ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

メリー・クリスマス・イン・大分

2010年12月25日 | ライブ
          △カルチアパークのステージ。

 
 
 今月3本目の記事です。1ヵ月に3度の更新なんて超久しぶり・・・(^_^;)
 

 ※3月6日のライヴの詳細を前の記事の文中に追加しました。
 

 実はなぜか大分県にふたり友人がいます。
 ふたりとも音楽の神に目をつけられていて、一生音楽と深くかかわっていくに違いない人です。
 かたやピアニスト、こなたリスナー。いずれも素敵な人間性・価値観を持っています。


 先月の終りに久しぶりに連絡をとったのがヤヨイさん。
 なんていうか、静と動を併せ持ったような人で、いろんなアンテナを巡らせています(とニラんでいます)。心に響く音楽を素直に受け入れる人で、日野皓正グループのベーシストである金澤英明氏の音に傾倒しています。その金澤さん繋がりで知り合いになることができました。
 
 
 ヤヨイさんはある問題を抱えながら、それでも夢を実現させかけていて、その静かで前向きな闘志はぼくに大きな力をくれました。その夢が叶ったらここでも紹介できるかもしれません。
 その「ある問題」を聞いた時はぼくもショックを受けましたが、とにかく生きるということに真摯に取り組んでいることを知って嬉しくなり、「ちかぢか会えたらいいね~」と言ってひとまず電話を置きました。


 そこで登場するのがピアニストのノリコさん。
 彼女の考え方は懐が深く、狭いところにとらわれていません。温かいハートを持っているミュージシャンです。
 そういえば彼女、12月にクリスマス・コンサートを企画しているって言ってたなぁ。。。ノリコさんも弾くはずだから、この際ライヴを聴きがてら大分に行ってみようか。コンサートは23日。むむっ、祝日ではないですか。24日に休みを取れば4連休(^^)。
 さっそくヤヨイさんに都合を確認したら、運よくスケジュールが空いていました♪
 ついでにヤヨイさんとノリコさんを引き合わせてしまえ!


 なんだか先月~今月と話がトントン拍子すぎて怖いんですが、とにかく大分行きの件は、すんなり休みが取れ、ノリコさんに席を確保してもらって、あとはその日を待つのみです。


 23日は快晴。暖かくて、とても気分の良い日でした。新幹線で小倉まで約1時間半、そこから大分まで特急で1時間半。
 ちょうど天皇誕生日のせいでカーキ色の車が音量をあげてアナウンスを流しながら走っていたのが無粋でしたけど、それもまた話の小ネタにしつつ、しばらくぶりの時間は「あれも話そう、これも話そう」と会話も弾み、あっという間に時間はコンサートの開演間近に。



     大分駅前


 場所は大分駅近くのリーガルホテル地下にある、カフェ(ホール)・カルチアパークです。主催は「ミュージック♪たん」。ノリコさんはその一員なんです。
 プログラムを見ると、出演者は総勢21組。バラエティに富んだ構成です(^^)。
 席は、ヤヨイさん、ノリコさんと、今回ノリコさんと「まかろん」というユニットを組むエリさんの4人。ノリコさんはニコニコと温かく迎えて下さったし、エリさんはとても気さくな方だったので、楽しい時間を過ごすことができました。



     カルチアパーク


 演奏はもう皆さんひたむきだし、客席はその音を温かく受け止めているし、とても和やかな雰囲気でした。ちょっと不思議な雰囲気を持った、ライア(小型の竪琴)と語り入りのグループ、ドビュッシーを演奏したピアニスト、弾き語りを聴かせてくれた男の子(5歳くらい!)などが印象的でした。
 そしてゲストのクラシック・ギターの名手、北峯千裕さんの演奏の味わい深いこと。ウケを狙うわけでもなく、テクニックをひけらかすわけでもなく。すごい経歴をお持ちなのに驕ることなく、ただただ納得のいく音を出したいだけなんでしょう。そこに好きなギターがあるから弾き続けているのでしょう。
 こういう素晴らしい音楽家(あえてそう呼ばせていただきます)は、貴重な存在だと思います。



