ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

カルメン・マキ&OZ

2007年03月31日 | 名盤

 カルメン・マキ&OZが、デビュー3年目にして発表したファースト・アルバムこそ、名盤の呼び声高い「カルメン・マキ&OZ」です。
 このアルバムがリリースされた頃は日本のロック界はまだ黎明期にあった、と言ってもいいでしょう。しかしそれにもかかわらず、こんなにクォリティの高いレコードを作り上げることができたのはまさに驚異的なことではないでしょうか。ぼくなどは、このアルバムは日本のロック史上に残る名盤ではないか、などと思っています。
 また、この当時の女性ロック・ボーカリストといえば、他には麻生レミがいたくらいで、カルメン・マキは女性ロッカーのはしりでもあると言えるでしょう。


     


 このアルバムには全6曲が収録されていますが、その6曲ともぼくにとっては名曲です。中でもイントロのギターのリフが印象的な「午前1時のスケッチ」、ドラマティックな構成を持つ大作「私は風」はOZの代表作ともいえるハード・ロックであり、日本のロック界が誇ってもいい名曲だと思います。そういえば、「私は風」は、中森明菜もカヴァーしていますね。
 全般的にブリティッシュ・ロックの影響は伺えるものの、OZのサウンドはその焼き直しなどではなく、しっかりとしたオリジナリティを持っています。


     


 ハリとツヤのあるマキの力強いヴォーカルと、メタリックなシャウトには圧倒されるばかりです。そしてそれに絡む春日博文のギター、単にハードなだけではなく、非常にメロディアスで、存在感たっぷりです。メンバー・チェンジの激しいOZにあって、バンドの個性をきわだたせているのがこのふたりだと言えるでしょうね。
 作曲のほとんどは春日博文が手掛けていることが、OZの独特な暗さと重さに影響を与えているようです。作詞はカルメン・マキ自身と加治木剛のふたりで担当していますが、その叙情的な歌詞も、マキのヴォーカルとバンドのサウンドの魅力を充分引き出すことの後押しになっていると思います。


     


 ぼくがカルメン・マキ&OZを知ったのは高校時代でしたが、その頃はOZはすでに解散したあとでした。ぼくは、OZのコピーバンドによって「私は風」を知り、すぐにレコードを手に入れました。一聴して大きなショックを受け、すぐに大ファンになったんです。
 マキさんは今でも第一線で歌い続けています。OZ時代とはまた少し違った音楽性で活動を続けているようですが、相変わらず存在感のあるヴォーカリストとして君臨しています。


     



カルメン・マキ&OZ
  ■歌・演奏
    カルメン・マキ&OZ
  ■リリース
    1975年2月
  ■プロデュース 
    金子章平
  ■収録曲
   Side-A
    ①六月の詩(詞:加治木剛  曲:春日博文)
    ②朝の風景(詞:Maki Annette Lovelace  曲:春日博文)
    ③Image Song(詞:加治木剛 & Maki Annette Lovelace  曲:春日博文)
   Side-B
    ④午前1時のスケッチ(詞・曲:加治木剛)
    ⑤きのう酒場で見た女(詞:加治木剛  曲:春日博文)
    ⑥私は風(詞:Maki Annette Lovelace  曲:春日博文)
  ■録音メンバー
   カルメン・マキ & OZ
    カルメン・マキ(vocal)
    春日 博文(electric-guitar、acoustic-guitar①)
    千代谷 晃(electric-bass①②③⑤⑥)
    石川 清澄(piano①②③⑤⑥,organ①②⑥)
    古田 宣司(drums①②③⑤⑥)
   -----------------------------
   ゲスト
    深町  純(piano④⑤,organ②③④⑥,melotron①,synthesizer①③⑥,clavinet①)
    安田 裕美(acoustic-guitar②③⑥)
    成瀬 ヒロ(electric-bass④)
    西   哲(drums④)



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ラッハ・ドッホ・マール (Lach Doch Mal)

