奥田英朗さんの'12年作品『噂の女』を読みました。
まず、「中古車販売店の女」 会社の同僚が中古車を買ったら、その日のうちに故障したので、同僚3人でディーラーにクレームを付けに行くことになった。リーダーの後藤は新品タイヤ4本とカーナビを付けさせようと企んでいる。交渉中、3人の中で一番若い雄一はふと視線に気づき、顔を上げると、デスクの女子事務員と目が合った。女はゆっくりと仕事に戻った。しばらくするとまた女と目が合った。今度は3秒ほど見つめられた。何か言いたげな目だ。帰宅途中、さっきの女子事務員は中学時代のクラスメートの糸井美幸だと思い出した。夕食時、3人にそのことを言い、中学時代は目立たない女で、男子とはほとんど口を利かなかったと言うと、後藤は「女は変わるやて。やりまくっとるぞ、あの女」と後藤は言った。
翌日も3人でディーラーに行くと、美幸は昨日とは髪型を変えていて、前髪をたらし、毛先をカールさせていた。香水の匂いも漂った。雄一は女の体を盗み見た。胸も尻も肉付きがよかった。顔は十人並みだが、ちゃんと色気はあるので、言い寄る男もいそうだ。交渉中、美幸と目が合った。くすりと笑ったように見えたが、すぐに目をそらされた。しばらくしてまた美幸と目が合った。今度は小さく会釈された。自分に気があるのかと雄一はうぬぼれた。その日の夕食でも美幸の話になった「ところであの事務員、今日は色目遣っとったな。あれはやれるぞ。北島、連絡とってみい。名簿見れば電話番号わかるやろ」
雄一は帰宅するとすぐに中学時代のクラスメートに電話をかけた。美幸は短大に行ってから派手になり、キャバクラのバイトをしていたという噂もあったという。しばらくすると、さっき電話したクラスメートから折り返し電話があり、美幸と短大が同じだった友人に電話があり、雄一のことを盛んに訊いていたと言う。雄一はその夜、美幸の胸と尻が頭のなかでちらつき、マスターベーションをした。
3日目。美幸はストッキングではなくハイソックスを穿いていたので、太ももは生足だった。雄一は途中でトイレに行き、外に出ると美幸が立っていた。短大時代に、自分を変えようと思って、アルバイトとか、サークルとか、語学留学とかいろいろしたのだと言う。雄一は携帯の番号を聞かれた。「じゃあね」糸井美幸が踵を返すと、髪をふわりと浮かせ、先に事務室へと走っていき、雄一は彼女の尻を凝視した。もう性的なことしか頭にない。その夜、雄一は美幸から電話がかかってくるのを期待しながら残業した。かかってきたのは先日電話した中学時代のクラスメートだった。何と、美幸は今勤めてる会社の親会社の社長の愛人だと言う。
翌日、その話を同僚にした。「ほらみろ。おれが言ったとおりやないか。あの女、やりまくっとるぞって」雄一は少しはときめいた女が、愛人と聞いて失望感を味わっていた。雄一は早く帰りたくて仕方なかった。
この後、美幸をめぐって、舞台は一族会社で働く営業マンたちが集う麻雀荘(「麻雀荘の女」)、結婚を控えた女性が通う料理教室(「料理教室の女」)、美幸が再婚しようとしている不動産会社社長の4人の兄妹たちと美幸との戦い(「マンションの女」)、美幸がパチンコ屋で知り合った失業者の女性に睡眠薬の入手を頼むファミレス(「パチンコ屋の女」)、美幸がクラブを開いた柳ケ瀬の繁華街の入口にあって、美幸がホステスをスカウトする託児所(「柳ケ瀬の女」)、建設会社の談合のシステムを変えようとする若者とそれを阻止しようとする既得権益者との戦い(「和服の女」)、美幸が美人局をして檀家総代になり、檀家に巨額な寄進を迫る話(「檀家の女」)、美幸の周囲で不審な死が続いているのに気づいて捜査に乗り出す刑事(「内偵の女」)、そして有力県議の愛人としてスカイツリーに登るはずが、捜査の手が及び、県議の全財産を奪って逃げ出す話(「スカイツリーの女」)と続いていきます。
以前のユーモラスな奥田さんが帰ってきたようで、物語の構成力もさすがだと思いました。文体も読みやすく、300ページの本を実質1日で読んでしまいました。次回作が今から楽しみです。なお、詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「奥田英朗」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
