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キン・フー監督『迎春閣之風波』その4

2018-07-26 06:25:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 それを2階から見下すワン。「何してるの?」「何でもない」「お代を払わない上に乱暴を」「文句あるか? 何者だ?」「ここの女将よ。店を間違ったようね。うちは金貸しじゃない」「何の店でも構わん。やれ、どうした?」2階を見上げる3人。「行政官殿」。膝まづく3人。行政官「何事だ? ここで何をしていた?」「武術の稽古をしてたんです」「武術の稽古です」「稽古だとさ」「頼りないわね。部下のしつけも満足にできないの?」「できるとも。民の平和な生活を守るため朝廷に雇われてるのに。一体このザマは何だ。お前たちを指導している私と君主の期待を裏切る行為だ。お前たち……役立たずめ! 失せろ!」「お代を。次はおとなしく飲んで」「分かりました。行儀よくします」「待って、総督殿」「何です?」「博打でインチキを」「してない。誤解です」「お金を返しなさい」「返して下さい」「待って。忘れものよ」「どうも」。
 シャオシュンズ、戻ってきて「つまみもほしいそうです」「つまみ?」(中略)
 「行政官と女将は仲が良さそうだね」ワン「友だちですよ」。ワン、行政官に「何か言って」「何を?」。女将、ひそひそ話。行政官「ああ、どうも皆さん。お座り下さい。賭博のカネを巻き上げ無銭飲食しようとした輩がこの店にいましたが、私の指導が未熟だったせいで……(女将に言うことを教えてもらいながら)部下に横暴な振る舞いを受けたら是非知らせて下さい。(女将に)いい?」「まだあるわ」「まだ?」「このワンさんの店では二度と騒動は起きません。安心してご飲食、賭け事をお楽しみ下さい」。
 役人、2人入って来る。1人は金髪の男。「誰?」「親王様だ」。行政官、膝まずき「親王様、郡主様、行政官のハラクです」「店の者は?」給仕たち、膝まずく。賭場にいた男は掛け金をすべて自分の懐の中へ。「動くな。手を出せ。驚かせたな。立っていいぞ。立て」。マントを脱ぐ親王。「客は下がってよい」。4人逃げ出す。歌の男、入ってくる。「行政官、立って話せ。この土地を治めているのか?」「はい」「何日か滞在する」「宿泊先を手配します」「いや、この宿に泊まる」「粗末なところですから、私の兵舎に行かれては?」「上に立つ者は庶民と接してその苦しみを知らねばならん。違うか?」「おっしゃる通りです」行政官「親王様、2階でお休みください。静かで広い奥の部屋を」「よく来るのか?」「はい」「店の者と親しいのか?」「ええ、ここでの暮らしが長く、この店もよく存じています。ご安心下さい」「あの者は?」「彼は女将の従弟です」「働いてどのくらい?」「昨日来ました」「それなのに親しいのか?」。膝まずく行政官。「質問には正直に答えろ。あの者は誰だ?」「女将の使用人です。いや……、あの者は……出納係の使用人です」「立て」「はい」「この土地に詳しいな?」「お陰さまでこの辺りは平和で」「役人が民を苦しめる事件は?」「ありません」「反逆者や密偵は?」「いません。私の統括下で諜報活動などありえません」「反逆者を一人見つけたぞ。連れて来い。入れ。知り合いか?」「いいえ。あの者は存じません」「よく見ろ」。ワン、ジュンと目くばせ。「どうだ?」「本当に存じません」「朱元璋の手下だ。お前の管轄区内で暗躍してた」「申し訳ございません」「給仕たちを下がらせろ」「給仕は下がれ!」「取り締まりが徹底されてない。リュウは名の知れた密偵で、配下は大勢いるはずだ。女将はリュウを知ってるな?」「はい。同業者だから当然です」「商売の邪魔をしたな」「いいえ」「下がれ」。ワン、下がる。「リュウをどうしたらいいと思う?」「反逆者は打ち首に」「そうしろ。斬首に処せ」「リー・チャーハン。薄汚い野郎め」。閉じられたドアの向こうで「末代まで呪ってやる」の声。ザクッとした音。
 「行政官」「はい」「お前の統治下は平和ではないようだ」「申し訳ありません」「明日は視察するから準備を」。男入って来て「親王様、郡主様」「調査は?」「終わりました」「この辺りは平和か?」「庶民に乱暴を働いていた兵士がいました」「誰だ?」「ハラクの部下です」「ハラク? お前の部下をどうすればいい?」「お裁き下さい」「ワンアル、どうする?」「打ち首に」「厳し過ぎないか?」「見せしめにしないと」「その者は?」「外にいます」「見せろ。連れて来い。こっちへ」。4,5人の男。「お助けを!」「他に何か? この宿にお泊りで? 疑わしい点があります」「何だ? 言ってみろ」「よそ者がいます」「(中略)よく調べたな。身元不明な者は? 行政官!」「女将から話を聞きます」。焦るワンとジュンら。「余計なことを言うな。ワン・レンミー、本名は?」「ワン・シウですが皆通称でワン・レンミーと呼んでいます」(また明日へ続きます……)