     満席。みなさんくつろいで楽しんでおられました。



     北峯千裕さん。またぜひ聴きたいと思わせられる音色でした。


 ノリコさん(エレクトーン)とエリさん(ピアノ)のデュオ(デュオ名…まかろん)は、もっと聴いてみたかったです。クラシックで活動することが多いふたりだと聴いていましたが、ちょっとプログレッシヴな香りのする演奏には興味をかきたてられました。次回はノリコさんのピアノを堪能するつもりです。



     「まかろん」の演奏シーン     


 楽しい時はすぐに終りを迎えるものです。
 たとえそれが一瞬だとしても、「行きたい」「聴きたい」と思ったら行ってみるべきだと思います。
 今回の大分行きは、お金を出しても買うことのできない時間を得られたと思っています。
 ヤヨイさんとノリコさんの顔合わせもできたし(^^)。
 一足早い、ハッピーなクリスマスを過ごさせてくれたノリコさん、エリさん、そしてヤヨイさんには改めてお礼を言いたい気持ちです。どうもありがとうございました。
 コンサートのサブタイトルは「ともだちの輪」。このサブタイトルを実感できた日でした。
 また大分に行くぞ~!(^^)


 岡山駅に着いたのは19時半。駅前はすっかりクリスマス気分。
 サンタに扮した若い男女数人が、某遊園地のイベントのチラシを配っていました。その中のひとりのアフリカ系の青年があまりにユーモラスだったので、1枚受け取り、歩き読みしながらふと横を見ると、
 「(略)チラシの配布等を禁じます」のプレートが・・・(笑)



     岡山駅前のイルミネーションです。カップルだらけ(羨)



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Time Is Gonna Come

2010年12月19日 | 価値観
            △相棒です。また力を借りる時がやってきました。

 
 今朝、自分のブログをボンヤリと読み返しながら、浜田省吾の「MONEY」の動画を観ていたら、不意に涙が出てきました。「アレ?なんで?」と思ったんですが、そのままハマショーの熱い歌を聴いていたらポロポロ涙がこぼれて来て。。。年を取ると涙もろくなっちゃうんですね~(^^;)
 この1ヶ月、とくに先週以来の1週間で人との繋がりのありがたみを思いっきり味わっています。こんなに応援してもらっていいんだろうか。こんなに温かく接してもらっていいんだろうか。
 みんなどうもありがとう。
 ※こんな月並みな言葉しか思いつかないぼくに誰かブ厚い辞書を贈ってください(^^;)

 どこから書こうかな。
 先週火曜日に、友達のドラマー君から連絡がありました。「来月上京するので、とりあえず岡山での叩き納めをします」。
 理由を聞くと、某大物ロック・ミュージシャンのバックで叩くことになり、ツアーに同行することになったんだそうです。ぼくはもうメッチャ興奮!だって必死で叩いてきた友人の頑張りが報われるんだから。良かったなあ~。
 「だから今夜聴きに来てよ」「よっしゃ行く行く、絶対行くわ~♪」


 その夜の会場が、倉敷市にある老舗ライヴ・ハウス「アヴェニュウ」です。
 彼は奥様と来ていたので、彼がお客様にあいさつしたり、演奏したりしている間に奥様とずっと話していたんですが、そこで彼女から聞いた話は、、、
 「彼は、『うまいベーシストはたくさんいるけど、オレが岡山で認めるベーシストはMINAGIだけなんだよ』っていつも言ってましたよ」
 「彼は、MINAGIさんが休んでいたこの数年は、自分の仕事にベーシストを使ってなかったんですよ」
 ・・・。
 ぼくは思いました。「もう彼には足を向けて寝ることができないな」
 嬉しかったなぁ。


