Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Luke Gibson

2007-01-28 | SSW
■Luke Gibson / Another Perfect Day■

 カナダを代表する吟遊詩人 Bruce Cockburn のレーベルとしてその名を知られているTrue North のなかでも特に人気の高い 1枚を取り上げます。 その主人公 Luke Gibson は、その後目立った活動がなかったせいもあってか、思い入れの強い熱心なファンが、特に 50歳以上のリアル世代の方に多いようです。 アルバムは 1971 年の作品ですので、僕自身はリアル派ではありませんが、このアルバムを熱く語る仕事関係の諸先輩や知り合いが多く、そんな方々から紹介されたのが、僕が Luke Gibson と出会うきっかけでした。 そして初めて手にしたときに、そのジャケットの魅力にも心を打たれた記憶があります。 さきほど、幼稚園に通う娘にも「素敵ね」と言われたのですが、よく見るとやや少女趣味な刺しゅうですね。

 アルバムをおさらいしてみます。 A面のオープニングを飾る「Virginia」は、控えめな演奏から次第に盛り上がっていく様の心地よさはフィドルのソロで頂点となります。 「Did You Ever」は、帰るところの無い男が独り言をつぶやくかのような小曲。 田舎くさいワルツ「Flow」を挟んで「All Day Rain」は、浮遊感の漂うナンバー。 地味なギターソロと女性コーラスが交差するあたりが聴き所です。

 B 面はとくに 4曲目までがお勧めです。 「Full Moon Rider」は、タイトルどおりのクールな疾走感のあるナンバー。 ポッピンなベースをはじめとするバック陣、Luke Gibson の抑制の効いたボーカルもあわせ、アルバムのハイライト的な存在です。 一転してゆったりしたワルツ「Lobo」は、やや冗長ですが、次第に盛り上げていきます。 つづく「Another Perfect Day」は単独の弾き語りですが、凛とした外の空気の冷たさと部屋の木の温もりが感じ取れるような名曲です。 さすが、アルバム・タイトル曲ですね。 「Angel」も、アコギとストリングスが主体となったこじんまりした楽曲ですが、頼りなげなボーカルとあいまって独特の感動を与えてくれます。 ラストの「See You Again」はオルガンの音色がスワンプテイストを与えており、Luke Gibson もいつになくシャウト気味の熱唱。 それほど違和感はないものの、フェードアウトが早すぎかなと聴くたびに思ってしまいます。 

 Luke Gibson はこのアルバムを発売する前に、Kensington Market というグループに所属しており、1960 年代に 2枚のアルバムを残しています。 この「Another Perfect Day」はソロに転向して唯一のアルバムかと思っていましたが、1972 年に「Killaloe」というアルバムが存在するらしいです。 長い間探していますが、未だに見かけたことすらありません。

 冒頭で書いた先輩 2名から Luke Gibson のことを教わったときに知ったのが、渋谷にあった伝説のロック喫茶「ブラックホーク」のことです。 ここでかかる良質の音楽の数々は、当時輸入盤店が少なかった当時は、「ブラックホーク」でしか聴くことのできないものも多く存在したとのこと。 そんなレコードを聴きに来る熱心な SSW ファンからのリクエストにフェアに対応するために、「ブラックホーク」ではカナダ・北米からスワンプ、そしてイギリス南部からトラッド系までというアルバムの分類による循環プレイルールが確立されていました。 これ以上詳しいことは、店自体に行ったことのない自分が書くのもおこがましいので、遠慮しますが、この店のことを知らない方がいたら、こちらのページを是非のぞいてみてください。
 デジタル化、インターネットの時代になって、何でも検索できる便利な時代になりました。 これは間違いなくいいことで、誰も止めることはできません。 自分も、こうしてネットを利用してブログを楽しんでいますし、インターネット経由で海外から購入したレコードもかなりの数になります。 
 ですが、今のように便利で何でも選択できる時代とは異なり、数少ない情報を得るために、多くの熱心な若者が「ブラックホーク」に通った時代があったのです。 携帯も PC も持っていない大学生が、音楽に聴き入り各自の感想を語り会う・・・ そんな光景は二度と戻ってはこないのですが、そんな時代の SSW ファンの熱心さや夢中さとかは今とは比較にならないほどだったのだろうと思います。 
 今から 10 年若返りたいと思うことはありませんが、あと 10 年いや 5年でも早く生まれていたかったと時々思ってしまうのは、もしそれが叶ったのなら、僕も「ブラックホーク」に漂着していたのかな、と夢想してしまうからなのです。 

 現実の僕は高校時代に、渋谷ではなく、吉祥寺の「赤毛とソバカス」にたどり着いていたのですが。

 

■Luke Gibson / Another Perfect Day■

Side-1
Virginia
Hotel
Windy Mountain
Did You Ever
Flow
All Day Rain

Side-2
Full Moon Rider
Lobo
Another Perfect Day
Angel
See You Again

All Songs Written by Luke Gibson
Recorded at Thunder Sound , Toronto
Produced by Eugene Martynec

True North TN6


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
赤毛とそばかすの常連でした (uncledog)
2007-02-04 18:13:59
MILKWOODさん

コメントありがとうございます。私は高校生の頃から赤毛とそばかすが大好きでよく通っていました。
ボズ・スキャッグスが新譜「ダウン・トゥ・ゼン・レフト」をリリースした時、ヘビーローテーションでかかっていたのを今でもよく覚えています。

ロック喫茶は新宿のローリング・ストーン、ニュー・サブマリン、国立のアップル、国分寺のセムイ、伽羅、荻窪ロフト、西荻窪ロフト、新宿ロフト、福生の家なき子等、本当に探しては行きましたね。今は懐かしい思い出です。最近はロック・カフェですね。

最近はシンガー・ソングライター、スワンプ、ブリティッシュ・フォーク、ブルース・ロック等に今再び夢中です。

では今後も良いアルバムをご紹介してください。
返信する
Unknown (MILKWOOD)
2007-02-01 23:01:10
beck さん、こんばんは。
「ブラックホーク」リアル世代なんですね。 実は、beck さんのブログを日頃から拝見していて、そうなのではないかと思っておりました。 音楽への愛情あふれる素敵なお店だったんでしょうね。 
返信する
Unknown (beck)
2007-01-29 20:32:34
伝説のロック喫茶「ブラックホーク」。頻繁にではなかったですが度々足を運んでいたので一応リアルタイム世代。後に松平さんがお店を辞められ原宿に開店したばかりの「OAK」に移られたのですが、ここにも何度か行ったことがあります。氏の略年譜を見ると、この頃が1977年ですか。随分と遠い昔の話ですが、ついこの前のような気もします。ネット時代の今と違って、あの頃は音楽と出会うのに自分の足と時間を随分とかけていましたねえ。その分、手軽な今の時代より音楽との関係がちょっとだけ密だったような気もします。あの時代が懐かしいです。
返信する

コメントを投稿