ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

オーロラの救世主 (A New World Record)

2007年06月02日 | 名盤


  エレクトリック・ライト・オーケストラ(以下ELO)のサウンドって、なんてポップでキャッチーなんだろう、といつも思ってしまうのです。彼ら、というより、バンド・サウンドの支柱であるジェフ・リンのポップ・センスや、アレンジの妙には少なからず心を動かされます。


     


 バンド内にヴァイオリンとチェロを加えた特異な編成ですが、紡ぎだすサウンドはとてもオーソドックスなポップ・ロックです。オーソドックスとは言っても、決してありきたりのサウンドではなく、そのメロディー・ラインの美しさといったら、あのビートルズにも匹敵するのではないか、と思ったりするほどです。


 このアルバムに収められている曲は、どの曲がシングル・カットされても不思議のない佳曲ぞろい。アルバム自体、全英5位、全米6位の大ヒットを記録して、プラチナ・ディスクを獲得しています。そして、その中から「ドゥー・ヤ」(全米24位)、「オーロラの救世主」(全米13位)、「哀愁のロッカリア」(全英9位)、テレフォン・ライン(全米7位)の、4曲のシングル・ヒットが生まれました。


 1曲目の「タイトロープ」から耳を奪われます。現代的なシンセサイザーの音に始まり、それと対比するように荘厳なストリングスが入ってきます。一転メジャーに転調、ミディアムのシャッフルに乗って軽快なロック・サウンドが繰り出されます。
 2曲目の「テレフォン・ライン」はELOの、というより1970年代を代表するバラードのひとつだと思います。ナチュラルで美しいメロディーを、優しいストリングスと、厚いコーラスが支えています。サビ部分のドゥ・ワップを思わせるコーラスがとてもノスタルジック。泣ける曲ですね。


 3曲目は「哀愁のロッカリア」。タイトルから想像できるように、アリアとロックン・ロールを融合させた、実験的ながらとても楽しいハードな曲です。
 そのほか、これもポップな「オーロラの救世主」、珍しくハードなギターのリフが印象的な「ドゥー・ヤ」など、名曲のオン・パレードです。


     


 クラシカルなストリングスと現代的なキーボード群の対比も面白いと思います。またどの曲にも取り入れられている整然としたコーラスが効果的ですね。
 楽しく聴かせるための仕掛けも多く、そのあたりもポール・マッカートニーの作風に似ている、と言えるでしょうか。


 ELOの4枚目のアルバム「エルドラド」あたりから顕著になってきたポップ性のひとつの集大成が、この「オーロラの救世主」というアルバムだと思います。
 デビュー以来の、5枚(ベスト・アルバムを除く)のアルバムで育んできた、ELO独自のポップ・ロックのひとつの到達点と言えるかもしれません。



◆オーロラの救世主/A New World Record
  ■歌・演奏
    エレクトリック・ライト・オーケストラ/Electric Light Orchestra
  ■リリース
    1976年9月11日
  ■プロデュース
    ジェフ・リン/Jeff Lynne
  ■収録曲
    A① タイトロープ/Tightrope
     ② テレフォン・ライン/Telephone Line  ☆全米7位、全英8位
     ③ 哀愁のロッカリア/Rockaria!  ☆全英9位
     ④ ミッション/Mission (A World Record)
    B⑤ ソー・ファイン/So Fine
     ⑥ オーロラの救世主/Livin' Thing  ☆全米13位、全英4位
     ⑦ アバヴ・ザ・クラウズ/Above the Clouds
     ⑧ ドゥー・ヤ/Do Ya  ☆全米24位
     ⑨ シャングリ・ラ/Shangri-La
     ※ All tracks written by Jeff Lynne
     ☆=シングル・カット 
  ■録音メンバー
   【Electric Light Orchestra】
    ジェフ・リン/Jeff Lynne (lead-vocals, guitars, electric-piano, percussion)
    リチャード・タンディ/Richard Tandy (keyboards, synthesizers, guitar, percussion, backing-vocals)
    ケリー・グロウカット/Kelly Groucutt (bass, percussion, lead-vocals⑦, backing-vocals)
    ベヴ・ベヴァン/Bev Bevan (drums, percussion, backing-vocals⑦)
    ミック・カミンスキー/Mik Kaminski (violin)
    ヒュー・マクドウェル/Hugh McDowell (cello, percussion⑦)
    メルヴィン・ゲイル/Melvyn Gale (cello)
   【guests】
    メアリー・トーマス/Mary Thomas (operatic-vocals)
    パティ・クアトロ/Patti Quatro (vocals <uncredited>)
    ブリー・ブランド/Brie Brandt (vocals <uncredited>)
    アディー・リー/Addie Lee (vocals <uncredited>)
  ■チャート最高位
    1976年週間チャート  アメリカ(ビルボード)5位、イギリス6位、日本(オリコン)60位
    1977年年間チャート  アメリカ(ビルボード)6位、イギリス16位
    1978年年間チャート  イギリス47位

 

コメント (4)
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