ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ドゥービー・ストリート (Takin' It To The Street)

2007年06月20日 | 名盤

 
 ドゥービー・ブラザーズの柱のひとり、トム・ジョンストンが病気のため緊急入院したのが1975年。
 とりあえずツアーのサポート・メンバーとして、元スティーリー・ダンのマイケル・マクドナルドが加わります。しかしトムは、退院後も療養が必要だったため、いったんグループを離れることになりました。その時にマイケルは、正式にメンバーとして加入したわけです。
 彼の参加によって、ドゥービーズは大きなターニング・ポイントを迎えます。
 
     
            
 
 
 従来のドゥービーズは、歯切れがよくて野性味あふれるギターを中心としたロックンロール・サウンドでしたが、マクドナルド参加後は、AOR的雰囲気の漂うアーバンな大人のロックへと大胆な変貌を遂げました。たったひとりのミュージシャンが加わっただけで、ここまでバンドのサウンドというのは大きく変われるものなんだ、と改めて思います。
 以後、トム・ジョンストンの代わりにソング・ライターとして曲も提供するマクドナルドの、バンドに占める位置は急速に大きなものになっていきます。
 そして発表されたのが、先日の音楽回顧録(by Nobさん)でも取り上げられていた、ドゥービーズ6枚目のアルバム、「ドゥービー・ストリート」です。


 さて、アルバムはパット・シモンズ、ジェフ・バクスター、ジョン・ハートマンの三人による共作「運命の轍」で幕を開けます。イントロのギターは典型的なドゥービー・サウンドです。しかしホーン・セクションの起用や、間奏部のエレクトリック・ピアノ・ソロなどからは確かにドゥービーズの新たな一面を感じ取ることができます。この「運命の轍」は、このアルバムからのセカンド・シングルとなってヒットしました。
 続く「ドゥービー・ストリート」がマイケル・マクドナルドのお披露目です。フュージョン色の濃いキーボード・サウンド、間奏のサックス・ソロ、グルーヴィーな16ビートなど、全てがソウルフル。この曲はこのアルバムから最初にシングル・カットされてヒットしました。


          

 
 3曲目「8番街のシャッフル」は、パット・シモンズの作だけあって、これも従来のドゥービーズ・カラーを濃く残していますが、洗練された都会的な響きが新生ドゥービーズらしく聴こえます。
 「ルージン・エンド」もマイケルの作。西海岸どころか、ニュー・ヨークのブルー・アイド・ソウルっぽい、従来のドゥービーズからは連想もできないような新しいサウンドを出しています。
 5曲目の「リオ」は、ラテン系のソウル・フュージョンとでも言ったらいいでしょうか。途中で聴かれるマリア・マルダーの声がセクシーに響きます。
 6曲目は、タイラン・ポーター作の「フォー・サムワン・スペシャル」。落ち着いた雰囲気で、哀愁の漂う大人の味があります。


 7曲目は、このアルバムからの3枚目のシングルとなった「イット・キープス・ユー・ランニン」です。シンセサイザーによるリフが印象的です。
 これに続くのが、トム・ジョンストンがこのアルバムに唯一参加している「ターン・イット・ルーズ」です。ドゥービーズらしい豪快なロックン・ロールです。
 ラストはマイケル作の「キャリー・ミー・アウェイ」。ソウルっぽさが斬新なポップ・ミュージックです。後半には4ビートにチェンジするなど、ユニークなサウンドが聴かれます。
 この中でぼくの好きな曲は、「運命の轍」「ドゥービー・ストリート」「リオ」「イット・キープス・ユー・ランニン」あたりでしょうか。
 

           
 
 
 トム・ジョンストンという大きな柱を失った代わりに、マイケル・マクドナルドという強力な、そして今までのグループから見ると異質のメンバーを加えることで、今までの作品には見られなかったライトなソウル・フィーリングが随所にちりばめられるようになりました。賛否両論あるようですが、ぼくは、全く別のバンド・サウンドとして聴けば、それはそれで悪くない、と思っています。
 いわば西海岸特有の空気と都会ニューヨークの味わいをミックスしたようなサウンドとなり、これによってドゥービーズは名実ともにアメリカを代表するグループに進化したと言えるかもしれません。



◆ドゥービー・ストリート/Takin' It to the Streets
  ■歌・演奏
    ドゥービー・ブラザーズ/The Doobie Brothers
  ■リリース
    1976年3月19日
  ■プロデュース
    テッド・テンプルマン/Ted Templeman
  ■録音メンバー
   [The Doobie Brothers]
    トム・ジョンストン/Tom Johnston (guitar, lead-vocals①⑧)
    パット・シモンズ/Patrick Simmons (guitar, lead-vocals①③⑤, vocals)
    ジェフ・バクスター/Jeff "Skunk" Baxter (guitar, steel-guitar)
    マイケル・マクドナルド/Michael McDonald (keyboards, synthesizers, lead-vocals②④⑦⑨, vocals)
    タイラン・ポーター/Tiran Porter (bass, vocals, lead-vocals⑥)
    ジョン・ハートマン/John Hartman (drums)
    キース・ヌードゥセン/Keith Knudsen (drums, vocals)
   [additional personnel]
    メンフィス・ホーンズ/The Memphis Horns
      ウェイン・ジャクソン/WayneJackson (trumpet)
      アンドリュー・ラヴ/Andrew Love (tenor-sax)
      ジェームズ・ミッチェル/James Mitchell (baritone-sax)
      ルイス・コリンズ/Lewis Collins (tenor-sax)
      ジャック・ヘイル/Jack Hale (trombone)
    ボビー・ラカインド/Bobby LaKind (congas)
    リッチー・ヘイワード/Richie Hayward (drums with John①)
    ノヴィ・ノヴォグ/Novi Novog (viola④)
    ジェシー・バトラー/Jesse Butler (organ②)
    マリア・マルダー/Maria Muldaur (vocal⑤)
    テッド・テンプルマン/Ted Templeman (percussion)
  ■収録曲
   [side-A]
    ① 運命の轍/Wheels of Fortune (Simmons, Baxter, Hartman) ☆(全米87位)
    ② ドゥービー・ッストリート/Takin' It to the Streets (McDonald)  ☆(全米13位)
    ③ 8番街のシャッフル/8th Avenue Shuffle (Simmons)
    ④ ルージン・エンド/Losin' End (McDonald)
   [side-B]
    ⑤ リオ/Rio (Simmons, Baxter)
    ⑥ サムワン・スペシャル/For Someone Special (Porter)
    ⑦ イット・キープス・ユー・ランニン/It Keeps You Runnin' (McDonald) ☆(全米37位)
    ⑧ ターン・イット・ルーズ/Turn It Loose (Johnston)
    ⑨ キャリー・ミー・アウェイ/Carry Me Away (Simmons, Baxter)
    ☆=シングル・カット
  ■チャート最高位
    1976年週間チャート  アメリカ(ビルボード)8位
    1976年年間チャート  アメリカ(ビルボード)39位



コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする