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篠田節子『仮想儀礼』上下巻

2011-08-01 04:30:00 | ノンジャンル
 R・W・ファスビンダー監督・原作の'72年作品『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』をスカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。謙虚が美徳と口ではいいながら周囲に尊大に振る舞ってしまうファッション・デザイナーが、最後には3年間仕えてくれた使用人の女性にも去られてしまうという室内劇であり、カラー・スタンダードの画面でのスムーズな移動撮影が魅力的ではあったのですが、あまりに演劇的な演出に今一つノレませんでした。

 さて、山田詠美さんが著書『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』の中で「第一級のエンタであり、最後の一行がすごく恐い」と言っていた、篠田節子さんの'08年作品『仮想儀礼』上下巻を読みました。
 正彦はエリートコースに乗った都庁職員でしたが、都職員の服務規程違反になるため内緒で、ゲームやアニメのシナリオライターの副業をしていました。ある日、ゲーム会社から独立した編集者・矢口からオリジナルのゲームブックを書くことを勧めらた正彦は、矢口の口車に乗って都庁を退職までして、その仕事に全精力を注ぎますが、やがてトンネル会社の偽装倒産に自分が巻き込まれていたことに気付き、矢口とも連絡が取れなくなります。妻も仕事も失って自殺を考えていた正彦は、偶然路上で矢口を見つけ、自室に連れ込み彼を詰問しますが、矢口も人妻に手を出して会社をクビになり、金に困って今回の偽装倒産の仕事に巻き込まれた被害者の一人でした。とその時、テレビでニューヨークの同時多発テロのニュースが報じられ、二人はそれにヒントを得て、ネット上で新興宗教を興して金儲けをしようと思い立ちます。密教系の多神教とし、体裁良い「清泉真法会」というサイトを立ち上げたところ、すぐに様々な悩み相談が寄せられるようになり、味をしめた彼らはマンションの1階の空き店鋪を安く手に入れ、そこに祭壇を設けた集会所を開きます。最初に飛び込んで来た女性は、何と大物代議士の娘で、父と兄から性的虐待を受け続け、兄との子を堕ろしてきたばかりといういきなりディープなケースでした。それ以降も、現代社会のストレスにさらされ、精神の安定を得るために対価を払ってもいいと考えている大人と、息苦しいほど安定した日常生活に退屈した金のない若者が次々と現れるようになり、そして‥‥。
 と、ここまでで、上下巻全900ページ近くのうち、110ページ辺りまで読んだのですが、リアルでしかも重たい内容に読むのがしんどくなってきてしまいました。そこで禁じ手だとは知りながら、詠美さんが「すごく恐い」と言っていた最後の一行を先に覗いてみると、そこには女性信者5人を共犯として政治家秘書リンチ殺人事件を起こし、懲役刑を科された教祖の正彦が帰ってくるのを、シャバで静かに待ち続ける女たちの日常の様子が描かれていて、そこからまたちょっと遡って読んでみると、どうもその事件だけではなく、そこに至るまでも様々な修羅場が展開されているようで、恐くなった私は、今回はちょっと全編を通して読むのは遠慮させていただくこととしました。オウム真理教やイエスの方舟など、最近のカルトな新興宗教に興味のある方は楽しく読めるかもしれません。

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