また昨日の続きです。
それを2階から見下すワン。「何してるの?」「何でもない」「お代を払わない上に乱暴を」「文句あるか? 何者だ?」「ここの女将よ。店を間違ったようね。うちは金貸しじゃない」「何の店でも構わん。やれ、どうした?」2階を見上げる3人。「行政官殿」。膝まづく3人。行政官「何事だ? ここで何をしていた?」「武術の稽古をしてたんです」「武術の稽古です」「稽古だとさ」「頼りないわね。部下のしつけも満足にできないの?」「できるとも。民の平和な生活を守るため朝廷に雇われてるのに。一体このザマは何だ。お前たちを指導している私と君主の期待を裏切る行為だ。お前たち……役立たずめ! 失せろ!」「お代を。次はおとなしく飲んで」「分かりました。行儀よくします」「待って、総督殿」「何です?」「博打でインチキを」「してない。誤解です」「お金を返しなさい」「返して下さい」「待って。忘れものよ」「どうも」。
シャオシュンズ、戻ってきて「つまみもほしいそうです」「つまみ?」(中略)
「行政官と女将は仲が良さそうだね」ワン「友だちですよ」。ワン、行政官に「何か言って」「何を?」。女将、ひそひそ話。行政官「ああ、どうも皆さん。お座り下さい。賭博のカネを巻き上げ無銭飲食しようとした輩がこの店にいましたが、私の指導が未熟だったせいで……(女将に言うことを教えてもらいながら)部下に横暴な振る舞いを受けたら是非知らせて下さい。(女将に)いい?」「まだあるわ」「まだ?」「このワンさんの店では二度と騒動は起きません。安心してご飲食、賭け事をお楽しみ下さい」。
役人、2人入って来る。1人は金髪の男。「誰?」「親王様だ」。行政官、膝まずき「親王様、郡主様、行政官のハラクです」「店の者は?」給仕たち、膝まずく。賭場にいた男は掛け金をすべて自分の懐の中へ。「動くな。手を出せ。驚かせたな。立っていいぞ。立て」。マントを脱ぐ親王。「客は下がってよい」。4人逃げ出す。歌の男、入ってくる。「行政官、立って話せ。この土地を治めているのか?」「はい」「何日か滞在する」「宿泊先を手配します」「いや、この宿に泊まる」「粗末なところですから、私の兵舎に行かれては?」「上に立つ者は庶民と接してその苦しみを知らねばならん。違うか?」「おっしゃる通りです」行政官「親王様、2階でお休みください。静かで広い奥の部屋を」「よく来るのか?」「はい」「店の者と親しいのか?」「ええ、ここでの暮らしが長く、この店もよく存じています。ご安心下さい」「あの者は?」「彼は女将の従弟です」「働いてどのくらい?」「昨日来ました」「それなのに親しいのか?」。膝まずく行政官。「質問には正直に答えろ。あの者は誰だ?」「女将の使用人です。いや……、あの者は……出納係の使用人です」「立て」「はい」「この土地に詳しいな?」「お陰さまでこの辺りは平和で」「役人が民を苦しめる事件は?」「ありません」「反逆者や密偵は?」「いません。私の統括下で諜報活動などありえません」「反逆者を一人見つけたぞ。連れて来い。入れ。知り合いか?」「いいえ。あの者は存じません」「よく見ろ」。ワン、ジュンと目くばせ。「どうだ?」「本当に存じません」「朱元璋の手下だ。お前の管轄区内で暗躍してた」「申し訳ございません」「給仕たちを下がらせろ」「給仕は下がれ!」「取り締まりが徹底されてない。リュウは名の知れた密偵で、配下は大勢いるはずだ。女将はリュウを知ってるな?」「はい。同業者だから当然です」「商売の邪魔をしたな」「いいえ」「下がれ」。ワン、下がる。「リュウをどうしたらいいと思う?」「反逆者は打ち首に」「そうしろ。斬首に処せ」「リー・チャーハン。薄汚い野郎め」。閉じられたドアの向こうで「末代まで呪ってやる」の声。ザクッとした音。
「行政官」「はい」「お前の統治下は平和ではないようだ」「申し訳ありません」「明日は視察するから準備を」。男入って来て「親王様、郡主様」「調査は?」「終わりました」「この辺りは平和か?」「庶民に乱暴を働いていた兵士がいました」「誰だ?」「ハラクの部下です」「ハラク? お前の部下をどうすればいい?」「お裁き下さい」「ワンアル、どうする?」「打ち首に」「厳し過ぎないか?」「見せしめにしないと」「その者は?」「外にいます」「見せろ。連れて来い。こっちへ」。4,5人の男。「お助けを!」「他に何か? この宿にお泊りで? 疑わしい点があります」「何だ? 言ってみろ」「よそ者がいます」「(中略)よく調べたな。身元不明な者は? 行政官!」「女将から話を聞きます」。焦るワンとジュンら。「余計なことを言うな。ワン・レンミー、本名は?」「ワン・シウですが皆通称でワン・レンミーと呼んでいます」(また明日へ続きます……)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で教室長だった伊藤さん、連絡をください。福長さん黒山さんと首を長くして待っています。また、伊藤さんの近況を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)
