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三崎亜記『スノードーム』

2016-05-16 15:01:00 | ノンジャンル
 WOWOWライブで、鈴木清順・吉田しげつぐ監督、大和屋竺共同脚本の’85年作品『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』を見ました。奇想天外な展開と画面構成でしたが、アニメになると普通の映画になってしまっていました。
 また、WOWOWシネマで、ジョナサン・デミ監督の’91年作品『羊たちの沈黙』を初めて最初から最後まできちんと見ました。猟奇的な殺人を描いた作品として記憶に残る作品で、こけおどしの恐怖シーンにも事欠かず、ラストの暗闇での対決シーンは白眉でした。
 また、YouTubeで、アンドレ・ド・トス監督の’53年作品『肉の蝋人形』も見ました。自分の蝋人形館を火事で焼かれた蝋人形師(ヴィンセント・プライス)が、やけどでただれた顔になりながら、復讐を果たし、その後も、歴史上の人物に似た人を殺して、蝋人形にしていくという話でしたが、実際に人が蝋人形になっている場面を見ることはできず、凡庸な作品となっていました。
 また、WOWOWシネマで、エドワード・ズウィック監督・共同製作・共同脚本の’08年作品『ディファイアンス』も見ました。第二次世界大戦の時にナチスの迫害を逃れてベラルーシの森の中にこもってユダヤ人の共同体を営み、ナチスへの抵抗運動を続けたトゥヴィア・ビエルスキ(演じるのは現在ジェームズ・ボンドを演じているダニエル・クレイグ)の実話を描いた映画で、度重なる移動、ゲットーからの脱出の手伝い、冬の飢え・病気との戦い、空爆、沼地での逃避行、そしてラスト、沼地をやっと逃れたところで戦車の迎撃を受け、万事休すとなったところに、方針の違いからロシアの抵抗軍に合流していたトゥヴィアの弟が駆けつけ、全滅を免れるシーンにはカタルシスを感じました。撮影の見事さもさることながら、演出の映画の印象を強く受けた映画でした。

 さて、‘11年に刊行された大森望編のアンソロジー『不思議の扉 ありえない恋』に収録された、三崎亜記さんの作品『スノードーム』を読みました。
 街灯には、クリスマスリースを象ったオブジェが飾られ、イルミネーションが施された街路樹が明るく輝いていた。------まだ十一月の終わりなのに…… 理由もなく、不平じみた言葉を心の中でつぶやいてしまう。苦笑しながら歩き出した僕は、デパートの、一つのショーウィンドウの前で再び立ち止まり、しばらくその中を見つめ続けた。そのショーウィンドウの中にいたのは、本物の人間、それも、若い女性だった。どうやら彼女は、ショーウィンドウの中で暮らしているようだった。
 不思議なことに、この奇妙な「ディスプレイ」を気に留める人は、僕以外、誰もいなかった。僕はいつのまにか、彼女の前でしばらく時間を過ごすのが、仕事帰りの日課になっていた。
 クリスマスイブの夜、勤め帰りの人々が、いつも以上に急ぎ足で僕を追い抜いてゆく。ショーウィンドウの彼女は、テーブルの上に小さなツリーとケーキを用意して、一人だけのささやかなパーティでクリスマスを祝っていた。テーブルの上には、小さなスノードームが飾られている。彼女は時おり手にとっては、スノードームを揺らした。それは、僕から彼女へのクリスマスプレゼントだった。しばらくスノードームを見つめていた彼女は、椅子から立ち上がって、窓際に立つように、僕の方に近づいた。それは……、きっと偶然だったのだろう。光の反射で、彼女から僕の姿は見えないはずだから。だが彼女は、確かに僕の方をむいて、にっこりと微笑んだ。その微笑みを残したまま空を見上げ、何かを呟いた。ガラスに隔てられ、声は届かない。だけど、僕にははっきりとわかった。僕は彼女と共に夜空を見上げ、同じ言葉を口にした。「メリー・クリスマス……」
 休日を挟んで、数日ぶりに彼女のショーウィンドウを訪ねると、そこは、ありきたりなブランドバッグを並べられた空間になっていた。年が明け、おめでたい七福神の飾り付け、冬物バーゲンの告知、バレンタインフェアと、季節の移ろいと共に、ディスプレイはめまぐるしく移り変わっていった。だけど僕は相変わらず、仕事帰りにそこで立ち止まり、ホットコーヒーを飲みながらしばらくの時間をすごした。一人の女性が足をとめ、何かを探そうとするかのようにショーウィンドウに近寄った。彼女だった。毛糸の手袋ごしに両手に息を吹きかけ、そのまま何かを求めるように手を伸ばし、夜空を見上げた。「雪だ……」二人同時に声を発した。思わず顔を見合わせる。街灯の光を受け、雪は僕たちの頭上に、きらきらと輝きながら降り注いだ。僕は、どんな風に彼女に声をかけようかと少し迷ったのち、そのことばを口にした。「なんだか、スノードームの中にいるみたいだね」

