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増村保造監督『濡れた二人』その5

2013-08-28 05:58:00 | ノンジャンル
 またまたまた昨日の続きです。
 夜。雨。雨戸開け、立って待つマリコ。カツエ、走って来て雨戸を閉めます。厳しい顔で「お嬢さん、困りますよぉ。どうして旦那様と帰らなかったんですかぁ」。両腕を組んで「どうしてか、私にも分からないの。あ~あ、息苦しいわ」と雨戸を開けます。「開けたってダメですよ。いくら待ったってシゲオは来ませんよ」「どうして?」「さっきシゲオの親爺さんが怒鳴り込んで来ましたよ。お前んとこの女は、うちのシゲオを誘惑するつもりかって」「そう」「お嬢さん! あなたは気が狂ったんですか? 昨日舟に乗ってシゲオと何をしたんです? 山の上の畑から丸見えだったんですよ」「そうだったの」「狭い村ですからねぇ。もうみんな知ってますよ。一体どうする気持ちなんです? シゲオと結婚するつもりですか?」「結婚‥‥」「止めてください。そんなバカなこと! 年が七つも違うんですからね!」「カツエさん、皆さんが何を言ってるか知らないけれど、私はただ、もう一度シゲオさんに会えたら、それでいいのよ」「会ってどうするんですか?」「分からないわ」「子供みたいなこと、おっしゃらないでください。お嬢様もう32ですからねぇ」「でも分からないの」「兎に角、うちからすぐ出てって下さい。東京へ引き上げてくれませんか? 車を呼びますから」「今すぐ?」「そうですよ。年がいもなく若い男を引っ張り込むなんて、あんまりですよ。ここは私のうちですからねぇ」「カツエさん、お願い。今夜会ったら帰るわ。だからもう一晩だけ泊めてちょうだい。お願いします。ねっ、一晩だけでいいの」「ふん、じゃあ今夜だけですよ。どんなことがあっても明日一番のバスで帰ってもらいますから」「そうするわ」「立派な旦那がいるのに火遊びもいい加減にして下さい」。カツエ、去ります。
 清江とシゲオと父。父「シゲオ、どうしてもカツエのうちに行くというのなら、2度と戻ってくるな」「分かったよぉ」シゲオ、行こうとします。父は腕を取り「この馬鹿野郎! 東京の、それも人の女房にうつつを抜かしやがって!」。平手で顔を殴ります。「シゲオ、結婚はな、一生のもんだぞ。あの町の女をこれから何十年もしょっていけるのか? 今ちょっとばかりキレイでも、5年経ってみろ! しわくちゃのババアだ。それでもいいのか?」「いいよ!」。去ろうとするシゲオを父が引っ張り返し「お前はまだ町の女に懲りんのか? 町の女なんて着飾って厚化粧でごまかしているが、一皮剥げば、とんでもない化けもんだ。それが分からんのか?」「分かってるよ!」。また引き戻し「この清江がいるのに、どうしてあんな女に惚れるんだ?」「好きなんだ。好きなもんは仕方がねぇ」。また引き戻し「あの女はな、亭主と6年も暮らしてるんだ。他人の手垢で汚れきったお古だ。お前に我慢できるか?」「できるよ!」「どうやってあの女を食わすんだ? うちを出りゃ、お前なんかチンピラの漁師だ。稼ぎなんか、たかが知れている。一生貧乏暮らしをしたいのか?」「余計なお世話だ」。また引っ張り返し「この野郎! どうしても分からねえのか!」。父は突き飛ばし、蹴り飛ばそうとして、首絞める。「お前みたいな大馬鹿野郎は性根を叩き直してやる!」。シゲオは父を倒し返し、逃げます。父「バカ!」。
 シゲオ、濡れそぼって赤いネグリジェ姿のマリコの許へ。紅差し、香水を振りまくマリコを盗み見るシゲオ。シゲオが植木鉢を倒し、音を出すと「シゲオさん!」と裸足で雨の中へ出て行き「シゲオさん!」。雷。マリコは諦めて部屋に戻ります。全裸で髪を梳るマリコ。電灯をつけ、バスタオルを巻きます。シゲオが進み出ようとすると、カツエが現れ、濡れた赤いネグリジェを床に見つけると「あ~あ」と言ってネグリジェから水をはたき、「お嬢さん! いいかげんにして下さいな! 何ですか、このマネは! そんな格好見せびらかして、また噂の種になりたいんですか? あたしゃ、御免ですよ。これ以上肩身の狭い思いはしたくありませんからね」。後ろを振り向き「閉めますよ、雨戸! うちの主人はね、シゲオの親爺さんに雇われてるんですよ。あたしたちがここにいられなくなったら、どうしてくれるんです? お嬢さんは東京へ帰れるけど、こっちは行く所がありませんよ。お嬢さん! 聞いているんですか?」「いいわ、閉めて」「ふん、当たり前ですよ。どうせシゲオは来ないんだから」(またまたまたまた明日へ続きます‥‥)

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