコミが大声で北朝鮮黒幕説を泣き叫んでいるところに大いに問題がある。


例えば、こういうことがあった。


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3日にマレーシアの首都クアラルンプールで亡くなった、
北朝鮮の指導者金正恩氏の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏の息子が、
父の遺体引き取りのため、同地に到着した。NHKが今日、現地の消息筋の話として伝えた。


幾つかの情報を総合すると、息子のキム・ハンソル氏(22歳)は、
火曜日朝、クアラルンプールに到着、すでに父の遺体が安置してあるホテルに入った.


NHKは
「その際、病院の警備が急に強化され、自動小銃などの武器を持った
 特務部隊員30人から40人がホテルに派遣された」と報じている


NHKによれば、キム・ハンソル氏は、父の遺体を確認した。
なおマレーシアの朝鮮民主主義人民共和国大使館は、金正男氏の遺体の引き渡しを要求している。
しかしマレーシア当局はすでに「遺体は、個人の近しい親族に引き渡されるだろう」と発表した。


この問題をめぐりマレーシアと北朝鮮の間に対立が生じた事を受け、
ピョンヤン駐在のマレーシア大使は、祖国に召喚されている。

https://jp.sputniknews.com/incidents/201702213363164/




北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄で、殺害された金正男氏の息子ハンソル氏(21)が、
遺体引き取りのためマレーシアに入国したかどうかをめぐって、情報が錯綜)している。


20日夜、クアラルンプール国際空港の到着ロビーには大勢の報道陣が詰め掛けた。
ハンソル氏がマカオから到着するとの情報をマレーシアの中国語紙・中国報などが伝えたためだったが、
空港では同氏の姿は確認されなかった。



中国報は21日、正男氏の遺体が安置されているクアラルンプール市内の病院に
同日未明に突如現れた数十人の警察特殊部隊のメンバーを装って病院に入ったと報道。


遺体の身元確認のためDNAサンプルの採取を終えたとも伝えた。



ところが、同日午後に記者会見した保健省幹部は「近親者が来てくれることを期待している」などと述べ、
近親者からまだDNAサンプルを得られていないと説明した。





地元紙サン(電子版)も21日夜、空港の関連当局に確認したが、
ハンソル氏が20日に到着した記録はないと報じた。


同紙によると、地元警察幹部はハンソル氏の入国について
多くの問い合わせを受けたが、承知していない。おそらく単なるデマだ」と打ち消したという。

時事通信が報じた。


https://jp.sputniknews.com/asia/201702223366749/
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要するに、NHKをはじめとする
日本のマスメディアは作り話を報じていたのである



この記事を読んでいる全ての人に問いたいが、
ハンソル氏が到着したというのは誤報だったという訂正が大々的に行われただろうか?
そのような事実確認を疎かにする報道姿勢に対して、誰かが文句を言っただろうか?


私が知る限り、彼らは訂正すらろくにせず、その後もバッシングをせっせと行っていた気がするし、
そういう醜態に対して真剣に憤慨し、非難した知識人やジャーナリストも皆無に近いような気がする。


ここで重要な点を指摘したい。
そもそも、この殺害された男が金正男本人だという確証自体、まだないのである。



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マレーシア政権は、2月13日、クアラルンプール空港で北朝鮮の市民を襲撃した数人は
毒を塗りつけた手で被害者の顔に触れたことを明らかにしていることから、北朝鮮大使館は
「もしこれが本当であればなぜ彼らは生き残ったのか?」と疑問を呈している。



クアラルンプール空港で死亡した男性は
キム・チホリの名前が記載された北朝鮮発行のパスポートを所持していた。


これに対して韓国は事件後直ちに、死亡した男性はマカオ在住の金正男氏で、
北朝鮮のリーダー金正恩氏の兄だとする声明を表した。


マレーシア政権も同様に死亡した男性をパスポートの記載名に従い、キム・チホリ氏と呼んでいる。


https://jp.sputniknews.com/incidents/201702223367524/
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何のことはない。そもそも、殺された男性の正体すらわからない状態なのだから、
正男の息子が空港に訪れることなど、素直に考えればありえないことだ。

(ただし、仮に本人でないなら正男が何か言ってくるはずで私自身、本人ではあるだろうとは思う。
 私が気にしているのは、日韓のメディアが、あたかもマレーシア政府が正男だと
 公言しているかのように事実を歪めて伝えていることである。)


だが、これが北朝鮮の事件だとすると話は変わってくる。
「北朝鮮の仕業に違いない」という先入観から簡単にデマに釣られる。

そして拡散するだけ拡散して訂正しない。
これではネットの右翼たちとどこが違うというのだろうか?



