上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子『三人寄れば、物語のことを』
WOWOWシネマで、ジョー・ダンテ監督、スティーヴン・スピルバーグ共同製作総指揮の’87年作品『インナースペース』を見ました。『ミクロの決死圏』のコメディー版といった感じの映画で、ミクロ化され実験のためにウサギの中に入るはずだった主人公が、研究所が先端組織を狙う組織に襲われたため、スーパーのレジ係のさえない若者の体内に入り、その若者と自分の恋人を操って、組織に奪われたチップを奪い返すという物語で、同年に公開された『ターミネーター』と同じような無敵の殺人ロボットが登場していました。かなりチープな作りながら、笑いのツボを押さえた演出で、主演はデニス・クエイド、恋人役をまだ新人のメグ・ライアンが演じていました。
また、WOWOWシネマで、大友克洋監督・共同企画・原案・脚本の’04年作品『スチームボーイ』も見ました。圧倒的な画面の迫力でしたが、人間ドラマが陳腐で、やはり『童夢』を超える作品は難しいのかな、と思いました。
また、WOWOWシネマで、ジョエル・コーエン監督・共同脚本の’98年作品『ビッグ・リボウスキ』を見ました。舞台はロサンゼルス。失業者で仲間とボウリングばかりしている男(ジェフ・ブリッジス)が、富豪の若い妻の誘拐事件に巻き込まれる話で、ボウリング仲間をスティーヴ・バセミ、富豪の秘書をフィリップ・シーモア・ホフマン、富豪の娘をジュリアン・ムーア、誘拐された妻に金を貸していたポルノ産業の男をベン・ギャザラが演じていて、ブラック・ユーモアに満ちたポップな映像で楽しませてくれました。特に夢の場面は幻想的で、バズビー・バークレーそのままのミュージカルシーンは見事でした。
さて、‘15年に刊行された、上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子の鼎談集『三人寄れば、物語のことを』を読みました。上橋菜穂子さんの『天と地の守り人』の文庫化に際して上橋さんの作品について、また荻原規子さんの『RDG レッドデータガール』の完成記念に際して『RDG レッドデータガール』について、そして佐藤多佳子さんの『シロガラス』の刊行に際して『シロガラス』について、それぞれ3人が鼎談を行っている本です。
一部引用させていただくと、「もし、自分が本当に辛い状況にあったら、ファンタジーなんか読みたくないって思うのだろうか、と考えてみたんです。多分、最初はそうでしょう。物語どころか、なにもかもが崩壊し、ただ茫然としてしまい、ひたすらに悲しく、何についてもネガティブにしか捉えられず、絶望という感覚の中に、しゃがんでしまうと思う。でも、少し時間が経って、もう一度生き直したいという気力がわずかにでも生まれた時期に、ファンタジーを読んだら、ファンタジーというものがもつ、『ほかの世界を想像し、そこに生きてしまえる力』が、独特の助けになるような気がするんです。そこで一生懸命生きて帰ってきたとき、『これしかない』と思っていた今の現実、行き止まりだ、と思っていたところに、別の可能性が見える。どんな状況の中でも、人は生きてきたんだな、と納得できる。他者がやってきたがんばりが、自分の心にも火を灯す。物語の中から戻ってくると、今の自分のいる場所が、それまでとは少し違う風景に見え、風を感じることができる。それが、物語の持つ大きな力のような気がしているのです」(上橋)、「私も、どういうつもりで書いているかと言われると一言では言えないのですが、『生きている方が面白い』ということを、ダイレクトに言っても絶対に虚しい。そうではなくて、なぜ生きている方が面白いのかを、具体的なシーンの肌触りで伝えないと何もわからないでしょう。その肌触りを届けたいと思うのです」(荻原)、「日本人の多くは強い信仰心を持たず、なぜ生まれてきたかということに対して宗教的な回答を持ってないと思うのね。わからないまま生まれてきて生きていかなければならない。だけど、生きていると、やはりいいことあるよって、物語で言いたいみたいですね、自分」(佐藤)。
上記の部分以外は、話題にされている各作品を読んでいないと、よく分からないところが多く、あまり楽しめませんでした。上橋さんの作品は既読のはずだったのですが、忘れてしまっていて……。佐藤さんの『シロガラス』に至っては、上橋さんと荻原さんが絶賛しているにもかかわらず、私は少し読んだだけで、放り出してしまっていました。という訳で、この本と私の相性はあまりよくなかったようです。もちろん『RDG』や『シロガラス』を楽しく読んだ方にはお勧めだと思います。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
