昨日の続きです。
ナオミを車で迎えに来た熊谷は、「学生のうちは遊んだけど、就職したら一所懸命働くつもりだ。お前も考えておいた方がいい」と言い、堤防脇の道路でナオミを降ろす。
譲治は上司から「このところ仕事上のミスが多いし、遅刻、早退、欠勤も度々だ。どういう訳だい? 真面目な人間ほど女に溺れたら深みに入りやすいが、少しは控えたらどうかね。ナオミとかいう女と遊ぶの」と叱責を受ける。「あいつとは別れて、ほっとしているんです」「別れた? そりゃ良かった。やっぱり共同便所なんてやめたほうがいい。大体悪趣味だよ。今度こそ、堅気の立派な嫁さんを世話してやるから、仕事をしっかりやりたまえ。これ以上評判が悪くなるとクビだぞ」と上司は言う。
ナオミがいなくなり、涙ながらに一人で馬遊びをする譲治。そんな時、譲治は母が危篤である知らせを受ける。
「ナオミってのは、そんな女だったのかい。やっぱり育ちが悪いんだねえ」と母が言うと、譲治は「自分がわがままに育てたからだ」と反論し、「悪いのは母ちゃんだ。幼い時、一緒の布団に寝たように、ナオミに抱かれて甘えたかったんだ」と続けると、「では私が早く死ななきゃならないねえ」と母は言うと、息を引き取る。「母ちゃん、許してくれ。ひどいことを言って。悪いのは母ちゃんが言っていたようにナオミだ。あんな女のことはきっぱり忘れて、真面目に生きるよ。だから許してくれ、母ちゃん!」」と取り乱す譲治。
譲治の母の葬式。泣き伏す譲治。
間もなく譲治に同情した浜田がわざわざその後のナオミの消息を伝えに来る。色々な男と関係を持ってはその家に転がり込むという生活で、今では遊び人の間で娼婦扱いされ、軽蔑の対象だというのだ。やがて突然ナオミが譲治の家にあらわれる。内心喜んだものの、わざと冷たくあしらう譲治。その時は服を取りに来ただけで、ナオミはすぐに帰ってしまう。しかしこれが譲治の気持ちに火をつける。
譲治は上司に会社を辞めると言う。「母が死んで遺産が手に入ったもんで。僕みたいな人間は田舎に引っ込んで、ひっそりと暮らした方がいいんです。こんな機械相手の仕事は向きません」「うらやましいね。俺もそうしたいんだが、うちは貧乏だからな。親、女房、子供のためにせっせと働かなきゃならないんだ。」
再度姿を見せたナオミに譲治は復縁を懇願する。「友だちならいいわ」とナオミ。「お礼にキスをしてあげる」と言って、エアキスをし、「これが友だちのキスよ。私に少しでも触ったらだめよ」と言って去る。
ナオミの裸体の写真を触りまくり、顔の写真にキスして、頭をかきむしり、「ナオミ、じらさないでくれ!」と叫び、暴れまくる。そこへ花村医師が現われ、精神安定剤を処方してあげると言う。「あの女と別れて15年は寿命が延びた」という花村医師に「お前みたいな覗き屋に、俺の気持ちが分かるか!」と譲治は物を投げつける。
譲治が目覚めると、そこにはナオミがいた。ナオミは首の後ろのうぶ毛を肌に触ることなく剃ってくれと頼む。「私の体、変わった?」「ああ、昔より油がのって、みずみずしくなった」「見たいでしょ? でもダメ。友だちなんだから」。首筋が終わると、わき毛まで剃るように言うナオミ。我慢できなくなり、ナオミを押し倒す譲治。「もうからかうのはやめてくれ。友だちなんてやだ。夫婦になっておくれ。なぜ黙ってる? なんとか言ってくれ」。譲治を繰り返し平手打ちするナオミ。「いやか? いやなら僕を殺してくれ。もう我慢ができない。頼む」。譲治がナオミに触れようとすると、ナオミは「きちがい!」と言って譲治を蹴とばす。「きちがいで悪いか?」「きちがいなんか、相手にするもんか」とまた蹴とばすナオミ。「じゃあ、馬でいい。いつかのように僕の背中に乗ってくれ。それだけでいい」。ベッドの上で四つん這いになった譲治にまたがったナオミは「さあ、これでいいか?」「ああ、いい」「あたしの恐ろしさが分かったか?」「わかった」「これから何でも言うことを聞くか?」「聞く」「もっと立派なうちに住んで、うんと贅沢させるか?」「させる」「あたしが言うだけ、いくらでも金を出すか? あたしに好きなことをさせるか? 誰と付き合ってもいいか?」「いい」「あたしの言うことは、なんでも信じるか?」「信じる」「あたしを呼び捨てにしないで、ナオミさんと呼ぶか?」「呼ぶ」「きっとか?」「きっと」「よし。歩け!」。立て続けに尻を叩くナオミ。「やっと夫婦になれた。もう逃さんぞ。一生放すもんか」「譲治さん、私だってあんたしかいないのよ」。譲治に抱きつくナオミは、泣き出す。「浮気しても許すか?」と聞かれて従順にうなずく譲治。こうしてナオミとの生活を取り戻し、譲治は再び幸せに浸るのだった。
譲治の独白が多用され、安田道代の悪女ぶりが傑出していたと思います。
