ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ぼくがベースをはじめたわけ

2008年10月19日 | 随想録

♪演奏中に脳内がこんなになったことも、かつてはしばしばありました…


 今、ぼくの周りを見回しても、音楽と関わっている身内は誰もいません。ただのひとりも、です。
 その代わり、と言ってはなんですが、絵に関わっている者はかなりおります。父方の祖母は日本画を近所の人に教えていたし、母は趣味の油絵をもう数十年も描き続けています。そのほかには、昔、少女漫画誌に投稿しては、よく賞を貰ってきてた人、美大を出てグラフィック・デザイナーになっている人などなど。
 しかし、音楽に関わっている者は、なぜかぼくだけなんです。不思議だ…


 幼稚園の時、オルガン教室をたったの一日で挫折したのちは、テレビの歌番組を見るくらいで、ほとんど音楽とは無縁の少年時代を送っておりました。ところが小学校で耳馴染みの良いクラシックと接して音楽に対する垣根が下がり、小4の時には初めてビートルズを聴いていずれは「Let It Be」をピアノで弾いてみたい、という野望が芽生えました。しかし、家では姉がエレクトーンを習っていた程度で、自分と音楽との距離はまだまだ遠かった。中学に入ってからは野球少年だったし。


 中3の3学期、「最後の音楽のテストのテーマは、好きな曲を好きなメンバーで演奏すること」というお達しが出ました。友人Kとふたりで組むことになり、そこでひらめいたのが「Let It Be」
 放課後、ひそかに音楽室へ行き、先生に平蜘蛛のようになって頼みましたよ。「先生、レット・イット・ビー弾けるように教えてくださーい
 だいたい、若い女の音楽の先生が受け持つ授業に、ナマイキ盛りの中学生がおとなしく授業を受けていたことなどそれまで全くなく、この時も先生は一瞬「何をたくらんでいるのか…」と疑惑を抱いたようでしたが、ぼくが真剣だと見てとるや、快く承知してくれました。


 なにぶん地方都市のことですからピアノが弾ける男の子がすでに珍しい存在なんです。そこでぼくがピアノを弾くとどうなるか。
これはウケる!
と計算するのは雑念まみれの中学生としては当然のことでありましょう。


 基礎が全くない状態なので、曲そのままのコピーなどとてもできない。そこで先生はイントロを簡単にアレンジ、あとは右手でメロディ、左手でブロック・コードという手抜きワザを伝授して貰いました。
 それからはもう、練習に励みましたよ。でもね、
 「きっとレット・イット・ビーを弾けるようになってやるんだ
と決意したわけじゃなくて、女子連中に
 「MINAGIくんがピアノ弾くのぉぉ~ええぇぇぇ~」と言わせてモテてやろうという欲望だけでした。いやもう、今思うと、ええ、
バカ丸出しですね。


 しかし、この頑張りが、コードの構成音が瞬時にわかる、という思わぬ成果に結びつきました。今でもこの成果はたいへん役に立っています。
 そしてこの時に、楽器を演奏することに対しての抵抗も無くなっていったのでした。


 さて、話は高校時代に進みます。入学間もない頃、クラブのオリエンテーションがありました。そこで吹奏楽部が演奏したのですが、部紹介の場ですから、難しい曲なんかじゃなくて、ディスコ・ソングの「ハッスル」(ヴァン・マッコイ)なんかを披露しています。
 この時のドラマーがとても上手く、カッコ良かった。もう考えることはただひとつ、ですね。
 「これはオンナのコにモテるはず!(こればっかし…)
そしてそのまま吹奏楽部のドアを叩いたのでした。


 しかし世の中甘くない。ふだん演奏するのはほとんど吹奏楽用の曲で、その時担当させられるのはシンバルだの大太鼓だのばっかり。あぁ、こんなハズじゃなかった… しかも放課後は、練習台とメトロノーム相手にひたすら基礎練習の繰り返し。先輩をさしおいて、初心者がすぐにドラムセットに座ることができるわけがない。