 実は「アヴェニュウ」は、以前ぼくも出させて頂いていたお店なんです。オープンして40年以上になる、日本でも有数の老舗ジャズ系ライヴ・ハウスで、たいていの観光ガイドにも載っている有名なお店です。
 すぐにお店のお母さん(愛称トンちゃん)のところに行って不義理をお詫びし、近況を話しあっていると、お母さんが急に「MINAGI君のいい日でいいから、復活ライヴをやってよ」・・・!!!
 もうビックリ。だってそんなふうにすぐに後押ししてもらえるとは思ってなかったから。。。
 「やるなら、その時演奏してオシマイ、なんじゃなくて、未来に繋がるようなことをやりたい。ミュージシャン、お客様、お店のみんなが心から喜べるようなことをやりたい。そのためにはそういう志や意識を持って全力でプレイしてくれるミュージシャンと共演したい。そんなメンバーを集めるから、時間をください」という条件でありがたくお話をお受けいたしました。
 いろいろ考えた末、お願いしたミュージシャンたちはふたつ返事で快諾してくれました。体調が快方へ向かっていることを喜んでくれたドラマーさん、「MINAGIさんのためなら」なんて泣かせるセリフでOKしてくれたギターさん。
 そしてこの記事を書いている最中にピアノさんから連絡がありました!快くOKを下さいました。(なんと昨日偶然このブログを発見、そのうえ帰宅したらぼくからのメールが届いていて二重にビックリしたそうです)

 では、恥ずかしながら、ブログを私物化して(、、、というかもともと私物でした)告知します。


 ☆Restoration LIVE 皆木秀樹 with 杉江稔、三浦敦子、下茅良☆
 【場所】倉敷アヴェニュウ 
 【日時】2011年3月6日(日)
     18時30分~、19時30分~、20時30分~
     (3回ステージ)
 【ミュージックチャージ】1000円
 【出演】皆木秀樹(wood & electric bass)
     ※ビートルズで洋楽に目覚め、高校時代にビッグ・バンドでジャズを始める。地元のほか、関西方面のライヴ・ハウスやホテルなどでも活動。来年は復活します(^^)
     杉江 稔(drums from八尾)
     ※「紙ふうせん」のサポート・ドラマーとしてデビュー。「津田清& HIS TOP MEN」などに参加するなど、大阪を拠点に関西で活動を続けている名ドラマー。人柄・演奏技術とも多くのミュージシャンに信頼されており、非常にグルーヴィーなプレイを聴かせる。演奏活動のほか、音楽専門学校講師などを務めており、現在では自身のドラム・スクールを主宰して後進の指導に当たっている。
     三浦敦子(piano from神戸)
     ※大阪音大時代にジャズと出会い、以後阪神間を中心に様々なシーンで精力的に活動しているピアノ・キーボード奏者。ハートフルな演奏はとても魅力的で、多くのミュージシャンと共演している。同時に神戸市須磨区で自身の音楽スクールを主宰、幅広い年齢層に音楽の魅力を伝え続けている。
     下茅 良(guitar from東大阪)
     ※ジョン・ロートン(vo.元ユーライア・ヒープ)のサポートを皮切りに、数多くのミュージシャンのバックを務める関西屈指のギタリスト。プロデューサー、ギター講師などとしても活躍している。幅広い音楽性、豊富な知識、音楽に対する姿勢などで多くのミュージシャンから厚い信頼を受けている。


 今のところこんな感じです。JAZZ系のインスト中心に、楽しくて、くつろげて、熱くて、温かい夜をお届けするつもりです。
 有末さんの奥様に報告すると、なんとすぐ倉敷行きを決めてくださいました。4月には富山へ引っ越す友人のジュンちゃんも「おめでとう!絶対行くね」
 そのほかにも、サックスの赤田君、クラリネットの熱田君など応援してくださる方が次々と・・・。こんなにしてもらっていいのかな。
 ビックリするくらいトントンと話が動いてしまいました。ありがたいことです。後押ししてくれる人たちにどうにかして恩返ししなくては。。。そのためには、さあ練習練習!


 さて昨夜は職場の忘年会でした。基本5時以降は職場の人には会いたくないので飲み会には参加しない主義なのですが、もういつ転勤になるか分からないので「一度くらいは」と思って出席しました。
 ちょっと早く着いたのと、「職場の宴会ギライ(^^;)」から来るプレッシャーで、落ち着くためにある人に電話してみました。九州在住のピアニスト、Nさんです。
 いや~、話がはずんではずんで。音楽観も幅広く、「懐の深い方だなぁ」としみじみ思いました。彼女に3月の復活ライヴの話をしたら、「時が来たんですよ」。その言葉をこの記事のタイトルに使わせてもらった訳です。
 実はこの23日に彼女の音を聴きに行くんですが、もうメッチャ楽しみ!その日の話はまた後日♪