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P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で教室長だった伊藤さん、連絡をください。福長さん黒山さんと首を長くして待っています。また、伊藤さんの近況を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

キン・フー監督『迎春閣之風波』その3

2018-07-25 05:41:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 歌の男「引っ張るな」「何する気?」「服が破れる。酒を飲めば悩みも吹っ飛ぶ♪酔いつぶれるまで飲もう♪」「もう十分でしょ。出てって」「酒代を稼がせてくれ」「歌うのは止めて」「いいじゃないか」商人「私が払おう」「どうも。助かった」銭を4枚払う商人。「足りるかな?」「十分だよ」「もう歌わない?」「ああ、酒代を払うよ。ほら。足りるか?」「ええ」。
 酔いつぶれている客が一人だけ残っている。食堂の掃除をする女給仕たち。「ワンさん、この人どうします?」「部屋に寝かせて」「手を貸して」「まだ飲み足りねえ。どうする気だ?」「チャーハンは何しに来るの?」「人と会うためだ」「誰と?」「朱元璋の戦略図を売り払おうとしてる奴だ」「誰なの?」「シェンだ」「朱元璋の参謀の?」「そうだ」「どうするの?」「仲間を待つ」「仲間?」「接触してくる」。
 ワン、商人に「ジュンさん、上の部屋を使ってね。シャーさん、ちょっと来て。話があるの。今後はこの店で働くフリを」「分かった」「ワンさん、気絶してる人がいる」。運び出し机の上へ。ワン「大変だわ。薬を持ってきて」。ジュン「私がやった。そいつはチャーハンの密偵だ。大都で見たことがある。埋めなさい。あの酔っ払いも一味だ」「泥酔してたから部屋へ運んだのよ」「あいつはモーチーという南で有名な盗賊だ。部屋に?」「寝てるわ」。部屋はもぬけの殻。ワン「まだ近くにいるわね」ジュン「明日話そう。私は明日の朝早く先に出発するが、今だ!」。モーチーを捕まえる。「誰に雇われた?」「誰にも」「答えて」「親王様だ」「親王様? 名前は?」「チャーハン」「何が目的?」「店を偵察に来た。善良な民と報告するから見逃してくれ」「お前ら全員で何人だ?」「5人」「残りは?」「1人は一緒に店へ」「ホーだな」。うなずく密偵。「さっきの男か。他には?」「今日来た強盗さ。給仕たちの腕を試した」「裏庭に縛ってある」「いなかったぞ」「逃がしたな? 答えろ」「そうだ。白状したから見逃してくれ」。(中略)
 ジュン、密偵を埋める。「3人を追え」「分かった」。
 美しい雲。岩場に寝転ぶ3人。「起きろ」「何だ?」「行こう。親王様が省都を過ぎた頃だ。こんなところに三味線弾きがいる」。歌の男「サンフーだな?」。乱闘。3人とも殺して、馬で駆ける歌の男。
 ジュンに「こちらへどうぞ。出納簿と元帳とお金よ。本当に帳簿をつけるの?」「見よう見まねでね」。「ご注文は?」「後で頼む」「そちらは?」「菓子を」「分かりました」「両替してくれ」。ジュンに「両替を。下の引き出しよ」。(中略)
 「いらっしゃい。お客さんだ!」。剣を机の上に置く客。「注文だ」「何にします?」「まず酒だ。待て」「何か?」「頼みたいことがある。山のふもとに酒を届けてくれ。待て。聞こえないのか?」「出前はやってないの」「客の言うことが聞けんのか?」「何よ。偉そうに」ジュン「お客様に失礼だ。すぐ出前致します。酒を一本で?」「ああ」「シャオシュンズ、山のふもとへ酒一本だ」「山のふもと?」「早く行け」。
 「注文を取ってくれ」「注文は?」「つまみを4皿」。無言で去る女給仕。「あの小娘、俺たちに敬意を払っていません。俺らを見くびる店はメチャメチャにしましょう」「バカ者。飲めなくなるぞ。たらふく飲んでからブチ壊そう」「さすが」。無言で机の上に酒を置き、去る女給仕。「さあ、飲め」「まず腹ごしらえとは、総監は思慮深い」「常に総監の計画は完璧だ」「何言ってんだ。大げさだなあ。(賭博に気付き)稼いでくる」。「さあ、たくさん賭けて」「俺に振らせろ。4,5,6。4,5,6」「1,2,3だ」「負けたわね」「1と2と3を足せば6で俺の勝ちだ」「何それ。ズルいわ」。卓に戻り「見ろ、一発で勝った」「さすが勝ちが早い」「俺らの総督は運がいい」「おだてるな」「おつぎします」「強運に乾杯」。
 荒野。「酒の出前です。険しい道で大変でした」「足りない。あと酒2本とつまみ4皿だ」捕虜「お兄さん」「何です?」「何か飲物を恵んでください」「何してる? 早く行け。待て」。お盆を放り投げて寄越す役人。
 さんざん飲み食いした跡。「行くぞ」「待ちなさい。支払いがまだよ」「俺たちは公務で来てるんだ。店に金など払わない」「うちでは払ってもらうわ」「納得できんか。見てみろ。なかなか別嬪だ。悪くないな。払ってやれ。一晩お仕えしろ。いいだろう?」。女給仕に突き飛ばされる3人。ジュン。女たちを抑え込む。「お前ら、死にたいのか? こうしてやる」。店を破壊し始める3人。(また明日へ続きます……)