 人間万事塞翁が馬、などと言いますが、この時の基礎練習が知らない間にリズム感を養ってくれてたんですね。これにものちにたいへん助けられました。
 ただ、この世には「グルーヴ感」というものがあり、それが無いといくら正確に演奏してもダメなのである、ということが解ったのものちのことで、それはそれでたいへん悩まされました…


 そうこうしているうちに毎年恒例の定期演奏会の日が近づいてきます。1500人クラスの大ホールがほぼ埋まる一大イベントです。この時にはポップスもたくさん演奏するのですが、当然先輩ドラマーが脚光を浴びることになります。
 半分クサっていたぼくに部長が言いました。「ポップスの時、エレキベース弾けよ」。
 

 こうしてついにベースと出会ったのです。ちなみに、その時の曲の中に、スティーヴィー・ワンダーの「サー・デューク(愛するデューク)」がありました。もちろんあの複雑なキメのユニゾンはベースも参加。うぅぅ~、初心者にはあんまりな仕打ちではないか~


 定演の練習には、OBで国立音大卒の方がコーチに来ていました。地元でビッグ・バンドを運営している方ですが、ある時いきなり「お前、うちのバンドに来い」
 練習場所に行ってみると、「ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテスト ビッグバンド部門準優勝」などの華々しい賞状の数々が……


 そしていきなり100曲以上の譜面をドサッとばかりに渡され、こう申し渡されます。「弾けるようにしときなさい」。ロック、フュージョンの譜面もありましたが、オーソドックスな4ビートものもタップリ!その頃は秋から冬にかけてダンスパーティーが盛んに催されていましたから、当然「それに間に合わせろ」ってことです。
 こうしてワケの解らぬうちにジャズとの出会いも果たしてしまったのです。


 その後、不思議とベースとは縁が切れることがなく、今に至っているというわけです。



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久しぶりにCDを買いに街へ

2008年10月13日 | Weblog~雑記
     ♪スポーツ紙の見出しはどこも「岡田監督辞任」で踊ってました


 今日は雲ひとつない秋晴れです。空を見上げるだけで良い気持ちがします。
 そんな日にぼくは何をしているかといえば、窓から射し込む秋の陽ざしに身を委ねながら、昨日買ったCDに浸っています。
 最近ずっと、仕事以外は家にひきこもっていました。この間ある友人に「近頃CD買いに行ってる?」と聴かれ、そういえば街にも久しく出かけてないな~、と思ったわけです。ネットでは時折り注文してるんですけどね。


 昨日は薄曇りの一日でした。時々ほんのりやわらかな光が射しますが、吹く風は冷気を含んでいて、まさに秋の風です。なんとなくもの寂しいような、雑踏やひと気が恋しいような、そんな気がしたので、おろしたての秋物を着て久方ぶりに街へ出かけてきました。
 途中寄ったコンビニで見つけたスポーツ紙には「岡田辞任」の大見出しが。これは予想されたことではあったのですが、さすがに早々の辞意表明には少し驚かされました。北京五輪を境に失速し、歴史的大逆転負けを喫した今年のタイガース。続投が決まっていたとはいえ、岡田さんもその責任は痛感したのでしょうね。
 などということをツラツラ思いながら、車を街へと走らせます。


 コイン・パーキングに車を停め、散歩がてら商店街へと向かいます。行き先は大手の新星堂と、間口は小さいながら時々掘り出し物が見つかる「G」というお店。ウサ晴らしに、「欲しいと思ったものは全部買って帰ろう」と思いたち、途中銀行のキャッシュコーナーに寄ります。またも衝動買いの予感(^^)。