 そして、忘年会のあと必ず寄ろう、と決めていたお店がみっつありました。いずれも体調を崩して以来だから5年ぶりです。そして、、、

 3か所とも再会をとても喜んでくれました。

 まずは「Dining Bar 桜Ya」。
 オーナー・シンガーのNATSUKIさんがひとりで切り盛りしているアット・ホームなバーです。
 NATSUKIさんとは価値観が共通するところが多いので、安心して共演できるんです。歌を大事にし、お客様を温かくもてなそうと、日々奮闘しています。
 相変わらず気さくでキュートでチャーミング。話に花が咲いていたところ、お客様がNATSUKIさんに歌のリクエストをしたので急遽ピアノで参加!「レット・イット・ビー」と「イマジン」の2曲を厚かましくも弾かせていただきました。楽しいぃぃぃ~~(^◇^)
 みなさま、岡山市にお越しの際はぜひ柳町のDining Bar「桜Ya」へ!


 続いて表町のBar「Second Simpson」へ。
 ここはかつてNATSUKI(vo)さん・有末佳弘(pf)さん・HIBIKI(drs)さん・名定澄子(keyb)さんと共演した、思い出のお店です。
 マスターの和田君は若いけれど苦労人です。きちんと修行した一流のバーテンダーで、腕は良いし男前だしトークは心地良いし、そして人柄も言うまでもありません。
 ひとしきり思い出話がはずみ、あっという間に時間は真夜中。気持ちの温まった、ステキな時間でした。
 ここでは、なんと、「生徒さん」というか、「妹分(or娘?...汗)」ができてしまいました。彼女はウッド・ベースに惹かれて、楽器を衝動買いしたそうです(^^;)。理由があってぼくは人を教えることを断ってきたのですが、和田君からのお願いだし、とりあえず気楽に質問・相談を受けるだけなら、と思って、「先生役」を引き受けさせて頂くことになりました。
 あるレベルまで来たら「鬼先生」に変身するつもりだけど、それまでは思いっきり音楽と演奏の楽しさを味わって欲しいと思います。ぐぁんぶぁれ~
 みなさま、岡山市にお越しの際はぜひ表町のBar「Second Simpson」へ!


 そして最後は田町の「Fukuchan」へ。
 ここは、オーナーで鍵盤奏者の「フクちゃん」こと福安さんが、生演奏でお客様の歌の伴奏をしてくれます。プレイヤーも集まるので、時としてセッションも繰り広げられる、楽しいお店です。
 フクちゃんのあったかい笑顔、素晴らしい演奏、穏やかな人柄で、お店はいつもいっぱいです。
 5年ぶりにお店に入ると、まずスタッフ君が名前を覚えていてくれたのにビックリ!
 入れ替わり立ち替わり歌うお客さんたちの歌とフクちゃんの演奏を聴きながら、しばしノンビリ。そうしているとフクちゃんから「やろうよ(^^)」とお声がかり。
 ここではベースで参加させて頂きましたとも。
 まずは、と思ったら、お客さんのリクエストで「トップ・ガン」。ト、トップ・ガン???
 え~と、たしかケニー・ロギンスだったっけ・・・、どんな曲だったかな~(汗)頼みのフクちゃん(レパートリーはなんと10000曲を超えているらしい)もド忘れした様子。「トップ・オブ・ザ・ワールドではダメでしょうか」とボケてみても許してもらえず(^^;)、結局お客さんが持っていたモバイルで音をざっと聴き、キーだけ確認して「え~い、やってみたれ~~!」
 ひとまず納得していただけたようなので、もう1曲、アリスの「遠くで来て汽笛を聞きながら」を演奏。ノッているフクちゃんの歌声(ヴォーカリストでもあるんです)を聴いていると、なんだか嬉しくなってしまいました。
 あとでおそるおそる「どうだった?感覚戻ってると思う?」と訊ねると、笑顔で力強く「大丈夫、戻ってるよ!(^^)」 フクちゃんに言ってもらったら安心するな~
 みなさま、岡山市にお越しの際はぜひ田町の「Fukuchan」へ!(こればっかやな・・・汗)