2007年03月30日 | 名盤


 すっかり春めいてきたここ数日です。陽射しも明るさと暖かさを増してきました。
 気が付くとわが家の庭にもパンジーがたくさん咲いています。桜もあちこちで大きく開き始めました。
 今日も春の陽光が降り注いでいますが、そんな中で聴いているのが山中千尋の通算5作目、「ラッハ・ドッホ・マール」です。
 このタイトルは、ドイツの絵本作家・ヤーノシュの言葉で「とにかく笑おう」という意味だそうです。

    



 名門レーベル「ヴァーヴ」へ移籍しての第1作だった前作「アウトサイド・バイ・ザ・スウィング」の録音メンバーとは変わって、この作品では、澤野工房時代に組んでいたラリー・グレナディア(b)とジェフ・バラード(drs)と"再会セッション"を繰り広げています。
 勝手知ったるこの二人が脇を固めているおかげでより安心感があるのでしょうか、心持ち前作よりもリラックスし、そのぶんグレード・アップしているように聞こえます。


 オーソドックスなジャズを演奏する中にもコンテンポラリーな音の響きがするのが千尋嬢の特色だと思うのですが、このアルバムからもそれが伺えます。小柄な体を一杯に使ったかのようなエネルギッシュな演奏も相変わらずです。
 また、曲によってはギターやバンジョーを加えたり、エレクトリック・ピアノやオルガンを使ったりして新しい一面を見せてくれます。
 スタンダードの「What A Diff'rence A Day Made(縁は異なもの)」では8ビートと4ビートを使い分けたり、複数のキーボードを使用したり、転調を効果的に多用したりして、千尋嬢の遊び心が満載なのが伺えてとても楽しい。





 シャープでコロコロと音が転がるような、それでいて力強いスリリングなピアノで、モーダルな演奏からコーダルでメロディー重視の演奏まで幅広くこなしています。そして、スタンダードの斬新な解釈、個性的なオリジナル曲など、千尋嬢の大きく広がる世界を見ることができます。
 初回盤特典のDVDでは千尋オリジナルの「ワン・ステップ・アップ」を演奏している楽しそうな姿が収録されています。


 今日のような天気の良い春の午後に聴くと、「とにかく笑おう」という気持ちになれそうな作品です。





◆ラッハ・ドッホ・マール/Lach Doch Mal
  ■演奏
    山中千尋(piano)
  ■リリース
    2006年9月13日
  ■プロデュース
    山中千尋
  ■レコーディング・エンジニア
    ティム・コンクリン/Tim Conklin
  ■収録曲
    ① カン・ビロン・ヴリュ・ダンセ/Quand Biron Voulut Danse (Traditional)
    ② サボット/Sabot (山中千尋)
    ③ カッコーのセレナーデ/Serenade To A Cuckoo (Roland Kirk)
    ④ RTG/RTG (Geri Allen)
    ⑤ ザ・ドルフィン/The Dolphin (Luiz Eça)
    ⑥ ナイト・ループ/Night Loop (山中千尋)
    ⑦ ワン・ステップ・アップ/One Step Up (山中千尋)
    ⑧ ラッハ・ドッホ・マール/Lach Doch Mal (山中千尋)
    ⑨ リーベスリード~愛の悲しみ/Liebesleid (Fritz Kreisler)
    ⑩ モード・トゥ・ジョン/Mode To John (McCoy Tyner)
    ⑪ 縁は異なもの/What A Diff'rence A Day Made (Maria Mendez Grever, Stanley Adams)
    ⑫ ザッツ・オール/That's All (Alan Brandt, Bob Haymes)
  ■録音メンバー
    山中千尋 (acoustic-piano, electric-piano, organ)
    ラリー・グレナディア/Larry Grenadier (bass)
    ジェフ・バラード/Jeff Ballard (drums)
    ジョン・カーリーニ/John Carlini (guitar①⑤, Banjo③)
  ■レーベル
    Verve

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