WOWOWシネマで、ジョー・ダンテ監督、スティーヴン・スピルバーグ共同製作総指揮の’87年作品『インナースペース』を見ました。『ミクロの決死圏』のコメディー版といった感じの映画で、ミクロ化され実験のためにウサギの中に入るはずだった主人公が、研究所が先端組織を狙う組織に襲われたため、スーパーのレジ係のさえない若者の体内に入り、その若者と自分の恋人を操って、組織に奪われたチップを奪い返すという物語で、同年に公開された『ターミネーター』と同じような無敵の殺人ロボットが登場していました。かなりチープな作りながら、笑いのツボを押さえた演出で、主演はデニス・クエイド、恋人役をまだ新人のメグ・ライアンが演じていました。
また、WOWOWシネマで、大友克洋監督・共同企画・原案・脚本の’04年作品『スチームボーイ』も見ました。圧倒的な画面の迫力でしたが、人間ドラマが陳腐で、やはり『童夢』を超える作品は難しいのかな、と思いました。
また、WOWOWシネマで、ジョエル・コーエン監督・共同脚本の’98年作品『ビッグ・リボウスキ』を見ました。舞台はロサンゼルス。失業者で仲間とボウリングばかりしている男(ジェフ・ブリッジス)が、富豪の若い妻の誘拐事件に巻き込まれる話で、ボウリング仲間をスティーヴ・バセミ、富豪の秘書をフィリップ・シーモア・ホフマン、富豪の娘をジュリアン・ムーア、誘拐された妻に金を貸していたポルノ産業の男をベン・ギャザラが演じていて、ブラック・ユーモアに満ちたポップな映像で楽しませてくれました。特に夢の場面は幻想的で、バズビー・バークレーそのままのミュージカルシーンは見事でした。
さて、‘15年に刊行された、上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子の鼎談集『三人寄れば、物語のことを』を読みました。上橋菜穂子さんの『天と地の守り人』の文庫化に際して上橋さんの作品について、また荻原規子さんの『RDG レッドデータガール』の完成記念に際して『RDG レッドデータガール』について、そして佐藤多佳子さんの『シロガラス』の刊行に際して『シロガラス』について、それぞれ3人が鼎談を行っている本です。
一部引用させていただくと、「もし、自分が本当に辛い状況にあったら、ファンタジーなんか読みたくないって思うのだろうか、と考えてみたんです。多分、最初はそうでしょう。物語どころか、なにもかもが崩壊し、ただ茫然としてしまい、ひたすらに悲しく、何についてもネガティブにしか捉えられず、絶望という感覚の中に、しゃがんでしまうと思う。でも、少し時間が経って、もう一度生き直したいという気力がわずかにでも生まれた時期に、ファンタジーを読んだら、ファンタジーというものがもつ、『ほかの世界を想像し、そこに生きてしまえる力』が、独特の助けになるような気がするんです。そこで一生懸命生きて帰ってきたとき、『これしかない』と思っていた今の現実、行き止まりだ、と思っていたところに、別の可能性が見える。どんな状況の中でも、人は生きてきたんだな、と納得できる。他者がやってきたがんばりが、自分の心にも火を灯す。物語の中から戻ってくると、今の自分のいる場所が、それまでとは少し違う風景に見え、風を感じることができる。それが、物語の持つ大きな力のような気がしているのです」(上橋)、「私も、どういうつもりで書いているかと言われると一言では言えないのですが、『生きている方が面白い』ということを、ダイレクトに言っても絶対に虚しい。そうではなくて、なぜ生きている方が面白いのかを、具体的なシーンの肌触りで伝えないと何もわからないでしょう。その肌触りを届けたいと思うのです」(荻原)、「日本人の多くは強い信仰心を持たず、なぜ生まれてきたかということに対して宗教的な回答を持ってないと思うのね。わからないまま生まれてきて生きていかなければならない。だけど、生きていると、やはりいいことあるよって、物語で言いたいみたいですね、自分」(佐藤)。
上記の部分以外は、話題にされている各作品を読んでいないと、よく分からないところが多く、あまり楽しめませんでした。上橋さんの作品は既読のはずだったのですが、忘れてしまっていて……。佐藤さんの『シロガラス』に至っては、上橋さんと荻原さんが絶賛しているにもかかわらず、私は少し読んだだけで、放り出してしまっていました。という訳で、この本と私の相性はあまりよくなかったようです。もちろん『RDG』や『シロガラス』を楽しく読んだ方にはお勧めだと思います。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
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