 そんな訳で、家にたどり着いたのは2時半をまわっていました。
 きっとみんなの温かさ、優しさに触れて、気持ちが高ぶっているんでしょうね。
 その高ぶりの表れが今朝の涙だったのかな。
 ぼくは自分が好かれるたちではないと思っているので、よけいにみんなの気持ちが嬉しく感じられるんです。
 きっとぼくは、幸せものなのかもしれません。
 でも、「その幸せはみんなからいただいたんだよ!」と大声で言いたい気分なのです。
 ありがとう。



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4年ぶりの・・・

2010年12月07日 | 自分のライブで
 
 ふと気づくと、サイドバー上のカウンターが30万を超えている!
 覗いてくださっている皆様に改めてお礼申し上げます。
 記事の更新頻度もヨタヨタになってしまったこのブログですが、常に毎日結構な数のアクセスが記録されていて、本当に恐縮の極みです(^^;)。
 このままヨタヨタと書き続ける所存ですので、今後とも生温かく見守ってやってくださいませ。


 閑話休題


 演奏活動をしている人ならだいたいがそうでしょうけど、ぼくも自分の演奏をMDに録りためています。たいていメンバー、場所、そして年月日などのクレジットを記録しているのですが、いま棚を見てみると、2007年以降のものがない。ステージから遠ざかってもう4年になっていたんですね・・・。
 

 5年前に体調を崩しました。
 病名を告げられる直前は、演奏後ほとんど必ず頭痛と吐き気に襲われ、帰りの運転もままならないありさま。やっとのことで家にたどり着くものの、そのまま玄関に倒れこんだまま身動きできなかったり、吐いたり。
 通院しても事態は好転せず、それでも弾き続けてはいましたが、この頃はもう10分間弾き続けられるかどうかが限界でした。最終的に当時のドクターからは、「ストレスは大敵。楽器を弾くのは休みなさい」と言われてしまいました。


 衰えることが恐ろしかったので、ベースを弾くことを止めるという選択肢はぼくの中にはなかったのですが、あまりのしんどさにとうとうドクターの言う通り楽器を置いてしまいました。たしかにこれでムリな演奏活動から逃れられたかに思ったのですが、逆にそれまでの「弾き続けなければ」という張りつめた気持ちまでがプツンと切れてしまったんです。同時に立ち直る体力も気力も失せてしまい、楽器はホコリをかぶるがままになっていました。


 たまにベースに触ってみてはいたのですが、練習を止めてしまったせいで指は動かないし、グルーヴ感は無くなっている。それどころか「アイデアやイマジネーションが湧いてこない状態」に陥ってしまっていたのです。
 指の動きは練習で回復できるけれど、鈍った感性はどう取り戻したらいいのだろう・・・。好調の時と比べるとその当時の自分の音は情けないほど貧弱で、自分の衰えを目の前に突きつけられた気がしたものでした。みじめでした。
 ただただ辛く、「こんな音はチャージを払ってくださっているお客さんには聴かせられない。もう潮時かもしれない」との思いから、人前で演奏することはあきらめるに至りました。
 そのうえ、支えだったボスである有末佳弘さんの死。涙も出ないくらいの衝撃でした。その痛みはいまだ引きずっているほど大きいものです。この精神的打撃でとうとう楽器に触れることすらやめてしまいました。お通夜の席で、有末さんの奥様に「MINAGIさん、必ずまた演奏してくださいね」と声をかけてもらったのに、ぼくは弱々しく笑うことしかできませんでした。


 決して音楽を嫌いになったわけではなかったのですが、ここ数年は、感覚がすっかり鈍ってしまったというか、音をじっくり聴きこむことにすら消耗を余儀なくされる状態だったんです。何を聴いても何も響いてこない、心が枯渇した状態、とでもいうのか、それとも、音楽を聴くこと自体が苦痛、というか・・・(不思議とキング・クリムゾンだけは聴けた)。音楽だけでなく、DVDを観ることも本を読むこともしんどい状態でした。今になって思い返すと、細々と綴るこの拙ブログだけが気持ちのはけ口でした。
 ところが今年の春頃に、どういうわけか再びピアノに触ってみようという気になりました。あくまでイタズラ弾きとして気楽に遊んでいたんですが、それが結果的に良かったのかな。