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キン・フー監督『迎春閣之風波』その2

2018-07-24 05:31:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 ワン「ハラク様」客「あいつは誰だ?」別の客「行政官だ」ワン「遅かったのね」行政官「忙しくてな。遊郭にする気か?」「バカ言わないで」。ハラクに唾をかけるワン。「女の子だらけだな」「全員給仕よ。上に行ってて」「早く来いよ」客「親しいのか?」ワン「役人と懇意にしておけば面倒が減るのよ」。休憩所に戻ってきた女給仕に男「どうだ?」「まだ何も」「あせるな。向こうに戻ってろ」「あの客、怪しくないか?」「単なるバカだ」「ならいいが。チャーハンも密偵を送り込んでるらしい」。
 牛の群れ。旅路を行く若い男。“迎春閣”の看板。「いらっしゃい。ご注文は?」「豚肉の煮つけ」「豚肉の煮つけ!」別の客「ここは初めてか?」。うなずく客。「仕事は?」「しがない商人だ」「どこから来た?」「大都」「滞在期間は?」「決めてない」。
 ハラク「ワン、行くよ」「どこへ?」「役所に顔を出す」「役所なんて放っておいて」「バカ言うな」。
 「お客さんよ、女将さん」「ただ今」「両替を」。「不作で商売あがったり♪食堂は酒を薄めて客に出す♪昨日の残飯の作り直し♪明日にきっと下痢で苦しむだろう♪」と歌う客に「歌うの止めて」「俺は客だ」「お代はきっちりもらうわ」「袖を引っ張るな」「出てって」「破けた。新しい服だぞ。カネは払うよ。注文を取ってくれ」「注文は?」「何がいいかな?」「知らないわよ」「じゃ酒とタンメンをくれ」「酒とタンメン!」。賭博に気付き、「賭博にイカサマはつきもの♪サイコロに工夫して…♪」「うるさい」「負けたからってカッカとするな♪」「邪魔だ、あっちへ行け」。「癇癪持ちの八つ当たり♪親のしつけがなってない♪構うな、放っとけもっと…♪」「何してるの?」「引っ張るな」「歌はいいから飲んで」「お代は誰が払う?」「飲んだ人よ」「カネがない」「無銭飲食?」「歌ってやったろ」「やっぱり。これじゃ商売にならないわ」。
 「いらっしゃい。(また珍客ね)こちらへ。ご注文は?」「酒とタンメン2つ」「歌を歌う?」「歌?」「いえ、別に。酒とタンメン2つ!」。
