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町田智浩『さらば白人国家アメリカ』その2

2016-12-08 04:37:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
・「マーケティングのプロであるトランプは的確にサイレント・マジョリティのニーズをつかみ、彼らを共和党から奪い取った。だが、予備選は制しても、本選ではどうか。『アメリカを再び偉大に』というスローガンは白人にしか響かない。アメリカが昔のほうが良かったのは白人だけで、黒人もラテン系もアジア系も過去より今のほうが確実に生活や立場が良くなっているからだ」
・「それに白人の人口は減り続けている。1980年に人口の8割を占めた白人は、現在は62%にすぎない。わずか27年後の2043年には白人が全人口の半分を切りマイノリティに転落する。その恐怖が人種差別的なトランプへの支持につながっている」
・「(前略)ヘリテージ財団に資金を提供しているのは、AIGやオールステートなどの各種保険会社、シェヴロンやエクソンモービルなどの石油会社、ボーイングやロッキードなどの航空会社、ファイザー、グラクソ、ノヴァーティスなどの医薬品会社などだ」
・「特に、シンクタンクにお多額の寄付をしているのは石油産業だ。現在、世界の課題になっているCO2規制は石油化学産業の商売の邪魔なので、地球温暖化をなんとかして否定しなければならない。09年、クライメートゲート事件が起こった。『地球温暖化はイギリスの科学者がデータを改竄したデッチ上げ』とするスキャンダルだ。このデッチ上げ説を世間に広めたのはケイトー研究所というシンクタンクだった。ケイトーの大口出資者は、石油化学コングロマリットの大手、コーク産業だった」
・「まだ40代前半のルビオは老人の党になってしまった共和党が生き残りのために求めてやまないものだ。アメリカでは高齢になるほど共和党支持率が高くなり、44歳より下はぐっと民主党支持率が高くなる」
・「マリファナの『非犯罪化』が世界的規模で進んでいる。『非犯罪化』というのは、マリファナの組織的な栽培や販売は規制するが、個人的な使用や所持をいちいち法で罰するのはやめようとする動きだ。アメリカでは2008年以降、各州で非犯罪化が進み、さらに『医療用マリファナ』を認める法律も州民投票で可決している」
・「コロラド州では12年の住民投票で嗜好用マリファナの合法化が決まり、14年元旦から施行された。(中略)一度に買えるのはわずか1オンス(約28g)。(中略)値段は350ドル以上と、闇ルートでの値段よりもかなり高め。その理由は35%の税金が課せられているからだ。(中略)その税収の最初の4000万ドルは公立学校の運営に回される」
・「だが、中西部はドイツや東欧、北欧からの移民が多く、宗教や民族的には一枚岩ではない。彼らの保守思想は宗教よりは自由主義、リバータリアン的、政治的、思想的な保守なのだ。そして個人の自由を至上のものとするリバータリアンは、麻薬や売春や銃の所持については基本的に規制すべきでないという立場なのだ」
・「アメリカは30年代以降、ずっとリベラルが支配していた。ローズヴェルト政権が始めたニューディール体制は、福祉による資本再分配、政府の市場への介入、規制強化による社会民主主義的な中央集権的政策だった。ニューディールは実に強固で、50年代に共和党のアイゼンハワーが大統領になっても体制は崩せなかった。一方当時のアメリカの保守は、赤狩りのマッカーシー上院議員や、ジョン・バーチ協会のように、KKKとあまり変わらない、人種差別と反ユダヤ主義と反共とキリスト教原理主義が入り混じった、素朴で粗野で無教養で暴力的で狂信的な田舎者ばかりだと思われていた。いわゆる『旧保守(オールド・ライト)』である」
・「だが、イエール大学出身のウィリアム・バックレーは55年に創刊した雑誌『ナショナル・レビュー』で、差別的な旧保守を批判し、ニューディールを乗り越える保守理論を構築しようとした。(中略)それは『新保守(ニュー・ライト)』という新思潮となり、80年代にレーガン政権の理論的バックボーンになった」
・「現在、アメリカの大企業や大資本からの政治資金はほとんど野放しだ。その扉を開けたのは、2010年に最高裁が出した『シティズン・ユナイテッド判決』だった。(中略)この判決によって、PAC(政治家と直接接触しないで勝手に応援する団体)への企業や団体による政治献金に金額の上限がなくなった。またたく間に数十億ドル規模の巨大PACが乱立した。これをスーパーPACと呼ぶ」
・「最高裁判事は終身で、大統領でも更迭することができない。誰かが死ぬか引退した時しか任命できない。だから任期最高8年の大統領よりも長く影響力を持つ。いや、実際、大統領以上に大きくアメリカの歴史を変えてきたのだ」(また明日へ続きます……)