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松井今朝子『吉原手引草』

2008-01-08 17:38:29 | ノンジャンル
 年末の朝日新聞の特集記事「2007年 心に残った一冊」の対談で推奨されていた松井今朝子さんの「吉原手引草」を読みました。会話の相手の部分だけを書いたもので、落語を聞いているような気になります。
・引手茶屋 桔梗屋内儀 お延の弁→吉原が初めてという著者に吉原のノウハウを教えてやる
・舞鶴屋見世番 虎吉の弁→吉原で働く男たちの話、自分がこの仕事に入った事情
・舞鶴屋番頭 源六の弁→番頭と花魁と客の関係、兼ねが切れてすげなくなった花魁に腹を立てた男が彼方を振り回すのを目だけで大人しくさせた葛城という花魁の話
・舞鶴屋抱え番頭新造 袖菊の弁→自分が世話をしていた葛城が花魁になった事情、自分が男にだまされ今の身に落ちた話
・伊丹屋繁斎の弁→次々に水揚げしたが、葛城の説きだけは本人が笑い始めてモノが立たず、恥じをかいた話
・信濃屋茂兵衛の弁→義理の父親の頼みで、葛城が前例を破り、一回目の逢瀬で自分と寝てくれた話
・舞鶴屋遣手 お辰の弁→女郎上がりがなる遣手の老女が現役の頃に受けたり聞いたりしたお仕置きと残虐な刑にもかかわらず無くならない駆け落ちのこと、夫文が葛城を躾けたこと
・仙禽楼 舞鶴屋庄右衛門の弁→葛城を売り出した経緯
・舞鶴屋床廻し 定七の弁→葛城の騒ぎの前段。伊勢屋の若旦那と平という金持ちが葛城を取り合いになり、当然勝つはずの平が手を引き、若旦那が一夜を葛城と楽しく過ごしたが、その勘定書が家に届き、親から勘当され、江戸払いになったが、葛城は彼は一人息子なので、1、2年の辛抱で親から許されるだろうと考えていて、実際一年して彼はたくましくなって帰って来たこと
・幇間 桜川阿善の弁→平と葛城のなれそめの話(5夜連続で通い、ついに葛城をその気にさせたこと、平と葛城ができると、それまで平となじみの花魁たちが嫌がらせを始めたこと、若旦那との勝負も葛城が平に弱い者に勝って嬉しいか、と言って平に手を引かせたこと、平が葛城に子供を産ませるため、後妻をめとったが、葛城はそんな行為が気に入らなくて2人は疎遠になったこと)
・女芸者 大黒屋鶴次の弁→葛城と田舎侍の客が行方不明になった話
・柳橋船宿 鶴清抱え船頭 富五郎の弁→葛城に大事な人の送り迎えを頼まれたこと、ある日若侍に化けた葛城を舟で送ったこと
・指切り屋 お種の弁→葛城から着物を6枚も買い取り、古着を売ったこと
・女衒 地蔵の伝蔵の弁→葛城を侍から買い、その時の葛城が堂々としていたこと
・小千谷縮問屋 西之屋甚四郎の弁→同郷のよしみで葛城と馴染みになり、平に譲られ身請けすることになっていた時に事件が起こったこと
・蔵前札差 田之倉屋平十郎の弁→葛城が取りつぶしになった秋山という大名家の忘れ形見であること
・詭弁 弄弁 嘘も方便
  舞鶴屋番頭源六→葛城に駆落ちの便宜を図ってはないが、葛城と楼主の共謀
   の可能性はあること
  舞鶴屋抱え振袖新造春里→当日のことは夢のようではっきりと思い出せない
   こと
  舞鶴屋床廻し定七→平の紹介で葛城と2人になった男は葛城に刺され、葛城
   は春里に抱えられて番頭の前を通って逃げたこと、自分が殺された侍の家
   に駆け付け、そこの人を楼主のところへ連れて来たこと
  仙禽楼 舞鶴屋庄右衛門→斬られる覚悟をし、死体の始末をして、やってき
   た用人には心中だと言ったこと、表ざたになった時の事を考えさせ、お互
   いになかったことにして済ませることになったこと、私は葛城に追っ手を
   かけなかったこと
  御目付 堀田靫負→秋山家の息女で仇を討った葛城の顔を立て、秋山家をつ
   ぶした河野家を断絶しにするのが自分の務めだということ

 長々となりましたが、読んでくうちに葛城がいかにスケールの大きな花魁であったかが分かり、またその葛城が起こした事件とは失踪事件であり、しかもそれは殺しを伴ったもので、最後に実は仇討ちだったということが分かる仕掛けになっています。私はそれなりに楽しみましたが、吉原や風俗の世界に興味のある方はもっと楽しめたかもしれません。ひまつぶしにはオススメです。


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