 「また私の勝ちだ」歌の男「仲間に加えてください」「どうぞ、人は多いほどいい。全部賭けるのか?」「ええ」「本気か?」「多い方がいいんだろ?」「賭けるんだな」。歌の男に料理と酒を持って来た女給仕「いないわ」「賭博のところよ」。「勝ったぞ!」「お酒の用意ができました」「今忙しい。後で頼む」「まったく」。
 例の男、また女給仕の手を握る。「何なの?」「まあ一杯飲め」「何で私が?」「なぜ飲めない?」「お客さんと給仕が一緒に飲んではダメなの」「俺たちは友だちだ。飲んでくれたら腕輪をあげる」「放してくれたら飲むわ」「本当に飲む?」「お酒はほどほどにしてくださいよ」。手を振りほどいて女給仕去る。隣の客「災難だね。気が強い娘だ」「おっかない」。
 給仕の休憩所。男「特に何もないな。気を抜くな」「席に戻ります」。2人の客の気配をうかがう商人。「便所はどこだ?」「あちらです」。便所の方から悲鳴。商人は平然と出て来る。
 歌の男「イカサマをしてる奴がいる」「何を言うんだ」「サイコロに細工が」「妙なことを言うな。イヤなら帰れ」「誰に言ってる?」「お前だよ!」「サイコロを換えろ」。ケンカが始まる。ワン「やめて下さい。サイコロを換えればいい」「サイコロをくれ」ワン「お持ちします」「俺はそんなに勝ってない」「どうしたんです?」「何でもない」「シャオシュンズ(子供の給仕)、下がって。いくぞ」「勝った!」「こちらさんの方が勝ってる」「なぜ私に突っかかる?」「あんたは手癖で勝ってる」「言いがかりをつけるな。証拠を見せろ」「証拠を見せろだと? 偉そうに何だ」「そっちこそ何だ」「ケンカは止めてください。勝敗は時の運ですよ」「彼を見習え」「お前こそ」。給仕の休憩所で「イカサマ師ね。とっちめてやりましょう」。「私が親だ。さあ賭けて」「まだ番じゃない」「いいさ、やらせてあげよう」「皆さん、儲けて下さいよ」「これで元金を取り戻すぞ」「行きますよ」「勝ちますように!」。サイコロ振りの男の手を握る女給仕。「何するんだ?」「イカサマはご法度よ。お金を返しなさい」。剣を抜くサイコロの客は、金を懐に入れ、「動いたら殺す」と言う。「やりなさい」。皆、逃げ出す。「裏口から逃げよう」「動いたら叩き斬ってやる」。乱闘。「俺はタダの客だ。邪魔だ。どけ」「危ない。刀を振り回すな」。捕えられるイカサマ師。「うちではイカサマは許さない。お金を返せば見逃してやる」。うなずくイカサマ師。ワン「そいつを連れてきて。2度とこんなマネはしないで」「こんなマネは二度としません。逃げしてくれて、ありがとうございます。お騒がせしました」。客、自分の卓に戻る。(中略)(また明日へ続きます……)

