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豊島ミホ『東京・地震・たんぽぽ』

2008-07-14 15:31:20 | ノンジャンル
 10日発行のフリーペーパー「R25」に、国別のガソリンの値段が載っていました。今年の5月において、リッター当りの値段の高い国はイタリアの243.9円、ドイツの236.6円、フランスの231.2円、イギリスの227.9円、スペインの191.0円、安い国だと市場に出さずに直売しているベネズエラが約5円、サウジアラビア約13円、UAEが約39円、国家統制している中国が約85円、問題のアメリカは102.7円でした。高い国は消費税のせい、アメリカが安いのはほとんど税金がかけられていないからです。日本はこのところのガソリン価格高騰で高速道路の渋滞が半減したそうです。アメリカも日本も環境税としてガソリンに税金をかけ、ガソリンをなるべく使わせない施策を早くとってほしいものです。

 さて、豊島ミホさんの'07年作品「東京・地震・たんぽぽ」を読みました。東京に震度6の大地震が起こった時のエピソードを14の短編にまとめた本です。
 大地震だけではなく、広い草原が広がる公園も何回も出てきます。また、蓮賀といういじめっ子が出て来る話が「どうでもいい子」と「復讐の時間」と2話あり、そこではいじめっ子に一早くついて幼なじみを裏切る女の子と裏切られた女の子がそれぞれの主役となっています。
 そうした中でも私が一番面白かったのは「出口なし」です。彼らの暮らしに対する考え方に好感が持て、この後どうなるのだろうか、という期待感と、死を覚悟で煙に包まれるビルに飛び込んでいく主人公の悲壮さが胸を打ちました。以下、「出口なし」の簡単なあらすじです。
「地震の後、俺とマヨに三原さんは普段の5倍やるから、歌舞伎町の路地奥2ケ所に火をつけて来いと言い、液体の入ったビンを渡した。俺はこれをするともう後戻りできなくなると思ったが、断る勇気がなかった。
 マヨはただの放火じゃん、と言ったが、俺は中に人がいたら、殺人だぞ、と言った。逃げちゃおうか、と言うマヨに、やらなきゃ俺たちが消されるだけだ、と答えた。
 俺は高校を落ち、田舎でぐだぐだしているのに飽きて、先輩を頼りに東京に出て、いろんな人からいろんな『仕事』を請け負い、中国人なのでなまりが出るとイジメられるため無口で通していたマヨと知り合い、そのうちに2人とも三原さんに気に入られ、アパートに住めるようになり、月に5日ほど仕事をしながら暮らす今に満足していた。
 地獄絵図の中を進んでいき、青空を見ると猛烈な吐き気に襲われたが、時間が迫っていた。
 階段を上がっていき火をつけようとすると、エレベーターの中に人がいるような音がする。俺が火をつけられないでいると、マヨは俺が火をつけるから下で待っててくれ、と言う。しかし、いくら待ってもマヨは降りて来ず、ビルは煙で包まれていく。俺は煙の中へ突進していった。」
 短い話だと3ページしかない短編のオンパレードですが、そこそこ楽しめた気がします。今後、このうちのどれかを膨らませて長編にしてもらえたら、ぜひ読みたいと思わせるレベルでした。オススメです。
 なお、「出口なし」以外の短編のあらすじを「Favorite Novels」の「豊島ミホ」のコーナーにアップしておきました。興味のある方はご覧ください。

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