【シチュー】
「シチュー」は、野菜や肉、魚介類を出汁やソースで煮込んだ煮込み料理のことである。フランス料理のラグーにあたる。
『スープとの相違』
シチューとスープの線引きき明白でないが、基本的に素材が大きめに切られ、前菜ではなくメインディシュとして食べられるものを「シチュー」と呼ぶ。あるいはシチューの方が長時間弱火で煮込まれ、汁がより濃厚で、スープの場合よりも底の浅い器で供されるのが一般的とされる。
しかし、これらに当てはまらない例も多くある。多くは日本へ初めて紹介された時の名称が、そのまま用いられている。
『歴史』
日本へのシチューの伝来が何時かについて明確な記述はないが、すでに1871年、東京の「南海亭」のちらしに、「シチウ(牛・鶏うまに)」との品書きが見出されている。明治中頃までに「ビーフシチュー」はレストランのメニューに普及、1904年には旧帝国海軍・軍艦の昼・夕食として「煮込み」の名でシチュー・カレーが供されている。これはイギリス海軍との交流に端を発するとされている。明治末期にはシチューのレシピが上流階級向けの婦人雑誌に掲載されるようになった。しかし、本格的にシチューが全国に浸透したのは、太平洋戦争終結以後のことである。
『種類』
日本で一般的にシチューと呼ぶ場合、以下の二つを指すことが多い。いずれも小麦粉を炒めて作るルーが添加されたシチューの素を使うのが一般的である。
本来は、シチューはスープのようにパンと組み合わせて食べるのが一般的である。だか日本では、一般的にけんちん汁やすいとんのような豪華な汁物の洋風版という位置づけであり、家庭料理としてはご飯にかける食べ方も少なからず見受けられるほか、レストランや軽食店などで「シチュー丼」が愛されるなど日本独特の「汁かけ飯」文化のカテゴリー内で発展しつつある。海外では、米飯が一般的な地域でもご飯にかけて食べるという光景はほとんど見られないが、ピラフ状の米飯、もしくは塩や油脂を入れて炊いた米飯を付け合わせとして盛る事はある。
「ビーフシチュー」
赤ワインやトマトをベースに牛肉、ジャガイモ、ニンジン、セロリ、タマネギなどを、香味野菜を加えて煮込む。
日本では、明治初期には既に洋食レストランのメニューに取り入れられていた。この影響もあり、小麦粉とバターを炒めて作るブラウンルーを用いることが定番となっている。従って、ブラウンルーの対となるホワイトルーを用いて作るビーフシチューは極めて稀な存在であるといえる。
ビーフシチューの作り方は牛肉とタマネギ、ニンジンなどの野菜をブイヨンで長時間煮込み、塩、胡椒、トマトピューレ、ドミグラスソースなどで調味する。
用いられる肉の部材は脛やバラが多いが、タンを煮込んだものは特に「タンシチュー」と呼ばれ人気が高い。いずれも汁の量は少なめで、肉などの具材にボリュームがあり、スープのように汁を飲むことよりも具を食べることが主体となることが多い。
「クリームシュー」
ホワイトシチューとも呼ばれる。牛乳や生クリームをベースに肉(鶏肉が多い)、ジャガイモ、ニンジン、タマネギになどを加えて煮込む。好みでマッシュルームやキャベツ、コーン、ブロッコリー、グリーンビスなどを入れる。
日本においてはカレー粉などを加えることでカレーの風味を加えたカレーシチューが学校給食などで出される。かってはハウス食品などからカレーシチューの素が販売されたこともあった。
ビーフシチュー
クリームシチュー
タンシチュー
【アイリッシュシチュー】
「アイリッシュシチュー」は、アイルランドの料理である。
『概要』
アイルランドにおける伝統的な料理であり、家庭の数だけレシピがある。日本の肉ジャがに例えられることもある。
羊肉(マトン)の風味によく合う料理と言われ、子羊の肉(ラム)はあまり使用されない。
伝統的にはマトンか子ヤギの肉が使われるが、手に入りにくい場合は牛肉かラムで代用する。肉を牛にすると「ビーフシチュー」になり、牛肉を入れる場合はビールを入れて肉を柔らかくする。
『作り方』
角切りの羊肉(主に首肉がしようされる)、輪切りのタマネギ、ジャガイモ、香辛料としてタイム、パセリ、塩コショウとスープストックで煮たシチュー。切り分けた羊肉、タマネギ、ジャガイモを交互に重ね、弱火で煮込んで完成となる。
材利用は炒めず、ブイヨンやルウを加えずに煮込んで白く仕上げる点が特徴である。味付けは基本的に塩コショウでシンプルにされるが、家庭によっては牛乳を加えてクリームシチュー風にする場合もある。伝統的には、香辛料で風味と香りを付けたムラサキキャベツのマリネが付け合わせにされる。
アイリッシュシチューにニンジンを入れるかどうかについてはアイルランド人の間で意見が分かれている。また、カブに似た野菜であるターニップが具材に使われることもある。ニンジンやカブなど野菜は別茹でして皿に盛り付けるのが正式な食べ方とされているが、これらの野菜を別茹でするかについても意見が分かれる。