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キン・フー監督『迎春閣之風波』その1

2018-07-23 05:03:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、キン・フー監督・共同製作・共同脚本の’73年作品『迎春閣之風波』を見ました。
 「チンギス・ハンの治世が基となる元朝。フビライは中原を征服。西暦1366年、至正26年、政治は腐敗し民が苦しんでいた。朱元璋は義民を率いて元朝に抵抗。当時は戦場での戦い以外に諜報戦も繰り広げられていた。元朝側は高い地位の人が諜報戦の指揮、宰相と同じ地位にあり軍司を司る最高機関の長。司法長官であり河南王でもあるリー・チャーハンは絶大な権力を手にする朝廷の役人だ」のナレーション。
 行列が広場で整列し、その真ん中にチャーハンが座る。「チャーハンは陰険で策略に長けた剣術の使い手だった」のナレーション。
 騎馬。「その妹ワンアルは兄の右腕でもあり、朱元璋の参謀から反乱軍の戦略図を高値で買い取る信頼を取り付けていた」のナレーション。
 「兄さんに直接渡したいって」「朱元璋の密偵にこの情報が。すぐ陝西(けんせい)の手下に知らせろ」。
 食堂。「注文は?」「饅頭2つ」。銭を払う客。いぶかる女将。うなずく朱。チャーハンが来る。「迎春閣に泊まると女将のワンに伝えろ」。
 「ワンさん、準備しておけよ」「リュウさん、チャーハンは何しに?」「よく分からないが朱元璋が部下を寄越すらしい。その時に詳細が分かる。帰るよ」「朱元璋は誰を派遣するの?」「分からんが注意しなさい」「チャーハンはここに泊まる気?」「この辺には他にろくな宿もない。それに彼は官舎に泊まるのを嫌がる。ここに泊まるだろ」(中略)。
 岩場を進むワンアル。
 “迎春閣”の看板。欠伸をする男。店の旗。「迎春閣は新しい女給仕を4人も増やしたそうだ」「ここの常連客を取られたりしない」「ホーさん、今後もよろしく」「もちろん」「ご注文は?」「酒をくれ」「迎春閣は女給仕が増えて賭博もできるとか」「聞いたか? 賭博だってよ」「迎春閣は新装開店って訳か」。
 “迎春閣”の看板。多くの客。「お客様だ」「わしだ」「いらっしゃい。こちらへ」「何にします?」「茶だけでいい」「茶を!」「ワンさんを」「いらっしゃい。おしぼりを」。投げられたおしぼりを指先で回して客に渡すワン。「ありがとうございます」。銭も投げる給仕。「注文を。何にします?」「羊肉のネギ炒めを」。
 「こりゃ精進料理か?」「薄味でした?」「薄味どころか味がしない」「作り直します」。別の客に手を引かれ「何です?」「一緒に飲もう」「ダメですよ」「繁盛してるな」「あの4人が来てから毎日忙しいんです」「信頼できるのか?」「(中略)安心して。あの娘たちの身元を調べました」「皆、裏稼業の者だ」「知ってるわ。生きるため、仕方なかったのよ」「あの娘は山賊だったとか。問題が起きなきゃいいが」「大丈夫よ」。さっきの客「しょっぱすぎる!」「何よ、文句の多い客ね」「この女!」ワン「口の利き方を知らない子なんです。すみません」「まだ言うか!」ワン「(娘に)奥へ下がりなさい。(客に)怒らないでください」「でも…」「おわびにお酒を」「要らない」「遠慮せずに」「君は優しいね。あの女と違って」。
 料理ができて「どの卓の?」「あそこよ。任せて」客「女将さん、料理はまだ?」「早くお持ちして! ただ今、ただ今」「お待たせしました。本当は向こうのよ」「ネエちゃん!」「何でしょう?」「頼んだ料理はまだか?」「ただ今」「あれは俺たちのだろ?」「あれはお出しできないわ」「何で?」「料理にハエが入っちゃったの」「あいつハエ入り料理を食べてら」。笑う客。ワン「あの卓へ。ヘイフーラン、リュウさんを紹介するわ」「よろしく」「あの娘がスリの名人? 手癖が悪いかも」「平気よ」。
 「いらっしゃい。どうぞこちらに」「賭博ができるのか?」「やりますか?」「ああ」「どうぞ」(中略)「ご注文は?」「焼き菓子は?」。女給仕の目へのズームアップと今の客とのカットバック。「どの卓で?」「あそこです」「私が案内するわ」。(中略)客の帽子のマークのアップ。ワン、厳しい表情。(中略)
 女給仕の手を放さない客に「さっきから何してるの?」「こんなきれいな手で給仕をするなんてもったいない」「口がお上手ね」「君が言わせてるんだ」「それは光栄ね」「俺の良さが分からない?」「やめて」。手を振り払い、休憩所へ。「何なの?」「しつこく触ってくるの」「適当にあしらえばいいわ」。
 強盗が3人入って来る。机の上に剣を置く。「動くな。有り金を食台の上に置け」客「お金に困ったなら相談に乗るよ」「店のカネからだ」。給仕と客らが様々な物を強盗たちに投げつけ乱闘に。強盗「2度としないよ。許してくれ」「ダメよ。ひき肉にしてやる」ワン「物置に入れて。もう安心よ」。客「皆、腕は確かだな」。卓に戻る客。「行くよ」「もう?」「店に戻らないと。もうすぐ仲間が着くはず」。(明日へ続きます……)