 ちょっとおしゃれな短篇でした。

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オリヴァー・ストーン監督『ウォール街』その2

2016-05-13 07:28:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 “1985年市場予想”をパソコンで見ていたバド。ゴードンの友人としてリサをいう女が訪ねてくる。服を着て外出しようというリサ。
 リムジンの中。あなたの好きなところへ、腹を空かせるために行こうとリサ。誘惑し、フェラチオへ。
 上機嫌のバドが出勤。テラフライ社が落ち込み、そのまま取引終了。頭を抱えるバド。「ゲッコー氏が6時にワイマール・クラブへ」と電話が。
 ゲッコーとのスカッシュでへばるバド。
 サウナ。バド「いいクラブですね」ゲッコー「いい大学出てても今では私の靴磨き。ブロンクス動物園の理事に100万出した。WASPと話を合わせるには動物が有効」「今日少し損をしました。テラフライで10万」「君のおやじが組合委員長なら」「なぜ父のことを?」「この世で一番大切なのは情報だ」。
 服を着る二人。ゲッコー「確実に当たるものにだけ投資をする。君はもっと利口だと思ってた。成功するのは貧しくハングリーで冷酷な奴だ。アップダウンが激しくても戦いを続ける。またいつか会おう」「私は他の者とは違います。もう一度チャンスをください」「聞きかじった物じゃない情報を集めてこい。見せたいものがある」。
 リムジンの中。「あれは乗っ取り屋のワイルドマンだ。人を見下す典型的なイギリス人だ。秘書を買収してRLD社を横取りした。その借りを返したい。あのビルは10年前買ったビルで、最初の不動産だった。2年後に売り、80万儲けた。セックスより快感だ。大金だと思ったが、今では1日で稼ぐ。スパイを送り込んだが、クビになってしまった。奴は市民権を持ち、ニューヨークにいる。何かでかいことをやる気だ。見張れ」「証券マンの免許が召し上げになってしまいます。インサイダー取引で懲役刑です」「おやじから聞いた情報は? テルダー製紙を買ったことは? XYZ社の会長が新株を売っぱらうことは? 皆懲役?」「まじめに働きます」「内部に入らなきゃ永久に外だ」。 バド、リムジンを降りるが、窓の外から「やっぱり、やります」とゲッコーに言う。(音楽が始まる。)
 尾行するバド。ワイルドマン(テレンス・スタンプ)はやがてプライベート・ジェット機で飛び立つが、バドは彼の目的地がエリー湖であることを突き止める。バドからワイルドマンの行動を聞いたゲッコーはワイルドマンがアナコット鉄鋼に目を付けていることを見抜き、翌日その株を.50ドルになるまで買い、その後は買いの情報を周囲にばらまくよう指示する。
 音楽が始まり、バドの社内のズームアップと移動。社内と証券取引所は活気づき、アナコット社の株の終値は51ドルを超す。その夜、ゲッコーの別荘でのパーティに書類のサインを求めてバドは向かい、そこで客の一人の女性、ダリアン(ダリル・ハンナ)と出逢う。ワイルドマンからは「すぐに会いたい」とゲットーあてに電話が来て、パーティに現れる。2階に移ったワイルドマンとゲッコーとバド。ワイルドマンは本気でアナコット社の立て直しを図っているので、邪魔をするなと言い、1株65ドルで買うと言う。ゲッコーから市場価格を求められたバドは80ドルと答え、それを受けてゲッコーは72ドルと言う。お互いに侮辱し合った後、最終的にワイルドマンは72.5ドルで買い取ることに同意し、彼が去った後、ゲッコーは株より資金だと言い、バドは孫子の兵法を言うと、それを実践で学べたとゲッコーはバドにじゃれつく。
 以後、ゲッコーから巨額な資金の運用を任されたバドは、会社でも豪華な個室と秘書を与えられ、テルダー製紙の株式総会ではゲッコーが見事な演説で株主たちの気持ちをつかむところを見たりもするが、父の働くブルースター航空会社を再建させるに当たり、ゲッコーが単にブルースターを分割して売り飛ばすつもりであることを知り、心臓発作を起こした父の無念も晴らすために、ワイルドマンに相談して、ゲッコーを裏切り、ブルースターの株を持つゲッコーに大損をさせ、ブルースターからゲッコーの手を引かせる。ここに至って、バドは証券詐欺とインサイダー取引の罪で逮捕されるが、隠しマイクを身に着けてゲッコーの証言を引き出し、ゲッコーの罪を明らかにするとともに、自分も裁判所に向かうところで映画は終わる。