     
     山中千尋「ブラヴォーグ」


     
     ビル・エヴァンス「インタープレイ」


     
     s.m.v.「サンダー」


 新星堂では山中千尋の新作「ブラヴォーグ」、ビル・エヴァンス「インタープレイ」、s.m.v.「サンダー」と、ジャズ系ばかり3枚を買い込みました。
 千尋さんの「ブラヴォーグ」は3000円のものと3500円のものの2種類ありました。ちょっと考えましたが、初回限定でDVDが付いている3500円の方に手を出してみました。
 s.m.v.とはスタンリー・クラーク、マーカス・ミラー、ヴィクター・ウッテンの超がつくほどのテクニックを誇るベーシスト三人が集っているユニットです。いわゆるコンテンポラリー・ジャズと呼ばれる一群に入るんでしょうね。火花を散らすような三人のプレイの応酬を期待したんですが、聴いてみると、丁々発止としたテクニックのぶつかり合いよりも、三人のベースを練り上げて土台にし、その上で音楽を作り上げている、って感じでした。
 エヴァンスの「インタープレイ」はジャズの名盤ガイドにもしばしば取り上げられていますが、まだ聴いたことがなかったので即手に取りました。


     
     フェイセズ「馬の耳に念仏」


     
     グランド・ファンク・レイルロード「戦争をやめよう」


     
     エリック・カルメン「ベスト・オブ・エリック・カルメン」


     
     マイケル・シェンカー「ストーリー・オブ・マイケル・シェンカー」


 「G」ではフェイセズの「馬の耳に念仏」、グランド・ファンク・レイルロード「戦争をやめよう」、エリック・カルメンの「ベスト」、マイケル・シェンカーの「ストーリー・オブ・マイケル・シェンカー」と、こちらはロック・ポップス系ばかり4枚を。
 フォリナーとかフリー、プロコル・ハルムなんかも欲しかったんですが、残念ながら店頭にはあまりなく、今日のところは断念です。
 いつも思うんですが、このお店の何人かのスタッフ、今時のファッションに身を包んだ若い人たちばかりなのですが、その外見とはうらはらに言葉遣いや態度は感じが良いのです。また、小さなお店なんですが、流行のものばかりでなく、ぼくの好きな60~70年代ロックもわりといろいろな種類が置いてあるので、ついこの「G」へは足が向くんですよね。


 というわけで昨日の収穫は7枚です。
 CDの見て歩きは、ここのところの趣味になってるなあ。
 この間、ある人に「休みの日は何してるの?」と聴かれて、一瞬言葉に詰まったんです。ずっと体調が悪くて、遠出もしていないし、何かを創り出しているわけでもない。でもよく考えてみたら、「CDや本の見て歩き」「ライヴハウス巡り」なんかも立派な趣味ですよね。
 長いようで短い人生、聴くことのできる音楽は時間的に限られてしまいます。せっかくの時間、もっともっといろんな音楽に出会いたいものです。
 とりあえずamazonで予約注文している小島良喜さんのソロ・アルバムが次の楽しみになってます~(^^)



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音楽にまつわる隠語・符牒あれこれ

2008年10月05日 | ネタをたずねて三千里
      ♪今日の動物(そんなコーナーないですけど)。貴婦犬。


 どの分野や業界にも隠語や符牒はあるものですね。
 「目線」「おあいそ」「王手をかける」などはもう一般化していて、ふだん誰しも当たり前のように使っています。
 「おあいそ」は、お寿司屋さんの隠語だそうです。だから、喫茶店なんかで「おあいそ」なんて言うのは、お寺で「アーメン」って言うのと同じくらいヘンなんだそうです。しかも、お店の人が使う言葉なので、例えばおかみさんがご主人に「あちらのお客さん、おあいそです」と言うことはあっても、お客さんが「オアイソ~」なんて言うのは本当はおかしな使い方なんですね。でも、それくらい言葉が定着しているってことなんでしょう。


 新聞業界には「カクザイ持ってタタク」と言う隠語があります。「角材で叩く」。ブッソウですって? いやいや、ご心配なく。本当は「拡材持って叩く」です。拡張材料、つまり購読して貰えるように景品などを持って(各家庭のドアを)叩く(ノックする)、ってことなんだそうです。


