黒沢清監督『蜘蛛の瞳』その１

　WOWOWシネマで、黒沢清監督・共同脚本、西山洋一共同脚本の’98年作品『蜘蛛の瞳』を見ました。
　「人違いだ！」と叫ぶ男（寺島進）を椅子に座らせ、口、手首、足首にガムテープを貼る一味。「６年前だ」。誘拐され殺された自分の娘の遺体を発見現場で抱く新島（哀川翔）。新島は椅子に固定された男を段ボールで乱打する。
　帰宅した新島。先に帰っていた妻は「自分の仕事もあと少し」と言い、新島の夕食の支度をする。ビールで乾杯する２人。
　男の顔を立て続けに殴る新島。
　事務所で働く新島。
　新島「お前、なんで６年間も生き延びた？　復讐に来ると思ってなかったのか？」。男の手にペンを持たせて、トイレットペーパーの芯に書かせると、男は「ひとちがい」と書く。パラシュートをつけるのを忘れて飛行機を飛び降りた男の話をする新島。「金ならいくらでも出す」と書く男に、「違う。俺は何でもできる。お前は何をしてくれる？」と新島は問いかける。
　路上でトラックの中から顔を写された新島は、それに気づく。
　グロッキーになった男に「まだ死ぬな。まだ３日経っただけだぞ。俺は６年苦しんだ。分かったか？」と新島は言って、拳銃で男を射殺する。
　草原の中で穴を掘る新島。離れたところに白い布を巻かれた人柱。
　妻「会社で面倒でもあったの？」新島「何で？」「ちょっと思っただけ」「ノリコ、海外旅行でも行くか？　１ヵ月でも１年でも。金は向こうで働けばいい」「それじゃあ旅行じゃないじゃない」「そうか」。娘の部屋を見る新島。
　事務所。屋外のベンチに座っている新島。隣に座った男（ダンカン）に「誰？」「新島だろ？　岩松だよ」「ああ、思い出した」「仕事、うまく行ってないんだろ？　お前みたいのを捜してたんだ。気が向いたら電話してくれ」と“岩松インターナショナル”と書かれた名刺を渡す。新島「どうもよく分からないな」。
　事務所で茫然としている新島。草原でも、おでんの屋台でも茫然。深酔いした新島を抱き起こす岩松。
　妻「早いのね。眠れなかったの？」新島「仕事を変えようと思う。貿易関係の仕事だ」「私もそうしようかしら。ミチコの部屋も片付けないといけないし」。
　岩松の事務所。新島を加えて５人組。「北極探検で怖いのはシロクマですよね」。
　岩松「そろそろ時間だ。（新島に向かって）お前はここにいろ」。岩松を加えた男３人が車を降り、レンガ造りの建物の中に入っていく。迎えに出る青年。
　岩松の事務所でひたすら書類にハンコを押す新島。新島「これ、何の書類？」ローラースケートで遊んでいる青年「分かりません」。やがて同僚が帰って来る。
　歩く新島。事務所でハンコを押し終わり、青年が「次はこれですよ」と書類を差し出すが、新島は「俺は辞める。岩松に伝えといてくれ」と言って去る。
　おでんの屋台で深酔いしている新島に「やっぱりお前しかいないんだよ」と声をかけ、立たせようとする岩松。
　歩く岩松と新島と男２人。アパートのドアの前で張り、女が出てきたところでドアから４人が侵入し、中にいた男を取り押さえ、口にガムテープを貼る。「東和証券の営業課長の永沢だな」。「私が調べたんだからホントよ」と女。「これは仕事でやってるんだ。お前は永沢だな？」。激しく頭を振る永沢。永沢の運転免許証を見つける新島。岩松、新島に「お前、撃て。でもこの次にすっか」と言って、永沢を射殺する。
　公園。岩松「俺たちの仕事の儲けは悪くないが、神経が磨り減る。だから仲間が必要だ」新島「先日、トラックから顔写真を撮られた。女房にはこの仕事のことを言うな。それに家にも電話するな」「分かった」。
　朝食を食べる新島とノリコ。
　岩松「順調か？」と新島に言って、暴れる。酒に「これ、塩だから」と白い粉末を溶かし、新島と自分で飲む岩松。
　レンガ造りの建物。赤い車を降り、階段を上って、恰幅のいい男（大杉漣）に会う新島。男「ご苦労さん。金は口座に振り込んでおいた。君は？」「新島です」「君がそうか。これから言う質問に考えずに即答しろ」。次々に問いを発する男に対し、答える新島。
　新島、男を射殺。それを岩松を含む３人の男と１人の女が囲んで見ている。女「この人とてもいい人だったのに」。
　岩松「この仕事、辞めたくなったな。死ぬか？　どうだ、一緒に」「星と前田は嫌がるだろうな」「どうすればいい？」「普通に戻ればいい」「普通って？」「分からない」「分からないこと、言うなよ」「ごめん」。
　レンガ造りの建物の男、新島に「岩松についてのレポートを書いてほしい」。
　岩松の事務所。「釣りに行きませんか？」。
　岸からは全然釣れず、ボートで湖の中心に。それでも釣れず。「前田、言い出しっぺが責任取れ」。
　黒い車が路地に停まる。
　岩松が金泉会のバッジをもらってくる。（明日へ続きます……）