ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ポール・マッカートニー (Paul McCartney)

2006年05月31日 | ミュージシャン
♪お気に入りアーティスト52


 ちょっとした勢いで、ポール・マッカートニーのベスト・アルバム『夢の翼 ~ヒッツ&ヒストリー(Wingspan)』を買ってみました。
 ビートルズ解散以降のポールのヒット・ナンバー19曲と、ポール自身がセレクトした22曲の、2枚組CDです。
 ビートルズ時代を含めて、ポールの作品は今までに何度も何度も繰り返して聴いてきたので、多少飽きがきたかもしれないと思っていたのに、こうして年月をおいて聴き返してみると、やっぱりカッコよく聴こえます。改めて、ポールの曲は素晴らしいものばかりだということを再認識しました。


     
     『夢の翼 ~ヒッツ&ヒストリー』
     (Wingspan Paul McCartney Hits And History)


     




 言うまでもないことですが、ポールは本当に優れたメロディー・メイカーですね。彼の書くメロディー・ラインは、起伏に富んでいて、非常に美しいものばかりです。
 そしてポールの作品には、聴き手が思わずハッとさせられるような、効果的な「仕掛け」が多いですね。曲の中にシャレっ気と遊び心にあふれているのがよく分かります。サービス精神旺盛なポールのことですから、リスナーを思い切り楽しませようとしてくれていることの表れなのかもしれません。


     


 ぼくは、ポールの作曲能力は、20世紀に現れたポピュラー音楽界の数多い作曲者の中でも10指に入るんではなかろうか、なんて勝手に思っているのです。
 バラードには、品の良いほどよい甘さと、センチメンタルなムードが湛えられています。 
 ハードな曲では、R&RやR&Bをルーツとしているのがよく分かるノリの良さがあります。
 アコースティックなフォーク調の曲では、ほんのりとした温かみがあります。
 また、曲にクラシカルな味付けを施すこともしばしばです。
 そして、これだけ多様な曲を書いても、「ポールの色」が損なわれることはありません。


     


 ベーシストとしては、メロディックなベース・ランニングとノリのいいプレイには定評のあるところだし、ベース以外にも、ギター、ドラムス、ピアノなどをこなして、マルチ・プレーヤーぶりを発揮しています。
 また、ヴォーカリストとしても超一流ですね。
 甘いバラードからヘヴィなハード・ロック、ブルージーなナンバーまで幅広く歌い上げています。とくにぼくが好きなのは、ビートルズ時代の「オー!ダーリン」です。この曲の物凄いシャウトで、ぼくは「ヴォーカリスト・ポール」のファンになってしまったんです。


     


 成功を手中に収めても、それに固執して保守的になってしまうことはなく、いつも新しいスタイル、新しいツールを積極的に取り入れようとしてみる貪欲さも伺えます。好奇心が旺盛で、つねにクリエイティヴなのでしょうね。


 ポールの作品の根底には、聴き手を明るく、ハッピーにさせる何かがいつも流れているような気がします。聴いているうちに、部屋がポカポカと暖かくなってくるような錯覚に陥るほどです。


     


 ぼくの好きなポールの作品は、ビートルズ時代は別にすると、
 「あの娘におせっかい」、「レット・ミー・ロール・イット」、「グッドナイト・トゥナイト」、「バンド・オン・ザ・ラン」、「ジェット」、「ハイ・ハイ・ハイ」、「ヴィーナス&マース~ロックショウ」、「メイビー・アイム・アメイズド」・・・、きりがないですね。(^^;)


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5月27日 京都・東山方面

2006年05月29日 | 写真
♪清水寺の「本堂・舞台」。いわゆる「清水の舞台」ですね。


 『コジカナツル』のライヴを堪能した5月26日。
 せっかくの京都なので、翌27日は東山方面を一巡りしてきました。


■八坂神社
 日本三大祭のひとつ、「祇園祭」の舞台として有名です。
 神社内にある「美御前社」は美の神様です。

     

     



■知恩院
 浄土宗の総本山。法然上人はここで念仏の道場の基礎を築きました。その後、豊臣秀吉や徳川家康の庇護を受けて、現在の大伽藍が完成しました。広大な寺域には大小100以上の伽藍が建ち並んでいます。

     
     知恩院南門


     
     1621年建造の国宝・三門。
     日本に現存する木造建築としては最大規模の楼門。


     
     左は国宝・御影堂。法然上人の御影が祀られています。




■建仁寺
 日本最古の禅寺で、臨済宗建仁寺派の大本山です。1202年開創。開山は栄西禅師、開基は源頼家です。

     


     


     
     法堂天井画『双龍図』。小泉淳作画伯・筆。(2002年)


     
     法堂(はっとう)。1765年上棟。
     正面須弥壇には本尊釈迦如来が祀られています。

     
     国宝『風神雷神図』。俵屋宗達・筆。これはレプリカだそうです。




■八坂の塔
 霊応山法観寺と号し、建仁寺派に属しています。「八坂の塔」は通称です。
 598年、聖徳太子が夢のお告げによって五重の塔を建て、仏舎利三粒を納めました。重要文化財のこの五重の塔の高さは、46メートルです。
 1436年に炎上し、1440年に室町幕府六代将軍・足利義教により再建され、現在に至っています。


     
     八坂通から八坂の塔を臨む。
     手前左の「信八」で昼食をとりました。


     


     
     敷地内にある源義仲(木曽義仲)の首塚。




■清水寺
 778年開創。夢のお告げを受けた延鎮上人が草庵を建てたことに始まります。その後、坂上田村麻呂が仏殿を建立、本尊の十一面千手観音を安置しました。


     


     
     国宝・「本堂・舞台」。世界遺産でもあります。


     


     
     「清水の舞台」から音羽の滝(右下)を臨む。




 そのほか、三十三間堂や、銀閣寺、平安神宮など、まだまだ行ってみたいところはあったのですが、時間の関係で今回は惜しくも断念しました。
 また改めて京都に行き、今度はじっくり名刹・古刹を堪能したいと思います。


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コジカナツル Live At RAG

2006年05月28日 | ライブ
♪超満員のRAG店内△


 行ってきました、京都RAG。
 5月26日(金)、『コジカナツル』のライヴです。
 熱い。濃い。激しい。超盛り上がりのRAGの夜でした。
 メンバーはいつもの
 小島良喜(piano)
 金澤英明(bass)
 鶴谷智生(drums)
 の3人に加え、日野皓正グループや自己のグループ『The MOST』で活躍するサックス奏者・多田誠司と、『フライド・プライド』のヴォーカリスト・SHIHO嬢のふたりがゲストに加わるという豪華ラインナップです。


 コジカナツルの3人だけのステージを見たいのが半分、多田誠司とSHIHOが加わるとどうサウンドが変化するのか聴いてみたいのが半分でした。
 しかし、誰がゲストに加わろうと、コジカナツルはコジカナツルでした。そしてコジカナツルの3人に一歩もひけをとらない多田誠司、SHIHOのふたりのアツいハートと存在感にも驚き、興奮し、満足しました。