ありもしない事実をねつ造した挙句、その間違いを報じない。
大変悪質な行為だが、悪貨は良貨を駆逐するのが世の常、
醜聞のほうがはびこれば、その分、正確な情報は路傍の石のような扱いを受けてしまう。



今回の事件で気になるのは、中国とアメリカの動きだ。

韓国の言い分によれば、金正男氏は中国が金正恩の後釜にするべく保護していたとの話なのだが、
その割には、今回の事件に対して中国は静観というか、ほぼ無関心の状態でいる。



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中国外交部(外務省)の耿爽報道官は15日の定例記者会見で、
記者からの金正男氏殺害事件に関する質問に対し、中国側はメディアの関連報道に留意しており、
現在、同事件の動向に注意を払っているとした。


また事件はマレーシアで発生しており、
マレーシア側も同事件に関して現在調査を進めていることを明らかにした。

http://j.people.com.cn/n3/2017/0216/c94474-9178777.html
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これだけである。

仮に中国が数年にかけて正男を匿っていたのなら、より正確で豊富な情報を公表するのではないだろうか?
自分たちがガードしていた人物が殺されたのだから、メンツをつぶされた手前、憤慨するのではないだろうか?


ところが中国は今のところ、南シナ海における米軍の行動のほうを非難しているし、
そもそも、彼らの方から何か情報を提供しているわけではない。


中国は現在も北朝鮮と良好な関係を結んでいて、経済制裁にも乗り気ではない。
中国が一貫して語るのは、軍事的経済的圧力ではなく対話である。

中国 朝鮮半島核問題で対話接触を一貫して支持



金正男がこの数年間、アジア各地で豪遊していたことは有名な話だし、
息子も3年間、パリの大学で学んでおり、亡命者としてはあまりにも贅沢な暮らしを送っている。

「金正男親子は数年間、北朝鮮のエージェントからの暗殺に怯え暮らしていた」という言説は、
 実際のリッチな生活(少なくとも質素な生活とは言えない)を知る者にとっては不自然なもので、
 それも中国当局からではなく、なぜか韓国が発信しているわけだから、「おかしい」としか思えない。


ここで、スプートニク紙のタチヤナ・フロニ氏の記事を読んでみたい。

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世界中のマスコミが、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏の謎の死について議論している。
メディアは、金正男氏殺害に関する驚くべき新たな詳細を次々と報じている。
一方で金正男氏の突然の死の主な説は、北朝鮮の工作員が金正男氏を排除したというものだ。

通信社「スプートニク」は、ロシアの朝鮮問題の専門家2人に、この謎の殺人について意見を聞いた。
なお2人の意見は異なっていたが、これは驚くべきことではない。


ロシア人外交官で東洋学者のゲオルギー・トロラヤ氏は、
実際に北朝鮮の工作員が殺害に関与した可能性が最も高いとの見方を示し、次のように語っている-


「最も気づきやすい状態にある主な仮説は、
 金正男氏が可能な代替候補者として金正恩氏の立場の強さを脅かしたため、
 金正恩氏の指示で排除されたというものだ。

 この説に反対する論拠は、それならば金正恩氏は
 もっと前に『敵』を始末することができたというものだ。

 また現在、金正男氏は金正恩氏にとって特に危険性を示してはいなかった…
 だがもしかしたら、誰かが金正男氏を代わりのエースとしてつかまえていたのかもしれない。

 北朝鮮で何かが起こった場合には、合法的なリーダーが必要となる。
 もしかしたら金正男氏は、
 同氏を金正恩政権を崩壊させるために利用しようとした韓国人と接触したのかもしれない。


 いずれにせよメディアはこのようにほのめかした。

 この信憑性の高さを判断するのは難しいが、
 いずれにしてもこれは自分の兄を排除するという動機を金正恩氏に与えている。

 だが表ざたになり、これ見よがしだ。
 動機はなんからのビジネス取引の可能性もある… 

 だが医師や警察の結果や結論が出て死因が分かったとしても、
 動機や殺人依頼者の名前は分からない。これは決して明確になることはない筋立ての一つだ。」

韓国の情報機関は、金正男氏の暗殺が2012年から計画されていたと考えている。
韓国の朴槿恵大統領の職務を代行している黄教安首相は、金正男氏殺害に
北朝鮮が関与したことが確認された場合、これは金正恩政権の残虐性を証明することになると述べた。


