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山田宏一著『日本侠客伝 マキノ雅弘の世界』

2008-07-13 15:12:17 | ノンジャンル
 10日発行のフリーペーパー「R25」にエネルギー危機、食糧危機の後に来るのは水危機だという記事が載っていました。現在日本が輸入している食品ができるまでにどれだけの水を使っているかが表になっていましたが、1年間で一番たくさん水を使っているのは「とうもろこし」で145億立方メートル、2位が「牛肉」で140億立方メートル、3位が「大豆」で121位立方メートル、4位が「小麦」で94立方メートル、5位が「豚」で36立方メートルとのことです。億立方メートルという単位が何かとんでもなさそうで怖いのですが、実際アラル海は灌漑のために水が使われ干上がってしまいましたし、農業国では既に水不足の状態が生まれているそうです。日本はせっかく水が豊富にあるのですから、できるだけ食糧は自給できるようにしたいものです。

 さて、山田宏一氏が今までに出されたマキノ雅弘監督に関するインタビューや評論から構成した、日本侠客伝シリーズを中心としたマキノ監督の魅力を探る本である「日本侠客伝 マキノ雅弘の世界」を読みました。
 1954年に発行された「映画百科辞典」におけるマキノ雅弘の紹介文「(前略)32年2月以後(中略)完全な商業監督に堕した。(中略)戦後の作品は(中略)凡作に終始している。」に反発して「私がマキノ作品のファンになったのは戦後(中略)マキノ正博から雅弘になって『完全な商業監督に堕しあた』あと、それも『凡作に終始している』時代である!」と書き、心意気を見せて始まるところから、この本自体が「いなせ」で「いき」なマキノ雅弘の映画の雰囲気を醸し出していると言えるでしょう。よくぞこれだけの資料を適格にまとめあげ、一冊の本にできたなあ、と思いました。
 中でも印象的だったのは、真正面から「鴛鴦歌合戦」を論じた部分と、「日本侠客伝」シリーズにおける天津敏の存在の大きさを論じた部分でしょう。とりわけ、「日本侠客伝」シリーズでは、高倉健や藤純子を論じるものはあっても、天津敏を論じたものはほとんど無かったと思います。私も山田宏一氏と同じく天津敏の存在の大きさを身に染みて感じていたので、胸のすく思いでした。
 最後の森繁久弥に対するインタビューも今となっては貴重な証言です。演出中のマキノ監督の姿が見れる写真などと共にこの本の見どころの一つでしょう。また未知のマキノ監督の傑作も多く紹介されています。
 そして多くの引用を使われているワイズ出版の本(ちなみにこの本自体もワイズ出版の本)の多彩さに驚きました。様々な俳優や監督、プリデューサーに関する本を出版しているので、興味のある方は一覧されるといいと思います。
 マキノ雅弘監督のファンならずとも、映画一般のファンにもオススメの本です。

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