それを2階から見下すワン。「何してるの?」「何でもない」「お代を払わない上に乱暴を」「文句あるか? 何者だ?」「ここの女将よ。店を間違ったようね。うちは金貸しじゃない」「何の店でも構わん。やれ、どうした?」2階を見上げる3人。「行政官殿」。膝まづく3人。行政官「何事だ? ここで何をしていた?」「武術の稽古をしてたんです」「武術の稽古です」「稽古だとさ」「頼りないわね。部下のしつけも満足にできないの?」「できるとも。民の平和な生活を守るため朝廷に雇われてるのに。一体このザマは何だ。お前たちを指導している私と君主の期待を裏切る行為だ。お前たち……役立たずめ! 失せろ!」「お代を。次はおとなしく飲んで」「分かりました。行儀よくします」「待って、総督殿」「何です?」「博打でインチキを」「してない。誤解です」「お金を返しなさい」「返して下さい」「待って。忘れものよ」「どうも」。
シャオシュンズ、戻ってきて「つまみもほしいそうです」「つまみ?」(中略)
「行政官と女将は仲が良さそうだね」ワン「友だちですよ」。ワン、行政官に「何か言って」「何を?」。女将、ひそひそ話。行政官「ああ、どうも皆さん。お座り下さい。賭博のカネを巻き上げ無銭飲食しようとした輩がこの店にいましたが、私の指導が未熟だったせいで……(女将に言うことを教えてもらいながら)部下に横暴な振る舞いを受けたら是非知らせて下さい。(女将に)いい?」「まだあるわ」「まだ?」「このワンさんの店では二度と騒動は起きません。安心してご飲食、賭け事をお楽しみ下さい」。
役人、2人入って来る。1人は金髪の男。「誰?」「親王様だ」。行政官、膝まずき「親王様、郡主様、行政官のハラクです」「店の者は?」給仕たち、膝まずく。賭場にいた男は掛け金をすべて自分の懐の中へ。「動くな。手を出せ。驚かせたな。立っていいぞ。立て」。マントを脱ぐ親王。「客は下がってよい」。4人逃げ出す。歌の男、入ってくる。「行政官、立って話せ。この土地を治めているのか?」「はい」「何日か滞在する」「宿泊先を手配します」「いや、この宿に泊まる」「粗末なところですから、私の兵舎に行かれては?」「上に立つ者は庶民と接してその苦しみを知らねばならん。違うか?」「おっしゃる通りです」行政官「親王様、2階でお休みください。静かで広い奥の部屋を」「よく来るのか?」「はい」「店の者と親しいのか?」「ええ、ここでの暮らしが長く、この店もよく存じています。ご安心下さい」「あの者は?」「彼は女将の従弟です」「働いてどのくらい?」「昨日来ました」「それなのに親しいのか?」。膝まずく行政官。「質問には正直に答えろ。あの者は誰だ?」「女将の使用人です。いや……、あの者は……出納係の使用人です」「立て」「はい」「この土地に詳しいな?」「お陰さまでこの辺りは平和で」「役人が民を苦しめる事件は?」「ありません」「反逆者や密偵は?」「いません。私の統括下で諜報活動などありえません」「反逆者を一人見つけたぞ。連れて来い。入れ。知り合いか?」「いいえ。あの者は存じません」「よく見ろ」。ワン、ジュンと目くばせ。「どうだ?」「本当に存じません」「朱元璋の手下だ。お前の管轄区内で暗躍してた」「申し訳ございません」「給仕たちを下がらせろ」「給仕は下がれ!」「取り締まりが徹底されてない。リュウは名の知れた密偵で、配下は大勢いるはずだ。女将はリュウを知ってるな?」「はい。同業者だから当然です」「商売の邪魔をしたな」「いいえ」「下がれ」。ワン、下がる。「リュウをどうしたらいいと思う?」「反逆者は打ち首に」「そうしろ。斬首に処せ」「リー・チャーハン。薄汚い野郎め」。閉じられたドアの向こうで「末代まで呪ってやる」の声。ザクッとした音。
「行政官」「はい」「お前の統治下は平和ではないようだ」「申し訳ありません」「明日は視察するから準備を」。男入って来て「親王様、郡主様」「調査は?」「終わりました」「この辺りは平和か?」「庶民に乱暴を働いていた兵士がいました」「誰だ?」「ハラクの部下です」「ハラク? お前の部下をどうすればいい?」「お裁き下さい」「ワンアル、どうする?」「打ち首に」「厳し過ぎないか?」「見せしめにしないと」「その者は?」「外にいます」「見せろ。連れて来い。こっちへ」。4,5人の男。「お助けを!」「他に何か? この宿にお泊りで? 疑わしい点があります」「何だ? 言ってみろ」「よそ者がいます」「(中略)よく調べたな。身元不明な者は? 行政官!」「女将から話を聞きます」。焦るワンとジュンら。「余計なことを言うな。ワン・レンミー、本名は?」「ワン・シウですが皆通称でワン・レンミーと呼んでいます」(また明日へ続きます……)
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で教室長だった伊藤さん、連絡をください。福長さん黒山さんと首を長くして待っています。また、伊藤さんの近況を知っている方も、以下のメールで情報をお送りください。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)