ロシアの朝鮮問題の専門家コンスタンチン・アスモロフ氏は、
提起された嫌疑は証明を必要としていると強調し、中国のマスコミが
金正男氏の死に『北朝鮮の痕跡』のみを見ようとしていないことに注目し、次のように語っている-


「中国のマスコミは韓国の痕跡も堅持している。
 なぜなら金正男氏の死をまずは誰にとって得か?という立場から検討しているからだ。

 そして韓国にとって得だと考えている。

 第一に北朝鮮にはこれほど恐ろしい政権が存在するとの素晴らしい例となる。
 国のリーダーが自分の兄を殺害する。しかもこのような残忍な方法で。
 目的は、米政府に北朝鮮に対してより断固とした行動を取らせるために。」



吉林大学北東アジア研究院の中国人専門家バ・ジャニュン氏は
「スプートニク」のインタビューで、現時点では金正男氏の死因に関する確かな情報がないため、
何らかの仮説を立てるのは無責任な行為だと述べ、次のように語った-


「現在たくさんのマスコミ、特に日本や韓国のマスコミでは、
 中国と北朝鮮の関係に焦点が向けられている。

 なぜなら金正男氏は、大部分の時間をマカオで過ごしていたからだ。
 同氏は何かあった場合に北朝鮮に新たな秩序をつくるために利用するための中国の
 「予備の案」のようなものだったという見方もある。

 だが私は反対に、金正男氏の死は、中国にはいかなる計画もないことを証明していると考えている。

実施に米国で政権が変わり、ミサイル防衛システムTHAADの配備プロセスが継続している現状の中、
西側の戦略計画は、中国と北朝鮮の関係に影響を与えることにある。

これについてコンスタンチン・アスモロフ氏は興味深い指摘を行っている-


驚くべき事実は、マレーシアの警察が金正男氏の死を確認する前に、
 韓国のケーブルテレビが殺人の様子を独自に描いたということだ。


 金正男氏が体の不調を訴えた時は、まだこの人物が誰なのか正確には知られていなかった。
 当初韓国のマスコミはマレーシア警察の情報を引用していたが、情報は確認されていなかった。

 そこで韓国のマスコミは、匿名ではあるが事情に詳しい政府筋の情報を引用した。
 したがって、あらゆる説は証拠がないため今のところ完全に同等ということだ。

 それぞれの説から動機を見出すことができる。
 例えば、韓国人はこのような形で金正恩氏を苛立たせ、彼が何らかの行動に出るよう挑発するというものだ。」


https://jp.sputniknews.com/opinion/201702163348494/
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私自身は、仮に北朝鮮が暗殺したとするならば、その動機は専門家が睨んでいるように
韓国政府が金正男を傀儡にしようと企んでいたからではないかと考えている。


実際、韓国政府は先日、金正恩の暗殺計画を公表した。

米韓 金正恩氏暗殺のための特別部隊を創設


暗殺の話ばかりで完全に無視されているが、米韓両軍は過去最大の軍事演習を来月実施する
暗殺部隊の創設、北朝鮮への先制攻撃を想定した軍事演習、防衛ミサイルの装備。

これらが着々と行われ、リビア同様、欧米社会の圧倒的な支持の下、北朝鮮が滅ぼされたその時、
彼らは金正男を新生国家の元首の席に据えるつもりだったのではないだろうか?

その計画を阻止するために殺害したというのであれば、これはある程度説得力があると思う。
(実際、年々、北朝鮮を滅ぼす準備は順調に進んでいるわけだし)


他方で、前の記事で冗談で書いた「韓国政府黒幕説」もあながち間違いではないとも思う。

重要なのは、現時点で確かなことはほとんどない状態にも関わらず、
憶測を真実として流すメディアが存在するということだ。


自分たちの都合の良いストーリーを作り上げて報道する。
このような情報機関が私たちの日々の生活に関わりの有る政治や経済の問題について
正しい知識を伝えてくれるだろうか?この点こそが私の関心事である。


なお、暗殺事件が焦点になることで、肝心のミサイル実験についての報道が疎かになりがちだ。
次回の記事では北朝鮮の核に対する姿勢、彼らの主張について紹介したいと思う。

金正男殺害について気になること

2017-02-15 23:12:30 | 北朝鮮
ミサイル実験について書こうと思った矢先に金正恩の異母兄にあたる金正男が暗殺されたが、
各メディアの報道について引っ掛かる点がいくつかある。



今回の暗殺で、私が真っ先に気になったのが、その殺害方法である。
NHKは北朝鮮工作員が持つとされる致死性の毒針入り懐中電灯やボールペンについて解説してくれたが、
仮に北朝鮮の工作員によるものならば、なぜそれらを使わず、遅効性の毒が含んだ布を凶器に選んだのだろうか?