 途中までは丹念に会話を追っていましたが、会話は単調な切り返しのショットに終始し、たまにワンシーンワンショットの長いショットもあるにはあるのですが、長続きせず、主要3人に関する退屈な“演出”の映画になっていて、会話をいちいち書き出すことはあきらめました。株に関する知識も乏しいことも、あまりこの映画を楽しめなかった原因の一つだと思います。唯一楽しめたのはテレンス・ヤングの存在感だったでしょうか?

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オリヴァー・ストーン監督『ウォール街』その1

2016-05-12 08:57:00 | ノンジャンル
 オリヴァー・ストーン監督・共同脚本、ロバート・リチャードソン撮影の’87年作品『ウォール街』をWOWOWシネマで見ました。
 シナトラの“フライ・トゥ・ザ・ムーン”の歌。タイトルバックにはマンハッタンの空撮、通勤電車、エスカレーターに乗る通勤客、真上から満員のエレベーター。“J・スタイムス社”の看板。出社し、スタッフたちに順に声かけをするバド・フォックス(チャーリー・シーン)。車内放送。9時30分。「全員発走!」とバド。
“1985年”の字幕。客からのクレームの電話を受けたバドは、営業部長に電話を代わってもらい、電話を切ると、営業部長は「彼が払わなかったら君が払え」と言う。部長が去ると、同僚のマーク「何かトラブル?」バド「7千おっかぶせやがった。もうカラケツ。お手上げ」「俺でなくて良かった。新入りの救済だ」と百ドル札をバドに渡し、バドは感謝する。バド「夢は客の側に立つこと」マーク「それは正解。儲かるのは向こう。でっかく儲けるにはゴードン・ゲッコーだ。チャレンジャーが爆発した時、NASAを即売る奴だ」。バド、電話で「ナタリー。僕だ。そろそろ結婚してくれ。ゲッコー氏を頼む。5分でいい」ナタリー「うちはディーラーを通しての株の売買もしくは投資銀行に任せています」「電話あったと伝えてくれ」。
飛んでいく飛行機。夕暮れ。酒場。バドの父(マーティン・シーン)にバド「つけを回された」。転職を勧める父は「いいニュースだ。去年の事故の原因調査が出た。ドアのデザインらしい。メーカー側の責任だ。整備ではない。運行停止は解除。2つの新路線もオープン。ブルースターに乾杯! お前、何か悪いこと、考えてるな?」。
夜明け。自宅でパンツ姿のバド。手前を全裸の女が横切る。パソコンを見入るバド。5月6日はゲッコーの誕生日と出ている。
ネクタイを締め直して出勤するバド。
社長にお届け物ですとの知らせを受けるナタリー。バド「誕生日プレゼントです」ナタリー「勝手に困ります。誕生日の件も初耳です」「この雑誌に載ってる。ゲッコー氏が大好きなハバナ産の葉巻だ。いいだろ?」「待合室で」。