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福岡伸一さんのコラムその5

2018-07-22 05:46:00 | ノンジャンル
恒例となった、朝日新聞の木曜日のコラム「福岡伸一の動的平衡」の第5弾。

5月10日では「シロアリにもリスペクトを」と題するコラムを書いてらっしゃいました。その全文を引用させていただくと、
「音楽家の知人がメールをくれた。地下スタジオの床に小さな翅(はね)が散らばっており、不審に思って調べると、なんとシロアリのものと判明。ぞっとしてすぐに駆除業者を呼びました。業者が言うには、シロアリはアリではなくゴキブリの仲間。これを聞いてさらに鳥肌がたちました。虫好きの福岡さんならこんなときでもにこにこ顔でしょうか、と。
ああ、シロアリが蠢動(しゅんどう)する季節ですね。翅をもった雌雄の個体が一斉にコロニーから巣立つ。群飛の後、地上に舞い降りると惜しげもなく翅を捨てる。つがいとなって移動し、新しい巣を作り始める。
なんせシロアリたちは地球上に1億5千万年以上前から存在する先住民。かくも長い間生きのびた理由は彼らの食。他の生物が消化できない木材を栄養にできる。シロアリの消化管内には原虫という小さな生物が共生している。そして驚くべきことにその原虫にさらに小さな微生物がとりついている。シロアリがかみ砕いた木質繊維を連係プレーで栄養分に変える。
だからシロアリはゴキブリとともに自然界における重要な分解者であり、生態系にとってなくてはならない存在なのだ。後からやってきた人間が勝手にビルや家を建てたけれど、彼らにとっては密林の一部。お困りのことゆえ、さすがににこにこはしませんが、一寸の虫にも五分のリスペクトを。」

また、5月17日に掲載された「かこさんの絵の後ろ側」と題されたコラム。
「絵本作家かこさとしさんが亡くなった。かこさんとは一緒に子どものための科学の本を作ったり(『ちっちゃな科学』)、アトリエにお邪魔して長時間お話ししたり、親しくさせていただいた。
かこさんの絵本がすばらしいのは、子どもの好奇心の動きを的確に押さえていたところ。子どもは何かに興味を持つと、出発点から終着点まですべてをたどってみたくなる。『かわ』では文字通り、源流から河口までが正確・公平に追跡される。ページをめくっても、川の位置と幅のつながりが変わらないという念の入れようだった。
『宇宙』では、スケールの尺度が無限小から無限大まで移動する。カメラが10倍ずつ拡大・縮小する1970年代のイームズの映像作品『パワーズ・オブ・テン』に、ちょっと似ていますよねと言ったら、かこさんは胸をはってこう返した。
『いや、僕の作品は、原子よりも小さいニュートリノのレベルまでいっています』
一方で、よい子であろうとする子どもの心が、たやすく環境の影響を受けてしまう危険性にも十分すぎるほどの自戒があった。僕は筋金入りの軍国少年だったんです、と彼は言った。かこさんの細やかで優しい絵の後ろ側に、いつもどこか寂しげで、悲しみを含んだ光と風があるのは、このときの原風景が含まれているからだ。」

また、5月24日に掲載された『サルトルが呼びかけたもの』と題されたコラム。
今どきサルトルに親しむ学生などまずいそうもないが、最近出版された彼の日記を読んでみた(『敗走と捕虜のサルトル』)。
1905年生まれのサルトルは39年に徴用され、ドイツ侵攻に備えて国境ちかくの拠点に兵士として送られた。ここは奇妙な戦線だった。軍事衝突もないまま日々を過ごすうちに、ドイツ軍は別ルートから瞬く間にパリを制圧。サルトルはあえなく捕虜になってドイツの町トーリアの収容所に送られた。死すべき運命だったのに生きのびた自らの立場を、サルトルは『原生物と同様』なものと書いている。つまり無限に分裂だけを繰り返す微生物のごとく、消滅することはないものの個として生きることもないという意味だ。
ドイツ兵は表向き紳士的に振る舞ったが、フランス人たちは無言で応えた。収容所内の催しに、サルトルはキリストの降臨劇の台本を執筆、自らも東方博士役を演じた。
この劇は、表向きはクリスマス会の余興だったが、その内実は、信仰を持つ者も持たざる者も共に連帯し、死も生もない地の底から、再生を目指す抵抗をひそかに呼びかけるものだった。
戦後、サルトルは知識人の社会参加(アンガージュマン)を主張する。現在の日本では哲学や文学の理念が時代を先行することなど絶えて久しいが、いま一度歴史に学ぶべきかもしれないかと感じた」。

どの文も大変勉強になる文章でした。

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