gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

福岡伸一さんのコラム・その4

2018-05-04 04:23:00 | ノンジャンル
恒例となった、朝日新聞の木曜日のコラム「福岡伸一の動的平衡」の第4弾。

今年の1月11日では「ちょっと気配を消して」と題するコラムを書いてらっしゃいました。その全文を転載させていただくと、
「自然は隠れることを好む。そのうえ絶え間なく動いているので、こちら側が動きをとめないと、自然はそのほんとうの姿を見せてはくれない。
 内向的な子どもで、同年代の遊び仲間がおらず、もっぱら自然の中の小さな生命、特に昆虫が友だちだったわたしは、知らず知らずのうちにそのことを学んだように思う。
 虫と親しくなるにはちょっとしたコツがある。それは、目を凝らすこと、あるいは他の感覚も研ぎすませた上で、ちょっと自分の気配を消すことが必要だということである。
 たとえば、蝶は翅を縦に閉じて花に止まる。でも私が見たいのは翅の美しい内側だ。近づきすぎると警戒心の強い蝶はすぐ飛び去ってしまう。息を殺してじっと待つ。すると、蝶は一心に蜜を吸いながら、あたかも呼吸を整えるように、ゆっくりと一度か二度、翅を開く瞬間があるのだ。そのとき一瞬だけ見事な翅の紋様と色を見るチャンスがやってくる。
 朽ち葉色に波模様。地味な裏地の可憐なシジミチョウの翅の裏側は、目が覚めるばかりのは鮮やかさだ。黒い縁取りにエメラルドグリーンの輝き。陶酔感とはこんな気持ちをいうのだろう。そのとたん、あっと思う間もなく、翅は再び閉じられる。こうして、わたしは自然を愛する者、つまりナチュラリストの資格を得た。」

 また、1月18日に掲載された「建築家がモテるのは」と題されたコラム。
「画家、音楽家、小説家。職業は数あれど『家』を名乗られる職業は限られる。残念ながら生物学者に家はつかない。『家』はかっこいい。そしてなによりもモテる。その極めつきは何といっても建築家ではないだろうか。
 旧帝国ホテルや自由学園を設計した世界的建築家フランク・ロイド・ライトの人生はドラマチックな女性遍歴で彩られているし、メタボリズム建築で名を成した黒川紀章の奥方は、ご存知のとおり日本を代表する大女優である。
 隈研吾さんに会う機会があったので、思い切って単刀直入に聞いてみた。なぜ建築家はそんなにモテるんでしょう? こういう場合普通は、いえいえそんなことはありませんよ、という風に謙遜するかと思ったら、あっさり私の予想を裏切って、彼はなかば肯定しながらこういった。それはいつも人を説得しているからです、と。
 それはそうだなあ。建築家は自由自在に設計しているように見えて、まずは依頼主のわがままと無理難題を説得し、片や施工業者や現場からの文句や要求を説得し、あるいは周辺住民のクレームを説得し、コンペともなれば審査員を説得し、スポンサーを説得する。
とにかくあらゆる局面で誰かを説得しなければことが進まない。
 それゆえ、異性を説得することなどお茶の子さいさいということか。なるほど。あっという間に納得させられてしまった。」

 また5月3日に掲載された、「スター・ウォーズ 力の源は」と題されたコラム。
 「5月4日は『スター・ウォーズの日』。なぜなら5月4日(メイフォース)だから。導師が若き主人公に与える言葉は『フォースと共にあらんことを(メイザフォースビーウイズユー)』。
 話は変わるが、これから科学を学ぼう(あるいはもう一度学び直したい)と思っている人におすすめの方法がある。それは科学の科学史を勉強すればよいのだ。
 ミトコンドリアとは、細胞内小器官のひとつで、酸化反応によってエネルギーを生産する━━教科書的に上から目線で言われると意欲をそがれる。それより名前の由来を調べてみよう。100年以上前、顕微鏡で細胞を観察していた科学者が糸くずのような影を見つけた。最初はゴミかと思ったが、どの細胞にも散らばっている。そこで糸を意味するミトに微粒子を意味するコンドリアをくっつけて命名した。顕微鏡で観察するとき細胞は薄くそぎ切りにされる。だから糸に見えたものには厚みがある。実際、ミトコンドリアはきしめんが折りたたまれたような構造をしていた。狭い細胞内で面積をかせぐ工夫だ。調べてみるときしめんの表面にはびっしり酸化酵素が並んでいた。かくしてミトコンドリアは細胞内呼吸の現場であることわかってきた。これが科学史。
 ちなみにスター・ウォーズでは、フォースの源泉はミディ=クロリアンという微粒子。それってミトコンドリアのことでしょ。もう一声ひねってほしかった。」

 どれも読みごたえのある文章でした。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