ナタリー「5分だけです」。バド、鏡に向かってネクタイを締め直し、「人生の大事な5分だ」。
重々しい扉を開くと、ゲッコー(マイケル・ダグラス)は電話で株取引の最中。「59日連続で電話してきた若者だな? しつこいとは君のことだ」「バド・フォックスです。空港にコネがあります」「怒らせるなよ。これで血圧を測る。45秒で測れる優れものだ」「ニューヨーク大時代からあなたのファンです。あなたは天才です。あなたと取引することが夢でした」「J・スタイムスは最近伸びてるな。ジャンク・ポケットで儲けてる。空港のコネ以外に何がある?」。黒人の秘書「サンフランシスコからお電話です」。ゲッコー、太った男に手を置き、「凄腕のディーラーだ」。ディーラー去ると、バド「テラフライ社の解散価格は市場価格の2倍です。一部を売って……」「うまい話じゃないな。俺の知らないことを話せ」。ゲッコー、書類をシュレッダーに入れる。「航空会社のブルースターです」「最近聞いた名だな」「中型ジェットが80機、パイロットが300名、航路も豊富です」「航空会社は組合がガンだ」「去年事故を起こしましたが、未発表の会社に有利な調査結果を小耳に挟みました。マイナー株で取得も簡単です。これが自宅の連絡先も含めた名刺です」「私が投資するのは1日100件のうち1件だけだ」。バドはナタリーに挨拶をしてゲッコーの事務所を去る。「電話会議の準備ができました」と黒人の秘書。
「古い付き合いじゃないか。コンピュータと若者にはかなわない」と年配の社員。部長、バドに「3時間もどこへ?」「高所得者の勧誘にです」。マークは夜の遊びに誘い、「あいつのようになっちゃうぞ」。タバコをふかしている年配の社員。「負け犬だ。60過ぎてもサラリーマン。サダー社のキュートなアナリストはどうなった?」「寝たが、退屈なだけだった」。「バド、2番に電話よ」(音楽が流れだし、カメラの動きも早まる。)「ブルースター社を2万株。やった!」。
夕方の自由の女神を空撮で。
夕刊を買うバド。“ブルースターにシロ判定”の記事。
リムジン。食堂。ゲッコー「タルタル・ステーキを食べろ。特別注文だ。(音楽止む)」雑談を交わすバドとゲッコー。バド「ブルースターは15から終わり値が18になりそうです」。ゲッコー、大金の小切手をバドに渡し、「私のアカウントへ。買いが目立つと困る。他の株を20万から30万買え。服ももっとましなのを買え」バド「ありがとうございます。一生懸命にやります」「残った金は非課税の相互信託へ。腕前拝見だ。へつらった話し方もよせ。損は嫌いだ。もうかれば褒美もでかいぞ。じゃあ、昼飯を楽しめ。(明日へ続きます……)