     
     RAGのステージ周り


 この夜のステージは、のっけから多田誠司を加えた4人でスタートし、中盤からSHIHO嬢が加わって加速するという、休憩なしの1ステージ・約2時間半の長丁場のハードなものでした。
 最初の一音から怒涛のように押し寄せてきたブ厚い音の波をどう表現したらいいのでしょう。超満員の聴衆があっという間に彼らの音に呑まれ、彼らの世界にどっぷり浸ることを楽しんでいるのがわかります。


 ハードな8ビート・ロック風の「Solution」でライヴはスタートします。これに続いて演奏されたのが、超アップ・テンポで疾走する「Cantaloupe Island」。この2曲で客席は一気にハイ・テンションに。


 その日によってどう変化するのかわからないという、奥行きの深いサウンドの化学反応がこの夜も派手に起こっています。ライブの音を聴くと、CDでのコジカナツルの音は、完成品でありながらもなおかつそこからどう発展するかわからない大きな可能性を秘めているのかがよく分かります。
 誰かが仕掛けると誰かがそれに乗っかってどんどん曲を発展させてゆきます。しかし太い「サウンドの源」みたいなところは揺らぐことがありません。この発展と安定のバランスの妙も、彼らの素晴らしい点のひとつであります。


     
     小島良喜(pf)とSHIHO(vo) (写真提供 『ひげ』さん)


 SHIHO嬢が加わった中盤以降はさらにヒートアップ。手拍子とパーカッションだけのイントロで始まる「マイ・フェイヴァリット・シングス」を皮切りに、井上陽水の名曲をカヴァーしたフライド・プライドの新曲「リバーサイド・ホテル」などを歌い上げる彼女は、聴き手のハートをしっかり掴んでゆきます。そして「イン・ア・メロウ・トーン」や「今夜教えて」などの、コジカナツルがレパートリーとするジャズのスタンダードをSHIHO流に料理して聴き手のぼくらに差し出してくれるのです。これが旨くて個性的ときているから、もうたまらない。
 「今夜教えて」では、なんとSHIHO嬢とサックスの多田氏とスキャットの掛け合いが演じられ、大ウケ。しかも多田氏のスキャットがSHIHO嬢を食うぐらいまでに勢いづいてしまい、客席も大喝采です。


 曲を追うごとに熱さを増すコジカナツル+多田誠司。そして、独特のハスキー・ヴォイスで、フェイクにスキャットにロングトーンにと、自在に喉を操るSHIHO嬢のヴォーカルの凄さ。客席は沸きに沸いています。これだけのバンドを自在に従えるSHIHO嬢の実力、逆に、それだけの実力を持つSHIHOを自在に歌わせるバンドの実力、どちらにも瞠目させられるばかりです。そしてその相乗効果は凄まじい音の洪水となって、客席をノック・アウトするのです。


【セット・リスト】
1.Solution(コジカナツル)
2.Cantaloupe Island(コジカナツル)
3.Yossy's Delight(コジカナツル)
4."F"(コジカナツル)
5.My Favorite Things(ジャズ・スタンダード)
6.(Unknown Blues)
7.リバーサイド・ホテル(井上陽水/フライド・プライド)
8.Sophisticated Lady(ジャズ・スタンダード)
9.In A Mellow Tone(ジャズ・スタンダード/コジカナツル)
10.Teach Me Tonight(ジャズ・スタンダード/コジカナツル)
11.Street Life(クルセイダース)
12.Close To You(カーペンターズ)


 ヤンチャな5人のヤンチャなステージは、割れんばかりの大拍手に迎えられて終わりを告げました。
 客席のどの顔を見ても満足した表情ばかりです。その中にぼくもいることができたのは、とても幸せでした。
 打ち上げにも同席させて頂き、久しぶりに金澤氏とも話すことができたのも感激度が増す理由のひとつでした。
 こうして熱い5月の京都の夜はふけていったのでした。


     
     5人のサイン入りCD内ジャケットとチケット


 コジカナツルのライヴを目の当たりにした人たちはみな、「早く4枚目のアルバムが聴きたい」というちょっとぜいたくなお願いを胸に秘めていることでしょう。


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ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード

2006年05月26日 | 名盤
♪自分的名盤名曲105


 今夜は久しぶりにジャズのライブを聴きに出かけるので、昨夜からいろいろとジャズのCDを聴いているうちに、いつしかコルトレーンのこのアルバムを繰り返して聴いていました。


     
■ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード
 [Coltrane "Live" At The Village Vanguard]

■録音…1961年11月
☆ジョン・コルトレーン(ts,ss)
☆エリック・ドルフィー(bass-cl ①)
☆マッコイ・タイナー(pf ①②)
☆レジー・ワークマン(b)
☆エルヴィン・ジョーンズ(drs)


 ジャズの醍醐味はライヴにあるということを再認識させてくれるアルバムだと思います。
 コルトレーンを中心としたバンドの熱気の高まりが、聴いているこちら側をいやがうえにも興奮させてくれます。CDを聴いてこうなんだから、実際にライヴ・ハウスにいたら、どれだけ興奮し、熱狂するでしょう。


     


 エリック・ドルフィーを交えたクァルテットで演奏される「スピリチュアル」は、黒人霊歌をモチーフにした曲だそうです。モーダルなこの曲、粘っこいジャズ・ワルツで静かに演奏されるのですが、静謐感の中にも、タイトル通りのスピリチュアルなエネルギーが燃え続けるのを感じ取ることができます。
 2曲目はスタンダードの「朝日のごとくさわやかに」。
 コルトレーンが登場するまでは、「マッコイ・タイナー・トリオ」での演奏です。まさに「朝日」のような、クールでしかも力強い演奏が繰り広げられています。コルトレーンのソプラノが入ると、一気にバンドのテンションが高まります。とてもスウィンギーな演奏です。


 3曲目の、ピアノレス・トリオでコルトレーンが吹きまくる「チェイシン・ザ・トレーン」は、コルトレーンの本領発揮、という感じがします。この演奏、後年スピリチュアルな方面へ傾いてゆくコルトレーンを彷彿とさせる、官能的で、熱くて、激しいものです。ただただ自分の音楽を追求してゆこうとする真摯な姿勢を、まざまざと見せ付けられるような気がします。


     


 夜中に聴いていると、コルトレーンの放出する異様なエネルギーに引き込まれてゆくのを実感します。
 昼間でも、聴いているうちに、自分のいる部屋だけが真夜中になったかのような錯覚に陥ります。なんとも不思議なエネルギーを持ったアルバムです。


 夜中から濃いジャズ・アルバムに浸ったので、自分の中もジャズ・モードに切り替わったようです。この高まりのまま、今夜のライヴを楽しんでくることにします。


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同じものがもうひとつ

2006年05月25日 | 随想録

♪柳家小三治師匠△
 

 今日は通院日。
 天気がいいと気分も良くて、朝一番にフットワークも軽く病院へ。
 といっても楽しい気分で病院へ行っというわけじゃないんですけどね。早めに用事を済ませて、あと本屋さんとかCD屋さんなんかをひやかしに行こうと思ったのです。