次に、なぜ監視カメラがある空港で犯行に及んだのだろうか?
仮に暗殺するのであれば、より人気がない場所を選ぶはずである。


この点について国情院は
「北朝鮮の情報機関は金正恩氏が政権に就いた後、5年前から金正男氏の暗殺を試みていたが、
 この計画は中国当局のボディーガードによって阻止されていたものの、
 マレーシアの空港で殺人者にとって絶好のチャンスが現れたとの見方を示している。」

とコメントしている。

ところが、実際にはどうも金正男はボディーガードをつけていなかったようなのである。
(よく考えてみれば当然の話で、仮にボディーガードがいるのであれば、
 今回の暗殺にしても未然に防がれたはずだ。)



更に気になるのが殺害された時期である。2月16日は父親である金正日の生誕記念日で、慶事も行われる。
国内のムードが下がりかねないこのタイミングで、暗殺を謀ろうとするだろうか?



金正男本人が政治とは無縁の人間であったことも気になる。殺害するメリットがない。




そして、私が最も気になったのは、

なぜ監視カメラを見て、北朝鮮の工作員だとわかったのだろうか?

ということである。


https://jp.sputniknews.com/incidents/201702153345967/


問題の映像を見るだけでは、アジア系の女性だとわかるだけで他には何もわからない。
にも関わらず、北朝鮮の工作員だということにして話が進んでいる。



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TV朝鮮は14日、複数の韓国政府関係者の話を引用し
「金正男氏がマレーシアで北朝鮮の女スパイによって毒殺されたとみられる」と報じた。

 TV朝鮮によると、正男氏は13日午前9時、
マレーシア・クアラルンプール空港で2人の女によって毒針を刺されて死亡した。

容疑者の女2人は犯行直後、タクシーで逃走した。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/02/14/2017021403031.html?ent_rank_news

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実は、
「北朝鮮の工作員が金正男を殺した」「正男は数年前から命を狙われていた」等の情報は
韓国の情報機関、主に誤報とねつ造を繰り返す機関で有名な国情院から発信されたものなのだ。


要するに、韓国の情報機関の「見解」が純然たる「真実」に変換されて日韓で報道合戦が行われているのである。


この国情院は、かつてKCIAという名で軍事政権時代に
数多くの人間を拉致・拷問・拘禁してきたことで有名な暴力機関で、

最近でも大統領選で朴槿恵を勝たせるべくサイバーテロを行ったり、
統合進歩党と解党させるべく、クーデターを計画していたという証拠をねつ造したり、
数々の工作を行っており、北朝鮮に詳しい人間なら、ここ経由の情報は基本的に信用しない。

(故・金大中大統領を日本で拉致してきたのも、朴正煕を暗殺したのも、このKCIAである)


しかも、ここに来て、どうもベトナム国籍の女性の仕業であるらしいことがわかってきた。
すでに国情院の話(北朝鮮人の仕業)と現実の間にズレが生じている。



以上の点をまとめると、今回の事件は北朝鮮の工作員が用いる毒や殺害方法とは違う手段で、
政治的に影響がなく、もしかすると死亡すると中国と北朝鮮の仲が悪くなるかもしれない人物を
朴槿恵政権が風前の灯火となり、外敵の存在が必要になっているこのタイミングで殺したというもので、


それも、主に韓国版読売新聞(つまり保守系)である朝鮮日報と
証拠のねつ造と北朝鮮バッシングで有名な国情院の情報をそっくりそのまま
「新たに判明した事実」とみなして、日韓のメディアが報道しているのである。



誰が犯人で、どこの国の誰から指令を受けて行われたものか
はっきりしていないにも関わらず、北朝鮮の仕業だと断定して伝える。

その程度の無責任な姿勢でもジャーナリストを気取れるのであれば、私も以下の珍説を主張したい。


つまり、金正男は国情院が殺したのではないだろうか?


