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豊島ミホ『やさぐれるには、まだ早い』

2011-06-05 07:16:00 | ノンジャンル
 鈴木則文監督の'75年作品『華麗なる追跡』をスカパーの東映チャンネルで見ました。当時千葉真一主催のJACから売り出し中だった志穂美悦子がレースドライバーに扮し、父を死に至らしめた麻薬取引の元締めで悪徳国会議員(天津敏)に対し父の仇を取るというストーリーで、多羅尾伴内シリーズも翻案し(令嬢、男性、老婆、せむし女、シスターに変装し、最後には「ある時は~」の台詞での大見得が実際に出てきます)、見ていて恥ずかしいほどのあざとさとキッチュさに溢れた作り(天津敏が熊のぬいぐるみを着て女を犯す場面あり)でしたが、その過剰な荒唐無稽ぶりは、あまりの悪役の残虐さ(目を針で突いたり、死体の腹を割いて麻薬を取り出したり、リンチされたリアルな死体が出てきたり)を中和させるためと、ラストの『荒鷲の要塞』ばりのロープウェイでの死闘(実写であることを強調するため、ズームインとズームアップが繰り返し行われます)を引き立てるためなのかなとも思わせる、不思議な映画でした。

 さて、豊島ミホさんの'09年作品『やさぐれるには、まだ早い』を読みました。東京都と首都圏の一部で女性向けで配布されていた週刊のフリーペーパー『L25』に掲載されたエッセイに、書き下ろしたものを若干加えて作られた本です。
 書かれている内容は、田舎から東京へ出て来たばかりの私が、横断歩道の途中で立ち止まってしまったおばあちゃんを皆が見て見ぬふりをするのを見て、これが東京だと思った話、高校時代に私が始めた、理想の彼氏の条件を次々に挙げていく遊びのこと、日常的に使われるものを恋人へのプレゼントにするという私の話、私が通販で買って24才で初めてAVを見た話、私が同年代で気にくわない作家の名前をグーグル検索した話、私が選挙が好きなのは、立候補者の心情が青春に通じる何かを持っているからだという話、私が祖母から受けたスパルタ習字の話、私の下着の耐用年数についての話、下宿やアパートの大家から「おかえりなさい」と言われることについての話、私が小説家を天職とは考えていないことについて(これはその後、考えを変えたそうです)、蛍光灯と点灯管を替えた話、取り壊される予定の祖母の家をアナログカメラで撮った話、初めて邦楽のCDを買って、それを大好きになってから様々な変化が自分に訪れた話、10年間私は日記をつけているが、日記を続けるコツは、読み返す楽しさを知ること、悩みについて突き詰めて書いているうちに悩みが解決されてしまうことがあること、そして1番は自分以外の読者を想定することであるという話、恋人と気持ちが噛み合わないと泣いてしまう自分に気付いた話、中学の吹奏楽部で植えつけられた先輩の怖さについて、親や祖母に反対されると分かっていて、言わなければいけなかったことについて、彼氏と同居する件を白紙に戻したことについて、年越しが好きなことについて、寝台列車から見た夜の波頭について、新しく買ったiPodに刻印する言葉を考えたことについて、自分の足が曲がっていることを気付かされたエピソードについて、26才になって、エロい妄想が思うようにできなくなったことについて、眠くなるために聞くものを探した話、桜の花に重なる数々の思い出について、長女であり、また親戚でもいとこは年下の子ばかりなのに先輩になるのが苦手な私について、などなどです。
 習字のスパルタ教育を行っていた祖母が、半紙が真っ黒になるまで「はね」「とめ」「はらい」の一画一画を書かせた後、「‥‥フン。全然でぎでねねが。あど五百回」と著者に言うところなどは爆笑ものでしたし、著者があとがきで「この本に、私の『思い出』本以上のものとしての価値はあるのでしょうか。やっぱりちょっとドキドキ(≒ひやひや)します。でも願わくば、読んで下さった方の中で、息抜きか何かとして、作用してくれたらいいなあと思います。」と書いている思いは十分届いたと思います。著者がもともと料理大嫌いで、調理に奪われる時間がもったいないと思っていたこと、しかし現在ではごはんを食べて、おいしいって思うことで、生きているのに十分なんだと思っていることなどにも、親近感を覚えたことも記しておきたいと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

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