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斎藤美奈子さんのコラム・その2

2016-05-11 11:57:00 | ノンジャンル
 水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」を以前にも紹介させていただきましたが、今後も転載させていただきたいと思います。今回はその第二弾。
 2月17日に掲載された、「泥沼化の背景」と題されたコラム。
「日朝関係の泥沼化が止まらない。北朝鮮が『事実上の長距離弾道ミサイル』を発射(7日)。日本政府は独自の制裁を行うと決定し(10日)、北朝鮮は日本人不明者の調査の全面中止と『特別調査委員会』の解体を発表した(12日)。
 日朝関係や拉致問題には釈然としない思いを抱きつつも、解決への妙案も浮かばず、深くかかわりたくないと考えている人が多いのではないか。各紙の社説も奥歯に物が挟まった感じである。
だが、拉致問題をこじらせたのは安倍政権の明らかな失策だ。昨年12月に出版された『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)を読めば、それがはっきりわかる。著者は2002年に帰国した蓮池薫さんの兄さんで、かつて『家族会』の事務局長だった蓮池透さん。
 本書で彼は拉致問題が右翼的な政治家に利用された過去を反省し、小泉政権下で当時の安倍官房副長官や中山恭子内閣参謀参与がいかに不誠実だったかを暴き、ステレオタイプな北朝鮮批判報道を垂れ流すマスコミを批判する。『蓮池兄』のイメージが逆転すると同時に、解決への道筋が見える良書。事態が悪化した原因が、はじめてクリアに理解できた。
 各国がロケットと呼ぶ物体を『事実上の長距離弾道ミサイル』と表現する理由は何か。日本のメディアも少しは反省してほしい」
 また2月24日に掲載された、「国歌の包囲網」と題されたコラム。
「卒業式や入学式で国歌を斉唱しない国立大学が意外に多いことを本紙20日の特報面が報じていた。文部科学省の調べでは、全86の国立大学中、2013年度の卒業式で国歌を斉唱または演奏したのは13校。単純計算では15%である。
 一方、小中高校の国家斉唱率はほぼ100%である。文科省が『国旗及び国歌に関する適切な指導』の周知徹底を図ってきた結果だろう。ただ歌わせろというだけではない。『式次第に“国歌斉唱”と記載する』『司会者が“国歌斉唱”と発声し、起立を促す』などの細かい実施指針を文科省は示す。改定教育基本法に基づく学習指導要領も周到で、小学校の学習指導要領では『いずれの学年においても歌えるよう指導すること』を求め、音楽の授業で徹底指導。低学年では親しみをもたせ、高学年では国歌の大切さも教えろという。
 まるで教育勅語だ。ジミ・ヘンドリックスはアメリカ合衆国国歌『星条旗』をロックギターで演奏してみせたけど、ロック調にアレンジした『君が代』を式で歌うのはペケでしょうね。右翼の街宣車が流す『君が代行進曲』はOKなの?
 大学は自主判断に任されているものの、自民党の改憲草案には『日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない』という順守義務が新設された。拒否したら憲法違反 !? ろくでもない時代である」
 また3月3日に掲載された、「ひな人形の教訓」と題されたコラム。
「保守派が『ジェンダーフリー教育』を激しく中傷していた時期がある。2002年から3年にかけてのころだ。彼らがいうには『男らしさ、女らしさを否定するジェンダーフリー教育は、桃の節句のひな人形も、端午の節句の鯉のぼりも排斥しろといっている』
 調べてみると『ひな人形と鯉のぼり』は文部科学省の委嘱事業として発行された薄い冊子に載っていた事例だった。男女差を強調する教育への疑問が過剰で、的外れな反発を招いたらしい。
 そんな騒動の中、評論家の樋口恵子さんがテレビで語っていた話が忘れられない。ひな人形が私は大好きと樋口さんはおっしゃった。最上段のお内裏様は男女が対等に並び、二段目は働く女性、三段目は音楽を奏でる少年、成人男性の大臣はその下。男女平等かつ民主的で大変よろしい。いわれれば、たしかに!
 今日、立派なひな人形は家庭から消え、全国の古い町々に結集。この時期には『町屋のひなめぐり』などの形で公開される。娘たちが独立し、古い人形をもてあました家庭から寄贈された結果だろう。背景にあるのは住宅事情に加えて、少子化、過疎化の波。五月になると川面にはためく鯉のぼりの集団も同じ構図だ。
 時代が変われば行事も変わる。桃の節句は女の子の人権を考える日にしたらどうだろう。三月八日の国際女性デーとセットで」