 さて、もちろん音楽の世界にも隠語や専門用語はあります。
 「カラオケ」や「ドサまわり」なんて、もうかなり広まってるんじゃないかなあ。
 直接音楽には関係ないけれど、ニューヨークのことを「ビッグ・アップル」なんて言うのも、一種の隠語ですね。また、ジャム・セッションなんかに飛び入りすることを「シット・イン」と言いますが、こういう隠語を知らない人が翻訳したために、
 「彼はニューヨークで飛び入りに参加した」
という文が、

 「彼は大きなリンゴの中で座り込んだ」

 なんていうワケの解らないものになってしまって、読んでた人がとっても不思議がった、という話を聞いたことがあります。さぞかし大きなリンゴを連想したんでしょうね~


 「ケツを掻く」 (上品でスミマセン)なんてのがあります。「ケツ」というのは「おしり」(関西では『おいど』)のことでございます。これは、「人の仕事を横取りする」という意味であります。久保田が不調で二軍落ちしている間に、藤川球児がクローザーの座を確保した。これを「藤川が久保田のケツを掻いた」と言うんですね。阪神ファンじゃなければわかりにくいかも…
 

 阪神が出たついでに「トラ」。ヨッパライのことじゃないですよ。仕事が重なったりした時、自分が行くことのできない方に代役を入れますが、これが「トラ」です。語源は「エキストラ 」。この「トラ」にあまり上手い人を入れると、自分が「ケツを掻かれる」ことになりかねなかったするワケですね。


 山下洋輔氏の著作やテレビなどで紹介されたことがあるので、知っている人は知っている、知らない人は全く知らないのが、「言葉のひっくり返し」です。
 「ジャズ」→「ズージャ」
 「オンナ」→「ナオン」
 「クスリ(特殊方面のクスリです)」→「スリク」・・・。
 ああ、どんどん上品になっていく・・・

【例文】 「ピアノが好きで、ジャズばっかりやって、お金を家に入れないんで、奥さんに逃げられちゃった」
 「ヤノピ好きで、ズージャばかりやって、ネーカーをチーウーに入れないんで、チャンカーにゲーニーされた(ゲルニされた、でも可)」

 となるわけです。
 悲惨な話のはずなのに、あまり悲惨には聞こえないですねぇ。 ・・・ははぁん、さては、それがこの隠語の長所なのかもしれないな(笑)。
 名前だってひっくり返しちゃいます。著名なジャズ・ピアニストの佐藤允彦さんの綽名は「トーサ」。知り合いの安田カオリちゃんは「ダーヤス」。名ドラマーのジョージ大塚さんは「ジージョ」。ところが、同じく名ドラマーの故・ジョージ川口さんは「ジョージ」でした。ああややこしい。


 クラシックの声楽家はイタリア式の「ド・レ・ミ~」を使ったりしますが、ジャズは英語で「シー・ディー・イー~」。ドイツ音名の「ツェー(C)、デー(D)、エー(E)、エフ(F)、ゲー(G)、アー(A)、ハー(H)」を使う人も多いようです。
 ある年配のバンド・マスター(バンマス)がおられます。『テッペンにとまったハエが滑り落ちた』とまで言われた、見事な禿げ頭がトレードマークのお方です。ある時、そのバンマスがメンバーに楽譜を配りました。渡された楽譜を見ていたピアニストがバンマスに、「ここの小節、音が見にくいんですが、B♭、G、B♭、G(ベー、ゲー、ベー、ゲー)でいいんですか?」と尋ねました。するとそのバンマス、澄ました顔で

 「いや、H、G、H、G(ハー、ゲー、ハー、ゲー)だよ」

 と言ったので、その場が大爆笑に包まれた、そうです。


 長くなりそうですので、この続きはまたいずれ。
 


     
      最近好きな動画です。油断しちゃいけないよ。


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