 予定どおり、早めに診察が終わったので、10時過ぎには開店間もない本屋さんに直行。平日の午前中、まだあまりひと気のない店内でゆっくり落ち着いて品定めできるのはいいもんです。
 今日ふと目にとまったのは、柳家小三治さんの「ま・く・ら」。講談社文庫です。タイトルから察しがつく通り、落語のイントロである「枕」を一冊にまとめたものです。これ、面白そうじゃないですか!(・∀・)
 最初のほうをパラパラとめくって見ます。


 「・・・ホテルでもって氷を頼んだんですね。そしたら、トントンってしばらくしてから叩くやつがいたから、誰だろうなと思ったら、表で『アイス・マン、アイス・マン』って言ってるってぇんですよ(笑)。そいで、何か悪いことしたのかしら? という、ただ、それだけのことでございましてね(笑)
 ─(中略)─ いま考えてみると、氷持ったやつが、「あいすまん」なんて言うわけがない(笑)。だから、とんでもねぇガセネタだったんでございますね、これは(笑)・・・(『ニューヨークひとりある記』より)」


 あ、この話、テレビで見た小三治師匠の舞台で聞いたことあるある。やっぱり噺家の人が持ってるネタって、読んでも面白いのが多いね~、なんてことを思いながら、その本を手に持ったまますぐにレジへと向かいます。週末、ちょっと遠出をするので、新幹線の中ででも読めそうだな、と。


 家に帰ってざっとページをめくってみました。
 どうもおかしい。なんとなくだけど、どこかがおかしい。
 ふ~む、知ってる話ばかり書かれているような気がする・・・、と思った瞬間、ようやく頭の中に豆電球が灯りました。ほら、よくマンガにあるみたいに。
 ドタドタドタッと本棚のある部屋に駆け込んで、えーと「柳家小三治著 ま・く・ら、ま・く・ら、、、と、あ~! あった~(゜Д゜;)・・・ (T-T) 」
 テレビで見たから話を覚えてたんじゃありません。
 前に一度読んでたから覚えてたんでした。(;´Д`)


     


 時々やるんですよ、同じ本をもう一度買ってきたり、同じCDをもう一枚買ってきたり・・・。トシなのでしょうか
 あ~あ、なんだかガッカリ。
 こんなことじゃ「ま・く・ら」じゃなくて「お先まっくら」だよ~(オオゲサですね、ワハハ
 お粗末さまでした(*´∀`*)


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ユーライア・ヒープ (Uriah Heep)

2006年05月24日 | ミュージシャン
♪お気に入りアーティスト51


 ユーライア・ヒープ。
 1969年のデビュー以来、今年で実働38年目(!)。未だに現役でハード・ロックを追求し続けている長寿バンドです。
 解散の危機は何度もあったようですが、唯一のオリジナル・メンバーであるミック・ボックス(g)が、必死でバンドを維持し続けて今に至っています。
 永遠の不良はストーンズだけじゃない、って感じですね。


     


 レッド・ツェッペリンとディープ・パープルがブリティッシュ・ハード・ロックの双璧として君臨していた頃、それに続く位置にいたバンドが、ブラック・サバスや、ユーライア・ヒープでした。
 ぼくは、ハード・ロック・バンド特有のハッタリの多い言動があまり好きではなかったので、それらをやや敬遠していたんです。でも、そのうちクィーンやエアロスミスなどの新興バンドのレコードをよく聴くようになってからハード・ロックに対する「聴かず嫌い」がだんだん消えてゆきました。


 その頃、仲の良かった地元のレコード店の店員さんたちが作っていたロック・バンドが、このユーライア・ヒープの曲をレパートリーにしていたんですが、これがぼくがユーライア・ヒープを聴き始めたきっかけになったんじゃなかったかなあ。リアル・タイムで聴いたわけではなかったのですが、このユーライア・ヒープというバンド、ぼくにとってはけっこう衝撃的でした。
 最初に聴いた曲が「七月の朝」。この1曲でいっぺんにヒープにマイってしまった感じです。10分30秒以上の大作なんですが、メロディー、構成、アレンジの全てがカッコ良く感じられたんです。
 なかでも間奏のオルガン・ソロが好きで、それをコピーして、レコードに合わせて弾いて遊んでいましたね。


     


 ユーライア・ヒープの特徴は、まず曲がメロディアスなことでしょうか。ヨーロッパのバンド特有の暗くて重々しい曲調のものが多いのですが、メロディーは親しみやすい曲が多いのです。構成もドラマティックでカッコ良い。そしてクラシカルな雰囲気の重厚なコーラスと、ヴォーカリストのデヴィッド・バイロンのハイ・トーン・ヴォイス。そしてケン・ヘンズレーの弾くハモンド・オルガンを前面に押し出したヘヴィなサウンド、といったところです。
 ただ、変わっているというか、ユニークなのは、ハード・ロック・バンドでありながらギター・ソロがあまりないところでしょう。逆に言うと、オルガンがサウンドの重要な柱だったということが言えるのでしょうね。


     


 ぼくの思い入れが強いのは、デビューから、ヴォーカリストのデヴィッド・バイロンが脱退した1976年までのユーライア・ヒープです。この頃のメンバー、バイロン(vo)、ミック・ボックス(g)、ケン・ヘンズレー(keyb,g)、ゲイリー・セイン(b)、リー・カースレイク(drs)のラインナップが、自分の中でのヒープのベスト・メンバーです。
 この頃のユーライア・ヒープの曲でぼくが好きなのは、
 「ジプシー」「レイン」「安息の日々」「魔法使い」「スウィート・ロレイン」「連帯」「サンライズ」「幻想への回帰」などです。
 ライヴで聴くことのできる「ロックン・ロール・メドレー」も、とてもカッコ良いものでした。
 初期のヒープはブラック・マジック(黒魔術)のイメージを積極的に曲に持ち込んでいたので、タイトルには「魔法」とか「悪魔」などの文字が目立ちますね。


    
 『対自核』(1971年)        『悪魔と魔法使い』(1972年)


    
 『魔の饗宴』(1972年)      『ユーライア・ヒープ・ライヴ』(1973年)



 ユーライア・ヒープはメンバー・チェンジがとてもひんぱんです。
 1980年にサウンドの一方の柱であるケン・ヘンズレー(keyb,g)が脱退してからは長い低迷期に入り、一時はバンドは解散状態になったこともありましたが、ただひとり残っていたオリジナル・メンバーのミック・ボックス(g)がバンドを維持させるために奮闘を続け、1980年代後半にはついにメジャー・シーンへの復活を果たします。
 その後はメンバーも固定していて、サウンド的にも円熟したハード・ロックを演奏し続けています。


     
     現在のユーライア・ヒープ


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クリムゾン・キングの宮殿 (In The Court Of The Crimson King)

2006年05月23日 | 名盤

♪自分的名盤名曲104


 「クリムゾン・キングの宮殿」は、豪奢で、華やかで、着飾った人々のための『宮殿』ではないと思う。現実に苦悩する者、自分を見失っている者、未来に怖れを抱いている者たちのための『宮殿』ではないだろうか。
 観念的で難解な歌詞や、一種の毒と狂気の感じられる曲群などは、現代音楽にも通ずるような深遠な楽想に満ちている。


