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斎藤美奈子さんのコラム・その109&前川喜平さんのコラム・その70

2022-03-21 20:58:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず3月13日に掲載された「ロシア人へのヘイト」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「プーチンが主観的にいかに正義を主張しようとウクライナへの侵略戦争を正当化できる余地は全くない。この戦争を始めた責任はひとえにプーチンにある。言論も報道も教育も統制された専制国家ロシアで、この戦争の責任をロシア国民に帰することは困難だ。
 しかし、日本ではロシア人に対するヘイト行為が頻発している。ロシア人ユーチューバーの小原ブラスさんのSNSには「ロシア人は日本から出て行け」などという中傷が届くという。東京・銀座のロシア食品店「赤の広場」では店の看板が壊された。店長はウクライナ出身なのに。この事件を理由に札幌大学の学長ら幹部は、同大教授の計画したロシア文学に関するパネル展示の延期を求めた。嫌がらせをされるリスクがあるからだという。情けない話だ。
 外国人を排撃する人間は「自分は日本人だ」と思うことにより辛うじて自分のアイデンティティーを確保している愚かな人間だ。独立した人格と自由な精神を持たず、個人として立っていられない哀れな人間なのだ。
 ロシア人だというだけでプーチンと同類だと考えるのは間違っているし国家と国民を同一視するのも頼りだ。何より人は誰でも国民である前に個人である。それを知らない愚かな人間のヘイト行為は、それを知るまっとうな人間がやめさせなければならない。」

 また、3月16日に掲載された「黒髪直毛神話」と題された斎藤さんのコラム。
「「ブラック校則」と呼ばれてきた都立高校の校則の一部が2023年度から廃止されることになった。髪型や服装に関するものは以下の三つ。
 1,髪を一律に黒く染める。2,側頭部を短く刈り上げた「ツーブロック」を禁止する。3,下着の色を指定する。
 これらの校則を廃止にする決定は、都教育委員会の上意下達ではなく、各校の教員、生徒、保護者らが自分たちで話し合って結論を出した点に価値があるらしい。
 いずれにしてもシーラカンスのような校則である。特に問題なのはやはり髪色問題で、茶色っぽい生徒の髪を黒く染めさせるなど言語道断。黒い肌の生徒に白いファンデーションを塗れと強要しているのに等しい。髪の色や肌の色はアイデンティティーにかかわる。それを否定するのは人権侵害にあたるのだ。
 ところが同じブラックの容疑がかかった校則でも、髪が黒くない生徒や、くせ毛の生徒に「地毛証明書」を任意で提出させる校則は複数の学校で存続となった。「教師が間違った指導をしないため」という。
 日本の教育界はなぜかくも長きにわたり茶髪や金髪を嫌い、ウエーブを嫌い、「黒髪直毛」にこだわったのか。いまとなってはそっちがむしろ謎である。多様なルーツを持つ生徒が世界中から来るとは想像しなかったのか。それもまぬけな話である。」

 そして、3月20日に掲載された「映画「教育と愛国」」と題された前川さんのコラム。
 「「教育と愛国」(斉加尚代監督・5月14日公開)の試写を見た。子どもを型にはめる道徳教科書、「従軍慰安婦」「集団自決」「強制連行」をめぐる教科書検定、教科書採択への政治的圧力など、教育の右傾化と政府支配を鋭くえぐり出したドキュメンタリー。僕には辛い映画だ。教科書への政府見解の記載を求めた検定基準や教育への首長の発言力を強めた法改正は、当時局長だった僕に責任があるからだ。
 2012年に日本居郁再生機構が大阪で開いた会合で熱く語る安倍晋三氏。教科書採択に「政治家がタッチしてはいけないのかといえば、そんなことはないですよ。当たり前じゃないですか」。いやいや政治家はタッチしないのが当たり前なのだ。育鵬社の教科書が目指すのは「ちゃんとした日本人をつくること」と語る執筆代表の伊藤隆氏。「ちゃんとしたとは」と問われると、少し考えて「左翼ではない…」。客席から失笑が漏れた。
 教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう。そんな学校は行かない方がいい。渡嘉敷島で集団自決を語る古川嘉勝さん。島民が殺し合う名か、母は沖縄方言で「逃げなさい」「生きなさい」と言った。母は教育を受けておらず無学だった。学校に行かなかったから本当のことが言えたのだ。」

 どれも一読の価値がある文章だと思いました。

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