朴槿恵が国民から大ブーイングを受け、与党の求心力が損なわれているこのタイミングで
彼女ら反北・軍拡・強硬路線を正当化させるようなショッキングな事件が起きて、
もっとも得をするのは誰だろうか?言うまでもなく、韓国政府である。

そして、この事件についてどこよりも早く「情報」を提供しているのはどこだろうか?国情院である。


そして国情院の過去の実績。状況証拠的には
国情院が北朝鮮の印象を下げるために殺したほうがしっくりくる。

何よりも北朝鮮にとっては殺すまでもない(本国でもあまり有名ではない)人間だが、
韓国やアメリカにとっては暗殺されると非常に助かる人物が殺された事実。


当てずっぽうや決めつけで、全てを決めていいのなら、このような陰謀論もまかり通ってしまうだろう。


念を押すが、私は本気で韓国政府の仕業だと考えているわけではない。
私が言いたいのは「垂れ流しではなく、きちんと裏を取って報道してほしい」ということだ。


早速、日本のメディアでは金正男の聖人化に勤しんでいる。
曰く、金正男は気さくで社交的な人物だったが、金正恩は忍耐力がなく怒りっぽいとのことだ。

もはや報道ではなく、悪口でしかない。こんなので番組が作れるのかと驚いてしまった。


先の大統領選以降、「ポスト・トゥルース」という言葉が使われるようになったが、
本当のことなどどうでもいい、北朝鮮を悪魔化するのが肝心なのだといわんばかりの
ここ数日の北朝鮮報道には、一種の狂気すら感じる。


誰もがPCやスマートフォンを使う時代になったと言われてはいるが、
それでもまだ、特に高齢者は新聞やテレビを主な情報源としているし、
インターネットの情報にしたところで、その情報の元は新聞・テレビなどのマスメディアの記事になっている。


要するに、もっとも社会的責任を持つべき報道機関が、ろくに調べもせず、
韓国の情報機関の情報を鵜呑みにして「これぞ真実、北朝鮮は非道い国だ!」と連呼するこの状況に
私は凄まじさを感じるのである。


これが仮に在日米軍基地あるいは改憲の問題だとしたら、
安倍政権の言葉をそのまま垂れ流し、真実とする動きについて知識人は憤りを覚えたに違いない。

しかし、北朝鮮の場合は違う。むしろ、この社会的な扇動行為に対して異議を唱えるどころか、
逆に「その通りだ!北朝鮮は悪魔的国家だ!」と賛同するのではないだろうか?

少なくともこれまではそうだった。そしておそらく、これからもそうだろうと思う。
そして北朝鮮の脅威を理由に進行される軍拡と改憲に対して彼らは「戦争はんたーい!」と叫ぶのである。

今回の弾道ミサイル実験について

2017-02-12 23:09:03 | 北朝鮮
先にトランプの移民政策とオバマの移民政策との間の継続性について書くつもりだったが、
このサイトの特徴的にコメントしておいた方が良いかと思うので。


明日以降の朝鮮中央通信の記事を読まないときっちりした解は提示できないが、
とりあえず、今回の実験は、先月末から続いていた米韓合同軍事演習と、
先日、成功した日米のミサイル実験に対してのリアクションだと思われる。


北朝鮮がミサイル実験をする時は決まって、その前にアメリカの軍事演習や兵器実験が行われている。
その際、北朝鮮はあらかじめ演習および実験の延期を主張し、仮にされた場合は相応の反応を示すと警告する。

今回もいつものパターンであることが予想されよう
(ただし、北朝鮮側からのメッセージがないと何とも言えない)



韓国政府は自身たちの軍事演習がどういう結果をもたらすか予見していたようで、
先月から北朝鮮のミサイル実験が2月中旬にあるぞと喧伝していた。


これまでのパターンを見る限り、実験の準備には2週間ほど時間がかかるようなので、
先月末に合同軍事演習が行われたことを踏まえれば、恐らく逆算して発表したのだろう。


一連の流れを見ると、米日韓の軍拡トリオは「挑発」と呼ぶが、
実際にはミサイルが飛ぶのを計算あるいは期待した上で軍事演習を行ったわけで、
挑発を行ったのがどちらなのかは、火を見るよりも明らかだ。


この点についてスプートニク紙やParsToday紙は指摘するかもしれないが、
日本・韓国の新聞は、いつも通りの反応を示すと思う。



私はヒラリーではなくトランプが大統領に就任することで、
皮肉にもブッシュ・オバマ政権から続くアメリカの内外の者に対する排他的政策が
批判されることを期待していたのだが、恐らく明日以降、北朝鮮のバッシングと
日米同盟の強化、そして安倍・トランプ陣営結成の祝福を繰り返し繰り返し行うものだと予想される。



逆に、移民政策でトランプに対する批判が高まっているアメリカやEUのメディアの中には
米韓の強硬姿勢が北朝鮮のミサイル開発を誘発したと批判する記事は少なからずあるはずだ。


いずれにせよ、現状では情報が不足しているので、明日以降、いろいろ調べた上で記事に書こうと思う。