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北尾トロ『傍聴弁護人から異議あり!』

2014-02-14 10:12:00 | ノンジャンル
 北尾トロさんの'13年作品『傍聴弁護人から異議あり!』を読みました。傍聴人として裁判を傍聴しながら、弁護人になったつもりで裁判を見るという試みです。
 まず、裁判員裁判が始まってから変わったこととして、プロ同士だから通用していた法律用語の連発がなくなったこと、罪を認めている性犯罪者に対して検察官(主に女性検事)が見せる、「あなた、いい歳して女子高生のカラダを触ったりして恥ずかしくないの!」みたいな説教パフォーマンスも影を潜めたこと、事前に行われる公判前整理手続で争点が整理されることや、判決までの日程が決まっているため、弁護人が時間稼ぎに裁判の引き延ばしを図ることもなくなったこと、裁判員の目を気にして、頬杖をついたり眠そうにしたりしている弁護人も見かけなくなったし、着るものや髭の手入れにも気をつかい、何かこう、ワイルドなところ、むき出しの戦闘態勢ってものが見受けられなくなったことがあります。
 本で扱われている事件は8つ。1つ目は酒酔い運転とひき逃げをしておきながら、その記憶が被告人にないという事件。弁護士は施設に5人の子供がいるという情状面から裁判員に訴える戦略を取り、検察官は懲役12年を求刑し、弁護人は7年が相当と主張。結果は懲役8年でした。
 2つ目はケンカの結果人を殺してしまった事件。相手から手を出してきているので、過剰防衛か、殺意があったかどうかが争点。弁護人は被告人の母と妹に証言してもらい、検察官は懲役6年を求刑、弁護人は執行猶予が適当とし、判決は執行猶予なしの懲役4年でした。
 3つ目は放火をしたにもかかわらず、覚えていないという事件。争点は被告人が精神病院に通院していることもあり、精神鑑定でしたが、これがよくもめるのだと言います。精神鑑定は境界性パーソナリティ(性格)障害であり、精神病とまでは言えず、責任能力ありの判断。検察官の求刑は5年、弁護人は執行猶予も期待しましたが、結果は懲役2.5年。執行猶予はつきませんでした。
 4つ目は被告人が正当防衛を理由に無罪を主張している事件。弁護人は被害者が死んだのは自業自得だと最初から戦闘モードで、目撃者証言のあやふやさや、被害者が持病を持っているにもかかわらずケンカを売ってきた点も指摘しました。検察官は懲役5年を求刑、弁護人は当然無罪を主張。結果は何と無罪。著者にとって初めての無罪判決の目撃となりました。
 5つ目は職務質問をした警官を無視してトラックを発進させ、警官に怪我を負わせた事件。しかしこの事件、被告人は事件当時明らかに被害妄想に陥っていて、言っていることが支離滅裂で心身耗弱状態だったとも考えられます。検察官の求刑は懲役6年と重く、弁護人は執行猶予を要求。判決は殺意を求めて懲役3年、執行猶予5年でした。
 6つ目は住居侵入による4件の強姦致傷事件。弁護人は本人が反省しているなど、情状酌量の面で攻めようとしますが、2人の被害者の証言のインパクトが強く、作戦失敗。検察官の求刑は有期刑の上限の30年、弁護人は15年を口にして、判決は懲役30年。犯罪の悪質さについては弁護人も手出ししようがなかったところでした。
 7つ目はリンチ殺人に関わった少年に関する事件。少年院に行かせて更正を期待するか、少年刑務所に行かせて罪ほろぼしをさせるか、の判断。弁護人は当然前者の有用性を主張し、検察官は懲役5年以上8年以下、弁護人は保護処分が相当と訴え、判決は懲役3年6カ月~5年、未決勾留分80日を参入というものでした。
 8つ目はソマリアでの海賊行為で捕まった犯行当時16歳の少年。少年が犯行にどの程度携わっていたかで争われ、検察官の求刑は懲役5年以上10年以下、弁護人は少年ということもあり執行猶予を要求。判決は懲役5年以上9年以下でした。
 巻末には刑事弁護のスペシャリスト坂根真也さんへの著者のインタビューも載っています。現在、裁判員裁判がどのように行われているのかを知る一助にはなる本だと思いました。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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