     
     キング・クリムゾン

 
 「21世紀の精神異常者」というタイトルの曲が、この『宮殿』の入り口だ。
 ロバート・フリップのかき鳴らすヘヴィなギターやフリーキーなイアン・マクドナルドのサックスに乗せて歌われる、エフェクターによって歪められたグレッグ・レイクの迫力あるヴォーカルがたいへん印象的だ。
 一転してアコースティックに奏でられる「風に語りて」は、いわば『宮殿の中庭』だろうか。イアンの演奏するサックスとフルートと、グレッグのヴォーカルの会話が、『中庭』をそよいでいる風のようでもある。
 土着フォーク風の幻想的な「ムーン・チャイルド」は『宮殿の夜』だ。奇妙な静けさをたたえた、異界への扉のような雰囲気を持っている。
 「エピタフ」と「クリムゾン・キングの宮殿」はメロトロンが大活躍する叙情的な大作だ。とくに、アルバムの最後を飾る「クリムゾン・キングの宮殿」は、いわば『宮殿の大広間』とも言えるスケールの大きな曲である。


     


 このアルバムにおける楽想は、とてもドラマティックだ。クラシカルでもあり、フリー・ジャズや現代音楽にも通じる奥深さ、広がりがある。これを音で表現しきったキング・クリムゾンの音楽的な器の大きさにはただ驚かされるばかりだ。
 ロバート・フリップのアイデアも素晴らしいが、これをサウンド化するにあたっては、キーボード、メロトロン、管楽器を操るイアン・マクドナルドと、グレッグ・レイクのヴォーカルの果たした役割は非常に大きいと思う。


     
     ロバート・フリップ(guitar)


 異様なアルバム・ジャケットも強烈なインパクトを放っている。このジャケットを描いたバリー・ゴッドバー氏は、この時まだ24歳。しかし、アルバム完成からわずか4ヵ月後には亡くなったそうである。


 このアルバムについては、すでに多くの人によって語られているが、まさに1960年代の終わりを飾るにふさわしい名盤にして、ロック界を代表する作品のひとつだと思う。


     


       


 さて、このアルバムの作品自体とはあまり関係がないことだが、最近、1曲目の「21世紀の精神異常者」の表記が、「21世紀のスキッツォイドマン」に改められている。しかし、果たしてこの表記の変更に意味はあるのだろうか。「不適切な表現」というのがその表記の変更の理由らしいのだが、そもそもこの曲のタイトルは、決して精神疾患の人に対する差別などではない。「スキッツォイドマン」の意味自体を考えると、なんとも無意味でバカバカしい言葉狩りだと思う。



クリムゾン・キングの宮殿/In The Court Of The Crimson King
  ■歌・演奏
    キング・クリムゾン/King Crimson
  ■リリース   
    1969年10月10日
  ■プロデュース   
    キング・クリムゾン/King Crimson
  ■録音メンバー   
   【キング・クリムゾン】    
    ロバート・フリップ/Robert Fripp (electric-guitar, acoustic-guitar)    
    イアン・マクドナルド/Ian McDonald (piano, organ, mellotron, harpsichord, sax, flute, clarinet, bass-clarinet, vibraphone, backing-vocals)    
    グレッグ・レイク/Greg Lake (lead-vocal, bass)    
    マイケル・ジャイルズ/Michael Giles (drums, percussion, Backing-vocal, organ⑤)    
    ピート・シンフィールド/Pete Sinfield (words, illuminaton, lyrics)
  ■収録曲
   A① 21世紀の精神異常者(インクルーディング : ミラーズ)/21st Century Schizoid Man including Mirrors
      (Fripp, McDonald, Lake, Giles & Sinfield)
    ② 風に語りて/I Talk To The Wind
      (McDonald & Sinfield)
    ③ エピタフ(墓碑銘)
      (a) 理由なき行進  (b) 明日又明日/Epitaph including : (a) March For No Reason  (b) Tomorrow And Tomorrow
      (Fripp, Lake, McDonald, Giles & Sinfield)
   B④ ムーン・チャイルド
      (a) ドリーム  (b) 幻想/Moon Child including : (a) The Dream  (b) The Illusion
      (Fripp, McDonald, Lake, Giles & Sinfield)
    ⑤ クリムゾン・キングの宮殿
      (a) 帰って来た魔女  (b) あやつり人形の踊り/The Court Of The Crimson King including : (a) The Return Of The Fire Witch  (b) The Dance Of The Puppets
      (McDonald & Sinfield)
  ■チャート最高位
    週間チャート  アメリカ(ビルボード)28位、イギリス5位 




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彩 (Aja) 

2006年05月21日 | 名盤


 ここのところ天気がすっきりしない日が続いたりしていましたが、それでも今日のような晴れ渡った5月の朝の気持ち良さは格別です。
 こんな朝は何を聴こうかなんて、ちょっとぜいたくに悩んだりしてしまうんだけど、今日一番にCDのトレイに乗せたのは、スティーリー・ダンの「彩(エイジャ)」です。


     ・


 1曲目のベースとドラムのコンビネーションが響いただけで、西海岸の持つ明るさが部屋の中に満たされたような気がします。
 西海岸の明るさと、都会的なクールなムードが同居したようなサウンドは、静かな朝の涼やかでまぶしい空気にとてもよく溶け込んでいます。
 いつの間にか、コーヒーを入れる手つきまで、ちょっとリズミカルになったりしてるんです。


       
     ドナルド・フェイゲン                 ウォルター・ベッカー
 
 
 このアルバムは、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーのふたりになったスティーリー・ダンが、彼らの理想とする音をとことん追求したものらしく、実際、招かれたミュージシャンも腕利きばかり。この豪華なバック・ミュージシャンが、曲の意図を見事に消化して、1曲1曲の完成度を高めていますね。
 とくに耳につくのがチャック・レイニーのセンスの良いベース。ジョー・サンプルのピアノやトム・スコットのサックスもクールでいいですね。
 またほとんど曲ごとにドラマーを替えているあたりが、リズム・ワークに対するさまざまなアプローチを表しているようでもあります。
 

       

     
 
 
 このアルバムは、ウエスト・コースト・ロックをフュージョンのフィルターにかけたような、というか、ロック、ジャズ、ポップス、ソウルが見事にクロスオーヴァーしたサウンドが満載です。
 アルバムを通して聴いた時の曲群のバランスも絶妙で、選り抜いたような精度の高い音と、計算しつくしたかのような緻密なサウンドが展開されています。
 インテリジェンスあふれる雰囲気だけど、それが鼻につくことはないんですよね。