ナオミを車で迎えに来た熊谷は、「学生のうちは遊んだけど、就職したら一所懸命働くつもりだ。お前も考えておいた方がいい」と言い、堤防脇の道路でナオミを降ろす。
譲治は上司から「このところ仕事上のミスが多いし、遅刻、早退、欠勤も度々だ。どういう訳だい? 真面目な人間ほど女に溺れたら深みに入りやすいが、少しは控えたらどうかね。ナオミとかいう女と遊ぶの」と叱責を受ける。「あいつとは別れて、ほっとしているんです」「別れた? そりゃ良かった。やっぱり共同便所なんてやめたほうがいい。大体悪趣味だよ。今度こそ、堅気の立派な嫁さんを世話してやるから、仕事をしっかりやりたまえ。これ以上評判が悪くなるとクビだぞ」と上司は言う。
ナオミがいなくなり、涙ながらに一人で馬遊びをする譲治。そんな時、譲治は母が危篤である知らせを受ける。
「ナオミってのは、そんな女だったのかい。やっぱり育ちが悪いんだねえ」と母が言うと、譲治は「自分がわがままに育てたからだ」と反論し、「悪いのは母ちゃんだ。幼い時、一緒の布団に寝たように、ナオミに抱かれて甘えたかったんだ」と続けると、「では私が早く死ななきゃならないねえ」と母は言うと、息を引き取る。「母ちゃん、許してくれ。ひどいことを言って。悪いのは母ちゃんが言っていたようにナオミだ。あんな女のことはきっぱり忘れて、真面目に生きるよ。だから許してくれ、母ちゃん!」」と取り乱す譲治。
譲治の母の葬式。泣き伏す譲治。
間もなく譲治に同情した浜田がわざわざその後のナオミの消息を伝えに来る。色々な男と関係を持ってはその家に転がり込むという生活で、今では遊び人の間で娼婦扱いされ、軽蔑の対象だというのだ。やがて突然ナオミが譲治の家にあらわれる。内心喜んだものの、わざと冷たくあしらう譲治。その時は服を取りに来ただけで、ナオミはすぐに帰ってしまう。しかしこれが譲治の気持ちに火をつける。
譲治は上司に会社を辞めると言う。「母が死んで遺産が手に入ったもんで。僕みたいな人間は田舎に引っ込んで、ひっそりと暮らした方がいいんです。こんな機械相手の仕事は向きません」「うらやましいね。俺もそうしたいんだが、うちは貧乏だからな。親、女房、子供のためにせっせと働かなきゃならないんだ。」
再度姿を見せたナオミに譲治は復縁を懇願する。「友だちならいいわ」とナオミ。「お礼にキスをしてあげる」と言って、エアキスをし、「これが友だちのキスよ。私に少しでも触ったらだめよ」と言って去る。
ナオミの裸体の写真を触りまくり、顔の写真にキスして、頭をかきむしり、「ナオミ、じらさないでくれ!」と叫び、暴れまくる。そこへ花村医師が現われ、精神安定剤を処方してあげると言う。「あの女と別れて15年は寿命が延びた」という花村医師に「お前みたいな覗き屋に、俺の気持ちが分かるか!」と譲治は物を投げつける。
譲治が目覚めると、そこにはナオミがいた。ナオミは首の後ろのうぶ毛を肌に触ることなく剃ってくれと頼む。「私の体、変わった?」「ああ、昔より油がのって、みずみずしくなった」「見たいでしょ? でもダメ。友だちなんだから」。首筋が終わると、わき毛まで剃るように言うナオミ。我慢できなくなり、ナオミを押し倒す譲治。「もうからかうのはやめてくれ。友だちなんてやだ。夫婦になっておくれ。なぜ黙ってる? なんとか言ってくれ」。譲治を繰り返し平手打ちするナオミ。「いやか? いやなら僕を殺してくれ。もう我慢ができない。頼む」。譲治がナオミに触れようとすると、ナオミは「きちがい!」と言って譲治を蹴とばす。「きちがいで悪いか?」「きちがいなんか、相手にするもんか」とまた蹴とばすナオミ。「じゃあ、馬でいい。いつかのように僕の背中に乗ってくれ。それだけでいい」。ベッドの上で四つん這いになった譲治にまたがったナオミは「さあ、これでいいか?」「ああ、いい」「あたしの恐ろしさが分かったか?」「わかった」「これから何でも言うことを聞くか?」「聞く」「もっと立派なうちに住んで、うんと贅沢させるか?」「させる」「あたしが言うだけ、いくらでも金を出すか? あたしに好きなことをさせるか? 誰と付き合ってもいいか?」「いい」「あたしの言うことは、なんでも信じるか?」「信じる」「あたしを呼び捨てにしないで、ナオミさんと呼ぶか?」「呼ぶ」「きっとか?」「きっと」「よし。歩け!」。立て続けに尻を叩くナオミ。「やっと夫婦になれた。もう逃さんぞ。一生放すもんか」「譲治さん、私だってあんたしかいないのよ」。譲治に抱きつくナオミは、泣き出す。「浮気しても許すか?」と聞かれて従順にうなずく譲治。こうしてナオミとの生活を取り戻し、譲治は再び幸せに浸るのだった。
譲治の独白が多用され、安田道代の悪女ぶりが傑出していたと思います。
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