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スタンリー・キューブリック監督『恐怖と欲望』

2014-02-01 15:57:00 | ノンジャンル
 トム・ゴドウィンの'80年作品『冷たい方程式』を読みました。ただ一人の乗員を目的地に届ける片道分の燃料しか積んでいない緊急発進艇に密航者がいたら、パイロットのすべきことはただひとつ――船外遺棄だ。だがそれが美しい娘で、しかもたった一人の兄会いたさに密航したのだとしたら、という話で、結局鉄の掟を守るしかなく、彼女は船外遺棄されてしまうのですが、乗員や兄と娘との会話で読ませる短編でした。

 さて、スタンリー・キューブリック監督・製作・撮影・編集の'53年作品『恐怖と欲望』をWOWOWシネマで見ました。
 “森の中は戦場だ。これは実際の出来事ではなく、普遍的な戦争の話である。従って、ここで戦う兵士たちも我々の想像の産物だ。この森で起きていることは、いずれも史実ではない。しかしどんな世界であろうと、恐怖と不信と死は普遍なのだ。この兵士たちは我々と共通の言葉を話すが、彼らの祖国は心の中にしか存在しない”のナレーション。前線から敵陣の中に10キロ入ったところに墜落した飛行機に乗っていた兵士たち。リーダーの中尉はまず武器を入手して、前線を横切っている川をいかだで下る計画を立てます。そこに突然現れる犬は、人なつっこく、隊員の中には連れていきたいと言う者も出ますが、中尉は石を投げて追い払います。川までの道のりを不満を言いながら進む兵士たち。途中道路に出ますが、斥候を出して安全を確認し、道路を渡って川に出ます。いかだを作っている間に、対岸に敵の滑走路と将軍がいることに気づき、中尉に報告する軍曹。やがていかだは完成しますが、上空を敵機が飛び、発見される恐れがあるため、彼らは来た道を戻ります。
 途中に現れる小屋。彼らは中にいて食事中だった若いドイツ兵士を刺し殺し、彼らが食べていたシチューも飲みます。薪を持って現れた3人目のドイツ兵士も射殺する彼ら。“我々は皆迷いながら人生を送っている。本当の自分は何者か? 居場所はどこかと‥‥。人は孤独ではない? 大昔氷河期の頃は、そうだったかもしれない。今は氷河が解けて、我々は皆孤島に独りだ。世界は孤島ばかりにになった”と語る中尉の独白。
 「最悪の情況だ」と言う兵士。いかだの様子を見にいくための偵察を夜まで待とうと中尉は言います。翌朝、地元民の女性が川で漁をしています。いかだに向かう兵士たちは、1人の女性に見つかりそうになり、逆に口を塞いで女の体の自由を奪います。ベルトで木に縛り付け、尋問をしますが、言葉が通じません。一番若いシドニーが彼女の見張りをすることになり、他の3人はいかだに向かいます。彼女の気を引こうとしていろんなことをするシドニーですが、女性はとまどうばかりです。その頃、いかだの無事を確かめた中尉はシドニーの様子が変だったので、軍曹に見に行かせます。シドニーは手に水を汲んで飲ませると、女性が飲んだので喜び、彼女にキスの嵐を降らせ、ベルトを外してやります。女性はすぐに逃げ出し、シドニーは女性を射殺します。そこへ軍曹がやってきますが、シドニーは女性は疲れて横になっていて、銃を撃ったのは魔術師の仕業だと言い、笑い叫びながら森の中に消えていきます。
 軍曹は目の前に敵の将軍がいるのは何かの縁だと言い、このまま故郷に帰っても年は34のただの修理士で一生を終わるが、将軍を倒せば英雄になれるとも言い、中尉に自分がいかだを1人でこいで相手の注意を引くので、その間に中尉ともう1人の兵士は将軍を暗殺し、飛行機で逃げる計画を中尉に飲ませます。
 独白しながらいかだをこぐ軍曹。軍曹が銃を撃ち始めると、敵は皆そちらにいってしまい、中尉は飼い犬が戻ってきた敵の将軍を撃ち、降参するという将軍のとどめを射します。飛行機で無事脱出する中尉。
 基地に戻った中尉は軍曹を見つけるため川辺の監視をする許可を得ますが、やがて現れたのは、気が狂ったシドニーと息絶えた軍曹を乗せたいかだでした。

 虫の音がリアリティを与え、独白がやたらに多い映画でした。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

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