 ジャケット写真は日本人の藤井秀樹氏が、当時世界的なモデルだった山口小夜子氏を起用して撮影しています。


 クールで、張り詰めていて、そしてこんな洒落たサウンドを朝から浴びると、今日の一日を「いい日」にしよう、という楽しい欲が出てくるのが不思議です。



◆彩(エイジャ)/Aja
  
■歌・演奏
    スティーリー・ダン/Steely Dann
  ■リリース
    1977年9月23日
  ■プロデュース
    ゲイリー・カッツ/Gary Katz
  ■収録曲
    A1 ブラック・カウ/Black Cow
     2 彩(エイジャ)/Aja
     3 ディーコン・ブルース/Deacon Blues  ☆ビルボード19位
    B4 ペグ/Peg  ☆ビルボード11位
     5 安らぎの家/Home at Last
     6 アイ・ガット・ザ・ニュース/I Got the News
     7 ジョージー/Josie  ☆ビルボード26位
     ※ All songs written by Walter Becker & Donald Fagen
     ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
   【steely dan】
    ドナルド・フェイゲン/Donald Fagen (lead-vocal, synthesizer, police-whistle②, backing-vocals②⑤⑦)  
    ウォルター・ベッカー/Walter Becker (guitar②, bass③, guitar-solo⑤⑥⑦)
   【guests】
    ヴィクター・フェルドマン/Victor Feldman (Electric-piano①③⑦, vibraphone⑤⑥, piano⑤⑥, percussion②④)
    ジョー・サンプル/Joe Sample (Electric-piano②, clavinet①)
    ポール・グリフィン/Paul Griffin (Electric-piano④, backing-vocal④)
    ドン・グロルニック/Don Grolnick (clavinet④)
    ラリー・カールトン/Larry Carlton (guitar①②③⑤⑦, guitar-solo⑥)
    リー・リトナー/Lee Ritenour (guitar③)
    ディーン・パークス/Dean Parks (guitar③⑥⑦)
    スティーヴ・カーン/Steve Khan (guitar④)
    デニー・ダイアス/Denny Dias (guitar②)
    ジェイ・グレイドン/Jay Graydon (guitar-solo④)
    チャック・レイニー/Chuck Rainy (bass①②④⑤⑥⑦)
    ポール・ハンフリー/Paul Humphrey (drums①)
    リック・マロッタ/Rick Marotta (drums④)
    エド・グリーン/Ed Greene (drums⑥)
    スティーヴ・ガッド/Steve Gadd (drums②)
    バーナード・パーディ/Bernard Purdie (drums③⑤)
    ジム・ケルトナー/Jim Keltner (drums, percussion⑦)
    ゲイリー・B.B. コールマン/Gary B.B. Coleman (percussion④)
    トム・スコット/Tom Scott (tenor-sax①, lyricon④)
    ウェイン・ショーター/Wayne Shorter (tenor-sax②)
    ピート・クリストリーブ/Pete Christlieb (tenor-sax③)
    ジム・ホーン/Jim Horn (sax, flute)
    ビル・パーキンス/Bill Perkins (sax, flute)
    プラス・ジョンソン/Plas Johnson (sax, flute)
    ジャッキー・ケルソ/Jackie Kelso (sax, flute)
    チャック・フィントリー/Chuck Findley (brass)
    ルー・マックリアリー/Lou McCreary (brass)
    スライド・ハイド/Slyde Hyde (brass)
    マイケル・マクドナルド/Michael McDonald (backing-vocals④⑥)
    ティモシー・シュミット/Timothy B. Schmit (backing-vocals②⑤⑦)
    クライディー・キング/Clydie King (backing-vocals①③⑥)
    シャーリー・マシューズ/Sherlie Matthews (backing-vocals①③⑥)
    ヴェネッタ・フィールズ/Venetta Fields (backing-vocals①③⑥)
    レベッカ・ルイス/Rebecca Louis (backing-vocals①⑥)
  ■チャート最高位
    1977年週間チャート  アメリカ(ビルボード)3位、イギリス5位
    1978年年間チャート  アメリカ(ビルボード)5位


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朝のひととき

2006年05月20日 | 随想録

♪今朝の空。ほどよい涼しさが気持ちいい。


 今朝はいったん5時半頃に目覚めたんだけど、のんびり二度寝。
 空は、明け方まではすっきりしなかったけれど、陽が高くなるにつれて気持ちよい青さが増してきている。

 
 8時過ぎにゆっくりと起きて、昨日買ったばかりのヨーヨー・マのCD「シンプリー・バロック」をかける。ぼくの好きなバッハの「G線上のアリア」や、「主よ、人の望みの喜びよ」が入っているのだ。


     


 それから特製のツナマヨ・トーストとコーヒーで朝食。
 朝からクラシックも悪くないなあ。バッハってコーヒーにとっても合うね。
 ヨーヨー・マのチェロでとても落ち着いた気分になったあとは、キャロル・キングの「つづれおり」をかけている。
 雨上がりの涼しい朝にはぴったりの優しいアルバム。
 昨夜、部屋で楽器を練習している時に、全然思うように弾けなくて、すごく苛立ってたんだけど、それがうそみたいに気持ちが静まっている。
 大きく伸びをしながら、夕方までの予定をあれこれ考える。


     


 やっぱり気分の良いうちに部屋の片付けだなあ。
 休日の朝のうちから掃除するのは、不思議と苦にはならないのです。
 引き締まった朝を過ごした日は、一日がおだやかに、清々しく流れる気がする。


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組曲「惑星」より"木星" (The Planets op.32 "Jupiter")

2006年05月18日 | 名曲


 
■組曲「惑星」より"木星"
 [The Planets op.32 "Jupiter"]

■グスターヴ・ホルスト作曲
■1914年


 まだ幼稚園に行くか行かないかの頃に、テレビから繰り返し流れてきたおかげでしぜんと覚えてしまった曲がいくつかあります。
 もちろん当時は曲のタイトルなど分かるわけはありません。ただ、メロディーが印象的で、子供心にも「いい曲だなあ」と思っていただけでした。大きくなっていろんな音楽を聴きあさるようになってからそれらの曲と「再会」することになるわけです。「あ!これはあの時の曲だ!」と。結構覚えているものなんですね。


 その頃、土曜日の昼12時からは、「吉本新喜劇」を見るのを楽しみにしていました。その番組は地元の運輸会社の提供で、そのCMのバックに流れる曲が、とても「カッコいい!」曲だったんです。CMで使われるくらいですから、時間はわずか1分間ほど。その1分間に流れる音を全て聴き逃さないつもりでいつも聴いていたんです。


 また小学生の頃、テレビで見たい映画のある日は、親に頼みに頼んで、なんとか夜遅くまで見せて貰うのを楽しみにしていました。その頃普段はなかなか夜更けまでテレビなど見せてもらえなかったし、まだビデオなんか家になかったですからね。それこそかぶりつきでテレビの前に座っていたものでした。
 映画番組は週に3つか4つありましたが、その中の『水曜ロードショー』のエンディングに流れる、ゆるやかで壮大なメロディーが大好きでした。


 中学生だったある日、近所のフジイ君の家でいろんなレコードを聴いていました。その時にふとフジイ君がある1枚のレコードをかけたんですが、そこから流れてきたメロディーに思わずビックリしました。だってそれは、あの吉本新喜劇の合い間のCMで流れていた「カッコいい曲」だったんですから。
 レコードのジャケットには、
 「レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック演奏 組曲『惑星』」とありました。
 お目当ての曲は、その中の「木星」だったんです。
 「木星」は3部形式で、CMで聴き覚えていた部分は第1部の第1主題だったんですね。
 そのまま半ば興奮しながら聴いているうちに、またしても聴き覚えのある部分が! そうだ、このメロディーは『水曜ロードショー』のエンディング・テーマではないか!
 この部分、アンダンテで演奏される「木星」の第2部だったんです。
 という経緯で、記憶の中にあったふたつの好きなメロディーが、ひとつに結びつくに至ったというわけです。