まず、「中古車販売店の女」 会社の同僚が中古車を買ったら、その日のうちに故障したので、同僚3人でディーラーにクレームを付けに行くことになった。リーダーの後藤は新品タイヤ4本とカーナビを付けさせようと企んでいる。交渉中、3人の中で一番若い雄一はふと視線に気づき、顔を上げると、デスクの女子事務員と目が合った。女はゆっくりと仕事に戻った。しばらくするとまた女と目が合った。今度は3秒ほど見つめられた。何か言いたげな目だ。帰宅途中、さっきの女子事務員は中学時代のクラスメートの糸井美幸だと思い出した。夕食時、3人にそのことを言い、中学時代は目立たない女で、男子とはほとんど口を利かなかったと言うと、後藤は「女は変わるやて。やりまくっとるぞ、あの女」と後藤は言った。
翌日も3人でディーラーに行くと、美幸は昨日とは髪型を変えていて、前髪をたらし、毛先をカールさせていた。香水の匂いも漂った。雄一は女の体を盗み見た。胸も尻も肉付きがよかった。顔は十人並みだが、ちゃんと色気はあるので、言い寄る男もいそうだ。交渉中、美幸と目が合った。くすりと笑ったように見えたが、すぐに目をそらされた。しばらくしてまた美幸と目が合った。今度は小さく会釈された。自分に気があるのかと雄一はうぬぼれた。その日の夕食でも美幸の話になった「ところであの事務員、今日は色目遣っとったな。あれはやれるぞ。北島、連絡とってみい。名簿見れば電話番号わかるやろ」
雄一は帰宅するとすぐに中学時代のクラスメートに電話をかけた。美幸は短大に行ってから派手になり、キャバクラのバイトをしていたという噂もあったという。しばらくすると、さっき電話したクラスメートから折り返し電話があり、美幸と短大が同じだった友人に電話があり、雄一のことを盛んに訊いていたと言う。雄一はその夜、美幸の胸と尻が頭のなかでちらつき、マスターベーションをした。
3日目。美幸はストッキングではなくハイソックスを穿いていたので、太ももは生足だった。雄一は途中でトイレに行き、外に出ると美幸が立っていた。短大時代に、自分を変えようと思って、アルバイトとか、サークルとか、語学留学とかいろいろしたのだと言う。雄一は携帯の番号を聞かれた。「じゃあね」糸井美幸が踵を返すと、髪をふわりと浮かせ、先に事務室へと走っていき、雄一は彼女の尻を凝視した。もう性的なことしか頭にない。その夜、雄一は美幸から電話がかかってくるのを期待しながら残業した。かかってきたのは先日電話した中学時代のクラスメートだった。何と、美幸は今勤めてる会社の親会社の社長の愛人だと言う。
翌日、その話を同僚にした。「ほらみろ。おれが言ったとおりやないか。あの女、やりまくっとるぞって」雄一は少しはときめいた女が、愛人と聞いて失望感を味わっていた。雄一は早く帰りたくて仕方なかった。
この後、美幸をめぐって、舞台は一族会社で働く営業マンたちが集う麻雀荘(「麻雀荘の女」)、結婚を控えた女性が通う料理教室(「料理教室の女」)、美幸が再婚しようとしている不動産会社社長の4人の兄妹たちと美幸との戦い(「マンションの女」)、美幸がパチンコ屋で知り合った失業者の女性に睡眠薬の入手を頼むファミレス(「パチンコ屋の女」)、美幸がクラブを開いた柳ケ瀬の繁華街の入口にあって、美幸がホステスをスカウトする託児所(「柳ケ瀬の女」)、建設会社の談合のシステムを変えようとする若者とそれを阻止しようとする既得権益者との戦い(「和服の女」)、美幸が美人局をして檀家総代になり、檀家に巨額な寄進を迫る話(「檀家の女」)、美幸の周囲で不審な死が続いているのに気づいて捜査に乗り出す刑事(「内偵の女」)、そして有力県議の愛人としてスカイツリーに登るはずが、捜査の手が及び、県議の全財産を奪って逃げ出す話(「スカイツリーの女」)と続いていきます。
以前のユーモラスな奥田さんが帰ってきたようで、物語の構成力もさすがだと思いました。文体も読みやすく、300ページの本を実質1日で読んでしまいました。次回作が今から楽しみです。なお、詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)の「Favorite Novels」の「奥田英朗」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。
→「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/)
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