 先月半ばには何年ぶりかで楽器の弦を張り替えてみたんです。
 ウッドベース弦はお店に在庫がなかったので、アコースティック・ギター、エレキ・ギター、エレキ・ベースの弦を買いました。
 張り替えると弾いてみたくなるのが人情。それまで何度も自分の衰えた音を聴いては辛い思いをしていたはずだったのに、懲りずにオソルオソル弾いてみると・・・、なんと、どう説明したらいいのか、つまり「生きた音」が出たんです。知らず知らずのうちに、ピアノを弾くことで感覚を取り戻していたのかなぁ。


 その数日後、なんの偶然か「有末佳弘3周忌追悼ライヴ」のお誘いのハガキが届きました。
 少し迷いましたが、「(筋力の衰えがひどいためウッドベースはまだムリだから)一応エレキ・ベースは持っていこう。しんどかったらおとなしくしておこう」と決めて、出席の返事をさせて頂いたんです。


 そして迎えた12月4日。場所は神戸市中央区にあるライヴハウス「ホリーズ」。
 企画は、ベーシストの宗川信さんと、有末さんの生徒さんで、今は姫路を拠点に関西方面で活躍している名定澄子(pf)さん。ホスト・バンドには三浦敦子(pf)、宗川信(b)、鈴木久美子(sax)、高野正明(drs)の各氏。みな有末さんとゆかりのあるミュージシャンです。

     
     ライヴ・ハウス「ホリーズ」の外観。


 神戸ルミナリエで賑わっている週末ということで、駐車場確保のために早めの神戸着。昼間は久しぶりに三宮センター街や元町通り周辺などをブラブラしましたが、さすがにカップル率高し!(T_T)(羨) あとはブーツの女性と、オシャレな40~50代の女性が目につきました。


     
     久々のJR三宮駅。

     
     賑わう元町通り。

     
     クリスマスの雰囲気満々の南京町。

     
     北野坂。有名なジャズの老舗ライヴ・ハウス「ソネ」があります。


 5時半頃「ホリーズ」に入り、6時にステージ開始です。
 ホスト・バンドの演奏のあとは、食事タイム。しばしの歓談のあと、ジャム・セッションが始まりました。
 ぼくはうわべは平然としてましたが、昼間人混みの中を長時間うろついていたせいで(ストレスからだと思うけど)頭痛が起こり、テンションは下がりっぱなしでした。おまけに久しぶりに人前で弾くかもしれないという緊張から、少し震えていたかもしれません。
 そんな時に名定さんが声をかけてくれました。「MINAGIさん、弾きませんか」


 ぼくはついにステージに戻りました。
 4年ぶりでした。
 有末さんの奥様は涙ぐんで喜んでくださいました。 
 下に貼ったのは、その時の演奏です。曲は、マット・デニス作の名バラードで、有末さんのお気に入りのひとつである「エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー」。
 三浦さん、高野さんともに、関西で活躍している実力派ミュージシャンです。4年ぶりの演奏がこういう素晴らしいミュージシャンとの共演、もったいないくらいです。




※イヤホン、またはヘッドホンを繋ぐと鮮明に聴けますよ



 そして、この12月4日は、有末さんの命日でした。



     
     ワタクシです(b)

     
     高野正明(drs)

     
     三浦敦子(pf)

     
     神谷友紀(vo)




 ベースはまだまだ不安定ですが、語りたいことが楽器からこぼれ出してきているようです。
 イマジネーションが枯れてしまっていたかつての自分からは想像もできません。
 今の時点の自分のすべては出せました。今はそれだけで満足です。
 ここまで戻れたんだなぁ。長かった。


 本格的な復帰に向けての、小さいけれど重い一歩が踏み出せた、と信じたいです。


 文字通り命がけで難病と闘っている大分在住の友人が、夢だったライヴ・ハウスの経営をもうすぐ実現させそうです。
 「オープンしたら弾きに来てください」、そう言って頂きました。
 ベースを持って、必ず行くつもりです。
 ミュージシャンは、お呼びがかかればそこがイラクだろうと北朝鮮だろうと、喜んで行かせて頂くのです。



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