     
     『組曲 惑星』
      ■ニューヨーク・フィルハーモニック
      ■レナード・バーンスタイン指揮


 金管楽器が、16分音符の煌びやかな木管楽器と弦楽器に絡んでゆく、迫力のある第1部。分厚いホルン群の活躍と打楽器の効果的な使用が印象的です。第2部の、美しい民謡風のメロディーを愛する人も多いことでしょう。そして第3部では4つの主題が再現されます。
 全体に明るく、壮大で快活な雰囲気のあるこの曲、クラシックの中でぼくがとても好きな曲のひとつです。


     
     『組曲 惑星』
      ■ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
      ■ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮


 組曲「惑星」は、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストの代表作です。
 この組曲は、天文学ではなく、占星術から着想を得たものです。占星術で描かれている各惑星の性格を音で描写してみようとしたわけです。組曲の中に「地球」が含まれていないのはこのためです。また作曲当時は冥王星はまだ発見されていなかったので、楽章は「火星」「金星」「水星」「木星」「土星」「天王星」「海王星」の7つで成り立っています。
 「木星」を作曲したのは3番目。思いついた順に作曲したんだそうです。
 「木星」の中間部(第2部)には、のちに歌詞がつけられ、愛国的な賛歌として広く歌われるようになりました。ダイアナ妃の葬儀の時に中間部が歌われたのは有名ですね。
 ホルストは、劇作家のクリフォード・バックスから占星術の手解きも受けていて、この組曲の構想にあたっては、占星術における惑星とローマ神話の対応まで研究したそうです。


     
     グスターヴ・ホルスト(1874~1934)


 「木星」は、太陽から7億7830万キロ離れた、63個の衛星を持つ、太陽系最大の惑星です。地球と比較すると、質量は318倍、直径は11倍(太陽の約10分の1)、体積は1300倍という大きさです。公転周期は11.86年、自転周期は9.56時間。
 英語名は「ジュピター」、ラテン語では「ユピテル」。ギリシャ神話のゼウスに相当します。


 木星は、ローマ神話の至上神ジュビターになぞらえられているだけあって、「王者の風格があると同時に快楽を好む傾向がある」とされています。
 曲には「快楽をもたらす者」という副題が付けられていますが、これは一般的な快楽や歓喜というもののほか、「儀式的な喜びを表現した祝典的音楽」という意味合いもあるようです。そのあたり、各惑星の性格を必ずしも忠実に再現しているわけではないので、われわれ聴き手がある程度自由な聴き方をしても差し支えないということだそうです。


     
     『惑星』 冨田 勲(1977年)


 ホルストはこの曲に対して、楽器編成の厳守や抜粋演奏の禁止など、いくつもの制約を課していましたが、1977年に冨田勲がシンセサイザーでの演奏・編曲を許されて以降、その制約は絶対的なものではなくなりました。今では数多くのヴァージョンが存在していますね。
 映画「ライト・スタッフ」で主題部分が使われているほか、エマーソン・レイク&パウエルや押尾コータローらによって取り上げられています。
 歌曲として歌っているアーティストも多く、シャルロット・チャーチの歌などが有名です。
 日本でも本田美奈子(日本語詞=岩谷時子)が歌っていますし、新しいところでは平原綾香(日本語詞=吉元由美)が大ヒットさせていますね。


     
太陽系。左端から太陽(赤色)、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星。


 ぼくは、やはり自分にとっての印象が最も強い、バーンスタインの指揮によるニューヨーク・フィルの演奏が一番好きです。そして、一部だけの抜粋よりは、全編通したものを聴きたいと思います。その方が、原曲の持つイメージがより直截的に伝わってくるからです。
 惑星を占星術的な側面から捉えた組曲ではありますが、聴いているうちに、木星の上から宇宙を眺めているような、神秘的な気分になってきます。
 もっとも、実際の木星の地表はガス状だから、その上に立つことはできないんですけれどね。(^^)




 

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奈良時代の寅さん!?

2006年05月17日 | ネタをたずねて三千里
 
 東京の葛飾・柴又といえば、映画『男はつらいよ』の舞台として有名です。この映画の主人公の名が「車寅次郎」、通称「とらさん」で、その妹が「さくら」であるのは言うまでもないほど知られていますね。
 ところが、どうも奈良時代にも、この柴又には「とら」と「さくら」が実在していたらしいのです。


     
     車 寅次郎 (渥美 清)


 奈良の正倉院が所蔵している「養老戸籍」という当時の戸籍簿に、現在の葛飾・柴又と思われる「葛飾郡(かつしかごおり)大島郷嶋俣(しままた)之里」という地名が記載されていて、その住人の中に「刀良(とら)」という男性名と「佐久良売(さくらめ)」という女性名が見られるということです。


     
     諏訪さくら (倍賞千恵子)


 1989年に葛飾区が柴又1・2丁目の発掘調査を行ったところ、古墳時代から奈良・平安時代にかけての土器が出土し、当時このあたりには集落があったことが確認されました。この結果、「嶋俣之里」がやはり柴又である可能性が強まったのです。


 『男はつらいよ』の原作者でもある山田洋次監督も、シリーズが始まった1969年当時は、このような戸籍簿があるなどとは全然知らず、映画の主人公兄妹に「寅」「さくら」と名づけたのは、全くの偶然だったそうです。


     


 奈良時代の柴又にも「とら」と「さくら」がいたなんて、なんだか不思議ですね。いったいふたりはどんな関係だったのでしょうか。
 やっぱり兄妹だったのかなあ。もしもその頃も、「さくら」が、できの悪い「とら」を心配してたのならおかしいですよね。


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テレビで見た千住真理子氏

2006年05月16日 | 見る聴く感じるその他

 
 昨夜、もう寝ようかなと思いながら、何気なく新聞をあちこち見ていました。すると、テレビ欄を見た瞬間、「千住真理子」という文字が目に飛び込んできたんです。
 23時20分からの日本テレビ系の番組「さしのみ」。みのもんた氏がホストを務める対談番組です。
 時計を見ると、なんと23時22分。まさに番組が始まったばかり。
 これは、「この番組を見なさい」という神様の命令(^^)だと思って、すぐにテレビの電源を入れました。


     


 以前、「千住家にストラディヴァリウスが来た日」と「千住家の教育白書」(いずれも千住文子・著)を読んで感銘を受けたので、いつか真理子氏自身からヴァイオリンに対する思いを聞くことができればなあ、と思っていたんです。
 

「デュランティー1716」300年の目覚め


     