 どれも読みごたえのあるコラムでした。

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ニコラス・ウィンディング・レフン監督『ドライヴ』その3

2016-05-09 09:36:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 眠っているベニシオに添い寝するアイリーン。ノック。キッド「話していい?」「ダメ、出かけるの」「歩きながらでも。大事な話だ。スタンダードは刑務所で借金をしていて、返さないと家族が狙われる。俺に『力になれ』と。でも全て裏目に。すまない。金は奪った。望むならあげる。ベニシオと」。アイリーン、キッドを平手打ち。涙ふく。「別の土地で暮らせる。俺も一緒に。君たちを守る」。キッドとアイリーンの乗ったエレベーター開く。「階を間違えた」という男が乗る。男の上着の内側に拳銃。キッド、アイリーンを背後に寄せ、キス。そして男をやっつけ、頭を蹴りつぶす。アイリーンはエレベーターの外に出て、扉が閉まる。
 夜道のドライヴ。回想。シャノン「手下がアパートに。なぜ居所がばれた? バーニーに知らせたんだ。『あの女のためにやったことだ』と」。シャノンの首を絞め「どこまで話した? 彼女のことを?」「金を返して万事解決と伝えたかった。お前と彼女が狙われると思ってなかった」「最悪だ。俺は消される。あんたもだ。この街をすぐ出ろ。二度と戻るな」。
 バーニー、ニーノに「言ったろ? 金を買い戻し若造はほっとけと。お前も狙われてる」クック「若造は俺が始末する」「口を挟むな。貴様は猿以下だ」ニーノ「あれはマフィアの金だ。質屋に大金を隠したって聞いた。東部からロスに乗り込むために」「組織から盗んだ?」「シマを奪おうとしてるイカれた野郎だ」「なぜ俺に話さなかった? こんなクズまで雇って」「巻き込みたくなかった」「だが巻き込まれた。誰かにマフィアから盗んだと知れたら皆殺される」「何がマフィアだ。俺のことをくそユダヤと平気で言う。59の俺をガキ扱いだ」「盗みはいずればれる」「だからあの運転手を消して口封じする。シャノンも。俺が首謀者だと知ってる」。バーニー、クックの目にフォークを刺し、首をナイフで刺す。「お前も邪魔者を始末しろ」。
 キャンピングカー。マスクを手にするキッド。
 バーニー「高価な車が何台も。まともな鍵を買え」シャノン「あんたを締め出す理由はない」「旅行か?」「旅もいいな」「あの運転手は?」「悪い知らせのようだな」「いいや、悪い運って奴だ。数ある強盗事件の中で、彼は最悪の1件に遭遇した。敵に回した男が最悪だ。追い詰められて見境がなくなってる。今は俺も。へたすりゃ命がなくなる。運転手はどこだ?」「メキシコかベリーズだろう」「車への投資に興奮してた。俺の名がマシンに。自分の名を見たかった。投資したんだからな」。バーニーはシャノンと握手。バーニーの腕を切る。「心配するな。これでいい。痛みもなく死ねる」。
 バーニー、カミソリを洗い、ケースに戻す。
 キッド、死んでいるシャノンを発見。
 歌。キッド、マスクを装着。笑うニーノ。ニーノが乗る車をキッド追う。追突。「今のは何だ?」。停まったニーノの車の横にキッドの車激突。ニーノの車、横転し道から転落。ニーノ這い出し、逃げ出す。波。灯台の光が断続的に照らす。キッド、ニーノを波の中で捕らえる。
 「もしもし、ニーノは川を渡れなかった」バーニー「もう終わりにしよう。2人で会おう」「なぜ?」「今じゃお前と俺とあの女しか残ってない」「いつ会う?」「明日だ。“万里の長城”というレストランを知ってるか?」。
 夜道のドライヴ。回想。キッド、アイリーンに「話がある。ちょっとだけ。あすある所へ行き、もう帰れない。君とベニシオと過ごせたことが一番幸せだった」。
 レストラン。「金は? 金を渡せば女は殺さない。だがお前は別だ。金を渡し、握手をして、残りの人生を生きる。将来の夢や計画、希望があるだろうが、実現は無理だ。生涯背後が気になる。金は?」「車の中だ」「行こう」。
 キッド、トランクを開けて鞄を取り出す。バーニー、キッドの腹を刺す。キッドはバーニーの首を切り返す。崩れ落ちるバーニーの影。キッドは腹を押さえて反り返る。
 シートに座るキッド。目を開けたまま動かないが、しばらくしてまばたきする。車去る。地面には鞄とバーニーの死体。
 アイリーン、キッドの部屋をノックするが誰も出ず、自分の部屋に戻る。
 キッド、夜道をドライヴ。

 激しい暴力描写が主人公の静かな怒りを表していて、秀作だと思いました。

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