ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

時の過ぎゆくままに

2007年06月03日 | 名曲

♪自分的名盤名曲163



 TBS系に「悪魔のようなあいつ」というドラマがありました。原作阿久悠氏、脚本は長谷川和彦氏、演出に久世光彦氏の名前があります。ぼくはこのドラマを見た記憶はないのですが、沢田研二扮する主人公は酒場のシンガーであり、高級男娼であり、3億円事件の犯人でもあり、不治の病に冒されているという設定で、「70年代が醸し出していた危うい空気が漂っているドラマ」という解説をどこかで読んだことはあります。


          

 このドラマの主題歌が、主役の沢田研二が歌った「時の過ぎゆくままに」です。作詞はドラマの原作者の阿久悠、作曲は沢田研二のバックバンドのキーボード奏者・大野克夫。アルバム「いくつかの場面」に収録されています。
 沢田研二の14枚目のシングルである「時のすぎゆくままに」は、約92万枚を売り上げ、オリコン・チャートでも5週連続1位となり、自身最高の大ヒットを記録しました。


     
     『いくつかの場面』


 沢田研二はグループ・サウンズ全盛期に、タイガースのリード・ヴォーカルとして圧倒的な人気を誇りました。愛称の「ジュリー」は、沢田が女優ジュリー・アンドリュースの大ファンであるところからつけられたものだそうです。
 タイガース解散後はスーパー・グループのPYGを経て、ソロ・シンガーとして活躍します。


 とくに1970年代後半から80年代にかけての人気は物凄いものがありました。出す曲出す曲みなヒット。ゴージャスで、イキで、キザで、そのくせちょっとチープな「ジュリー」を演じているかのような沢田研二は、煌びやかな真のスーパー・スターだと思います。視線のひとつ、仕草のひとつがとにかくカッコいい人でした。
 また俳優としても活躍、シリアスなものからコメディ、コントまで幅広くこなしていたのを覚えています。


     


 「時の過ぎゆくままに」は、歌謡曲ぽさを残しながら、どこかバタ臭い洋楽の香りが漂っている、大野克夫の珠玉の名バラードです。
 退廃的な歌詞で、男の色気にあふれた雰囲気があります。甘くてツヤのある沢田の歌声がしっとりと、抑え気味に歌っています。そのヴォーカルに絡みつく井上堯之のギターがこれまた艶っぽい。1コーラス目は、ギターとピアノだけのアコースティックな伴奏、2コーラス目から大々的にストリングスが加わり、雰囲気を盛り上げます。どこかせつなくなるような、良い曲ですよね。


     


 大野克夫は、「時の過ぎゆくままに」で初めて沢田研二の曲を担当、以後も阿久悠とのコンビで沢田に「勝手にしやがれ」「カサブランカ・ダンディ」など、計11曲を提供、全てヒットに結びつけています。
 沢田がバックに従えているのは、日本テレビ系刑事ドラマ「太陽にほえろ」のテーマなどでお馴染みの「井上堯之バンド」。これは、日本の歌手が自分の専属バンドと行動を共にした初めての例だそうです。


 エンターテイナーとしてのこだわりを持つ沢田研二は、ステージではかつてのヒット曲を歌うのを好まず、「その時の自分の歌」を歌うことを貫き通しています。そのため歌番組の出演が大幅に減りましたが、もちろん今でも精力的にステージをこなしているようです。



【歌 詞】



時の過ぎゆくままに
 ■シングル・リリース
   1975年8月21日
 ■歌
   沢田研二
 ■作詞
   阿久悠
 ■作曲・編曲
   大野克夫
 ■プロデュース
   佐々木幸男
 ■収録アルバム
   いくつかの場面(1975年)
 ■録音メンバー
   ☆井上堯之バンド
    井上堯之(guitar)
    速水清司(guitar)
    岸部修三(bass)
    田中清司(drums)
    大野克夫(keyboards)
 ■チャート最高位
   1975年週間チャート  オリコン1位(5週連続計5週 1975年9月22日~10月20日)
   1975年年間チャート  オリコン4位


コメント (11)
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