 不思議な運命を辿って真理子氏自身のところへやってきた「ストラディヴァリウス・デュランティー」については、「いったん履くと踊りをやめられない赤い靴と同じで、弾くのをやめられない」と語っていました。「楽器に支配されている感じ」とも。でも、「恐れている」というより、幸せそうな言葉でした。
 みの氏が「結婚は・・・?」と水を向けると、「結婚なんて考えたら、この楽器、どこかへ行っちゃう」と笑って答えていたのが印象的でした。
 ストラディヴァリに支配されているというより、ストラディヴァリを「人格のある」自分の人生の大切なパートナーだと思っているのでしょうね。


     


 天才少女ともてはやされていた真理子氏は、20歳頃から2年間、まったく楽器を弾くのをやめていました。その時は、もう一生ヴァイオリンを弾かないつもりになっていたんだそうです。
 「天才少女」のスタンスを保つためにどんなことがあろうとも1日14時間の練習を欠かさなかったのですが、そんな生活を続けていては「生きてゆけない」と思ったのがその理由です。


 ある日真理子氏は、ボランティアでホスピスに呼ばれました。末期患者の「最後に千住さんの演奏を聴きたい。それが叶わないならせめて本人に会いたい」という願いを耳にして、ひさしぶりに楽器を手にしたのです。
 演奏後、その患者は「最後に千住さんの音を聴くことができて良かった。生きていて良かった」と喜んだそうですが、真理子氏は、自身の演奏のできのひどさにとても喜ぶことはできなかったそうです。
 「その人の人生は残り少ないのに、自分は最悪の演奏を聴かせてしまった」・・・。
 この後悔が彼女を変えたんだそうです。
 「聴きたいと思ってくれる人のために演奏しよう」
 それからの彼女は弾き方も変わり、幸せを感じることができるようになったそうです。


 ほんとうは、このへんの人間くさい葛藤をもっと突っ込んで聞きたかったんですけどね。


     


 番組中、バッハの「2つのメヌエット」とエルガーの「愛のあいさつ」の2曲をピアノの伴奏で聴かせてくれました。
 テレビを通じてなので、とても本来の音質で聴くことはできなかったのですが、実際に聴くとどんなに素晴らしく聴こえるのだろう、と思わずにはいられなかったです。


 心身ともに絶不調が続いてるぼくなんですが、見ているうちにいくつかのヒントを頂いたような気がしました。
 この番組に気づいたのは、何かの巡り合せだったんでしょうか。
 もしかして神様のお導きか!?(^^)


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マザー (Mother)

2006年05月14日 | 名曲

 重々しく鳴る鐘の音に続き、母へ呼びかけるジョンのせつない歌声で始まる曲、それが「Mother」です。
 その歌声には、姿の見えない母親を子供が精一杯探しているような、寂しげな様子が感じられます。
 この曲が収められているアルバムは『ジョンの魂』。
 この頃のジョンの作品は、自らの怒りや苦悩がストレートにさらけ出されていて、それはまるでジョン自身の私小説のようでもあります。


     


 ジョンが生まれて1年半後には、父は姿を消しました。ジョンは母ジュリアの姉妹、つまり伯母のミミに預けられます。
 ジョンが5歳の時に父が再び現れましたが、その時にジョンは父を選ぶか母を選ぶかを迫られたようです。小さな子供にとっては荷の重すぎる選択だったでしょう。ジョンはおそらくはあまり意味の分からないまま父を選ぶのですが、母ジュリアがジョンを連れ戻しに来ます。その母もジョンと一緒には暮らすことはできず再びミミ伯母に預けるのです。そして父はまたも蒸発するのです。
 しかしジョンは、母のところへは行き来していたようで、ジョンに音楽を勧めたのも母だということです。
 母はジョンのすることを何でも大目に見ていました。放任主義と言えば聞こえはいいけれど、実際のところ彼女は完全に子育てを放棄し、ジョンをミミに押し付けていたのです。
 その母は、ジョンが14歳の時に、ジョンの友人の目の前で交通事故のため亡くなりました。ミミのところへ泊まりに行っていたジョンを訪ねて行ったその友人が、車のブレーキ音に思わず振り返ると、ジョンの母が倒れていたそうです。


 こうした少年時代を過ごしたことが、冷酷さと優しさの入り混じったジョンの複雑な内面が形作られた理由のひとつではないでしょうか。
 彼はいつも不安や孤独を感じていたようです。おそらくそれが、理解してくれる人、愛情を注いでくれる人をいつもジョンが求めていた理由なのだと思います。
 たぶん、ジョンは、ヨーコの中に「母」を求め、「母」をみつけようとしていたのではないでしょうか。


     


 クラウス・ヴーアマンのベースとリンゴ・スターのドラムス、そしてジョン自身の弾くピアノだけをバックに歌われたこの曲、歌詞もアレンジも、ごくシンプルです。シンプルなだけに、揺れ動くジョンの想い、もろさを抱えたジョン自身の気持ちがじゅうぶんに表れているような気がします。
 とくに、エンディングのリフレインで聴かれるジョンのシャウトは、ジョンの心からの悲痛な叫びのように聴こえるのです。


     


 両親に対する愛憎が相半ばしたようなこの曲ですが、憎しみや怒りが強いということは、それだけ「もっと自分を愛して欲しい」という強い気持ちの裏返しだということが言えるのではないでしょうか。
 ジョンはビートルズ時代に、母の名を冠した「ジュリア」という曲を歌っています。ジョンの心に根付いている母ジュリアのイメージをそのまま歌にしたような優しい作品です。


     
     ジョン・レノン『ジョンの魂』


 この曲の1番は母に、2番は父に歌いかけています。
 3番では子供たちに、「僕のしたことを繰り返してはいけない。僕は満足に歩くこともできなかったのに走ろうとしたんだ」と歌いかけています。これは、ジョンが自分の子供たちに向けて歌っているというよりは、「子供である全ての人々」に対して向けたメッセージではないだろうか、と思うのです。
 離婚する親たちが珍しくなくなったこの時代ですが、その両親の間にいる子供たちの辛さは、いつの時代でも変わりはないのです。


 ORIGINAL CONFIDENCEが、10~40代の男女を対象に、「世代別・母の日に贈りたい曲」のランキングを発表しています。ジョンのこの曲は洋楽としてはただ1曲、40代の10位にランキングされています。



[歌 詞]
[大 意]
母さん 僕はあなたのものだったけれど あなたは僕のものじゃなかった
僕はあなたを求めていたのに あなたは僕を求めてはいなかった
だから僕はあなたにこう言う さよなら さよなら

父さん あなたは僕を捨てた 僕にはあなたが必要だったのに
あなたには僕なんか必要じゃなかったんだ
だから僕はあなたにこう言う さよなら さよなら

子供たちよ 僕のしたことを繰り返してはいけないよ
僕は歩くことも満足にできなかったのに 走ろうとしたんだ
だから僕はこう言う さよなら さよなら

母さん 行かないで
父さん 家に戻ってきて




マザー/Mother
  ■歌・演奏
    ジョン・レノン/John Lennon
  ■シングル・リリース
    1970年12月28日
  ■作詞・作曲
    ジョン・レノン/John Lennon
  ■プロデュース
    ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、フィル・スペクター/John Lennon, Yoko Ono, Phil Spector
  ■収録アルバム
    ジョンの魂/John Lennon/Plastic Ono Band
  ■録音メンバー
    ジョン・レノン/John Lennon (vocal, piano)
    クラウス・フォアマン/Klaus Voormann (bass)
    リンゴ・スター/Ringo Starr (drums)
  ■チャート最高位
    1971年週間チャート アメリカ(ビルボード)43位




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山下洋輔のエッセイ

2006年05月12日 | 見る聴く感じるその他
 
 ジャズ・ミュージシャンには文章のうまい人が多いような気がします。というか、この場合「面白い文章を書く人」と言った方がいいかもしれないですね。
 音で遊ぶことと、文章で遊ぶことは、共通したところが大きいんでしょうね。
 山下洋輔氏のエッセイなど、その最たるものだと思います。
 一時期はもうハマりまくって、片っ端から読んでいったなあ。
 山下洋輔と言えば、日本のジャズ・ピアニストを代表する存在でありながら、何冊もエッセイを出しているのは有名ですよね。たしか晶文社からだったと思うけれど、全集みたいなものまで出てるんですよね。


     


 子供の頃の思い出、音楽の世界の入ったなれそめ、ジャズ・マンとしての日常、ツアーの日々、音楽論、その他の山下氏が思うところなど、多岐にわたって書きまくっています。
 読み手を引きずり込むエネルギーのあるスピーディーな文体や、ケタ外れのギャグ、パロディ精神などは、まるで山下氏のピアノそのもの、という気がします。
 そのギャグはただのウケ狙いではなく、そこにはちょっと乾いたというか、陽性の狂気みたいなものがあって、そのあたり筒井康隆氏の文章を彷彿とさせたりするんだけど。
 単なるジャズ・マンの悪フザケをそのまま文章にした、といえば言えなくもない部分もありますけれどね。(;^ω^)
 でも、同じふざけるにしても、全力でフザケているから、山下氏の文章は面白いのだと思います。


     


 ところどころには、ミュージシャンとしての姿勢や哲学、音楽論などが出てきます。これらは、強烈なギャグでくるめられてはいますが、プロとしての姿勢を学ぶことができる貴重なものだったりします。
 また、ヨーロッパ・ツアーなどで出会ったさまざまな人たちとの係わり合いを通じた、人間というものに対する山下氏の温かい眼差しを感じ取ることもできます。


     


 理屈抜きにも楽しめるし、ひとりのミュージシャンの価値観を知ることもできるし、ケタ外れのギャグで笑わせてもくれるしで、リフレッシュしたい時には、今でも山下氏の数々の本を繰り返して読むことがあります。
 ミュージシャン流のギャグを味わいたい人、ジャズ・マンの実態を垣間見たい人、そして音楽と文章を愛する人にすすめたい本です。


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クリエイション (Creation)

2006年05月11日 | ミュージシャン
♪お気に入りアーティスト50(日本篇その14)


 去る4月1日に、元カーナビーツのドラムス兼ヴォーカリストのアイ高野が亡くなりました。
 ぼくは、グループサウンズ時代の高野氏のことは記憶にありません。むしろ、藤竜也や草刈正雄らが出演していたテレビ番組「プロハンター」の主題歌「ロンリー・ハート」を歌っていたことのほうが馴染み深いです。
 この「ロンリー・ハート」を担当していたグループが、1970年代の日本のロック・シーンに君臨していた「クリエイション」です。


     


 まだまだマイナーな存在だった70年代の日本のロック・シーンをリードし続けたバンドのひとつが「クリエイション」でした。
 とくに竹田和夫のギター・プレイは、ジェフ・ベックやジミー・ペイジらのハード・ロック・ギタリストを信奉するぼくの周りのギター小僧たちにも一目置かれるものでした。洋楽のギタリストと並んで、竹田和夫のギターをコピーしていた友人も何人もいました。
 当時の日本のロック・ギタリストと言えば、春日博文や森園勝敏、山本恭司、成毛滋、高中正義などが有名でしたが、竹田和夫はブルースを基盤にした切れ味鋭いハードなプレイで、その中でもひときわ存在感を醸し出していました。
 ちなみにクリエイションは、サディスティック・ミカ・バンドなどと並ぶ、積極的に世界進出を企図した日本のロック・ミュージシャンの先駆的存在でもありますが、彼らがオーストラリアでツアーを行った際、竹田氏のプレイに驚嘆した聴衆は、竹田氏に「FLASH」のニックネームを奉ったほどです。


     


 クリエイションの曲は英語で歌われる正統的なロックが多いのですが、のちにはメンバーにサックス奏者を入れたりして積極的に新境地の開拓に挑み、シティ・ポップやファンク、フュージョンなどの要素をも巧みに取り込んだ曲も作っています。
 当時流行っていたAOR路線をうまく取り込んだのが、彼らの代表曲のひとつでもある「トーキョー・サリー」や、大ヒットした「ロンリー・ハート」などです。
 また、郷ひろみなどが出演していたTBS系のTV番組「ムー一族」の主題歌「暗闇のレオ」や、人気プロレスラー、ドリー・ファンクJr.とテリー・ファンクの兄弟(ザ・ファンクス)が入場のテーマ曲として使っていた「スピニング・トー・ホールド」などはフュージョン色が濃いものでした。
 「スピニング・トー・ホールド」を聴くと、ブッチャーの繰り出す反則技で血まみれになりながら、最後は逆転勝利を収めるファンク兄弟の熱いファイトを思い出します。


     


 クリエイションが本領を発揮するのは、やはりブルースを基盤にしたハード・ロックにおいてでしょう。
 それらの曲は印象的なギター・リフを持ったものが多く、ブリティッシュ・ブルース・ロックの影響が強く感じられます。そのロック・スピリットがいかに強烈だったかは、彼らの音楽性を気に入った、あのクリームのプロデュサーでマウンテンのベーシストだったフェリックス・パパラルディが自ら加入を希望したということでも窺い知ることができますよね。


     
     F・パパラルディ(左)と竹田和夫


 クリエイションの曲の中でぼくが好きなのは、マイナー調のバラードとハード・ロックを巧くミックスした「フィーリン・ブルー」、場面展開のドラマティックな「ロンリー・ナイト」、怒涛のハード・ロックにアレンジした「タバコ・ロード」、シティ・ポップとヘヴィ・ロックを組み合わせた「トーキョー・サリー」、クリームやマウンテンにもひけを取らないハード・ロック「シークレット・パワー」などです。
 今聴くと、70年代ロックのアナログな雰囲気に満ちていますが、それでも当時の勢いとか、ロックにかけるガッツみたいなものを感じますね。
 良質のハード・ロック・アルバムも何枚か作っていますが、全裸の子供を使ったジャケット写真にはまったくタマゲましたね。


       
      『クリエイション』        『ピュア・エレクトリック・ソウル』
 


 メンバーの入れ替わりが激しかったクリエイションは1984年に解散しました。
 竹田和夫はその後もブルースをベースにしたロックを追求し続けていて、現在はロサンゼルスで活動を続けています。
 竹田和夫は今年1月にはニュー・アルバム「MOCHA」をリリース。また6月から7月にかけては来日し、栃原優二(Bass)、相良宗男(Drums)のメンバーでツアーを行う予定になっています。


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